住宅ローンの金利とは?タイプ別のメリット・デメリットや選択方法などを徹底解説

そこで本記事では、住宅ローンの基本的な金利の仕組みから、金利タイプの選び方までわかりやすく解説します。この記事を参考に、住宅ローン金利の基礎知識を得て、自身のライフプランや経済状況に合った最適な金利タイプの選択にお役立てください。
記事の目次
住宅ローンの金利とは

住宅ローンの金利に関する基礎知識
住宅ローンの「金利」とは、住宅購入のために借り入れた額に対して支払う、利息の割合を指した言葉です。金利と似た言葉には、以下の3つがあります。
これらは混同しやすいので注意しましょう。

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・利息:借り手が貸し手に支払う、借りたお金の対価・利子:貸し手が借り手から受け取る、貸したお金の対価・利回り:投資した元本に対して得られた利益の割合
金利は適用される期間によって名称が異なります。
- 年利:年間通して適用される金利
- 月利:1カ月間に適用される金利
- 日歩:1日単位
一般的に、住宅ローンや、普通預金・定期預金の預金金利、国債の金利などは年利で示されます。
住宅ローン金利の種類
住宅ローンの金利には、「基準金利」「優遇金利」「適用金利」の3種類があります。
基準金利
基準金利とは、金融機関が独自に設定する住宅ローンの基本的な金利を指し、「店頭金利」や「店頭表示金利」とも呼ばれます。これは商品の「定価」に相当し、実際に適用される金利ではありません。金融機関はこの基準金利をもとに、借り手の信用力や金融機関のキャンペーンなどに応じて適用する金利を決定します。基準金利は経済状況や市場金利に応じて毎月見直されることが一般的です。
優遇金利
優遇金利とは、住宅ローンの基準金利から一定の幅を引き下げた金利で、「引き下げ金利」とも呼ばれます。これは、商品を購入する際の「割引」に似ており、借り手が負担する金利を軽減できる仕組み。優遇金利を受けるための引き下げ幅や適用条件は、金融機関によって異なります。
なお、優遇金利は大きく2つにわかれており、選択可能です。1つは「全期間優遇」で、住宅ローンの返済期間全体にわたって適用されます。プラン変更がなければ、金利は変更されません。もう1つは、返済開始当初の一定期間だけ金利が優遇される「当初優遇」です。はじめの数年間において経済的負担が軽減される一方、期間終了後は基準金利に近い金利に戻ります。
適用金利
適用金利とは、住宅ローンで基準金利から優遇金利を差し引いて実際に適用される金利です。金融機関によっては「表面金利」や「借入金利」とも呼ばれます。
買い物で例えると、商品に各種割引を適用したあとの「購入価格」と考えてよいでしょう。住宅ローンを組む際には、適用金利が実際の返済額を決定する基準になり、毎月の返済額に直接影響を与えます。適用金利が低いほど、毎月の返済負担が軽くなります。
住宅ローンの金利が決まる要因
住宅ローンの金利はさまざまな要因が影響して決まりますが、主な要因の一つは日本銀行の金融政策です。日本銀行は、経済の安定を目的に金利を調整し、金融市場に影響を与えます。一般的に、日本銀行が低金利政策やマイナス金利政策を採用すると、金融機関が資金を調達しやすくなり、住宅ローンの金利は低くなります。近年では、2016年にマイナス金利政策の導入以降、長く住宅ローンの金利が低い水準で推移。しかし2024年3月にマイナス金利政策が終了し、大手銀行の住宅ローン金利が上昇し始めてきています。
ただ、住宅ローンに影響を与える要因はそれだけでなく、市場金利も関係します。市場金利とは、金融市場での資金の需給によって変動する金利で、日本銀行の政策だけが影響するわけではありません。経済状況やインフレ率、海外の金利動向なども影響します。市場金利が上昇するとローン返済額も増加。住宅ローンの金利は、日本銀行の金融政策と市場金利の動向が密に関係しており、これらの動きを理解することが重要です。
住宅ローンの金利タイプとメリット・デメリット

住宅ローンを選択する際には、変動金利と、固定金利のどちらにするかの選択肢があります。それぞれどのような特性があるのでしょうか。本章では、それぞれの金利タイプのメリットとデメリットを解説します。
変動金利
変動金利とは、経済状況や市場の金利動向に応じて、定期的に変動する金利です。通常、半年ごとに金利が見直され、それに応じて支払う利息も変動します。
変動金利のメリットは、市場金利が低い時期には、低金利を享受できる点でしょう。初期の金利は固定金利よりも低い場合があるため、月々の返済額を抑えられるかもしれません。しかし、金利が上昇すると利息が増加するため、その分の返済額が増えるデメリットがあります。将来の予想が立てづらくなるため、急激な金利上昇に備えるなど将来を見越した計画が必要です。
ただし、変動金利には「5年ルール」と「125%ルール」が存在します。5年ルールとは、金利が変動しても、5年間は返済額が変わらない仕組みのこと。
5年ルール適応中の5年間で、金利が上昇していた場合、大幅な返済額の増加が発生する可能性がありますが、125%ルールが適応されることで、返済額の上昇を緩和できます。125%ルールとは、今までの返済額に対して最大125%(1.25倍)の金額までしか増額できないルールです。そのため、大幅な返済額の急増を防げますが、返済額が増えずに利息が優先され、元金が減りにくくなる場合もあるので注意が必要。
なお、返済額が増加しないために、未払いの利息が発生する場合もあります。未払い利息が発生するまで利息が膨らむと、返済負担がさらに大きくなる可能性があるため、定期的な見直しや長期的な資金計画も検討すべきでしょう。
固定期間選択金利
固定期間選択金利とは、最初の一定期間(2年、5年、10年など)の金利が固定され、その後は再度金利を選択するか、変動金利に移行するタイプをいいます。ローン契約時から選択した期間は、固定金利となり、その間は金利も返済額も変わりません。選択した固定期間が終了すると、再度固定金利期間を設定するか、変動金利に移行するかを選択します。
固定期間選択金利のメリットは、初期の一定期間は金利が変わらないため、安心して返済計画を立てられる点です。特に、金利が上昇するリスクがある期間は、固定金利を選ぶと返済負担の増加を避けられるでしょう。また、固定期間終了後は、金利状況やライフプランに合わせて金利タイプを変更できる柔軟性も大きなメリットです。将来の経済状況に合わせた選択が可能なため、金利リスクを抑えながらも市場の変動に対応できます。
一方で、固定期間が終了すると金利が変動するため、金利が上昇した場合には返済額が増える可能性がある点はデメリットでしょう。また、固定期間が短い場合、最初の固定期間の金利は全期間固定金利に比べて低いですが、再選択時に予想外の金利上昇に直面するリスクがあります。さらに、固定期間終了後に再度固定金利を選ぶ場合、その時点での金利は変動金利よりも高くなる可能性があるため、将来的な返済額の予測が難しい点は避けられません。
全期間固定金利
全期間固定金利とは、住宅ローンを借り入れてから返済期間中ずっと変わらない金利です。つまり、ローンを組んだ時の金利が、返済終了まで固定されるため、金利変動の影響を受けません。全期間固定金利のメリットは、返済額が常に一定なので、長期的な返済計画を立てやすい点です。将来的に金利が上昇しても返済額が増える心配がなく、安定した家計管理ができるでしょう。特に、経済状況が不透明ななかでも、予測可能な返済を維持できるため、リスクを回避したい方に適しています。
一方で、全期間固定金利のデメリットは、その他の金利タイプと比較して、金利が高めに設定されている点です。一般的に、市場金利が低い状態でも固定金利の水準は高い傾向にあるため、短期的には返済額が多くなる可能性があります。また、将来的に市場金利が下がった場合でも、借り入れ時の金利がずっと適用されるため、低金利の恩恵を受けられないかもしれません。さらに、全期間固定金利は、金融機関によって手数料や保証料が高めに設定されており、初期費用が増える場合もあります。
このように、全期間固定金利は安定した返済計画が立てやすいことが魅力ですが、総返済額が他の金利タイプより高くなる可能性があるため、ライフプランに合わせて慎重に選ぶようにしましょう。
住宅ローンの金利タイプの選び方

金利タイプは3つあり、それぞれにメリット・デメリットがあることを解説しました。それでは、どの金利タイプを選択するか判断するにはどうすればよいでしょうか。本章では、金利タイプの選び方を解説します。
住宅ローンの金利タイプに合わせて選ぶ
金利タイプの特徴に合わせて選択する方法があります。
変動金利に向いている人
変動金利は、他の金利タイプに比べて当初の金利が低い傾向があり、初期の返済額を抑えられる特徴があります。そのためこのタイプに向いているのは、返済期間が短い人です。住宅ローンの返済期間が短ければ、金利上昇による影響を受ける前に完済する可能性が高く、リスクを低減できるでしょう。
次に、将来的な金利上昇に耐えられる人にも適しています。変動金利は金利が上昇するリスクがあるため、返済額が増えることを見越して、将来的な負担に耐えられる経済的余裕を持っておかなければなりません。そのため、収入に余裕があり、生活費や他の支出に対する十分な計画が立てられる方が利用するのが望ましいです。
さらに、借入額が少ない人にも変動金利は向いています。借入額が少なければ、金利が上昇した際の影響を受けにくく、初期の返済負担を軽減しながらリスクを管理しやすいでしょう。
市場動向に敏感な人も、変動金利が向いています。市場金利の動向を注視し、経済ニュースに関心を持つことで、金利変動のタイミングを理解し、適切な返済計画を立てられるでしょう。
固定期間選択金利に向いている人
固定期間選択金利に向いている人の特徴は、固定期間終了時の返済額の変動に対応できる人です。
固定期間選択金利は、固定期間終了後に金利が変動するため、固定金利期間中にまとまったお金を貯めておかなければなりません。ある程度の貯蓄がある人や、固定期間終了時に満期保険金や退職金など、まとまったお金が入る予定のある人に適しています。このような人は、将来の変動に対して経済的な余裕を持てるため、安心してこの金利タイプを選べるでしょう。
さらに、固定期間中に教育費や他の支出のピークが過ぎる人も、固定期間選択金利に向いています。固定期間が終了し、金利が上昇するなかでも教育費などまとまった額の支出が落ち着いていれば、住宅ローンの返済額を増やす余裕が出てくるため、長期的に安定した返済が可能です。結果、固定金利期間が終了したあとも柔軟に対応できる体制が整うでしょう。
全期間固定金利に向いている人
全期間固定金利は金利の変動の影響を受けずに、ローン完済までの返済額を常に一定に保ちたい人に適しています。
例えば、長期にわたって安定した収入が見込める人や、月々の支出を正確に把握して計画的に返済を進めたい人は、全期間固定金利が向いているでしょう。特に、家計管理をしやすく、ライフプランに基づいて確実な返済をおこないたい人に適した選択肢です。
また、金利が今後上昇すると予測されている場合や、金利上昇に対応する余裕がない人にも向いています。例えば、退職後や将来的な収入減少が見込まれる人は、固定金利で支出を一定に保つことで、家計のリスクを軽減できるでしょう。
さらに、将来の金利動向に不安がある人や、経済状況の変動に対応するのが苦手な人でも全期間固定金利であれば安心して返済計画を立てられるでしょう。借入開始時から完済まで同じ金利のため、返済プランが一度決まればそれを維持でき、安定した返済が可能です。
ライフステージに合わせて選ぶ
住宅ローンの金利選びでは、ライフステージの変化に応じて柔軟に考える方法があります。結婚、出産、子どもの進学、住宅購入、退職など人生の変化に合わせて最適な金利タイプを選び、都度見直して返済計画を最適化する考え方です。
結婚や出産直後など、短期的に支出が増える期間は、返済額を一定にしたいなら、固定金利が向いています。反対に、収入が安定したり、短期的な金利上昇リスクが少ないと判断される時期には変動金利が向いている場合もあるでしょう。
一方で、子どもの進学時期や退職後の収入減少が見込まれる場合は、将来の支出増を見越して全期間固定金利を選択したり、固定期間選択型の固定期間が長期のものを選ぶと、長期的な家計の安定が見込めます。ライフステージの変化に合わせて、金利の見直しを柔軟におこなうとよいでしょう。
ただし、金利タイプの変更には注意が必要です。金利タイプの変更には、手数料が発生する場合があります。また、変動金利から固定金利に変更する際、変更時の金利水準が上昇している場合、月々の返済額が増えるかもしれません。ライフステージに応じて変えていく場合は、リスクを考慮しつつ慎重に金利タイプの選択をしましょう。
シミュレーションして決める
毎月返済できる金額を考慮し、適用金利を使って変動金利と固定金利をシミュレーションして選ぶ方法もあります。変動金利は将来の予測が完璧にできるわけではありませんが、上昇するケースを予測して計算してみましょう。不動産情報サイト アットホームでは、返済額が試算できるので、活用してみるとよいでしょう。
住宅ローンの金利に関するよくある質問
住宅ローンの金利に関するよくある質問をまとめました。
住宅ローンの金利とは?
住宅ローンの金利とは、借入金に対して支払う利息の割合です。金利は、住宅ローンは通常、年利で示されます。住宅ローンの金利には「基準金利」「優遇金利」「適用金利」があります。基準金利は金融機関が設定する基本金利、優遇金利は基準金利から割引された金利、適用金利は実際に適用される金利のことです。
住宅ローンの金利は、日本銀行の金融政策や市場金利に影響を受けやすく、政策金利が下がると住宅ローンの金利も下がる傾向があります。特に日本ではマイナス金利政策の影響で長らく低金利が続いていましたが、最近の住宅ローン金利は上昇傾向です。市場金利も経済状況や海外の影響を受けて変動し、住宅ローン返済額にも影響を与えるため、これらの動向を理解しておくとよいでしょう。
住宅ローンの金利タイプのメリット・デメリットとは?
住宅ローンの金利タイプは「変動金利」「固定期間選択型金利」「全期間固定金利」の3つです。
変動金利は、経済状況に応じて半年ごとに金利が変動し、低金利時には有利ですが、将来的な金利上昇による返済額の増加リスクがあります。固定期間選択金利は、一定期間の金利を固定でき、その後は再度金利を選べる柔軟性があるものの、固定期間終了後に金利上昇に直面する可能性がデメリットでしょう。全期間固定金利は、借入時の金利が返済終了まで変わらず、返済計画が立てやすいメリットがあります。しかし、返済初期の金利が高く設定され、低金利の恩恵を受けられないかもしれません。
いずれもメリットとデメリットがあるため、自分のライフプランや経済状況に合わせた慎重な選択が必要です。
住宅ローンの金利タイプの選び方は?
住宅ローンの金利選びには、3つの金利タイプを理解したうえで、自分の状況に最適なものを選ぶようにしましょう。
変動金利は、初期の返済額を抑えたい人や返済期間が短い人、将来の金利上昇に耐えられる経済的余裕がある人に向いています。固定期間選択金利は、一定期間の安定した返済を希望する人、期間終了後の変動に備えた資金計画がある人に有用です。全期間固定金利は、長期的に返済額を一定に保ち、金利上昇リスクを避けたい人が合うでしょう。
また、ライフステージに応じて金利を柔軟に見直す方法も有効で、結婚や出産、子どもの進学、自身の退職などの節目に応じて適切な金利タイプを選びましょう。ただし、金利変更には手数料がかかることや、変動金利から固定金利に変更する場合、返済額が増える可能性があるため、注意が必要です。シミュレーションツールを活用して、返済額やリスクを確認しながら最適な選択をおこないましょう。
まとめ
本記事では、住宅ローンの金利に関する基礎知識から、変動金利・固定期間選択金利・全期間固定金利のそれぞれの特徴やメリット・デメリットを解説しました。住宅ローンの金利タイプは、単に利息だけでなく、返済期間全体に大きな影響を与えるため、自分のライフプランや経済状況に合った選択が必要です。本記事を参考に、ご自身に合った住宅ローンの金利タイプを選び、長期的な返済計画をしっかりと立てられるように活用してみてください。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ