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親子リレーローンを知ろう!二世代で住宅ローンを返済するメリットとペアローンとの違い

「そろそろ家を購入したい」そう思っていても、収入や年齢がネックになって購入に踏み切れない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
希望どおりのローンが組めない時、収入合算やペアローンなどを利用して親子や夫婦が協力して住宅を購入する方法があります。さまざま住宅購入の方法があるなかで、収入を合算させる「親子リレーローン」があるのをご存じですか。
今回は親子リレーローンの内容や利用するメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。

記事の目次

親子リレーローンとは?

親子リレーローンは親が主債務者、子どもが連帯債務者となり、親子二世代で返済していく仕組みの住宅ローンです。最初に親が返済をおこない、そのあと、子どもが引き継いで返済していきます。連帯債務者になれるのは、子ども1名のみです。返済期間は子どもの年齢をもとに設定されるので、親が高齢で返済期間が短くなる場合でも、最長の返済期間を設定できます。

親子リレーローンを利用するには?

親子リレーローンを利用するには、いくつかの要件を満たす必要があります。どのような要件があるのか見ていきましょう。

同居や血縁関係について

親子リレーローンを利用できるのは、親とその子どもや孫など直系卑属(※自分よりあとの世代の直系する親族)もしくはその配偶者です。また、民間の金融機関が扱う親子リレーローンでは、同居する親子、もしくは将来同居する予定の親子が対象になります。住宅金融支援機構が扱う「フラット35」においては、親子の同居要件はありません。

親と子どもの年齢要件について

フラット35では申し込み時の年齢が満70歳未満となっていますが、親子リレー返済に限り親の年齢が70歳以上でも利用できます。一方、民間の金融機関では原則として、親は満70歳未満となります。ただし、子どもの年齢は金融機関により異なり、満20歳以上のところもあれば、満18歳以上でも利用できるところもあります。
年齢要件では完済時の年齢も設定されているので注意が必要です。原則として完済時の年齢は満80歳未満ですが、金融機関によっては満82歳未満のところもあります。

収入要件について

親子リレーローンでは、親子ともに定期的な収入のあることが要件となります。大抵の場合、設定されている基準の年収は100万円以上です。ただし、民間の金融機関では親の公的年金は収入と認めていないところがあります。一方、フラット35では年金収入も収入と認められています。

団体信用生命保険(団信)への加入について

原則として、親子リレーローンでは団体信用生命保険(以下、団信)の加入が必要です。団信とは、ローン契約者に万が一のことが起きた時、保険金で住宅ローンの残債が弁済される保障制度のことです。加入要件は子どもが加入するケースや親と子どもが借入金額の2分の1ずつ加入するケースなど金融機関により異なるため、事前によく確認しておきましょう。なお、健康状態に問題があると団信に加入できない場合があるので注意が必要です。

ローンを利用できる範囲について

親子リレーローンは、一般的に次のような用途で利用できます。

  • 住宅の新築・購入資金
  • 新築マンションの購入資金
  • 中古住宅や中古マンションの購入資金
  • 住宅の増改築・修繕資金 など

利用できる範囲は金融機関により異なります。取引する金融機関ではどのような用途で利用可能なのか事前に確認しましょう。

親子リレーローンとペアローンとの違い

親子二世代で組む住宅ローンには、もう1つ「親子ペアローン」があります。両者を比較すると、親子リレーローンと親子ペアローンは内容や特徴が異なります。この2つのローンにはどのような違いがあるのでしょうか?下記をご覧ください。

親子リレーローンと親子ペアローンとの違い

  親子リレーローン 親子ペアローン
ローン契約数 1本 2本
債務者 親は主債務者
子どもは連帯債務者
親子とも
お互いが連帯保証人になる
返済開始 最初は親からスタート
その後子どもへ
親子が同時にスタート
団体信用生命保険への加入 子どものみ加入
(例外もあり)
親子ともに加入
住宅ローン控除 負担割合に応じて
親子ともに適用
親子ともに適用

親子リレーローンが向いているケース

親子リレーローンが向いているのは、次の4つのケースです。

(1)二世帯住宅を建築する

民間の金融機関が扱う親子リレーローンでは、同居している親子、または将来同居する予定の親子が要件になります。そのため、二世帯住宅を建築しようとしている人は親子リレーローンが向いています。

(2)親が高齢で短い返済期間でしかローンが組めない

原則として、住宅ローンは完済時の年齢が満80歳未満と決められています。高齢な親は長期の借り入れができません。そこで、親子リレーローンを利用し子どもに返済を引き継げば、最長の返済期間35年も実現できます。

(3)子どもの住宅購入を支援したい

子どもの年齢が若く年収が低いと、借入可能額が希望額に満たないこともあるでしょう。そんな時、親子リレーローンを利用して親の収入も合算することで、子どもの住宅購入を支援できます。

(4)親子ともに単独では借り入れが難しい

親もしくは子どもの収入だけでは借入希望額を借りるのが難しい場合があります。しかし親子リレーローンなら親と子どもの収入を合算できるので、借入希望額で住宅ローンを組むことも可能になります。

親子ペアローンが向いているケース

親子がそれぞれ住宅ローンを契約する親子ペアローンに向いているのは、次の3つに当てはまるケースです。

(1)高額物件の購入を希望している

希望する物件が高額でも、親子ペアローンを利用すれば借入可能額が増えるので、購入が可能になります。

(2)親子ともに十分な収入がある

親子ペアローンではそれぞれが住宅ローンを契約するため、安定した定期収入が要件となります。親も子どもも十分な収入があれば、単独でも借入希望額でローンを契約できるので、親子ペアローンが向いています。

(3)親子で団体信用生命保険を契約して、生命保険代わりに利用したい

親子ペアローンでは、親子それぞれが住宅ローンを組み、団体信用生命保険(以下、団信)に加入します。団信に加入していれば、万が一の時に親または子どもが契約するローンの残債が保険金で弁済されるので、生命保険代わりになります。

夫婦で組むペアローンはこちらの記事をご参照ください。

親子リレーローンのメリットは?

親と子の二世代にわたって返済をおこなう親子リレーローン。メリット・デメリットを知って利用を検討しましょう

住宅ローンを親子二世代にわたり返済していく親子リレーローンには、5つのメリットがあります。どのような点が優れているのか見てみましょう。

借入額を増やせる

親子リレーローンは親と子どもの収入を合算できるので、借入額を増やせます。単独では借入可能額が少なくても、収入合算することで希望額を借りられるでしょう。

返済期間を長く設定できる

住宅ローンでは、完済時の年齢が満80歳未満と設定されているため、親が高齢だと返済期間が短くなってしまいます。しかし親子リレーローンの返済期間は、連帯債務者になる子どもの年齢をもとに設定されます。そのため、親だけでは実現できない最長35年の返済期間も可能になります。

月々の返済額を減らせる

住宅ローンでは返済期間が長くなれば、月々の返済額が少なくなります。親子リレーローンでは収入合算で返済期間を長く設定できるため、単独でローンを組むよりも月々の返済額を減らせます。返済額を減らすことで家計に与える影響も少なくなるため、ライフイベントによる支出の調整がしやすくなります。

親が高齢でも利用できる

住宅ローンでは、借入時の年齢が満20歳以上満70歳未満の決まりがあります。そのため、高齢になると返済期間が短くなり、借入希望額まで借りられないかもしれません。その点、親子リレーローンで重視されるのは子どもの年齢なので、子どもに安定した定期収入があれば、親が高齢でも住宅ローンを組むことができます。

住宅ローン控除を親子それぞれが利用できる

親子リレーローンでは、親も子どもも自分の負担割合に応じて住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用できます。住宅ローン控除とは、住宅ローンの返済期間が10年以上など一定の要件を満たせば、年末の住宅ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税から(控除しきれない分は翌年の住民税から)控除できる制度です。子どもは親の返済期間中でも自分の持分割合で控除を受けられます。

親子リレーローンのデメリットは?

メリットが多い親子リレーローンですが、押さえておきたい4つのデメリットもあります。では、その内容を見ていきましょう。

新たなローンが組みにくい

親子リレーローンでは子どもは連帯債務者となるため、親の返済期間であっても子どもは返済義務を負っていることになります。そのため、他のローンが組みにくくなる可能性があります。例えばローンを組んで車を購入したり、転勤先で家を購入したりするのにローンを組めません。親子リレーローンを利用する際は、将来ローンを組む可能性があるかどうかを考えておきましょう。

子どもへの負担が大きくなることがある

親子二世代で返済する親子リレーローンでは、親が働けなくなったり、病気などで他の出費が増えたりして、返済ができなくなることがあるかもしれません。そんな時、親の残債は連帯債務者の子どもが負担することになります。
また、子どもが若いうちに親子リレーローンを組んだ場合、子どものライフステージが変化して家計状況が変わり、返済が厳しくなることがあるかもしれません。ローンを組む時は、長い目で見た返済計画が必要になります。

返済途中で親が亡くなった場合

返済途中で親が亡くなった時、親子が2分の1ずつ団体信用生命保険(以下、団信)に加入していれば、保険金で親の残債はすべて弁済されます。
しかし、団信に子どもだけが加入している場合、親の残債を子どもが引き継ぐことになるため、子どもの負担が増えてしまいます。

相続トラブルが起きることがある

親子リレーローンを組む家は、親が亡くなると相続財産になります。そのため、子どもが複数人いると、親の持ち分をどう相続するのかで揉める可能性があります。
そこで親子リレーローンを組む時は、事前に親や兄弟姉妹と話し合う機会を持っておくことを推奨します。また、相続トラブルが起きないように、親は相続財産の配分を遺言書で残しておくとよいかもしれません。

贈与とみなされる可能性がある

通常、親子リレーローンを組む時は、借入金額の負担割合と所有権の持分割合の比率が同じになるよう設定して登記します。例えば、負担割合が親6割・子ども4割なら、持分割合も同じ比率に設定します。しかし、負担割合は親6割・子ども4割なのに、持分割合を子ども10割に設定すると、親は6割分を子どもに贈与したとみなされます。こうなると子どもには贈与税の負担が発生するので注意が必要です。

親子リレーローンの取り扱いがある金融機関は?

親子リレーローンは、住宅金融支援機構の「フラット35親子リレー返済」のほか、みずほ銀行やりそな銀行、常陽銀行、千葉銀行など一部の金融機関が取り扱っています。呼称は金融機関により若干異なります。すべての金融機関が取り扱っているわけではないので、利用したい金融機関での取り扱いがあるかどうか確認しましょう。

親子リレーローンの利用の流れと審査基準は?

親子リレーローンを利用する際、どのような流れで契約が進むのか、また、審査基準は一般の住宅ローンと異なるのかどうか見ていきましょう。

親子リレーローンの利用の流れ

親子リレーローンは次のような流れで契約が進みます。

①「金融機関に相談」
借入可能額や返済計画などを相談します。
    ▼
②「事前審査(仮審査)の申し込み」
親子の収入や物件などの簡易的な審査がおこなわれます。
    ▼
③「事前審査結果の通知」
    ▼
④「住宅ローンの申し込み」
事前審査が通ったら、住宅ローンを申し込みます。
    ▼
⑤「本審査(正式審査)」
親子の収入や信用情報、物件など詳細な審査がおこなわれます。
    ▼
⑥「本審査結果の通知」
    ▼
⑦「住宅ローンの契約」
印紙税など諸費用も支払います。
    ▼
⑧「融資実行」
親子の所有権と金融機関の抵当権が設定されます。
    ▼
⑨「登記手続きの完了」

これで住宅ローンの手続きは完了です。
契約までの流れは、一般の住宅ローンと変わりありません。

親子リレーローンの審査基準

親子リレーローンの主な審査基準は、以下のとおりです。

  • 借入時、完済時の年齢
  • 年収
  • 勤続年数
  • 他の金融機関への借り入れ状況
  • 信用情報の確認
  • 担保評価
  • 返済負担率
  • 健康状態  など

契約者の経済状況を審査する一般の住宅ローンと異なるのは、親子リレーローンでは連帯債務者となる子どもの返済能力を重点的に審査する点です。他のローンやクレジットカードの返済などで滞納履歴があれば住宅ローンを組めなくなることがあるので注意しましょう。

まとめ

親子リレーローンは、親と子どもの二世代で1本の住宅ローンを契約し返済していく制度です。親子で収入を合算できるので借入可能額を増やし、返済期間を長く設定できます。そのため、年収が足りず借入希望額を借りることができない場合や親が高齢で住宅ローンが組めない場合に、選択肢の1つとなる住宅ローンです。ただし、子どもの負担が大きくなることがあるなどデメリットもよく確認し、親子で十分に話し合ったうえで契約することをおすすめします。

前佛 朋子

執筆者

前佛 朋子

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者
家計コンサルティングZEN 代表

元々はライターだったが専門分野を持とうと考え、興味のあった金融知識を活かせるファイナンシャル・プランナーの資格を取得。Webコラムやメルマガなど金融関連記事を執筆するかたわら、安心とゆとりのある暮らしができる人を増やすために、家計見直しやライフプランなど相談業務をおこなう。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。保険や金融商品を売らないファイナンシャル・プランナーとして活動中。

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