住宅ローンの優遇金利とは?優遇を受けられる期間や受ける際の注意点を解説

記事の目次
住宅ローンの優遇金利とは

住宅ローンの優遇金利とは、金融機関が基準とする金利から引き下げる利率の幅のことです。商品やサービスを購入する際の「割引」にあたります。金利には他にも、店頭金利と適用金利があります。それぞれどういったものかを押さえておきましょう。
店頭金利:金融機関が設定する基準金利
適用金利:借り入れの際に適用される金利
つまり、式で表してみると次のようになります。
店頭金利ー優遇金利=適用金利
例えば、店頭金利が3.5%、優遇金利が1%だった場合、適用金利は2.5%となります。優遇金利が大きいほど、適用金利は下がり、借入金額に対する利息の支払いは少なく済みます。しかし、優遇金利にも種類があります。次章で詳しく見てみましょう。
住宅ローンの優遇金利の種類

優遇金利には「当初優遇」と「全期間優遇」の2つの種類があります。それぞれ詳しく解説します。
当初優遇
当初優遇とは、住宅ローンを借り入れてから一定期間、金利が大幅に引き下げられるタイプです。一定期間が過ぎると、優遇幅が小さくなったり、優遇が適用されなくなります。借り入れ当初は優遇幅が大きいため、返済額を抑えられる点がメリット。家計への負担を少なくしたい方など、住宅ローンの返済負担を抑えたい場合には適しています。しかし、優遇期間が終わると返済負担が大きくなるため、優遇期間の金利だけではなく、優遇期間終了後の金利もどうなるかを確認しておきましょう。
全期間優遇
全期間優遇とは、借り入れ当初から完済までの間、金利が引き下げられるタイプです。優遇金利が変わらないため、返済計画を立てやすくなる点がメリット。変動金利で借り入れても、一定の優遇を受けられるため、金利上昇リスクに備えることも可能です。しかし、当初優遇と比較して、金利が高い傾向にあります。例えば、20代など収入が安定していない時期に住宅ローンを借り入れた場合、返済負担が重く感じるかもしれません。返済期間中、なるべく金利を変動させたくない、途中から返済負担が重くなることを避けたいという方には向いているでしょう。
優遇金利の違いによる返済額シミュレーション
優遇金利の違いによって、返済額がどのように変わるのか2パターンでシミュレーションしてみましょう。
当初優遇で一定期間過ぎたあとも優遇金利が受けられる場合
まずは、当初優遇で一定期間過ぎたあとも優遇金利が受けられる場合をシミュレーションします。条件は次のとおりです。
<条件>
借入金額:3,500万円
返済期間:35年
金利:当初優遇(1〜10年目:1.11% 11年目以降:2.34%)
全期間優遇(1.85%)
返済方法:元利均等返済
項目 | 当初優遇 | 全期間優遇 |
---|---|---|
金利 | 当初10年間:1.11% 11年目以降:2.34% |
1.85% |
月々の 返済額 |
当初10年間:10万604円 11年目以降:11万6,076円 |
11万3,265円 |
総返済額 | 4,689万5,251円 | 4,757万1,522円 |
当初10年間の返済額を見ると、当初優遇のほうが安く済んでいます。11年目以降は、全期間優遇のほうが月々の返済額が低くなっていますが、総返済額を見ると、当初優遇のほうが抑えられています。ただし、11年目以降の金利によっては、当初優遇のほうが総返済額が増える可能性も。先述したように、優遇期間終了後の金利がどうなるかを踏まえたうえで検討しましょう。
当初優遇のあとに優遇金利がなくなった場合
次に、当初優遇のあとに優遇措置がなくなり、基準金利になった場合にどうなるかをシミュレーションしてみましょう。条件は、次のとおりです。
<条件>
借入金額:3,500万円
返済期間:35年
金利:当初優遇(1〜10年目:1.11% 11年目以降:3.89%)
全期間優遇(1.85%)
項目 | 当初優遇 | 全期間優遇 |
---|---|---|
金利 | 当初10年間:1.11% 11年目以降:3.89% |
1.85% |
月々の 返済額 |
当初10年間:10万604円 11年目以降:13万7,463円 |
17万4,583円 |
総返済額 | 5,331万1,341円 | 4,189万9,927円 |
全体を通して、当初優遇のほうが月々の返済額が低くなっています。しかし、月々の返済額が少なく、元本の減りが遅いこと、また11年目以降の金利が上昇することから、利息負担が多くなり、総返済額は全期間優遇より約1,141万円増えています。このように、当初優遇は月々の返済額は抑えられますが、総返済額が増える可能性があります。
住宅ローンで優遇金利を受けるための条件

金融機関によって異なりますが、住宅ローンで優遇金利を受けるためには、さまざまな条件があります。本章では、どのような条件があるのかを見ていきましょう。
口座残高が一定金額以上ある
すでに金融機関の口座に、一定金額以上の残高がある場合、優遇金利を受けられることがあります。金融機関にとって、すでに取引がある顧客であれば、安心して取引ができるからです。また、残高が多ければ、他の金融商品を利用する可能性が高くなることから、金融機関は積極的に取引をおこないたいと考えます。東京都の新宿区や世田谷区、品川区などを事業区域としているJA東京中央では、総合口座の定期預金貯金残高が50万円以上の場合、住宅ローン金利(変動金利)が0.01%引き下げられます。
給与振込口座に指定している
給与振込口座に指定していることも、住宅ローンで優遇金利を受けられる条件の一つです。給与が振り込まれているため、金融機関は顧客の属性や収入状況などを把握しやすくなります。顧客に安定した収入があることがわかれば、今後も継続して取引をしていきたいと考えるでしょう。実際に、先ほど取り上げたJA東京中央の住宅ローンでも、給与の振込または年金の受給で、0.01%金利が引き下げられます。
他の借入契約がある
他の借入契約があることも、住宅ローンで優遇金利を受けられる条件の一つです。すでに取引があり、長期的に関係を築いていきたいとの考えから、住宅ローンの金利が優遇されることがあります。例えば、東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京の3行が合併して誕生したきらぼし銀行では、住宅ローン最大金利引下げプランを利用できる条件として、次のように記載しています。
(1)当行の口座を給与振込指定口座としてご利用中、または今後ご利用いただける方
(2)下記ア・イ・ウのうち、1項目以上をご利用中、またはお申込みいただける方
ア.「きらぼしホームダイレクト」または「きらぼしビジネスネット」
イ.「対象となる住宅ローン以外の個人ローン(カードローンを含みます)」
ウ.「きらぼしJCBカード」
※「KIRABOSHI CLUB CARD(JCB一体型カード)」を含みます。
引用:きらぼし銀行「きらぼし住宅ローン最大金利引下げプランのご案内」
これを見ると、住宅ローン以外の個人ローンを利用中、もしくは申し込みをすれば、引下げプランを利用できることがわかります。ただし、その借入契約を安定して返済している場合に限ります。もし滞納している場合には、返済能力に問題があるとみなされ、住宅ローンの審査に通らない可能性があるため、注意しましょう。
クレジットカードを保有している
クレジットカードを保有していることも、住宅ローンの優遇金利を受けるための条件の一つとなります。金融機関はクレジットカードの返済状況から、顧客の返済能力を把握できます。安定して返済できている顧客であれば、住宅ローンの返済も滞納リスクが低いと判断されます。例えば、富山県内を事業区域とする高岡信用金庫を通して「しんきんVISA」または「JCBカード」に加入すると、住宅ローン金利が0.1%引き下げられます。
住宅ローンで優遇金利を受ける際の注意点

これまで、優遇金利の種類や受けるための条件を見てきました。それでは、優遇金利を受ける際に気を付けることはあるのでしょうか。本章では、住宅ローンで優遇金利を受ける際の注意点を解説します。
普段利用している金融機関に相談する
住宅ローンの優遇金利を受けたい場合には、普段利用している金融機関に相談しましょう。前章で解説したように、すでに取引のある金融機関であれば、返済能力の有無がわかっていることから、積極的に取引をしたいと考える傾向にあります。これまでの取引状況から、自分に合った住宅ローンを提案してくれる可能性も。また、すでに口座を開設していたり、他の金融商品を利用しているため、手続きもより簡素になり、スムーズに進むでしょう。ただし、トラブルなく利用している場合に限ります。もし借り入れやクレジットカードの返済が滞っている場合には、住宅ローンの審査に通る可能性は低いため、注意しましょう。
金利が上がる可能性がある
住宅ローンで優遇金利を受ける際には、将来的に金利が上昇する可能性があることを考慮しておきましょう。住宅ローンの金利は、市場の金利動向や日本銀行の金融政策によって変動します。例えば、基準金利が上昇すれば、優遇金利があっても実際の金利は上昇し、返済額は増えることに。優遇金利が適用された状態ではなく、金利の上昇を見越したシミュレーションをしておくと、金利が上昇した場合でも、問題なく返済できるでしょう。
審査の結果によって引き下げ幅が変わる
住宅ローンの優遇金利は、審査の結果によって引き下げ幅が変わる点に注意しましょう。住宅ローンの審査では、申込者の収入や勤務先、勤続年数、他の借入状況など、さまざまな観点からおこなわれます。審査の結果、返済能力に問題があると判断された場合には、優遇金利の引き下げ幅は小さくなったり、適用されないことも。反対に、頭金を多く用意したり、他の借り入れを返済したり、返済能力が高いと判断されれば、優遇金利の引き下げ幅は大きくなる場合もあります。
諸費用を考慮する
住宅ローンを借り入れる際には、優遇金利だけでなく、諸費用も考慮しましょう。諸費用には、融資をおこなう金融機関に支払う事務手数料、保証会社に支払う保証料などがあります。これらは利用する金融機関や、借入金額によって変化します。そのため、優遇金利の引き下げ幅が大きくても、これらの諸費用が高ければ、総合的に見た時に経済的な負担が大きくなるかもしれません。優遇金利の引き下げ幅だけでなく、諸費用も考慮して住宅ローンを検討しましょう。
住宅ローンの優遇金利に関するよくある質問
住宅ローンの優遇金利に関するよくある質問をまとめました。
住宅ローンの優遇金利とは?
住宅ローンの優遇金利とは、商品やサービスを購入する際の割引にあたるものです。給与の振込口座に指定していたり、口座の残高が一定以上あったりなど、すでに金融機関との取引がある場合、優遇金利の引き下げ幅が大きくなります。優遇金利を受けられる条件は、金融機関によって異なるため、普段利用している金融機関に確認してみましょう。
住宅ローンの優遇措置はいつまで?
住宅ローンの優遇措置の期間は、契約内容によって異なりますが、「当初優遇」と「全期間優遇」の2種類があります。当初優遇は借り入れ当初から一定期間、優遇金利が適用されます。一方、全期間優遇は、借り入れ当初から完済まで優遇金利が適用されるものです。
住宅ローンの優遇金利はいつ決まる?
そもそも住宅ローンの金利が決まるタイミングは、「申し込み時」と「融資実行時」の2つです。「申し込み時」は、企業の福利厚生の一つである財形住宅融資に多く、一般的には「融資実行時」に決まります。例えば、みずほ銀行の場合、審査結果と合わせて利用できる金利・金利プランが案内されますが、適用金利は融資実行時の金利。仮に、審査後の基準金利が3.5%、優遇金利が1%となっていても、融資実行時の基準金利が3.8%であれば、実際に適用される金利は2.8%となります。
まとめ
本記事では、住宅ローンの優遇金利を解説しました。優遇金利とは、金融機関が定めた基準金利から引き下げられる利率の幅のことで、当初優遇と全期間優遇の2種類があります。優遇金利を受ける条件としては、給与振込口座に指定していたり、預金残高が一定額以上あるなど、金融機関と何らかの取引があることが前提です。住宅ローンの優遇金利を受けたい場合には、普段から取引のある金融機関に相談するとよいでしょう。
ただし、基準金利が上昇したり、当初優遇で一定期間のあとに優遇金利の引き下げ幅が小さくなれば、返済負担が上昇することも。また、諸費用も金融機関や借入金額によって異なるため、優遇金利だけでなく、さまざまな観点から総合的に判断することが大切です。
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執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ