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住宅ローンは再建築不可物件に利用できる?融資が困難な理由と解決策とは

再建築不可物件に住宅ローンを利用できるかを解説します
再建築不可物件は住宅ローンの融資を受けにくく、資金調達がネックになりがちです。資金調達の選択肢が少ないために、物件購入の夢が遠のいてしまう可能性も。では、再建築不可物件の場合、住宅ローン融資は諦めなければならないのでしょうか。実は、再建築不可物件でも住宅ローンを組める可能性があります。
そこで本記事では、再建築不可物件とはどのような物件なのか、住宅ローン融資を受けにくい理由と、融資を受けるための方法を解説します。

再建築不可物件とは

再建築不可物件とはどのような物件なのでしょうか
再建築不可物件とはどのような物件なのでしょうか

住宅は安全性や居住環境を守るための基準(建築基準法)に基づいて建てられます。現行の建築基準法は2000年に改正されましたが、それ以前に建てられた建物のなかには、再建築が法律で認められない物件(再建築不可物件)があります。では、再建築不可物件とは何か、どのような例外的措置があるか詳しく説明します。

再建築不可物件の定義

「再建築不可物件」とは、建築基準法(1950年)や都市計画法(1968年)が施行される前に建てられた建物のうち、接道義務を満たしておらず、取り壊したあとに新しい建物を建築できない不動産を指します。現在の建築基準では、敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接していなければ、再建築が認められていません。過去の基準で合法でも、現行法に適合していなければ既存不適格建築物になります。

再建築不可物件の主なデメリット

現行の建築基準を満たしていない場合でも使用は可能ですが、以後の建て替えはできません。そのため再建築不可物件は資産価値が低く、売却や投資の際に高値が付きにくい傾向にあります。

例外的措置

「42条2項道路」と呼ばれるみなし道路では、例外的措置があります。都市計画区域や準都市計画区域内にある幅員4m未満の道路でも、以下の条件を満たす場合は、建築基準法上の道路として認められます。

  • 建築基準法施行前(1950年以前)からすでに存在していた道路で、周辺の住民が日常的に使用している
  • 道路の幅員を将来的に4m以上確保するため、建築をおこなう際には道路の中心線から敷地を2m後退させる義務(セットバック)がある
  • セットバック部分は「道路」としてみなされ、建築物の敷地面積には含まれない


再建築不可物件はなぜ住宅ローン融資が難しい?

なぜ再建築不可物件だと住宅ローンを組むのが厳しいのはなぜでしょうか
なぜ再建築不可物件だと住宅ローンを組むのが厳しいのはなぜでしょうか

再建築不可物件の場合、一般的な物件と比べて住宅ローンが組みにくいのはなぜでしょうか。本章では、その理由を解説します。

担保価値が低いため

住宅ローンを組む際の担保価値の評価では次の4点が重要視されます。

  • 土地の利用可能性
  • 市場での流動性
  • 法的適合性
  • 将来的な資産価値

再建築不可物件はこれらの評価要素を満たせないため、担保価値が低くい傾向に。再建築不可物件は、建物を取り壊しても次に新しい建築物を建てられません。そのため、土地の利用可能性が制限されています。通常の物件なら、新築やリノベーションを含めた多様な利用ができますが、再建築不可物件ではその柔軟性が失われています。

次に、市場での流動性の低さも問題です。再建築不可物件は売却の難易度が高く、一般の購入希望者から敬遠されてしまう要因になるでしょう。さらに、建築基準法に基づく接道義務を満たしていなければ、災害時の安全性や避難路確保に問題があるとみなされ、法的リスクが担保物件の評価に影響を与えます。

加えて、再建築不可物件は、新たな建物の建設ができないため、資産としての伸びしろがありません。時間が経つほど劣化も進み、価値も減少していきます。これらの理由から、再建築不可物件は金融機関にとって担保としての魅力が乏しく、ローン審査が厳しくなる要因になります。

売却しにくいため

不動産が売却される時に重視されるポイントは、主に次の3つです。

  • 購入者が資金調達しやすい(ローン利用の可否)
  • 物件の市場流動性が高い(需要の高さ)
  • 資産価値の将来的な見込みがある

再建築不可物件はこれらの点で不利になります。まず、再建築不可物件は住宅ローン融資が下りにくいため、購入希望者は多額の現金を準備しなければなりません。そうなると一般的な物件を購入する人に比べて、再建築不可物件を購入できる人は著しく限定されてしまいます。

また、接道義務違反や既存不適格などの法的リスクも購入者に不安を与え、購入意欲を低下させるでしょう。そうなると、買い手が将来的な売却益を期待できなくなる点も売却時の障壁です。災害時の避難路不足などの安全性の懸念点も、買い手の判断に影響を与えます。以上の要素によって、再建築不可物件は市場での競争力が低く、一般の物件と比べて著しく不利になりやすいです。

貸し倒れリスクが高いため

貸し倒れリスクが高いと金融機関に判断される点も、住宅ローンの審査に通りにくい要因です。通常、借り手が返済不能に陥ると、金融機関は担保物件を売却して貸付金を回収します。しかし、再建築不可物件は市場での需要が見込めません。買い手も限られるため、適正価格での売却が難しくなるでしょう。

さらに、建物が老朽化しているケースが多く、再建築ができないため、建物自体の資産価値がほぼゼロと評価される可能性もあります。また、接道義務を満たさないなどの法的リスクや、安全性の懸念があると、災害時の復旧や利用に制限があるため、さらに価値が低く見積もられるケースも。再建築不可物件は、金融機関にとって不良債権化する可能性が高いとみなされ、貸し倒れリスクが懸念される点で不利になります。

金融機関の基準に適合しないため

金融機関の融資基準に適合しない点も、住宅ローンを組みにくくする理由となります。住宅ローンの審査では、物件の担保価値、流動性、法的適合性、借り手の返済能力などを見られます。

再建築不可物件は、建物の取り壊し後に新たな建築ができないため、土地自体の価値が著しく低いです。そうなると金融機関にとって、返済不能になった時に不動産を売却して貸付金を回収する時のリスクを増大させます。
さらに、金融機関の基準では、物件が建築基準法や都市計画法に適合している点が求められます。しかし、再建築不可物件は現行法を満たしていないケースが多いでしょう。

加えて、金融機関の多くは「再建築可能な物件」を融資対象の条件としており、再建築不可物件はその時点で審査対象外です。一部の金融機関やノンバンクが融資をおこなう場合もありますが、条件が厳しく、通常よりも高金利や短期間の返済を求められる可能性が高まります。金融機関にとって再建築不可物件はリスクが高く、審査基準を満たさないことから、融資を受けることは難しいでしょう。

再建築不可物件が融資を受けられるようにする方法

再建築不可物件でもローンを組める方法はあるのでしょうか
再建築不可物件でもローンを組める方法はあるのでしょうか

再建築不可物件は、いかなる場合もローンを組めなくなってしまうのでしょうか。実は、再建築不可物件でもローンを組めるようになる方法はあります。本章では、その方法と実行時の注意点をみていきましょう。

ノンバンクから融資を受ける

再建築不可物件を購入する際の資金として、ノンバンクから融資を受ける方法があります。ノンバンクとは銀行以外の金融機関で、主に消費者金融や専門の融資会社などが該当します。これらの機関は、一般的な銀行と異なり、融資基準が柔軟なため、再建築不可物件に対しても融資をおこなう可能性があるでしょう。

ただし、ノンバンクの融資は、金利が高めに設定されている点に注意が必要です。一般の金融機関が提供する住宅ローン金利よりも高い金利が適用されるため、返済額は増加します。さらに、返済期間が短く設定される場合もあり、その分、毎月の返済負担が重くなるかもしれません。

また、ノンバンクでは融資額が少額に制限される可能性も。借入額が物件の価値に見合っていない場合や、借り手の信用状況によっては、融資が難しくなる場合もあります。
ノンバンクから融資を受けると、再建築不可物件でもローンを組むチャンスが広がるでしょう。しかし、金利や返済条件が厳しい場合があるため、内容をよく理解し、慎重に選択しなければなりません。ノンバンクから融資を受ける場合は、事前に返済計画を十分に立て、金利や条件に納得したうえでの申し込みが必須です。

再建築可能物件に変更する

再建築不可物件のままでは融資が受けにくい場合、再建築可能物件に変更する方法も有効です。例えば、隣接地を購入したり、「42条2項道路」として認定される方法があります。この方法を実行すると、再建築不可の物件が再建築可能になり、住宅ローンの利用がしやすくなるでしょう。以下、具体的な方法を説明していきます。

隣接地を購入する

隣接する土地を購入し、その土地を接道部分として利用すると、敷地が幅員4m以上の道路に接するようになります。このように接道義務をクリアして再建築ができるようになれば、金融機関が融資を承認しやすくなるでしょう。隣接地の購入は、物件の資産価値を大幅に向上させ、住宅ローンを組む際にも有利です。ただし、隣接地の所有者との交渉や購入手続きが必要で、追加費用がかかるため、事前に十分な準備が求められます。

「42条2項道路」として認定を受ける

もう一つは、物件が接する道路が建築基準法第42条第2項に基づき、「42条2項道路」と認められる方法です。通常、道路の幅が4m未満の場合、再建築不可とされます。しかし、42条2項道路に指定されると、道路として法的に認められるため、幅員が4m未満でも接道義務を満たすとされます。そうなると再建築が可能になり、住宅ローンを利用できる可能性も。

42条2項道路の認定を受けるためには、自治体に申請し、規定に沿った手続きをおこないましょう。なお、隣接地の購入や42条2項道路の認定には費用や手続きがかかるため、専門家と相談しながら進めるとよいでしょう。

銀行の用途自由なフリーローンを利用する

フリーローンとは、住宅ローンや自動車ローンなどの目的型ローンと異なり、借入目的が特に指定されていない無担保のローンです。フリーローンは銀行やノンバンク、消費者金融など、さまざまな金融機関が提供しています。借り入れた資金をどのような目的で使用してもよいため、再建築不可物件の購入にも利用できるでしょう。

フリーローンは主に無担保ローンのため、借り入れがしやすくなっています。また、柔軟な審査基準を採用しているため、一般的な住宅ローンよりも融資を受けやすいことが利点です。

しかし、フリーローンを利用する際にもいくつかの注意点があるため注意しましょう。まず、金利が高い点です。フリーローンは無担保で融資されるため、金融機関はリスクを補うために金利を高めに設定しています。返済負担が大きくなるため、金利の確認と返済計画を十分に立てなければなりません。

また、フリーローンは融資額に上限が設定されており、一般的に住宅ローンよりも低い融資額となります。そのため、再建築不可物件を購入するには、フリーローンのみでは不足する場合があり、自己資金を多く準備する必要があるでしょう。さらに、返済期間が短く設定されるため、毎月の返済額が高くなり、生活に負担をかける可能性がある点に注意が必要です。

不動産担保ローンなどを利用する

不動産担保ローンは、所有している不動産を担保にして融資を受けるローンです。再建築不可物件に対して、住宅ローンの融資が難しい場合に有効な手段になります。このローンは、所有している不動産を担保として提供するため、借入者が返済できなくなった場合に、担保不動産を売却して貸付金を回収する仕組みです。他に価値のある土地や建物を所有しているのであれば、融資を受けられる可能性が高まるでしょう。
ただし、不動産担保ローンの場合も、金利が住宅ローンより高かったり、返済期間が短めに設定される点に注意が必要です。また、返済が滞った場合には担保不動産の差し押さえ・売却をしなければなりません。担保不動産の売却が難しい場合、そのリスクが現実となる可能性もあるため、返済計画を慎重に立てることが必要です。


リフォームローンの融資を受ける

リフォームローンは、住宅の改修やリノベーションが目的の融資で、住宅ローン融資が難しい場合の選択肢になります。リフォームローンは物件の購入でなく、既存の建物の修繕や改修が目的の融資のため、再建築不可物件に対しても利用可能です。

物件が再建築不可でも、リフォームをしてその利用価値を向上させられると、金融機関の融資が認められるようになるかもしれません。
ただしリフォームローンは、物件の構造的な問題や法的な規制によって、一定のリフォーム内容に制限が設けられる可能性も。また、リフォーム後に価値向上が見込めない場合や、物件自体の状態が極端に悪い場合には、金融機関が融資を認めないこともあります。

さらにリフォームローンは、融資額の上限が設定され、必要な金額が十分にカバーできない場合もあるでしょう。そのため、借入額が足りない場合は、自己資金を追加で投入する必要があるかもしれません。

住宅ローンと再建築不可物件に関するよくある質問

住宅ローンと再建築不可物件に関するよくある質問をまとめました。

再建築不可物件とは?

再建築不可物件とは、現行の建築基準法や都市計画法に適合せず、新たに建物を建て替えられない不動産を指します。現行の建築基準法では、幅員4m以上の道路に敷地が2m以上接していなければなりません。これらの物件は、建築基準法(1950年施行)以前の基準では合法とされていたものが、現在の法律では適合しない「既存不適格建築物」です。
再建築不可物件は取り壊し後の建築が認められないため、資産価値が低く、売却や投資の面で不利になるでしょう。結果、再建築に踏み切れない物件が残ってしまっているのが現状です。ただし、例外的に「42条2項道路(みなし道路)」に接している場合、セットバックをおこなえば再建築が可能になります。

再建築不可物件が住宅ローンの融資を受けにくい理由は?

再建築不可物件が住宅ローンの融資を受けにくい理由は主に4つあります。

1つは、担保価値が低い点です。再建築不可物件は新たな建物を建てられないため、土地の利用可能性が制限され、市場流動性や資産価値も低く評価されるでしょう。
2つ目は、売却の難易度が高い点。融資を受けにくい物件は現金購入者に限られ、買い手が少なく市場価値が下がります。
3つ目は、貸し倒れリスクが高い点です。物件を担保に回収する際、需要の低さや老朽化により、適正価格で売却できない可能性も。
最後に、金融機関の融資基準に適合しない点です。多くの金融機関は建築基準法に適合し、再建築可能な物件を融資対象とするため、再建築不可物件は審査段階で不利になるでしょう。

再建築不可物件でも融資を受けられる方法は?

まず、ノンバンクからの融資は銀行より審査基準が柔軟で、利用しやすい傾向にあります。しかし、金利が高く返済条件が厳しい点に注意しなければなりません。

フリーローンは無担保で用途の制限がありませんが、金利が高く、借入額に制限があるため、追加で自己資金を用意しなければならない可能性があります。

不動産担保ローンでは所有している不動産を担保に融資を受けられます。しかし金利が高く、返済不能時のリスクを理解しなければならないでしょう。また、リフォームローンを利用して物件の価値を向上させる方法もありますが、融資額に限界があるため、計画的な資金準備が重要です。

さらに、隣接地を購入して接道義務を満たしたり、自治体に申請して「42条2項道路」と認定されると再建築可能物件に変更でき、融資の可能性を高められます。

まとめ

本記事では、再建築不可物件の概要と住宅ローン融資を受けにくい理由、融資を受けるための方法を解説しました。再建築不可物件は、資産価値が低く見られがちな点や、売却に難があるため、そのままでは住宅ローンの融資を受けにくい欠点があります。しかし、ローンの選択肢を広げたり、隣接する土地を購入するなどの対策を講じることで、融資を受けられる状態になる可能性があります。ただし、実行には追加の資金が必要になったり、返済負担が重くなる場合もあるため、専門家のアドバイスを受けるなどして、十分考慮のうえ判断しましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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