
リノベーションマンション事例「多様なテイストをミックスダウン。インテリア演出のプロの家づくり」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、ビジュアルマーチャンダイザ―として活躍する山川直子さんの事例をご紹介します。 トルコや北アフリカの雑貨やインテリア、足場板、塗装した壁など、お気に入りのイメージを集めて、プロの調整力で世界観を仕上げる。(ext_ Yasuko Murata photograph_ Osamu Kurihara)
山川直子さんは、インテリアのコーディネートや雑貨のディスプレイ、販売戦略などを手掛けるビジュアルマーチャンダイザー。ご主人との2人暮らしで、ご実家近くの所沢市内に築29年のマンションを購入し、リノベーションした。

「トルコや北アフリカの建築や街の雰囲気が好きで、インテリアやファブリックに取り入れました。リビングに造作した低めのベンチも中近東の窓辺のイメージ。ベットマットを特注して、友人が泊まれるようにしました。床にもベンチもに座れ、大勢の友人が集えます」(山川さん)

もとの間取りは4LDKで、水まわりは位置を変えずに設備と内装を一新、キッチンは既存を利用、広々したリビングダイニング、インナーテラス、寝室、山川さんのアトリエ、納戸という間取りに変更した。玄関土間の横には造作したスチールサッシの窓があり、壁をパープルに塗装したアトリエが覗く。リビングダイニングの壁は緑がかったベージュの塗装と、幅や厚みが異なる足場板で仕上げられている。土間のインナーテラスの横は、ルーバードアで仕切った小上がり状の寝室。洗面室の壁はイエローで塗装、トイレは蜂柄の壁紙を張って雰囲気を変えている。

アトリエを仕切る壁と窓が、屋外的な雰囲気を醸す広い玄関。
正面のベージュの壁の奥は洗面室。

パープルの壁にカラフルな雑貨が映えるアトリエ。
古材で作ったドアの把手は鐵の鍋敷きを活用。

数年前にリフォームされていた既存のシステムキッチンを利用。
壁には深緑のタイルを張った。

「各スペースについてスケッチを描いて、ディテールまで詳細に希望を伝えました。でも全体のバランスや具体的な色などは、プロの意見を聞きながら、皆がいいと思う方向で決めていきました」(山川さん)


トイレの壁の蜂柄の壁紙はFARROW&BALL製。
設計を手がけたのは、山川さんの仕事仲間でもあるタトデザインの大山啓さん。スペースごとに塗り分けた壁の塗装は、スクエアミーターに色づくりから依頼した。
「建築的な問題点や解決策を提示し、空間のつながりと全体のバランスを微調整していきましたが、山川さんの持つ具体的なイメージからぶれないように、細やかに打ち合わせを重ねていきました」(大山さん)
多彩な色、素材、テイストが盛り込まれているが、不思議と山川さんの好きな世界観が伝わってくる。こうした空間をつくるコツはどこにあるのだろうか。山川さんに聞いた。
「人それぞれ積み重ねてきた歴史があって好きな空間は違うから、好みを追求すれば、その人らしい空間ができると思う。服だって何度も失敗して自分に似合うものが分かる。家づくりもインテリアも同じです」

コンクリートブロックの壁につくり付けたワークデスク。
天板はWOODPROの「ASHIBA」。

寝室の手前に設けた土間床のインナーテラス。奥の壁はネイビーに塗装。



建物データ
〈所在地〉埼玉県所沢市〈居住者構成〉夫婦〈建物規模〉8階建て(6階部分)〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1983年(築29年)〈専有面積〉88.57㎡〈設計〉大山啓/TATODESIGN〈施工〉コラム〈設計期間〉3ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2011年

■山川直子さんのホームページhttp://www.naokoyamakawa.com/
※この記事はLiVES Vol.65に掲載されたものを転載しています。
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