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一戸建てリノベーション事例「家もバイクも。古いものを手入れして楽しみ、使い続ける」

雑誌「LiVES」に掲載された一戸建てリノベーション事例から、今回は大阪府東大阪市の岡本さんご家族の事例をご紹介。ヴィンテージバイクで大陸横断。その行動力と情熱を次に傾けたのが住まいだった。古き良きヴィンテージ品に囲まれた一戸建てリノベーション。(text_ Manami Eto photograph_ Takashi Daibo)

アメリカンカルチャーに魅せられて

半世紀もの間、建物を支えてきた太い梁が貫くガレージ。その中で存在感を放つのは、1928年製のハーレー・ダビッドソン。傍らには、使い込まれて馴染んだ革のブーツやジャケットが並ぶ。

学生時代からファッションや映画、音楽など、アメリカンカルチャーに魅了されてきた岡本直さん。惚れ込んだワークブーツの老舗ブランドを「日本で広めたい」と興した会社は来年で20年を迎える。3年前には愛車で北米大陸を横断するという長年の夢も叶えた。

「好きなことをやり切ってきた自負があったのですが、次に何をしようかとふと立ち止まってしまったんです。その時、『家がある!』と閃きました」(岡本さん)

眺めが気に入り、新築で購入したマンションに暮らして20数年。不満はなかったが、生活の場以上のこだわりもなかった。早速動き出し、見つけたのは古くて広々とした純和風の一戸建て。雨漏りなどの傷みはあったが、修理し、カスタムすればバイクのように自分らしく生まれ変わるはず。そこで、アメリカンスタイルを得意とするスクールバス空間設計にリノベーションを依頼した。

家具は欧米のヴィンテージ品やそれに合うものを厳選。飾っている写真や本は岡本さんの会社で扱うブーツや愛車など自身にまつわるものも多いそう。
左・真鍮のペンダントライトの向こうには、昔のアメリカ映画のポスター。/右・オープン棚に飾ったブーツやヘルメットも長年愛用しているもの。
岡本さんの部屋はガレージと同じタイルの壁にインダストリアルな照明を合わせた。夜はヴィンテージのオーディオでジャズやブルースのレコードをゆったりと味わう。

1960年代の真空管アンプは、温める手間も楽しみのうち。

アメリカ仕込みのバーカウンターとバイクガレージ

「理想の家ではなく、バイクやブーツの話から始まる異色の打ち合わせ。おかげで岡本さんのライフスタイルがブレなく伝わってきました」

と、プランナーの番清俊樹さんは出会いを振り返る。

バーカウンターを併設したガレージは、アメリカのバイカーズ・クラブハウスのイメージ。靴のまま過ごせる空間は気軽に人を招くことができ、お酒やコーヒー片手に愛車を眺めたり、家族や友人とお喋りする場にもなる。LDK側には内窓を設けて互いの気配を届け、住居部分にも壁のタイルや床のモルタルなど同様の仕上げを取り入れることで、一体感を持たせた。

「自然との一体感や生きている実感を得られるのがバイクの魅力」。大陸横断は過酷だったが、人の優しさにも触れた旅だったと話す。独立した長男もバイク乗り。
バーカウンターは番清さんの提案。お酒やコーヒーマシン、内側に小型冷蔵庫を置き、交流の場に。番清さんも、カウンターや扉をつくった建具職人さんもバイク好き。

玄関、ガレージ、階段ホールが一体の間取り。玄関奥に広々としたシューズクロークを設けているので、生活感を見せずに愛車とのくつろぎの時間を過ごせる。

木製框、ガラス、真鍮を組み合わせて造作したガレージドアは、アメリカのクラブハウスのような雰囲気。ガラスを通して注ぐ外光が愛車を照らし、より魅力的な眺めに。
Harley-Davidson以外にホンダ CB750やスーパーカブ C65、トライアンフなどヴィンテージバイクを多数所有。

家族と過ごすLDK

家族の暮らしやすさにも配慮している。LDKはカントリー雑貨や植物が好きな妻の慶子さんの希望で、木の温もりが溢れる空間に。将来を想定し、日中は1階だけで過ごせるようプランした。

「季節ごとの雑貨やお花を飾ったり、眺めたりする時間を楽しんでいます」(慶子さん)

仕事も趣味も、岡本さんが大切にしてきた古き良きアメリカン・ヴィンテージ。同じ歳月を経た住まいが、それらを一層輝かせている。

梁を現しにした天井の高いリビングダイニング。味わいのある既存の柱もインテリアのアクセントに。格子の室内窓からはガレージの様子がうかがえる。

キッチンを囲う壁はガレージの床と同じ色に塗装。背面には3枚の引き違い扉を付けたカップボードを造作した。雑多になりがちな家電や食品類は、奥のパントリーへ。

カップボードには慶子さんがコレクションするファイヤーキングが並ぶ。

リビングドアの取っ手は真鍮。変色や錆を防ぐため、革カバーを。

屋根は葺き替えて外壁はグレーに塗装。基礎の補強や結露対策も施した。

建物データ

〈敷地面積〉不明〈建築面積〉不明〈床面積〉1階 73㎡、2階 45㎡、合計 118㎡〈用途地域〉市街化区域(第一種中高層住居専用地域)〈主要構造〉木造〈既存建物竣工〉1975年〈リノベーション竣工〉〈リノベーション竣工〉2020年〈設計期間〉3ヶ月〈工事期間〉4ヶ月〈設計・施工〉スクールバス空間設計

※この記事はLiVES Vol.120に掲載されたものを転載しています。
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