住宅ローンで購入した家に住まないとばれる?賃貸に出す方法は?

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住宅ローンで購入した家を賃貸に出すことは原則できない

住宅ローンで購入した家を賃貸に出すことは、原則としてできません。あくまで原則なので、転勤などのきちんとした理由があれば可能です。本章では、まず住宅ローンの決まりについて説明します。何のための住宅ローンなのかを押さえておきましょう。
住宅ローンの決まり
住宅ローンは「住宅を自ら居住するための目的で借りる」ために契約するもの。賃貸目的での借入は禁止されています。例えば、イオン銀行の「住宅ローン商品概要説明書」には、資金使途として次のように明記されています。
ご本人がお住まいになる住宅に関する以下の資金
- 住宅の新築・購入資金
- 住宅の増改築・改装資金
- 住宅ローンのお借換え資金
- 上記にかかる諸費用
出典:イオン銀行「住宅ローン商品概要説明書」(PDF)
つまり、住宅ローンは、契約者本人が住むことを前提として契約するものとなります。
住宅ローンと不動産投資ローンとの違い
不動産投資ローンとは、投資目的で不動産を購入するためのローンです。投資目的で住宅ローンを不正利用し、契約させる悪徳業者もおり、住宅金融支援機構からも注意喚起がされています。住宅ローンと不動産投資ローンの違いを理解しておきましょう。
住宅ローン | 不動産投資ローン | |
---|---|---|
返済の元手 | 毎月の給与 | 家賃収入 |
融資額の上限 | 年収の5〜6倍 | 年収の10〜15倍 |
金利 | 0.4〜2% | 1.4〜4.5% |
この表のように、不動産投資ローンは金利や融資額の上限が高く設定されています。不動産投資ローンで購入した物件は賃貸に出すことができます。その代わり、事業性があることから審査も厳しく、借りやすい住宅ローンを不正利用させる事業者もいます。
甘い言葉には罠がある場合も。事前に知識をつけて、騙されないように気をつけましょう。
住宅ローンで購入した家に住まないとばれる理由

住宅ローンで購入した家に住まないとばれる理由には、次の2つがあります。
- 郵便物が契約者に届かないから
- 住民票の場所が違うから
借り入れている金融機関と信頼関係を構築するためにも、嘘をつかないのは人として当たり前のことです。法的な問題を回避するためにも、ばれる理由を知っておきましょう。
郵便物が住宅ローンの契約者に届かないから
住宅ローンで購入した家に住まないとばれる理由の1つ目は、郵便物が契約者に届かないことです。住宅ローンの契約書に記載されている住所に、金融機関から住宅ローンに関する郵便物が送られてきます。例えば、契約書類の控えや借入明細、住宅ローン控除を受けるために必要な年末残高証明書などです。
もし、住宅ローンの契約者が契約書に記載されている住所に住んでいない場合、郵便物が届かず、金融機関に差し戻されます。住んでいれば郵便物が戻らないため、差し戻されたことで住んでいないことがばれてしまいます。
契約内容と実際の居住状況の食い違いは、信頼関係の損失や法的な問題を引き起こす可能性があります。金融機関には、正確な情報を提供しましょう。
住民票と実際に住んでいる住所が違うから
住宅ローンで購入した家に住まないとばれる理由の2つ目は、住民票と実際に住んでいる住所が違うことです。住民票は、居住地を公的に証明するものです。引越しした際には14日以内に変更手続きをする必要があります。住民基本台帳法では、虚偽の報告は5万円以下の過料に処されることになっています。
金融機関が必要と判断した場合には、住民票の写しを取得することも。住宅ローンの契約書と違っていた場合、住んでいないことがばれます。
また、住民票と実際に住んでいる住所が違うと、住民税の特別徴収でばれる可能性があります。特別徴収とは、住民税を毎月の給与から天引きして、会社から市区町村に払う仕組みです。
住民票に記載されている市区町村から会社へ特別徴収額の通知がいくため、会社に報告している住所と違えば、ばれる可能性があります。
住宅ローンで購入した家に住んでいないことがばれるとどうなる?

住宅ローンで購入した家に、実際に住んでいないことがばれるとどうなるのでしょうか。
具体的には、次の3つがあります。
- 一括返済を求められる
- 投資用ローンへ変更を求められる
- 詐欺罪で告訴される可能性がある
住宅ローンは、金融機関との信頼関係のもとに成立しています。正確な情報提供や契約条件の遵守を前提としているため、もし破っていた場合には、法的な問題に発展する可能性があります。
ここからは、ばれた場合のリスクを詳しく説明していきます。
住宅ローンの一括返済を求められる
実際に住んでいないことがばれると、住宅ローンの一括返済を求められることがあります。先述したように、住宅ローンは契約者が居住するために結ぶものです。住んでいない場合、契約違反とみなされ、一括返済を求められます。例えば、イオン銀行の住宅ローン規定には、次のような内容が記載されています。
住所変更の届出を怠るなど、契約者の責めに帰すべき事由によって、銀行に契約者の所在が不明になった時、契約者は当然に期限の利益を失い、借入要項の記載の返済方法によらず、ただちに債務全額返済をするものとします。
出典:イオン銀行「住宅ローン商品概要説明書」(PDF)
わかりやすくいうと、契約者の住所が銀行に報告されているものと違う時、住宅ローンを毎月返済するのではなく、一括して返済するということです。
一括返済となると売却も視野に入れなければなりません。自分が住むための家として住宅ローンを契約する決まりを守り、正確な情報提供をおこないましょう。
投資用ローンへ変更を求められる
住んでいないことがばれると、金融機関より住宅ローンから投資用ローンへの変更を求められる可能性があります。住宅ローンで購入した家を賃貸に出すことは、基本的にできません。しかし、転勤などやむを得ない事情がある場合には、住宅ローンのまま第三者に貸せる場合もあります。ただし、判断するのは金融機関であり、契約違反していることには変わりません。他のローンへの切り替えを提案してくれるのは優しいといえるでしょう。
詐欺罪で告訴される可能性がある
住んでいないことがばれると、詐欺罪で告訴される可能性があります。詐欺罪は他人を欺いて不正な利益を得る犯罪です。例えば、手続きを不動産会社任せにしていて、虚偽の内容で融資を受けていたことを知らなくても、契約者自身が責任を問われることになります。
住宅金融支援機構のホームページでも「金融機関には自分が住むといえばOK」「手続きはこちらでするので金融機関と話をしないでください」などの言葉には気をつけるよう注意喚起しています。また、不正利用に対しては法的措置を含めて厳格に対応するとしています。告訴された場合、社会的信頼も下がり、今までと同じような日常生活を送ることは難しくなります。信頼と法的な安全を守るためにも、適切な行動を取りましょう。
住宅ローンで購入した家を賃貸に出す方法

転勤や離婚などやむを得ない事情がある場合には、住宅ローンで購入した家を賃貸に出すことができます。賃貸に出す方法として、次の2つがあります。
- 金融機関に相談する
- 不動産投資ローンへ借り換える
それぞれ詳しく見ていきましょう。
金融機関に相談する
1つ目は、金融機関に相談することです。金融機関に相談すると、やむを得ない事情に配慮し、住宅ローンの返済をしながら賃貸に出すことができます。場合によっては、返済期間を延長したり、金利を下げてくれたりと、住宅ローンの条件を変更してくれます。
勝手に賃貸に出すのは契約違反となるため、必ず金融機関に相談しましょう。
不動産投資ローンへ借り換える
2つ目は、不動産投資ローンへ借り換えることです。不動産投資ローンとは、賃貸物件を運用するための専用ローンです。「賃貸住宅向けローン」や「アパートローン」などと呼ばれることがありますが、内容としては変わりません。ローンの金利や返済条件は、家賃収入を考慮したうえで設定されます。しかし、金融機関によっては借り換えを認めない場合もあります。また、住宅ローンと比べ金利が高い傾向にあるため、慎重に検討しましょう。
住宅ローンで購入した家を賃貸に出すデメリット

住宅ローンで購入した家を賃貸に出すことは、いいことばかりではありません。デメリットも理解したうえで、どうするか判断しましょう。具体的には次の2つがデメリットとして挙げられます。
- 住宅ローン控除が受けられなくなる
- 賃貸に出すための費用がかかる
ここからは一つずつ解説していきます。
住宅ローン控除が受けられなくなる
まずは、住宅ローン控除が受けられなくなることです。住宅ローン控除は、家を自己居住用として使用する場合に適用されるものです。しかし、賃貸に出すと、使用者が変わって居住用ではなくなるため、住宅ローン控除の対象外となります。購入した家を賃貸に出すかどうかは、税の負担も考えて判断しましょう。
なかには、転勤が数年で終わり、購入した家に戻る方もいるでしょう。その場合には、住んでいない期間を除いて残りの控除期間があれば、再び住むようになった年の翌年から住宅ローン控除を受けられます。ただし、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」などの必要書類を、事前に家がある所在地の税務署長へ提出する必要があります。引越しをする前に、忘れず提出しましょう。
賃貸に出すための費用がかかる
次に、賃貸に出すための費用がかかる点です。住宅ローンで購入した家を賃貸に出す時は、管理会社に委託するのが一般的ですが、委託費用がかかります。また、今住んでいる家をそのまま賃貸に出すことはできません。内装や設備を整える必要があります。例えば、壁紙の貼り替えや水回りの修繕などです。
さらに、借主が変わるたびに、メンテナンスが必要です。住んでいない家を賃貸に出すことは一見合理的に見えますが、費用だけでなく手間もかかります。そういった費用や手間を考慮したうえで、賃貸に出すかどうかを決めましょう。
まとめ
今回の記事では「住宅ローンで購入した家に住まないとばれるのか」を解説しました。契約者に住宅ローン関連の書類が届かないことで、住んでいないことがばれてしまいます。住宅ローンは自己居住用のものであるため、第三者が住んでいると契約違反となり、一括返済を求められたり、詐欺罪で告訴されたりする可能性があります。
住宅ローンは、金融機関との信頼関係のうえで成り立っています。転勤や離婚などやむを得ない事情があれば、賃貸に出すことも可能です。正確な情報提供をおこない、信頼関係を失わないようにしましょう。また、住宅ローンの不正利用を勧める悪徳業者も存在するため、疑問に感じた場合はすぐに断りましょう。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ