長期優良住宅とは?住宅ローン控除や売却時にどのようなメリットがあるか解説!

そこで本記事では、長期優良住宅とはどのようなものか解説します。さらに、長期優良住宅にすると住宅ローン控除などでどのような優遇があるのかも解説していきます。
記事の目次
長期優良住宅とは?

「長期優良住宅」とは、住宅の耐久性や省エネルギー性などの性能が一定の基準を満たし、長期間にわたって高い品質を維持できると認定された住宅のことを指します。これまで日本の住宅業界では、家の寿命は30年ともいわれていました。機能性が低いわけではありませんが、作っては壊す「スクラップ&ビルド型」といわれるような産業構造をしていたのも要因です。
しかし、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型へ転換する社会の流れを受け、住宅業界でも変化がありました。そこでできたのが長期優良住宅を普及させる制度で、住宅の品質向上や耐久性の確保、省エネルギー化の促進をねらいとしています。
長期優良住宅の認定基準は以下のとおりです。
- 1. 住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
- 2. 住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
- 3. 地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
- 4. 維持保全計画が適切なものであること。
- 5. 自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること。
引用:国土交通省「長期優良住宅のページ」
長期優良住宅と認められるためには、長期間にわたって安定した構造、建物の耐久性を有する必要があります。また、地震に対する強度や耐久性、省エネルギー基準のクリア、断熱性能やエネルギー効率向上のための工夫も必要となります。
長期優良住宅の認定を受けると、住宅の所有者は信頼性の高い住環境を手に入れることができ、各種の優遇措置を受けられます。一定水準以上の品質を重視される住宅市場で評価される場合もあり、売却もしやすいでしょう。
長期優良住宅に認定されるまでにはいくつかのステップがあります。まずは前述の認定基準をクリアし、建物の設計図や関係書類を検査機関へ提出します。承認が下りたら、検査機関から適合証明書が発行されるので、役所へ提出すると認定証が発行されます。
長期優良住宅に認定された時の住宅ローン控除への影響は?

長期優良住宅の認定を受けると、いくつかの面で優遇されます。そのうちの一つが、住宅ローン控除の対象となる借入限度額の拡大です。住宅ローン控除とは、個人が住宅購入のために借りたローンの利息額を所得税から差し引く制度です。住宅購入を促進し、住宅所有を支援するための税制優遇措置の一つです。対象となるのは、住宅ローンを借り入れて住宅の新築や取得または増改築などをした場合です。控除される金額は年末のローン残高の0.7%で、所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除されます。
住宅ローン控除における住宅の機能性と借入限度額
現在の住宅ローン控除は、長期優良住宅をはじめ住宅の機能によって控除の対象になる借入限度額が異なっています。環境に優しい高性能な住宅であるほど、最大控除額が高くなります。
新築/既存 | 住宅の環境性能 | 借入限度額 | 控 除 期 間 |
|
2023年・ 2024年入居 |
2025年・ 2026年入居 |
|||
新築住宅 買取再販 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | ||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | ||
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 | ||
既存住宅 |
長期優良住宅・低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 | 10年間 | |
その他の住宅 | 2,000万円 |
長期優良住宅の場合、各年の控除限度額は35万円で、13年間で最大455万円の住宅ローン控除を受けられます。既存住宅を長期優良住宅に改修した場合、各年の控除限度額は21万円で、10年間で最大210万円の住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン控除を受ける条件
住宅ローン控除を受けられるのは、該当の物件が以下の条件を満たす時です。
- 1. 床面積が50平米以上ある(※)
- 2. 自らが居住するための住宅である
- 3. 合計所得金額が2,000万円以下である(※)
- 4. 住宅ローンの借入期間が10年以上ある
- 5. 引き渡しまたは工事完了から6カ月以内に入居している
- 6. 昭和57年以降に建築または現行の耐震基準に適合している
※2023年(令和5年)末までに建築確認を受けた新築住宅を取得する場合、合計所得金額が1,000万円以下に限り床面積要件が40平米以上であることが条件となります。
なお、長期優良住宅に認定された家が住宅ローン控除を受けるためには、長期優良住宅の建築計画などの書類を取得していることも条件となります。この書類は、確定申告の時も必要となるため、大切に保管しておきましょう。

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長期優良住宅に認定されるその他のメリット

長期優良住宅に認定されると、住宅ローン控除のほかにどのようなメリットがあるのでしょうか。
不動産取得税などの税が安くなる
長期優良住宅で優遇されるのは、不動産取得税と固定資産税、免許登録税です。
不動産取得税
不動産取得税とは、住宅などの不動産を取得した場合にかかる税金を指し、以下の計算式で算出できます。
- 一般住宅の不動産取得税=
(固定資産税評価額-1,200万円)×3% - 長期優良住宅の不動産取得税=
(固定資産税評価額-1,300万円)×3%
長期優良住宅の不動産取得税では、控除額が1,300万円に増額されます。例えば、建物の評価額が2,000万円の物件を例にして計算すると
- 一般住宅の不動産取得税=
(2,000万円-1,200万円)×3%=24万円 - 長期優良住宅の不動産取得税=
(2,000万円-1,300万円)×3%=21万円
金額自体の差は数万円ですが、控除額が大きいほうが、支払うべき税金が安くなります。なお、これは2024年(令和6年)3月31日までに新築された住宅が対象となるため、注意しておきましょう。
固定資産税
固定資産税は、建物の床面積が50平米以上、280平米以下の場合2分の1に減税されます。長期優良住宅は、一般住宅よりも長い期間、固定資産税が減税されます。固定資産税の減税期間は以下のとおりです。
一般住宅 | 長期優良住宅 | |
一戸建て | 3年間 | 5年間 |
マンション | 5年間 | 7年間 |
なお、こちらも2024年(令和6年)3月31日までに新築された住宅が対象となります。
登録免許税
登録免許税は、不動産の所有権を登録するのにかかる税金を指します。
税率 | ||
登記の種類 | 一般住宅 | 長期優良住宅 |
保存登記 | 0.15% | 0.1% |
移転登記 | 0.3% |
一戸建て 0.2% マンション 0.1% |
保存登記とは、所有権の登記のない不動産に対して最初におこなう登記を指します。注文住宅の新築や、新築の建売住宅・新築マンションを購入した際におこないます。一方移転登記とは、すでに所有権の登録がされている不動産に対し、権利が売主から買主に移ったのを明確にする際におこないます。
長期優良住宅の免許登録税率は、保存登記が0.1%、移転登記が一戸建ての場合は0.2%、マンションの場合は0.1%です。
例えば、評価額が2,000万円の一戸建てを例にして計算してみましょう。
長期優良住宅の登録免許税率
- 保存登記の登録免許税=2,000万円×0.1%=2万円
- 移転登録の登録免許税=2,000万円×0.2%=4万円
金額自体の差は数万円ですが、支払うべき税金が安くなることはメリットといえます。
フラット35の金利優遇
長期固定金利の住宅ローン「フラット35」を利用する場合、長期優良住宅に認定されれば当初10年間金利を引き下げることができる「フラット35s」に申し込めます。フラット35sは、通常のフラット35に比べて金利が約0.25パーセント下がる商品です。
例えば、通常のフラット35の金利が1.5%の場合、フラット35sを利用すれば10年間は1.25%の金利で利用することができます。
参照:住宅金融支援機構「【フラット】35S」
売却時に物件の価値があがる
長期優良住宅は、さまざまな優遇が受けられる素晴らしい制度です。購入する時だけでなく、売却する時にもメリットがあります。
長期優良住宅に認定されていることで、建物の評価額が一般住宅よりも高くなり、質の高い建物と評価されます。
質が高い建物のため、築年数が経っても高く売れる可能性があります。
土地の相場にも左右されますが、将来売却する予定がある場合は資産性の高い住宅として魅力的な売却価格が見込めるでしょう。
ただし、建物には耐用年数というものがあり、耐用年数を過ぎた建物は売却時の評価が下がってしまいます。詳しいことは売却に詳しい不動産会社に尋ねてみてください。
長期優良住宅にデメリットはある?

長期優良住宅に認定されると、住宅の資産価値があがったり、耐震や防災の面で大きなメリットがあります。また、住宅ローン控除や各種税金の優遇があったりと経済面でのメリットも多くあります。そんな長期優良住宅ですが、デメリットはあるのでしょうか。この章では、長期優良住宅のデメリットを3つ紹介します。
一般の住宅よりも建設費が高い場合がある
長期優良住宅に認定されるには、安全性や耐久性の高い材料を使用する必要があります。耐震性や災害に強い家を担保するため、性能の高い材料を使用するとなればその分お金がかかります。特別なものや高品質な材料と、技術を用いて建築するとなると、一般の住宅に比べて建築費が高くなりがちです。
長期優良住宅の認定を受けるには手数料が必要になる
長期優良住宅は施工して終わりではなく、機能性を認めてもらい各種優遇を受けるには証明書が必要になります。認定証の発行には、所管の行政庁へ届けを出しますが、その際には手数料がかかるため、注意しましょう。
一般の住宅よりも維持費がかかる
一般住宅でも維持費はかかりますが、保全について細かに規定があるわけではなく、家主の裁量に任されています。長期優良住宅の場合は、維持保全計画に基づいた定期点検を実施しなくてはなりません。10年以内に定期点検をおこない、維持保全に努める必要があります。もし、維持保存を怠ると、長期優良住宅認定を取り消されたり、優遇が受けられなかったり、優遇を受けていた期間の税金の返還を求められる可能性もあります。施工して終わりではなく、維持保全もしていかなければならないため、一般の住宅よりも維持費が高くなりがちです。
長期優良住宅についてのQ&A
Q:長期優良住宅とはどのような住宅?
A:長期優良住宅とは、住宅の耐久性や省エネルギー性などの性能が一定の基準を満たし、長期間にわたって高い品質を維持できると認定された住宅を指します。この制度は、住宅の品質向上や耐久性の確保、省エネルギー化の促進を図るために導入されました。長期優良住宅の認定基準は、住宅の構造や住宅の面積に加え、自然災害でも被害が少なく済むような措置がされているか、などがあります。
Q:長期優良住宅認定されたら住宅ローン控除への影響はある?
A:長期優良住宅の認定を受けると、いくつかの面で優遇されます。そのうちの一つが、住宅ローン控除の対象となる借入限度額の拡大です。住宅ローン控除とは、個人が住宅購入のために借りたローンの利息額を所得税から差し引く制度です。控除される金額は年末のローン残高の0.7%で、所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除されます。長期優良住宅だと、2022年・2023年(令和4・5年)に入居した場合の借入限度額は5,000万円になるので、13年間で最大455万円の住宅ローン控除を受けられます。
Q:長期優良住宅になるメリットとは?
A:長期優良住宅になるメリットは、住宅ローン控除の優遇のみでなく、不動産取得税と固定資産税、免許登録税も安くなります。また、フラット35の金利も優遇されます。さらに長期優良住宅になると、住宅の機能性があがるため、売却する時にもメリットになります。 質の高い建物とお墨付きをもらえている長期優良住宅に認定されていると、建物の評価額が一般住宅よりも高くなります。また、築年数が経っても高く売れる可能性があります。土地の相場にもよりますが、売却予定があるなら長期優良住宅は有利でしょう。
Q:長期優良住宅のデメリットとは?
A:長期優良住宅のデメリットは、一般の住宅よりも建設費が高くなる傾向にあることです。機能性を担保するために、性能の高い材料を使用するためです。また、認定を受けるには手数料もかかります。さらに、長期優良住宅は維持保全が規定されているので、一般の住宅よりも維持費がかかります。メンテナンスを怠ると、長期優良住宅の認定が取り消されてしまったり、これまで優遇されていた税金の返還が必要になるケースもあるので注意しましょう。
まとめ
本記事では、長期優良住宅とはどのようなものか、住宅ローン控除でどのような優遇があるのかを解説しました。さらに、長期優良住宅になると売却時にどのようなメリットがあるのかもあわせて紹介しました。耐震や防災機能が優れた長期優良住宅は、長期間にわたり安心・安全に住み続けられます。さらに、資産としての価値も高くなり、各種税金の優遇が受けられ、売却する際にも高く売れる可能性があります。ただし、その分、施工や認定証の発行、維持保全にはお金がかかることには理解が必要です。メリットとデメリットをよく理解したうえで、検討しましょう。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ