
別荘リノベーション事例「夫婦でリノベーションした海と森を見渡せる家」
雑誌「LiVES」に掲載された別荘リノベーション事例から、今回は福岡県糸島市のご家族の事例をご紹介。マリンスポーツ好きで、海を眺めていたい夫。緑豊かな山暮らしにあこがれる妻。自然を身近に感じていたい二人の家は森の中の古い別荘。(text_ Yukari Yuki photograph_ Masami Naito)
海を見渡せる、高台の古い別荘をリノベーション
牡蠣小屋が有名な糸島の漁港の近く、海をのぞむ高台につくられた別荘地。その山の斜面に木々に囲まれたこぢんまりとした家が姿を現す。もともとは週末を過ごす別荘として建てられたものだが、3年ほど前に夫妻が購入し、セルフリノベーションして住んでいる。それまで東京で仕事をしていた夫妻だが、遠く離れた九州に家を求めたのには訳がある。
マリンスポーツ好きのご主人は、中古ヨットを買って操縦を勉強するために、日本各地を航海したことがある。その時立ち寄った九州の“大陸的な空気”にとても魅せられたのだそう。東京生まれの奥さまも、
「実は都会が苦手で山暮らしにあこがれていました」
と話す。そして、家を購入しようと決めた時には迷わず九州を候補地に。インターネットで売り別荘を知り訪れたが、このロケーションは夫妻の琴線に触れたようだ。いつも海を眺めていたいというご主人と、果実が実る山の中で自然に寄り添って暮らしたい奥さま。二人が希望する条件にぴったりだった。また、建物がこぢんまりとしていたこともポイントに。
「この広さなら、無理せず自分たちでリノベできるなと」(ご主人)




夫婦でDIY「ヨット」がテーマの家づくり
ものづくりが趣味の夫妻は、DIYのネット動画を見ながら、コツコツと古い建物を自分たちの望む家につくり替えてきた。「ヨット」をテーマにしたという家づくりにも、夫妻のこだわりや自然に対する思いが込められている。ご主人のヨットのパーツを扉の取手にしたり、デッキもヨット仕様のシリコン目地にしたり、海をイメージして床を青いタイルにしたり…。3年目でリノベも落ち着いてきたが、これからも住み心地を良くするためのDIYは続けていく。

ヨットを係留する際にロープを結ぶための金具をドアノブに。

家づくりのテーマが「ヨット」だったので、床は海をイメージした青いタイルに。タイル張り工事も夫妻でトライ。奥さまは左官工事もこなすDIY女子。
大自然の移ろいを体感できる暮らし
北西に向いた壁一面の窓の向こうでは、生い茂った木々の葉が風に揺れている。家のどこにいても、窓の外の深いグリーンが目に入ってくるなんとも贅沢な環境だ。
一番のお気に入りは、自分たちで増設したオープンデッキで過ごす時間。ガーデンチェアに腰かけると、視界いっぱいに森が広がり、日差しと風をたっぷり浴びられる。
「チェアに寝そべりぼーっとするのが最高のリラックスタイムなんです。夕暮れ時は特に美しくて、眺めているだけで豊かな気持ちになります」(ご主人)


サンルームの一角はリモートで仕事を続ける奥さまの書斎。右手の窓はネットで見つけた船舶用の小窓。「緑に囲まれているとストレスなく仕事がはかどる」と奥さま。

周囲を囲む山の緑の先に水平線ものぞめる絶好のロケーション。家から見下ろした庭の一角にデッキの足場をつくってドーム型のテントを設置した。


この景観を第一に考えて、デッキには視界を遮るフェンスはつくらなかった。かわりにデッキと外の境目に水をためた樋を設置した。
「我が家のインフィニティプールです」(ご主人)
とにっこり。自然と調和したこの家で、大自然の移ろいを体感しながら、心豊かな暮らしを営んでいる。

デッキ際にインフィニティプールをイメージした樋を造作。

家の下の庭では野菜作りを楽しんでいる。最近、ご主人がヨーロッパの庭ではおなじみのレイズドベッドを製作。「おかげで手入れが楽になった」と奥さま。

建物データ
〈敷地面積〉479㎡〈建築面積〉126.87㎡〈床面積〉1階 58㎡、合計 58㎡〈用途地域〉指定なし〈主要構造〉木造〈既存建物竣工〉1984年〈設計・工事期間〉2年5ヶ月(現在も進行中)〈設計・施工〉施主

■ご夫婦のInstagram https://www.instagram.com/everyday._.doityourself/?hl=ja
※この記事はLiVES Vol.117に掲載されたものを転載しています。
※LiVESは、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【LiVES】の購入を希望される方はコチラ