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住宅ローン減税制度では住民税も控除される?制度利用の手続き方法を紹介

住宅ローンを組んで住宅を購入した場合には、住宅ローン減税制度を利用できます
住宅ローンを組んで住宅を購入した場合には、住宅ローン減税制度を利用することができます。
住宅ローン減税制度が適用されると控除額が大きくなるため、詳細が気になる人も多いのではないでしょうか。
本記事では住宅ローン減税制度の詳細や、制度を利用するための手続きの方法を解説します。

住宅ローン減税制度とは

住宅ローン減税制度は住宅ローンを組んだ際に所得税や住民税の負担を軽減できる制度です

住宅ローン減税制度とは、自己居住用の住宅を購入または建築するために住宅ローンを組んだ場合に、所得税や住民税の負担を軽減できる制度のことです。
基本的には所得税から控除されますが、所得税から控除しきれなかった分が住民税から控除されます。
詳細は後述しますが、住宅ローン減税制度は初年度に確定申告をおこなうことで利用することができます。

住宅ローン減税制度の対象となるのは以下の場合です。

  • 住宅を新築または新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
  • 買取再販住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
  • 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
  • 増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
  • 要耐震改修住宅を取得し、耐震改修をおこなった場合(住宅借入金等特別控除)
  • 省エネ改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
  • バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
  • 多世帯同居改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
  • 耐久性向上改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
  • 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)
  • 耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)

上記のなかでも、一般の方に適用されるケースが多い住宅を新築したり、新築住宅を取得した場合と中古住宅を取得した場合を解説します。

住宅を新築または新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)

個人が住宅を新築したり新築住宅を取得する際に住宅ローンを組めば、住宅ローン減税制度を受けることができます。
ただし、住宅区分や居住している年数によって借入限度額や控除期間が異なります。

住宅区分ごとの借入限度額と控除期間を確認しましょう。

  2022年 2023年 2024年 2025年
長期優良
住宅
5,000万円
(13年間)
5,000万円
(13年間)
4,500万円
(13年間)
4,500万円
(13年間)
認定低炭素
住宅
5,000万円
(13年間)
5,000万円
(13年間)
4,500万円
(13年間)
4,500万円
(13年間)
ZEH水準
省エネ住宅
4,500万円
(13年間)
4,500万円
(13年間)
3,500万円
(13年間)
3,500万円
(13年間)
省エネ基準
適合住宅
4,000万円
(13年間)
4,000万円
(13年間)
3,000万円
(13年間)
3,000万円
(13年間)
その他の
住宅
3,000万円
(13年間)
3,000万円
(13年間)
0円(一定要件を満たせば2,000万円)
(10年間)
0円(一定要件を満たせば2,000万円)
(10年間)
控除率 全期間一律0.7%
所得要件 合計所得金額2,000万円以下(一部1,000万円以下)
床面積要件 50平方メートル以上(一部40平方メートル以上50平方メートル未満)

出典:国税庁

また、住宅を新築したり新築住宅を取得して住宅ローン減税制度を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 住宅の新築等の日から6カ月以内に居住の用に供していること。

  2. この特別控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住の用に供していること。

  3. 次の(1)または(2)のいずれかに該当すること。
    (1)下記(2)以外の場合
    (イ)住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつ、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること。
    (ロ)この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、2,000万円以下であること。
    (2)特例居住用家屋または特例認定住宅等の場合
    (イ)住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満であり、かつ、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること。
    (ロ)この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、1,000万円以下であること。

  4. 10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築または取得のための一定の借入金または債務があること。

  5. 2以上の住宅を所有している場合には、主として居住の用に供すると認められる住宅であること。

  6. 住年およびその前2年の計3年間に次に掲げる譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。

  7. 居住年の翌年以後3年以内に居住した住宅以外の一定の資産を譲渡し、当該譲渡について上記6に掲げる譲渡所得の課税の特例を受けていないこと。

  8. 住宅の取得は、その取得時および取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のある者からの取得でないこと。

  9. 贈与による住宅の取得でないこと。

上記以外にも、住宅区分によって別途適用要件が設けられていることもあるため、該当する住宅区分を国税庁のホームページで確認しておきましょう。

中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)

次に、中古住宅を取得した場合です。
個人が中古住宅を取得した際に住宅ローンを組めば、住宅ローン減税制度を受けることができます。
ただし、新築同様に住宅区分や居住している年数によって借入限度額や控除期間が異なります。

住宅区分ごとの借入限度額と控除期間を確認しましょう。

  2022年 2023年 2024年 2025年
長期優良
住宅
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
低炭素
住宅
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
ZEH水準
省エネ住宅
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
省エネ基準
適合住宅
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
3,000万円
(10年間)
その他の
住宅
2,000万円
(10年間)
2,000万円
(10年間)
2,000万円
(10年間)
2,000万円
(10年間)
控除率 全期間一律0.7%
所得要件 合計所得金額2,000万円以下
床面積要件 50平方メートル以上

出典:国税庁

また、中古住宅を取得して住宅ローン減税制度を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 中古住宅の取得の日から6カ月以内に居住の用に供していること。

  2. 適用年の12月31日まで引き続き居住の用に供していること。

  3. この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、2,000万円以下であること。

  4. 住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつ、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること。

  5. 10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築または取得のための一定の借入金または債務があること。

  6. 2以上の住宅を所有している場合には、主として居住の用に供すると認められる住宅であること。

  7. 居住年およびその前2年の計3年間に次に掲げる譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。

  8. 居住年の翌年以後3年以内に居住した住宅以外の一定の資産を譲渡し、当該譲渡について上記7に掲げる譲渡所得の課税の特例を受けていないこと。

  9. 住宅の取得は、その取得時および取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のある者からの取得でないこと。

  10. 贈与による住宅の取得でないこと。

  11. 建築後使用されたことのある家屋で次のいずれかに該当すること。
    (1)昭和57年1月1日以後に建築されたものであること。
    (2)(1)以外の場合は、次のいずれかに該当すること。
    (イ)取得の日前2年以内に、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準に適合するものであると証明されたものであること。
    (ロ)上記(1)および(2)(イ)に該当しない一定の住宅のうち、その取得の日までに耐震改修をおこなうことについて申請をし、かつ、居住の用に供した日までにその耐震改修により家屋が耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること。

新築同様に上記の他にも、住宅の区分によっては特有の適用要件が設けられていることもあるため、該当する住宅区分を詳しく確認しておきましょう。

住宅ローン減税制度でいくら控除されるのかをシミュレーションで確認しよう

住宅ローン減税制度でいくら控除されるかシミュレーションしましょう

住宅ローン減税制度を利用するといくら控除されるのかをシミュレーションで確認してみましょう。
今回は一つの例としてE-LOANでシミュレーションをおこないましたが、金融機関やその他Webサイトでもシミュレーションができます。
自分の状況を入力し、シミュレーションをしてみましょう。

今回のシミュレーションの前提条件は以下のとおりです。

  • 居住地:東京都
  • 扶養家族:2人
  • 住宅区分:新築の一般住宅
  • 年収:500万円
  • 借入額:3,000万円
  • 返済期間:35年間
  • 金利タイプ:全期間固定金利型
  • 金利:1.97%(2023年5月時点のフラット35の固定金利)
  • 返済方式:元利均等返済、ボーナス返済なし

上記の条件でシミュレーションをおこなうと、住宅ローン控除の合計金額は約221万円となります。

  住宅ローン年末残高 控除額
2023年 29,650,609円 176,450円
2024年 29,042,242円 176,450円
2025年 28,421,780円 176,450円
2026年 27,788,986円 176,450円
2027年 27,143,613円 176,450円
2028年 26,485,411円 176,450円
2029年 25,814,124円 176,450円
2030年 25,129,493円 175,900円
2031年 24,431,251円 171,000円
2032年 23,719,129円 166,000円
2033年 22,992,850円 160,900円
2034年 22,252,133円 155,700円
2035年 21,496,692円 150,400円

参照:E-LOAN

住宅ローン減税制度で住民税が控除される時期は?

住宅ローン控除は所得税から控除しきれなかった場合に限ります

住宅ローン減税制度を利用した場合、いつ住民税が控除されるのでしょうか。住民税の支払方法と併せて解説します。

住民税は翌年度の6月から控除される

住宅ローン減税制度を利用した場合には、年末調整や確定申告をした翌年度の6月から住民税が控除されます。
そもそも住民税は、1月1日~12月31日の所得額をもとに計算され、翌年の6月から納付します。
先述したとおり、所得税で控除しきれなかった分が住民税から控除されることになるため、住宅ローンを組んでいれば誰もが対象となるわけではありません。該当者のみ住民税が控除されるため、注意しましょう。

住民税の支払方法とは

住民税の納付方法は会社員や公務員などの給与所得者と、個人事業主やフリーランスなどによって異なります。
給与所得者の場合は、会社が住民税を毎月天引きしてくれる「特別徴収」によって住民税を納税したことになります。
しかし、個人事業主やフリーランスのように個人で納める「普通徴収」の場合は、6月に届く住民税決定通知書をもとに、6月・8月・10月・1月の年4回に分割または一括で納税しなければなりません。
個人事業主やフリーランスの場合は、自分で納税する必要があるため支払い忘れに注意しましょう。

住宅ローン減税制度を受けるための手続き

住宅ローン減税制度を受けるための手続き

住宅ローン減税制度を受けるためには所定の手続きをする必要があります。
詳しく解説します。

初年度は自分で確定申告をする

住宅ローン減税制度を受けるためには、住宅に入居した翌年の2月16日~3月15日に自分で確定申告をする必要があります。
会社員の場合は、2年目以降は必要書類を揃えて会社に提出すれば年末調整をおこなってくれるため、確定申告をする必要がありません。

会社に提出する書類は以下の2つです。

  • 住宅ローンの残高証明書
  • 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

ただし、個人事業主や年収が2,000万円以上の会社員の場合には、2年目以降も自分で確定申告する必要があるため、注意しましょう。

住民税の控除は申告不要

住宅ローン減税制度を利用しても所得税が控除しきれなかった場合には、住民税から控除されることになります。
住民税の控除は、年末調整や確定申告をおこなうことで居住地の市区町村に通知されるため、申告をする必要がありません。
住民税から控除される場合には、住民税の課税明細書や課税決定通知書に控除額が記載されているため、確認しておきましょう。

まとめ

住宅ローン減税制度では、基本的には所得税が控除されるだけですが、所得税から控除しきれなかった場合に住民税からも控除されます。
年末調整や確定申告をおこなうことで市区町村に通知されて自動的に控除されるため、住民税から控除される場合には自分で申告をする必要はありません。
また、会社員や公務員などの給与所得者と、個人事業主やフリーランスの人では支払方法が異なるため、自分の場合に置き換えて支払方法を確認しておくとよいでしょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。

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