
平屋リノベーション事例「愛着のある海辺の平屋にカリフォルニアの風を吹かせる」
雑誌「LiVES」に掲載された平屋リノベーション事例から、今回は千葉県長生郡一宮町(ちょうせいぐんいちのみやまち)の小野寺さんご家族の事例をご紹介。広い庭とサーフィンライフを求め、海の近くに昭和な中古住宅を求めた小野寺さん一家。リノベーションで暮らしを楽しむマインドがますます強まった。(text_ Eri Matsukawa photograph_ Susumu Matsui)
のびのびした海辺の平屋をリノベーション
赤いガルバリウムの大波板とレッドシダーを張り分けた外壁が、アメリカ西海岸の陽気を思わせる小野寺さんの家。九十九里の広大な浜辺は目と鼻の先にある。
「どこに行っても知っている人に会えるこの町が好きで。子育ての期間にこっちに移住できて良かったなと思います」(奥さま)
一家が千葉市内から海辺の平屋に引っ越したのは6年ほど前。長男が生まれて庭の広い家に住みたくなったのと、ご主人がサーフィンに本格的に熱を入れ始めたからだった。昭和52年築で南側に和室が並ぶ「サザエさんの家」のような家で、一家はしばらくはそのままの暮らしを楽しんでいたが、玄関の位置が不便でまったく使えない、サーフボードの置き場がないなどの不満もあった。ご両親から援助の申し出があったことが、家のことを考え直すきっかけに。新築も検討したが、のびのびした平屋に愛着もあったため、リノベーションの道を選んだ。


サーフボードを置ける広い土間と薪ストーブ
設計はリノベーションの実例に共感を覚えた建築家の若林秀和さんに依頼。ご主人の要望は「サーフボードを置ける広い土間と薪ストーブ」といたってシンプル。若林さんとのやり取りは、やりたいことの多い奥さまが中心に行った。
「リノベーションをしてから、家にいることが楽しくなりました。帰ってきたときにいい感じの場所があるというのは最高」(ご主人)
玄関を兼ねる8畳ほどの土間は、丸々増築。間仕切りなしでLDKへとつながり、開放感たっぷりだ。リビングとダイニングは天井板を外して梁を現し、屋根なりの傾斜天井には杉板を張った。低い天井に圧迫感があった以前の様子は跡形も無い。壁は漆喰に近いプラスター塗りで、床はナラの無垢材。イメージに合ったいい素材に囲まれる心地よさは何ものにも代えがたい。奥さまが楽しみながら選んだ壁紙やタイルが、場所ごとに違った表情を見せるのもこの家の個性だ。



ジーンズのような色が個性的なキッチンのタイルは、奥さまがイメージに合うものを探した。


居心地のいい溜まり場となった家
対面キッチンは向きをあれこれ悩んだが、家中が見渡せて来客もすぐに見える今の配置を、奥さまは気に入っている。人を招いてお酒をおいしく飲めるようにつくったカウンターもこだわりのひとつだ。広い空間ができたため、近所の友達が以前より足繁く集まるようになったという。
「いつも突然誰かがやってきて、人が人を呼び、いつの間にか大勢になっていることが多いです」(奥さま)
男性たちは土間で車座に、女性たちはキッチンの回りでくつろぐというパターンは自然にできあがった。デッキでバーベキューをしながら飲むこともあれば、冬は薪ストーブを囲んで火遊びや煮炊きに興じる。人生を楽しむ術を知る人が住む町で、この家は居心地のいい溜まり場と化しているようだ。



だるまストーブで冬も快適。



ぽってりした扇形が愛らしいアイアン製のドアハンドル。

●Before
南側に和室が連なる昔ながらの間取りで、北側のキッチンは家族に背を向ける配置。玄関の位置が不便だった。
建物データ
〈敷地面積〉423.25㎡〈建築面積〉105.58㎡〈床面積〉1階 105.58㎡〈主要構造〉木造〈用途地域〉指定なし〈既存建物竣工〉1977年〈リノベーション竣工〉2017年〈設計期間〉5ヶ月〈工事期間〉5ヶ月〈構造設計〉tai_tai STUDIO〈施工〉尾嶋建設

※この記事はLiVES Vol.101に掲載されたものを転載しています。
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