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籍を入れていなくても住宅ローンを組める?組む方法や必要書類などを徹底解説

籍を入れていない状態で住宅ローンを組むことは可能なのでしょうか
家族のあり方が多様化している近年、籍を入れていない状態で住宅の購入を考えている方もいるでしょう。しかし、籍を入れていない状態で住宅ローンを組むことは可能なのでしょうか。また、事実婚や同性パートナーの場合はどうなるのでしょうか。

そこで本記事では、籍を入れていない状態で、住宅ローンを組むことは可能なのかを解説します。また、その状態で住宅ローンを組むことのメリット・デメリット、ローンを組む方法も紹介。自分たちに合った住宅ローンを組むために、基本的なポイントを押さえておきましょう。

籍を入れていなくても住宅ローンを組める?

入籍予定であることを証明できれば住宅ローンは組めます
入籍予定であることを証明できれば住宅ローンは組めます

本章では、籍を入れていなくても住宅ローンを組めるのかを解説します。また、事実婚や同性パートナーの場合も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

入籍予定であることを証明できれば可能

籍を入れていなくても、入籍予定であることを証明できれば、住宅ローンを組むことは可能です。例えば、りそな銀行のホームページには、次のように記載されています。

Q. 婚約者と住宅ローンを組めますか。
A. 申込時点でお相手さまとのご関係が「婚約者」さまの場合、住宅ローン契約時までに入籍が確認できる戸籍謄本等の資料をご提出いただきます。
契約手続きは入籍を確認させていただいた後となります。

出典:りそな銀行「Q婚約者と住宅ローンを組めますか

籍を入れていない状態であっても、住宅ローンを組めることがわかります。ただし、契約手続きは入籍確認後となる点に注意しましょう。

なぜ、契約手続きは入籍確認後でなければならないのか、疑問に思われる方もいるでしょう。それは、金融機関にとって、入籍前のカップルが婚約解消することがリスクとなるからです。住宅ローンの融資を実行したにも関わらず、婚約解消となると返済が滞るおそれがあります。そのようなリスクを避けるため、二人の意思が確実に固まっている入籍後でなければ、契約手続きができないようになっています。

事実婚や同性パートナーの場合

事実婚や同性パートナーの場合でも、住宅ローンを組むことは可能です。ただし、金融機関によって対応が異なるため、事前に確認をしなければなりません。例えば、三井住友銀行の「WEB申込専用住宅ローン」では、利用できる方の条件として、次のように記載されています。

事実婚の方々、同性パートナーの方々による連帯債務型借入をご利用の場合は、物件を共有され、同居されること、所定の書類のご提出、連生団体信用生命保険のご加入が条件となります。

出典:三井住友銀行「WEB申込専用住宅ローン

一定の条件を満たさなければなりませんが、事実婚や同性パートナーの場合でも、住宅ローンを組めることがわかるでしょう。内閣府の「令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」によると、事実婚と回答した方が2.9%いることから、事実婚を選択される方は一定数いることがわかります。また、パートナーシップ制度も459の自治体で導入されており(2024年6月時点)、多様性への理解が深まりつつあります。金融機関も、このような社会の変化に対応する取り組みが求められており、事実婚や同性パートナーの場合でも住宅ローンが組めるようになっています。

籍を入れていない状態で住宅ローンを組むメリット・デメリット

籍を入れていない状態で住宅ローンを組むメリットとデメリットを解説します
籍を入れていない状態で住宅ローンを組むメリットとデメリットを解説します

それでは、入籍後に住宅ローンを組む場合との違いは何でしょうか。本章では、籍を入れていない状態で住宅ローンを組むメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

メリット:住宅ローンを早期に完済できる可能性がある

籍を入れていない状態で住宅ローンを組むメリットは、早期に完済できる可能性がある点です。早い時期に住宅ローンを組めば、その分完済できる時期も早まります。もし定年退職を迎える前に住宅ローンを完済できれば、老後の心配事も減るでしょう。また、2人とも働いているのであれば、収入が安定しているため、繰り上げ返済をして早めに完済することも可能です。ローンの組み方は後述しますが、2人の収入を合算することで、より高額な借入ができ、住宅の理想も叶えやすくなるでしょう。

デメリット:ライフスタイルの変化に対応できない

籍を入れていない状態で住宅ローンを組むデメリットとして、ライフスタイルの変化に対応できない点が挙げられます。例えば、突然転勤や転職で遠方に行くことが決まった場合、住宅を購入したにも関わらず、場合によっては手放さなければならない可能性も。

また、住宅ローンを組んだ後に結婚や出産をした際、それを機に価値観が変わり、立地や間取りなどに対して不満を抱くかもしれません。住宅の購入は大きな買い物であり、あとから立地や間取りを変更することは難しくなります。このように、籍を入れていない状態で住宅ローンを組むと、ライフスタイルや価値観の変化に対応できない点がデメリットです。

籍を入れていない状態で住宅ローンを組む方法

籍を入れていない状態で住宅ローンを組む方法は3つあります
籍を入れていない状態で住宅ローンを組む方法は3つあります

籍を入れていない場合や事実婚・同性パートナーの場合、住宅ローンを組むにはどうすればよいのでしょうか。本章では3つの方法を解説します。

フラット35に申し込む

籍を入れていない方でも、フラット35を利用すると住宅ローンを組むことが可能です。フラット35とは、住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供する住宅ローンのこと。返済当初から完済時まで金利が固定される、全期間固定金利タイプのローンです。実際に、フラット35のホームページには、夫婦は次の関係にある方を含むと記載されています。

  • 戸籍上の夫婦
  • 婚姻関係にある
  • 内縁関係にある
  • 同性パートナーの関係にある

そのため、籍を入れていない状態や事実婚、同性パートナーの場合でもフラット35の利用は可能です。

収入合算をする

収入合算を利用すると、籍を入れていない状態でも住宅ローンを組むことができます。収入合算とは、どちらか一方の収入のみでなく、2人の収入を合わせて住宅ローンを契約すること。2人の収入を合わせることで、単独でローンを組むよりも、高額な借り入れができます。

例えば、1人の年収が500万円だった場合、その年収に見合った借入金額となります。しかし、2人の年収を合わせて1,000万円だった場合、借り入れできる金額も増え、より住宅の理想を叶えやすくなるでしょう。ただし、収入合算できる方の範囲や合算できる金額は、金融機関によって異なるため、事前の確認が大切。また、一般的に、契約時までに入籍を確認できる書類を提出しなければならないことも理解しておきましょう。

ペアローンを組む

籍を入れていない状態で住宅ローンを組む方法として、ペアローンを利用する方法もあります。ペアローンとは、同じ住宅に対して2人が別々に住宅ローンを組むこと。収入合算と同様、借入金額を増やせるため、購入できる住宅の選択肢が広がります。

また、ペアローンは借入金額に応じて、住宅の持分割合が変わります。例えば、全体で6,000万円の住宅ローンで、それぞれ4,000万円と2,000万円で借り入れた場合、持分割合は2:1となります。

収入合算の特徴と注意点

収入合算には連帯債務型と連帯保証型の2種類あります
収入合算には連帯債務型と連帯保証型の2種類あります

籍を入れていない状態で住宅ローンを組む方法として、収入合算をご紹介しました。しかし、収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」の2種類があります。それぞれの特徴と注意点を解説します。

連帯債務型とは

収入合算の連帯債務型とは、どちらか一方がメインの債務者となり、もう一方が連帯債務者となる住宅ローンです。つまり、どちらも返済義務を負うことになります。ただし、2人とも債務者となることから、それぞれ住宅ローン控除を受けられる点がメリット。

また、2人とも団体 信用生命保険(以降、団信)に加入できる場合があります。団信とは、住宅ローンの契約者が亡くなったり、高度障害を負ったりした場合、住宅ローンの残債が保障される保険のこと。2人とも加入することで、どちらかに万が一のことがあった場合、その方の分の返済負担を負う必要はなくなります。金融機関によって2人とも加入できるかが異なるため、事前に確認しておきましょう。

連帯保証型

連帯保証型とは、どちらかが債務者となり、もう一方が連帯保証人となる住宅ローンです。連帯保証人となる方は債務者ではないため、団信への加入はできず、住宅ローン控除の適用も受けられません。また、債務者が返済できなくなった場合、返済義務を負うことになります。

注意点 1. どちらかが連帯保証人になる必要がある

連帯保証型の注意点として、どちらかが連帯保証人になる必要がある点が挙げられます。先述したように、債務者が返済できなくなった場合、連帯保証人が代わりに返済義務を負うことに。特に籍を入れていない状態で住宅ローンを組む場合、婚約を破棄する可能性もまったくないとは言い切れません。もし購入した住宅での同居を辞めて、連帯保証人から外れたい場合には、住宅ローンを完済する必要があります。そのため、連帯保証人になる場合は、今後も2人が協力して生活を送るという意思が固まってからのほうがいいでしょう。

注意点 2. 金融機関によって収入合算できる金額が異なる

金融機関によって、収入合算できる金額が異なる点にも注意しましょう。例えばフラット35の場合、収入合算者の年収全額を合算できます。ただし、合算する額が収入合算者の年収の50%を超える場合、返済期間の設定が短くなります。一方、三菱UFJ銀行の場合、合算できる金額の条件は債務者の収入の50%です。

仮に債務者の年収を500万円、収入合算者の年収を400万円とした場合を考えてみましょう。この場合、フラット35では収入合算者の年収をすべて合算できるため、全体の年収は900万円となります。一方、三菱UFJ銀行では、債務者の50%の年収を合算できるため、全体の年収は750万円となります。このように、合算できる金額が異なると、借入金額が変化する可能性も。収入合算を検討する場合は、どの範囲まで合算できるのか、事前に確認しておきましょう。

ペアローンの特徴と注意点

ペアローンの特徴と注意点を解説します
ペアローンの特徴と注意点を解説します

ペアローンとは、同じ住宅に対して2人が別々の住宅ローンを結ぶものです。つまり、2つの住宅ローンを契約することになります。そのため、ローンの融資手数料や登記費用などもそれぞれに必要。しかし、住宅ローン控除は、それぞれに適用されます。また、団信も別々に加入できるため、どちらか一方に万が一のことがあっても、その分の返済負担を負う必要はありません。例えば、夫が亡くなった場合、妻は夫の債務を負わずに済みます。ただし、妻は引き続き、自分の債務を返済しなければなりません。

注意点:手数料が2人分かかる

ペアローンの注意点は、手数料が2人分かかることです。そのため、1つの住宅ローンで済む収入合算と比較して、費用が増える可能性があります。住宅ローンを組む際の手数料としては、次のようなものがあります。

  • 住宅ローン融資事務手数料
  • 保証料
  • 印紙税
  • 登記費用

一般的に借入金額が多くなるほど、手数料の負担も増えます。そのため、事前に手数料がどれくらいなのかをシミュレーションしておきましょう。

籍を入れていない状態で住宅ローンを申し込む際の必要書類

籍を入れていない状態で住宅ローンを組む場合には書類の提出を求められることがあります
籍を入れていない状態で住宅ローンを組む場合には書類の提出を求められることがあります

これまで見てきたように、籍を入れていない状態でも住宅ローンを申し込むことは可能です。しかし、一定の要件を満たさなければならなかったり、書類を提出する必要があります。本章では、住宅ローンを申し込む際の必要書類を解説します。

パートナーシップ証明書

パートナーシップ証明書とは、自治体から発行される同性パートナーを認める証明書のことです。法律上の婚姻とは異なるものの、婚姻関係と同等の実質を備える関係であることを証明します。例えば、渋谷区では2015年11月5日から証明書の交付を実施。現在、多様性を認める一環として広がりつつありますが、発行する自治体は限られています。また、金融機関によって対応も異なるため、事前に調べておきましょう。

公正証書

籍を入れていない状態で住宅ローンを申し込む際、公正証書の提出を求められる場合があります。公正証書とは、公務員である公証人の権限に基づいて作成される文書のこと。公的な信用が高く、強い効力を持たせることができます。例えば、ソニー銀行の場合、本審査の際に次のいずれかの書類の提出を求めています。

  • 「任意後見契約および合意契約に係る公正証書の正本、または謄本」および「任意後見契約に係る登記事項証明書」の各コピー
  • 自治体が発行する「パートナーシップ証明書」のコピー
  • 「夫(未届)/妻(未届)」と記載のある住民票の写し

任意後見契約とは、将来、本人の判断能力がなくなってしまった時の生活や財産の管理などについて、相手に代わりにおこなってもらう契約のことです。合意契約とは、2人の間の取り決めごとについての契約です。例えば、将来のための貯蓄方法や住宅の持分割合などが挙げられます。普段なかなか話題にしないようなことばかりですが、今後のためにもきちんと決めておきましょう。

まとめ

本記事では、籍を入れていない状態で住宅ローンを組む方法を解説しました。籍を入れていない状態でも、住宅ローンを組むことは可能です。ただし、一定の要件を満たさなければならなかったり、書類を提出する必要があります。金融機関によって対応は大きく異なるため、事前に確認するようにしましょう。また、籍を入れていない状態で住宅ローンを組むことはメリットもありますが、ライフスタイルや価値観の変化に対応できないというデメリットもあります。2人の意志が固まっているのか、よく考えたうえで検討しましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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