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リノベーションマンション事例「鉄骨造の2つのロフトで生み出す家族4人のプライベートスペース」

雑誌「LiVES」に掲載されたマンションのリノベーション事例から、今回は東京都中央区の村上さんご家族の事例をご紹介します。マンションの一室に2つの建築物をつくり、「父と息子」「母と娘」に分かれて、専用のワークスペースや快適な家事動線を確保。(text_ Yasuko Murata photograph_ Osamu Kurihara)

ロフトを設けるリノベーションで家族のスペースを生み出す

75㎡強のマンションの一室に、2つのロフト付きの建築物(HOUSE M&L)をつくり、家族4人の専用スペースを生み出した村上さんご家族。コロナ禍前からご夫婦ともにリモートワークが多く、以前はリビングで仕事をしていたという。13歳の長女、8歳の長男も自分の居場所が必要になってきたタイミングで、10数年前に購入した住宅をリノベーションすることにした。

南に面したバルコニー側の窓辺には造作ソファー。陽だまりに包まれる場所。

個室を作らずオープンなワークスペースをリノベーションで実現

「子どもたちの進学により持ち物が大幅に増えました。成長に合わせて専用の収納をつくり、自分たちで管理して自律的に生活できるステップにもできればとリノベーションをすることに。リモートワークでWEB会議も多いので、夫婦各々のワークスペースも確保したいと思いました」

そう話す村上さんご夫妻の希望をもとに、リノベーションのプランを提案したのは、Soiの大和田栄一郎さんと井上湖奈美さんだ。

「建築物は鉄骨造のロフトと収納で構成。収納はキャスター付きで可動式なので、不要になれば撤去して広く使うこともできます。閉じきらずに動線にもなるワークスペースと連続させることで、気持ちよく風や視線が抜けるのもポイント。個室をつくらず、家具的な造作物で切り分けることで、シーンに応じて伸縮可能な空間として使うことができると考えました」(大和田さん・井上さん)

ロフトや天井の収まりはRを活かし、やわらかな印象に。
ロフトで勉強するときは、隙間から脚を出して腰掛ける。ドアを閉めれば奥のワークスペースが個室的に。

子どもたちの成長や時代背景に柔軟にフィットした間取り

さらにユニークなのは、村上さんご家族の空間の使い方だ。玄関側の「HOUSE L」はご主人と息子さん、リビング側の「HOUSE M」は奥さまと娘さんと、男女に分かれて各々のプライベートな空間を確保している。「M」と「L」はお子さんたちのイニシャルから名づけた。

大容量の本棚も完備した「父と息子」の空間(HOUSE L)

ご主人のワークスペースにはスタンディングデスクを採用。黒板塗料で塗装したRの柱が2方向の動線を導く。息子さんは階段をチェア代わりにするなど、自由な発想でロフトを使いなしている。

肩を並べて仕事や勉強。「母と娘」の空間(HOUSE M)

壁につくり付けた横長のデスクで並んでデスクワークすることも多い。バルコニーと洗面室をつなぐ動線にもなっている。収納を撤去すれば(写真下)、開放的で広々とした空間としても使える。

また、洗濯機のある洗面室から「HOUSE M」のワークスペースを抜け、バルコニーへとアクセスできる間取りは、シンプルで移動しやすい家事動線も叶えている。

「リモートワークでも書斎にこもりきりではなく、合間に家事をしたり子どもたちと話したり、仕事と家庭が程よく融合しています。家族が気配を感じ合いながら、程よい距離感で過ごせていますね」(奥さま)

キッチンから「HOUSE L」を横目に洗面室へと続く動線も便利。ロフトには気配を伝える小窓もある。

家族が一つの空間で密に仲良く暮らすスタイルから、お互いを尊重しながら仕事、勉強、趣味などそれぞれの時間を大切にするフェーズへ。子どもたちの成長や時代背景に柔軟にフィットした、村上さんご家族の間取りの工夫を参考にしたい。

「HOUSE L」のロフトでくつろぐ息子さん。ロフトの部材を利用してつくり付けた棚に、ブロックの制作物を飾るなど、自分の領域として空間をアレンジして楽しんでいる。
「HOUSE M」のロフトは娘さんの専用スペース。壁が立ち上がり、プライバシーも確保されている。こもり感があるので、読書や勉強も集中して取り組める。

建物データ

〈専有面積〉75.06㎡〈バルコニー面積〉4.42㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1999年〈リノベーション竣工〉2019年〈設計期間〉11ヶ月〈工事期間〉3ヶ月〈設計〉Soi〈施工〉シグマテック、躯体整形(解体)

※この記事はLiVES Vol.115に掲載されたものを転載しています。
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