住宅ローン減税を利用するためには省エネ性能が必須になる?適用条件を解説!

記事の目次
住宅ローン減税とは

住宅ローンとは、戸建ての建築、マンションや建売住宅を購入するために、金融機関や住宅金融支援機構「フラット35」などから借りるお金のことを指します。新たに住宅を取得する時だけではなく、中古住宅の購入や、リフォームをおこなう際にも借りられます。
住宅ローンを利用する際に、合わせて知っておくとよいのが「住宅ローン減税」です。住宅ローン減税は、住宅ローン利用者の金利負担の軽減を目的とした制度です。例えば、2024年2月時点のフラット35の金利1.82%で5,000万円を借りると、以下の利息が発生します。
・5,000万円×0.0182÷12=約7万5,833円(月額)
2回目以降の返済でも、元金の残高に利息が発生するため、ローンを35年で組んだ場合(元利均等方式)、利息は約1,764万円となり総支払額は約6,764万円となります。
利息の金額だけでも数千万円を支払うことになります。しかし、住宅ローン減税を利用すれば、入居時から最長で13年間、年末時点での住宅ローン残高の0.7%を所得税や住民税から控除することが可能です。
住宅ローン減税を利用するための条件とは?

住宅ローン減税が適用されると、数百万円の恩恵を受けることができます。魅力的な住宅ローン減税ですが、実は誰にでも適用されるわけではありません。では、いったいどのような条件を満たせば適用されるのでしょうか。新築住宅や中古住宅の購入、リフォームでは適用条件が異なるため、それぞれの適用条件を解説します。
新築住宅への適用条件
新築住宅への主な適用条件は下記4点となり、いずれも満たす必要があります。
- 自らが居住していること
- 住宅ローンの返済期間が10年以上残っていること
- 登記簿上の床面積が50平方メートル以上、かつ控除を受ける人の合計所得金額が2,000万円以下であること
- 床面積の1/2以上は居住スペースであること
それぞれ詳しく解説します。
自らが居住していること
住宅の引き渡し、または工事完了から6カ月以内に自分自身が住む必要があります。そのため、投資用の物件や、土地のみを購入した場合には適用されないため注意が必要です。
住宅ローンの返済期間が10年以上残っていること
住宅ローン減税が適用されるのは、銀行などの金融機関が提供する住宅ローンやフラット35などに対してです。つまり、親や親族からの融資は対象になりません。そのため、住宅ローン減税を利用するのがよいのか、利息を支払う必要のない親や親族からの融資がよいのか、最適な選択肢を見極める必要があります。
登記簿上の床面積が50平方メートル以上、かつ控除を受ける人の合計所得金額が2,000万円以下であること
2023年末までに建築確認を受けた新築住宅の場合は、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅も対象となり、合計所得金額も1,000万円以下とされています。年収ではなく所得金額である点にも注意が必要です。
床面積の1/2以上は居住スペースであること
住宅ローン減税は、店舗などを併設した住宅にも適用できますが、床面積の1/2以上は居住スペースでなければなりません。
買取再販住宅への適用条件
買取再販住宅とは、宅地建物取引業者により、一定の増改築などがおこなわれ販売される住宅を指します。新築住宅の適用条件に加えて、必要とされる主な条件は下記となります。
- 取得した時点で、新築から10年経過した住宅であること
- リフォーム工事を実施し、2年以内に再販売すること
- 建物の価格に対して、リフォームの工事費用が20%以上であること
- 大規模な修繕や一定の省エネ改修工事など、対象の工事が実施され、工事費用も一定金額以上であること
買取再販住宅は、後述する中古住宅と同じく既存住宅に該当しますが、条件を満たせば新築住宅と同じように住宅ローン減税が適用されるため、メリットが大きくなります。
中古住宅への適用条件
中古住宅とは、買取再販住宅以外の既存住宅を指します。新築住宅の適用条件に加えて、下記いずれかの条件を満たしている必要があります。
- 1982年(昭和57年)1月1日以降に建築されたものであること
- 現行の耐震基準を満たしていること
耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書(耐震等級1以上)などを取得し、耐震基準を満たしていることを証明する必要があります。
リフォームへの適用条件
新築住宅の適用条件に加えて、下記条件を満たしている必要があります。
- 自身が所有し、自身が居住するための家屋に対してのリフォームであること
- 工事費用が100万円を超えていること
また、先述した条件に加えて、下記の工事などに該当している必要があります。
- 大規模な修繕または大規模な模様替え
- 一定のバリアフリー改修工事
- 一定の省エネ改修工事
- 一定の耐震改修工事
リフォームも、規模が大きくなるほど費用は高くなります。より快適な住まいづくりのために、リフォームを視野に入れている方は、住宅ローン減税を活用するとよいかもしれません。
2022年の税制改正での住宅ローン減税の4つの変更点

住宅ローン減税は、2021年12月31日期限で終了する予定でしたが、2022年の税制改正で、2025年12月31日までへと4年間延長されました。その他に、変更となった4点の概要を解説します。
控除率が0.7%に引き下げ
控除率はもともと1%でしたが0.7%まで引き下げられました。大きな要因は、各金融機関の住宅ローンの金利が1%を下回ることが増えたからです。いまでは大手銀行でも0.3%台(2024年2月時点)で住宅ローンが組めるようになっています。
つまり、住宅ローンの利息を払う金額よりも、住宅ローン減税によって控除を受けられる金額のほうが大きくなります。いわゆる「逆ザヤ」が多数発生したため、控除率が0.7%へと引き下げられました。
控除期間の延長
新築住宅を取得する場合には、控除期間が10年から13年へと延長されました。しかし、中古住宅の場合や、リフォームの場合には期間は10年のままとなっているため注意が必要です。また、後述しますが2024年以降に「その他の住宅」に入居する場合も、控除期間は10年となります。
所得制限の引き下げ
所得は3,000万円以下と制限されていましたが、2,000万円以下へと引き下げられました。1,000万円は大きな差額となります。所得が2,000万円を超える場合には、住宅ローン減税を受けることができないため注意が必要です。
住宅の性能によって借入限度額と控除期間が変わる
2021年度までは、一般的な住宅の借入限度額は4,000万円でしたが、住宅の性能別に借入限度額が4段階に分けられました。環境に配慮した住宅を購入するほど借入限度額は高くなり、また控除期間も長くなります。
環境性能による住宅の分類は下記となります。
- 長期優良住宅/低炭素住宅
- ZEH水準省エネ住宅
- 省エネ基準適合住宅
- 「その他の住宅」
ZEHや省エネは最近よく耳にしている方も多いのではないでしょうか。先述したとおり、2024年以降は住宅ローン減税を受けるために省エネ性能は必須となります。これからの生活に深く関連するキーワードとなるため、次章にて詳しく解説します。
環境性能別によるそれぞれの違いとは

先述したとおり、環境性能別に住宅は4種類に分類されます。それぞれの違いと、それにともなう借入限度額、控除率、控除期間、最大控除額の違いを解説します。まずは、環境性能による住宅分類の概要からです。
環境性能による住宅の違いとは
日本は地球温暖化対策の中期目標として、2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指しています。そして、目標達成に向けての対策・施策のひとつが住宅の省エネ性能の必須化です。具体的に、どのような基準を満たしていればよいのかを詳しく解説します。
長期優良住宅・低炭素住宅
長期優良住宅とは、長期にわたって良好に使用するために、劣化対策や耐震性などの措置が講じられた住宅を指します。低炭素住宅とは、省エネルギー基準を超える省エネルギー性能を備えるなど、一定の基準を満たした住宅を指します。
ZEH水準省エネ住宅
ZEH水準省エネ住宅とは、高断熱で極力エネルギーを必要としない(断熱)+高性能な設備でエネルギーを削減(省エネ)+再生可能なエネルギーを創り出す(創エネ)住宅のことです。これら3つの要素を組み合わせて、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロになることを目指しています。ZEHとはゼロ・エネルギー・ハウスを意味し、通称ゼッチといいます。
省エネ基準適合住宅
省エネ基準適合住宅とは、現行の省エネ基準である、断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上を満たす住宅のことを指します。
その他の住宅
その他の住宅とは、先述した住宅のいずれにも該当しない住宅を指します。
環境性能による借入限度額、控除率、控除期間、最大控除額の違い
2024年~2025年末までに入居した場合の、それぞれの違いを表にまとめると下記となります。
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 | 最大控除額 (期間合計) |
|
---|---|---|---|---|---|
新 築 住 宅 ・ 買 取 再 販 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 ※2024年は子育て・若者世帯5,000万円※2 |
0.7% | 13年 | 409.5万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 ※2024年は子育て・若者世帯4,500万円 |
318.5万円 | |||
省エネ基準適合住宅 | 3.000万円 ※2024年は子育て・若者世帯4,000万円 |
273万円 | |||
「その他住宅」 | 0円 (※1の場合2,000万円) |
0円 (※1の場合140万円) |
|||
既 存 住 宅 |
認定長期優良住宅・認定炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 | 10年 | 210万円 | |
「その他住宅」 | 2,000万円 | 140万円 |
※1 2023年末までに建築確認がおこなわれているか、2024年6月30日までに建築されたもの
※2 子育て世帯とは19歳未満の子どもを有する世帯、若者世帯とは夫婦のいずれかが40際未満の世帯のこと
住宅ローン減税の適用を受けるためには確定申告が必要

住宅ローン減税の適用を受けるためには、条件を満たすだけではなく、確定申告や年末調整が必要になります。会社員の方は、通常であれば所得税の確定は年末調整によっておこなうため、確定申告に慣れていない方が多いはずです。そのため、直前になって慌てないように、必要書類は余裕をもって用意しておきましょう。
確定申告に必要な書類
まず入居した翌年の間にしなければならないのは「確定申告」です。確定申告書に必要な書類を添付し、該当の期間中に納税地の税務署に提出する必要があります。確定申告の際に必要な書類を表にまとめたのが、下記となります。
書類 | 入手先 |
---|---|
確定申告書 | 国税庁のホームページ 税務署 |
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | |
本人確認書類(aまたはb)の写し ※本人確認書類は下記が該当 a マイナンバーカード
b マイナンバー通知カードまたはマイナンバーが記載されている住民票+運転免許証やパスポートなどの本人確認書類
|
市町村役場等 |
建物・土地の登記事項証明書 | 法務局 |
建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し | 不動産会社から入手 |
住宅ローンの年末残高等証明書 | 金融機関 |
(一定の基準を満たす中古住宅の場合) 耐震基準適合証明書等または住宅性能評価書の写し |
不動産会社から入手 |
(認定長期優良住宅・低炭素住宅・省エネ住宅の場合) 認定通知書の写しまたは性能証明書等 |
認定通知書の写し:都道府県や市区町村等 性能証明書等:建築士等 ※認定長期優良住宅・低炭素住宅の場合は両方の書類が必要 |
源泉徴収票 ※会社員の場合 |
勤務先 |
2024年1月1日以降に建築確認を受けて、新築に入居する場合には、追加で下記証明書の提出も必要になります。
建設住宅性能評価書 | 登録住宅性能評価機関 |
住宅省エネルギー性能証明書 | 登録住宅性能評価機関や建築士 対象住宅の設計・工事監理等を実施した建築士 |
年末調整に必要な書類
2年目以降は、会社員の方は会社でおこなう年末調整で、住宅ローン減税の手続きが可能になります。年末調整の時期に、税務署から届く書類と金融機関から届く必要書類を、勤務先に提出することで確定申告をする必要がなくなります。ただし、フリーランスや個人事業主の方などは2年目以降も引き続き、自分で確定申告をする必要があるため注意が必要です。
まとめ
現行の住宅ローン減税は、2025年12月31日が期限となっています。現時点では、2026年以降は何も公表されていません。住宅ローン減税は、1972年の税制改正で創設された「住宅取得控除制度」が始まりといわれています。
それから50年以上、時代に合わせて内容を変えながら続いている制度です。そのため、2026年以降に突如なくなるとは考えにくいです。しかし、2024年以降は省エネ基準に適合しない「その他の住宅」は、住宅ローン減税が適用されなくなりました。いかに、日本が環境に対する取り組みに力をいれているかがわかります。
このように、大小さまざま変化をともないながら、住宅ローン減税は変化していくことが予想できます。不動産は新築、中古などに関わらず大きな金額が動くものです。「いつか」と思っている方は、まずは不動産会社へ相談しながら、シミュレーションしてみるのもおすすめです。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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