住宅ローン控除の確定申告いつまでにおこなうのが正解?ポイントのまとめ

記事の目次
そもそも住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除は、個人が住宅を購入または建設するために借りた住宅ローンの利息や返済額の一部を所得税や住民税から控除する制度です。控除を受けると、個人の所得税や住民税負担が軽減され、住宅購入や住宅建設の負担を軽減できます。正式名称は「住宅借入金等特別控除」といい、個人が自己居住用の住宅を取得するための資金調達を支援し、住宅購入や住宅建設の負担軽減を目的としています。
住宅ローン控除は、住宅の購入、建築のみでなく、リフォームやリノベーション費用を住宅ローンでまかなった場合にも適用されます。控除額は、住宅ローンの年末借入残高に対して0.7%分が上限です。
住宅ローン控除の金額
控除される金額は、住宅ローンの年末借入残高に対して0.7%分を上限に所得税から、余分がある際には住民税から減税されます。住民税から減税できる金額は、所得税の5%、あるいは9万7,500円のいずれかです。
例えば、住宅ローン残高が2,500万円、所得税が年間で10万円なら、減税額は17万5,000円(内訳:所得税から10万円、住民税から7万5,000円)になります。
住宅ローン控除の条件
住宅ローン控除が適用されるにはいくつかの条件をクリアする必要があります。住宅ローン控除の代表的な条件を見ていきましょう。
10年以上の返済期間があること
住宅ローン控除の適用を受けるためには、返済期間が10年以上でなければいけません。
しかし、適用を受けている間でも、繰り上げ返済などで、当初の契約の返済期間よりも早めに完済する可能性もあります。もし、住宅ローンの返済期間が10年未満になったら、適用は受けられなくなります。
用途が居住用で自らも住んでいること
住宅ローン控除を受けるためには、自分自身が住んでいることが不可欠です。住宅ローンで購入した家を他人に貸したり、投資用に使用したり、土地を所有しているだけでは控除の対象外です。
ただし、転勤や仕事の都合で一時的に本人が住んでいなくても、家族が住宅に居住している場合は控除の対象となります。
50平米以上の床面積があること
住宅ローン控除を受けるためには、床面積が50平米以上必要です。
マンションの場合は専有部分の床面積で判断され、共用部分は考慮されません。床面積の条件は、住宅のサイズによる要件であり、控除の対象が一定の規模以上の住宅を対象とするための条件です。
住居部分が面積の2分の1以上あること
住宅ローン控除を受けるためには、住宅の居住割合が重要な条件となります。単独の住宅であればもちろんですが、仕事場などとの併用住宅でも自己居住として利用する割合が2分の1以上でなければなりません。居住割合の条件は、住宅を常時自己居住として利用するか否かを判断する基準となります。
所得の合計が2,000万円以下
住宅ローン控除を受けるためには、合計所得金額2,000万円以下が条件です。自営業などで毎年、所得が大きく変動する人でも、所得が2,000万円以下の年は控除が適用されます。合計所得金額には給与所得、不動産所得、譲渡所得、雑所得などが含まれます。ただし、特定口座源泉徴収あり口座での株式配当や売買益は算入されないため、注意が必要です。
住宅ローン控除の制度は年によって変更される
2022年に住宅ローン控除の制度は一部変更になりました。特徴的なのは、環境に配慮した住宅を優遇する制度になったことです。これまでは、一律ローン残高4,000万円までを対象にしていましたが、住宅の機能性によって細分化されるようになりました。優良住宅や低酸素住宅は4,000万円、一般住宅では控除上限が3,000万円になっています。2024年以降では、一般住宅はローン控除が適用外となる予定です。
控除率の割合も、制度改正前には1%だったものが、改正後には0.7%になっています。これまで、低金利の影響から、住宅ローンの金利よりも住宅ローン控除による節税額のほうが多くなる場合がありました。これに対処するため控除率が引き下げられたのです。
さらに、住民税から引ける分も引き下げになり、課税総所得金額等の5%あるいは9万7,500円が上限になります。
このように、住宅ローン控除の制度はこれからの社会の変化やトレンドによって、今後も変更となる可能性があります。今後の変化にも十分注意して、今ある制度は有効に活用しましょう。
住宅ローン控除の確定申告はいつまでにおこなう?

住宅ローン控除の申請をしたいと思った時、申請はいつまでにおこなえばよいのでしょうか?住宅ローン控除の申請方法は、初年度と2年目以降で異なります。この章では、初年度と2年目以降の申請を、会社員と自営業者でわけて解説します。
初年度の住宅ローン控除申請について
- 申請するタイミング:入居した翌年
- 申請方法:確定申告
- 申請時期:毎年2月15日~3月15日ごろ
入居後初めての住宅ローン控除の申請は、入居した翌年に申請します。自営業者はもちろん、普段は会社で税金の手続きをしてもらっている会社員の人も、初年度の申請は自分で確定申告をする必要があります。確定申告は、毎年2月15日~3月15日(年によって若干異なる)です。
2年目以降の住宅ローン控除申請について
2年目以降の申請は、自営業者と会社員で方法が異なります。
自営業者や確定申告が必要な会社員
- 申請時期:毎年2月15日~3月15日ごろ
- 申請方法:確定申告
給与所得や退職金以外の所得が年20万円以上ある人などは、会社員でも確定申告が必要です。会社員でも確定申告が必要な人は、2年目以降の住宅ローン控除申請も自ら確定申告をします。
会社員
給与所得のみで、確定申告をおこなう必要がない会社員の人は、2年目以降の申請は会社で手続きをしてもらえます。毎年、年末調整の案内があるので、資料提出で住宅ローン控除の申請ができます。多くの会社では年末調整の事務が11月ごろから12月にかけておこなわれます。社内の締め切りにあわせて忘れず手続きしましょう。
住宅ローン控除の確定申告を忘れるとどうなる?

住宅ローン控除を受けるには、自ら申請をしなければいけません。会社員の人は、会社から案内があって会社に書類を提出し、自営業の人は確定申告をする必要があります。
住宅ローンを利用しているからといって自動的に控除が受けられるわけではないので、もし申請を忘れてしまったら控除を受けることはできません。ただ、いそがしかったり、ついうっかりして忘れてしまうこともあるでしょう。では、忘れてしまった時どうすればよいのか、対処法を紹介します。
初年度の住宅ローン控除申請を忘れてしまった場合
- わかった時点ですぐに確定申告
- 5年以内なら還付対応
- 住民税の控除は受けられない
住宅ローン控除の初年度の確定申告を忘れてしまった場合でも、5年以内に申告をすれば住宅ローン控除を受けることができます。もし確定申告による申請を忘れてしまった場合は、速やかに申請手続きをしましょう。
ただし、住民税からの控除に関しては、確定申告をする以前の期間は還付を受けることはできません。通常、住宅ローン控除では、所得税から控除しきれない額を控除限度額の範囲内で住民税から控除しますが、過去の年数をさかのぼって申請した時は適用外です。
2年目以降の住宅ローン控除申請を忘れてしまった場合
初年度の確定申告ができていることが前提で、2年目以降の申請を忘れてしまった場合にも対処法があります。
- 勤務先に年末調整を依頼
- 自身で確定申告をおこなう
わかった時点で、会社に再度年末調整を依頼して対処できます。年末調整は通常、年末にかけて書類を提出し事務処理をおこないますが、会社によっては税務署に書類を提出する対応をとってくれることも。ただし、事務が手間になるため、年末調整以外では処理に応じない場合もあります。まずは勤務先に確認が必要です。
会社で手続きをとれない場合には、自ら税務署へ出向いて確定申告しましょう。
住宅ローン控除が受けられるのはいつまで?

住宅ローン控除の期間は、以下のようなルールがあります。
- 基本的な控除期間は10年
- 特例措置が適用された場合は13年
特例措置とは、マイホームの契約を結んだ日や入居した日などが所定の要件を満たした場合に適用される措置です。
改正後の住宅ローン控除では、住宅の種類によって控除期間が異なります。以下は、入居年と住宅性能ごとの、住宅ローン控除対象期間です。
住宅種類 | 住宅性能 | 入居年 | |||
---|---|---|---|---|---|
2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | ||
新築住宅 買取再販住宅 |
・長期優良住宅 ・低炭素住宅 ・ZEH水準省エネ住宅
・省エネ基準適合住宅
|
13年間 | |||
その他の住宅 | 13年間 | 適用なし (ただし2023年に建築確認が取れた物件は10年間) |
|||
既存住宅 既存住宅の リフォーム |
・長期優良住宅 ・低炭素住宅 ・ZEH水準省エネ住宅
・省エネ基準適合住宅
|
一律10年間 | |||
その他の住宅 |
住宅ローン控除の控除期間は、住宅の種類や性能によって異なります。特例措置が適用された場合は13年になりますが、それ以外は10年です。また2024年以降の入居で省エネ基準を満たさない住宅は、住宅ローン控除の対象外になります。
入居月によって住宅ローン控除額に影響がある?

住宅ローン控除の適用要件は以下のようになります。
- 新築または住宅の取得日から6カ月以内に実際に居住していること。
- 適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて当該の住宅に居住していること。
住宅ローン控除は、毎年12月31日時点での住宅ローン残高をもとに控除額が計算されます。
では、購入した住宅での入居が翌年1月になった場合と、年内の12月に入居した場合で、ローン残高はどちらが多いか考えてみましょう。仮に2023年の12月に入居したら住宅ローン申請は2024年の2月、2024年の1月に入居すると申請は2025年の2月です。入居してから日が浅いほうが、住宅ローンの残債は多くなります。つまり、入居が翌年1月になるよりも、年内の12月に入居できるほうが、住宅ローンの控除額が高くなる可能性があります。
住宅ローン控除額は、年末の住宅ローン残高をもとに計算されるため、入居時期によって控除額が変動します。結果、年内の12月に入居するほうが、控除額が高くなる可能性があります。
記事のおさらい
Q:住宅ローン控除とは?
A:住宅ローン控除は、個人が住宅を購入または建設するために借りた住宅ローンの利息や返済額の一部を所得税や住民税から控除する制度です。控除を受けると、個人の所得税や住民税負担が軽減され、住宅購入や住宅建設の負担を軽減できます。
Q:住宅ローン控除の確定申告はいつまでにおこなえばいいですか?
A:初年度は、入居した翌年の2月15日~3月15日ごろに自分で確定申告しましょう。2年目以降は、会社員は会社の年末調整で、自営業者や確定申告が必要な会社員は初年度と同じく2月15日~3月15日ごろに自分で確定申告しましょう。
Q:住宅ローン控除の確定申告を忘れるとどうなりますか?
A:わかった時点で確定申告をすれば、5年間はさかのぼって還付を受けられます。ただし、住民税の控除がある場合でも住民税の控除は適用できないので注意が必要です。
Q:住宅ローン控除が受けられるのはいつまでですか?
A:原則10年間でしたが、条件をクリアしたものは13年間住宅ローン控除を受けることができます。
まとめ
住宅ローン控除を受けるにはまず、入居した翌年の2月15日~3月15日ごろに確定申告しましょう。2年目以降は、会社の年末調整や確定申告で申請をします。住宅ローン控除が受けられるのは原則10年間で、場合によっては13年間受けることができます。住宅ローン控除は申請を忘れてもさかのぼって申請できますが、住民税の控除が受けられなくなります。節税ができる貴重な方法なので、期限は守って制度を活用しましょう。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ