リノベーションマンション事例「できる限りＤＩＹ。プロセスを楽しみ、経験値もアップする」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都新宿区の篠山さんご夫妻の事例をご紹介します。 38㎡の中古マンションをワンルームのシンプルな空間に。塗装、棚の設置をはじめ、キッチンまで試行錯誤して自力でアレンジ。
（text_ Yasuko Murata photograph_ Osamu Kurihara）
配線や配管の工事以外は、すべて自分たちでつくるつもりで、中古マンションを探していたという篠山さんご夫妻。
「自分たちでやってみたいという気持ちが強かった。別世界に美しくつくり変えるのではなく、解体して上塗りするといった気軽なイメージ。狙いすぎずシンプルにつくっていきたかったんです」（ご主人・範明さん）
そんな思いを前向きに受け止めてくれたインテリックス住宅販売に、リノベーションを依頼。「できる限りDIY」という希望をサポートするかたちで設計が進められた。 ともに仕事が忙しく、飲み歩くのも好きだという篠山さんご夫妻は、駅や繁華街に近く、超都心にある築43年の中古マンションを選択。
「お店で飲んだ後に徒歩で帰れる場所というのが気に入りました。賃貸に出しやすいこともポイント。まずは1軒目の家として数年間住めればいいと思っています」（範明さん）
玄関側からリビング方向を見る。床はオークの無垢材。洋服は重厚感のある和の重ね箪笥、ハンガーポールなどを利用して収納。
38㎡の細長い空間をワンルームとして使うことを決め、ライフラインを止めた後、解体からスタート。天井をはがして押入れや壁を撤去し、自分たちでできるところまでやり遂げ、浴室や洗面など解体が難しいところはプロに引き継いだ。下地部分の大工、設備・電気・水まわりの工事は専門職人が担当。床を張るときの手伝いなど、可能な限り施工にも参加した。そこまで完成した状態で入居し、住みながら壁・天井の珪藻土はすべて自分たちで塗装。
洗面室から続くトイレのドア。日本の古い建具を使っている。
棚はほかの壁と同様に、可動式の棚柱を設置し、棚板には足場板を使っている。
さらに、既存のキッチンを陽当たりの良い窓側に移動することに。シンク下の収納部を撤去し、業務用エレクターを脚にするなど、試行錯誤してイメージに近いキッチンをつくり上げた。
既存のシステムキッチンのワークトップや設備を流用。
「感覚的にやってみて、上手くいかないときはやり方を調べるという進め方です。失敗しても、またやり直せばいいという気持ちで、どんどん進めていきました」（奥様・可南子さん）
収納は、空いている壁に可動式の棚柱と足場板を組み合わせ、すべて住みながらDIYで設置した。クローゼットも棚柱にポールを設置し、オープンな状態で使っている。柔軟にレイアウトが変更できるため、住まい方を限定せず、賃貸に出すときにもメリットとなる。 完成させるだけではなく、その過程もリノベーションの醍醐味。篠山さんご夫妻がDIYで得た経験値は、2軒目の家づくりへの確かな布石となる貴重な財産でもある。
リビングから続く一角にベッドスペースも。壁のガラスブロックは、バスルームの採光のために設けている。
可変性を優先するため、造作家具や収納はつくらず、入居後、必要な場所に必要な分だけ、壁に可動棚を設置した。
建物データ
〈物件名〉うなぎのおうち〈所在地〉東京都新宿区〈居住者構成〉夫婦〈建物規模〉地上10階建て（6階部分）〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1970年〈専有面積〉38.00㎡〈設計・施工〉インテリックス住宅販売〈設計期間〉2ヶ月〈工事期間〉3ヶ月〈竣工〉2012年
※この記事はLiVES Vol.73に掲載されたものを転載しています。
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