リバースモーゲージとリースバックの違いは?メリット・デメリットも解説
本記事ではリバースモーゲージと、リースバックの違いについて詳しく解説します。それぞれのメリットやデメリットも解説するので、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
リバースモーゲージの特徴
リバースモーゲージとは、金融機関などに自宅や不動産を担保として提供し、担保の資産価値に合わせて設定された「融資上限額」まで融資を受けられる制度のことです。定期的もしくは金融機関が定めるタイミングで融資を受けられるのが特徴です。
物件の所有者が亡くなったあとに土地や建物を売却し、一括返済に充てるケースが多く見られます。自治体や金融機関が高齢者の方向けに提供しているサービスではありますが、審査が厳しいなどのデメリットもあります。
リースバックの特徴
リースバックは、自宅を売却したあともそのまま住み続けられるサービスのことです。自宅を売却すると利益が手元に入るとともに、その後は賃貸の形で家賃を支払いながら住み続けることになります。
通常であれば、自宅を売却したあとは引越しをして別の場所に移動する必要があります。しかし、リースバックでは自宅を明け渡す必要がなく、家賃を支払えばそのまま住み続けられるので、自宅から離れたくない方におすすめです。
リバースモーゲージとリースバックの違い
リバースモーゲージとリースバックには、大きく4つの違いがあります。
- 借りるもの
- 資金受け取りのタイミング
- 所有権の移転の有無
- 審査の厳しさ
それぞれの違いを詳しく解説します。
借りるもの
リバースモーゲージとリースバックのもっとも大きな違いは、借りるものの違いです。リバースモーゲージの場合は、自宅を担保にしてお金を借ります。一方、リースバックの場合は、自宅を売却したお金で家を借りている状態になります。どちらも自宅に住み続けたまま資金調達ができる点は同じですが、借りるものが違う点を理解しておきましょう。
資金受け取りのタイミング
リバースモーゲージとリースバックでは、資金を受け取る際のタイミングも異なります。リバースモーゲージの場合は、金融機関が定めるタイミングもしくは定期的に、毎月少しずつ融資として現金を受け取れます。
一方でリースバックの場合は、自宅を売却後すぐにまとまった資金が手に入るのが特徴です。売却して得た利益の用途も制限がないため、生活資金やローンの返済など、その時の状態に合わせて活用できます。
所有権の移転の有無
リバースモーゲージでは自宅や不動産を担保として融資を受ける仕組みです。そのため、所有権はそのまま自分が持ったままになります。ただし、所有者がなくなった場合はその時点で所有権が移転するため、注意してください。また、リバースモーゲージを利用する際は所有権が移転しないため、固定資産税や都市計画税などは納める必要があります。
一方でリースバックの場合は、自宅を売却するため、その時点で所有権が移転します。物件の所有者が変わるため、売却後は固定資産税や都市計画税などを支払う必要はありません。また、リースバックでは買い戻し期間を設定できます。まとまった資金を用意できれば、再度所有者に戻ることが可能です。
審査の厳しさ
審査が比較的厳しいのがリバースモーゲージです。審査が厳しいのは、高齢の方が不動産物件を担保にして借り入れることが理由のひとつとして考えられます。一般的な担保付き融資とは異なり、寿命や収入に左右される可能性が高いため、さまざまな基準が設けられているのでしょう。
リバースモーゲージでは厳しい条件が設けられており、収入や個人信用情報などをしっかり確認したうえで審査がおこなわれます。審査に1カ月以上かかるケースもよく見られます。
一方でリースバックの場合は、リバースモーゲージと比べると条件が緩いため、まとまった資金をすぐに得たい方に向いているでしょう。審査も比較的短時間で完了します。
リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージには3つのメリットがあります。
- 老後の資金対策ができる
- 返済負担が軽い
- 配偶者の住居確保ができる
それぞれ詳しく解説します。
老後の資金対策ができる
リバースモーゲージを利用することで、老後の資金対策ができます。リバースモーゲージでは高齢になったタイミングで借り入れができるため、年金に上乗せした形で資金が手に入ります。
持ち家を担保にするため信用が大きく、比較的まとまった金額の借り入れもしやすいのが特徴です。また、自分名義のまま自宅を残せるため、所有権を移転したくない方にも向いています。
返済負担が軽い
リバースモーゲージでは所有者がなくなったあと、もしくは契約期間終了後に持ち家を売却し、一括返済するのが基本的な仕組みです。利息のみの返済で済むため月々の負担も抑えられるでしょう。
また、毎月の支払い利息はリバースモーゲージを利用して受けた融資で返済しても問題はありません。老後の生活が厳しくなった場合でも、毎月受けられる融資で返済できるので安心です。
配偶者の住居確保ができる
リバースモーゲージでは所有者が生存している間や契約期間内であれば、所有権は移転しません。自宅を売却する方法でもないため、配偶者の住居を確保できます。
また、金融機関によっては所有者が亡くなったあとも、配偶者が契約を引き継げる制度を提供しているところもあります。自分が亡くなったあとも配偶者が安心して住める環境を整えられるのも、大きなメリットです。
リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージにはメリットがありますが、注意すべきポイントもあります。
- 融資限度額に達するリスクがある
- 金利や地価の変動リスクがある
- 利用条件が厳しい
- 遺族に住宅を残せない
- 相続人に負担がかかることがある
以下で詳しく見ていきましょう。
融資限度額に達するリスクがある
リバースモーゲージでは融資限度額が設定されます。自宅の資産価値に合わせて融資限度額が変わり、借入金額の条件を定めて契約するのが基本的です。
しかし、長生きすると融資限度額に達し、その後の老後資金を得られない可能性があります。融資が終わったあとの生活費をどうするかあらためて考えなければならないため、強い不安が残ることもあるでしょう。特に、自宅の価値がそこまで高くなく、融資限度額が低い場合は慎重に検討する必要があります。
金利や地価の変動リスクがある
リバースモーゲージでは変動金利が一般的なので、金利の変動リスクがあります。場合によっては毎月の返済額が高くなってしまうかもしれません。
それだけではなく、住宅価値や地価の変動リスクもあります。金融機関によっては物件価値が下がった際に融資限度額の見直しがおこなわれる場合もあるので、事前の確認が必要です。
利用条件が厳しい
上記でも簡単にお伝えしましたが、リースバックと比べるとリバースモーゲージの利用条件は厳しいです。年齢や収入、同居者などすべての条件を満たさなければならないため、場合によっては審査に落ちる可能性も十分に考えられます。利用のしにくさもデメリットのひとつです。
遺族に住宅を残せない
リバースモーゲージでは、所有者が亡くなったあとに自宅を売却して返済するのが基本的な仕組みです。そのため、リバースモーゲージを利用すると遺族に住宅を残せなくなります。ただし、金融機関によっては所有者が亡くなったあとも、配偶者が契約を引き継げるケースもありますので事前に調べておきましょう。
また、金融機関によっては、相続トラブルを避けるために、相続の可能性がある親族すべてに同意を得なければリバースモーゲージを利用できないと定めているところもあります。検討している場合は、一度親族で話し合っておくとよいでしょう。
相続人に負担がかかることがある
リバースモーゲージには、大きく分けて「リコース型」と「ノンリコース型」の2種類に分かれています。ノンリコース型であれば、相続人が残債の負担を負う必要はありません。
しかし、リコース型の場合は相続人に残債の返済責任が発生する可能性があるため、注意が必要です。物件を売却しても借入金を完済できない場合は、返済負担が相続人にかかるため相続トラブルになりかねません。
そのためにもリバースモーゲージを利用する場合は、親族とよく話し合って決める必要があります。
リースバックのメリット
リースバックでは、以下の3つのメリットが得られます。
- 売却しても自宅に住み続けられる
- 売却した自宅を買い戻せる可能性がある
- 売却利益を自由に使える
売却しても自宅に住み続けられる
リースバックでは、自宅を売却してもそのまま住み続けられるのが大きなメリットです。売却した利益が手元に入るうえに、家賃を支払えばそのまま自宅に住み続けられるので、マイホームから離れたくない方にも向いています。
通常であれば、自宅を売却すると移住しなければなりませんが、リースバックなら引越しの手間や時間、コストも削減できます。
売却した自宅を買い戻せる可能性がある
リースバックの大きなメリットとして挙げられるのが、売却した自宅を買い戻せる可能性があることです。基本的にリースバックでは自宅を売却することにはなりますが、新しいオーナーとの交渉次第では買い戻しの条件を設定できます。
期間や用意すべき資金を明確にし、契約書に記載することで、条件をクリアした際に自宅を買い戻すことも可能です。
売却利益を自由に使える
リースバックを利用して得た売却利益には、用途が制限されていません。老後資金や生活資金のために貯金しても、ローンの返済に充てても何の問題もありません。
リースバックのデメリット
リースバックにもデメリットがあります。
- 自分のものではなくなる
- 売却タイミングが難しい
- 住居費が高くなることがある
- 所有権を失うことでトラブルが発生することがある
それぞれのデメリットを詳しく見ていきましょう。
自分のものではなくなる
リースバックでは自宅を売却するため、所有権が移転し、自分のものではなくなります。所有権が移転するため、税金の支払い負担はなくなりますが、自分の資産でなくなるのは大きなデメリットといえるでしょう。
将来子どもに自宅を相続したい方は、慎重に検討する必要があります。
また、名義が変わるため、リフォームや建て替えなども自由におこなえません。買い戻しができた場合は、所有権は自分に戻るためリフォームや建て替えなどは自由におこなえるようになります。
売却タイミングが難しい
リースバックでは売却のタイミングが難しいのもデメリットのひとつです。リースバックで得られる資金額は、自宅の価値によって左右されます。
自宅の周辺環境や物件の相場によっては、金額が大きく変わる可能性があります。資産評価額が高く出ても高く売れるとは限らないため、売却のタイミングをしっかり見極めることが重要です。
住居費が高くなることがある
リースバックでは家賃を支払えばそのまま自宅に住み続けられるのがメリットですが、住居費が高くなるケースも多く見られます。契約を更新するたびに家賃が上がる可能性もあるため、注意が必要です。
家賃の値上げはしないとあらかじめ約束していても、口約束では意味がありません。不動産会社や新しいオーナーの都合によっては、家賃を引き上げられる可能性があるので注意しましょう。
所有権を失うことでトラブルが発生することがある
リースバックでは所有権を失うことだけがデメリットではありません。所有権を失うことで、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
例えば、物件を転売されたり、新しいオーナーから退去を求められたり、家賃を引き上げられたりすることです。もとは自分の持ち物でも、所有権が移転するとさまざまな決定権は新しいオーナーに移るため、理不尽な要求をされることもあるでしょう。
さまざまなトラブルを避けるためにも、契約の際はしっかり時間をかけて慎重におこなうことが大切です。
まとめ
本記事ではリバースモーゲージとリースバックの違いや、それぞれのメリット・デメリットを詳しくご紹介しました。
リバースモーゲージは老後の資金を調達したい方や、所有権を移転したくない方に向いています。一方、リースバックは一括でまとまった資金を得たい方や、自宅を手放したくない方に向いています。
それぞれ特徴が異なるため、利点や注意点を見極めたうえで、自分に合う方法を選びましょう。ただし、いずれの場合も一度家族で相談することが重要です。
物件を探す
執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ