損したくない方必見!住宅ローンの前倒し返済で効果を発揮するには?

たしかに、住宅ローンの前倒し返済はやみくもに実行してもうまくはいきません。注意しなければならないことや、前倒し返済が適切ではないタイミングもあります。
とはいえ、返済期間が35年間続く住宅ローンを組むと、完済までが長く不安に思う方もいらっしゃるでしょう。定年退職したあとにも、返済が続く設定をしているならなおさらです。老後、収入が減った時に、現役時代と同じ金額を返済していくことは無理だと思う方もいらっしゃると思います。
住宅ローンは早く完済して自宅を完全に自分のものにしたい、そのためにも前倒し返済をしたい、と思っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、住宅ローンの前倒し返済をする利点と、前倒し返済をすると損をする可能性があるケースを紹介します。そして、どのようにすれば前倒し返済の効果を十分に発揮できるかに焦点を当てて、解説していきます。
記事の目次
住宅ローンの前倒し返済をする利点とは?

住宅ローン前倒し返済の利点は、利息が節約できることです。また支払う利息が減るため、総支払額が減ります。この章では住宅ローン前倒し返済の利点を詳しく解説していきます。
利息が節約できる
住宅ローンは通常、長期間にわたって支払われます。そして支払期間が長いほど、支払う利息も多くなります。前倒し返済をすると、この利息総額を減らすことができます。
ではここで、3,000万円の住宅ローンを35年ローンで組んだと仮定した時の利息総額をシミュレーションしてみます。
【シミュレーション条件】
- 返済金額 3,000万円
- 返済方式 元利均等方式
- 金利 固定1.4%(全期間固定と仮定)
- 期間 35年
前述の条件でシミュレーションすると、返済金額合計は3,796万4,849円、利息総額は796万4,849円でした。
続いて、一部前倒し返済をすると、利息がどのくらい減るのかをシミュレーションします。返済開始から11年後に一部前倒し返済(500万円)を実行したとすると、返済金額の合計は、3,626万3,629円になります。軽減できた利息の金額は、170万1,220円となります。
約170万円の利息が軽減されるとなれば、うれしいと感じる方は多いのではないでしょうか。
ローン返済期間を短縮できる
前倒して住宅ローンを支払うと、利息が節約でき、総支払額が減ります。もし、毎月の返済金額が変わらなければ住宅ローン完済までの期間を短縮できます。
例えば上記の条件でシミュレーションすると、返済期間は28年10カ月になります。ローン借り入れ当初の返済期間から6年2カ月短縮できます。
例えば、住宅ローンの借り入れを35歳でおこなったとします。すると返済期間は35年なので、借り入れ当初は70歳まで返済が続くことになります。しかし、前述の内容で前倒し返済をしたとすれば、64歳2カ月で住宅ローンが完済できる計算になります。
月間返済額を抑えることもできる
もし住宅ローンの返済期間を変えない場合は、毎月の返済金額を抑えることもできます。
例えば上記の条件でシミュレーションすると、毎月の返済金額は9万392円から6万9,942円になります。ローン借り入れ当初の月間返済額から、20,450円安くできます。
ただし、月間返済額を抑える方法をとると、支払総額は3,707万4,981円になります。軽減できた利息の合計は88万9,868円で1.1の条件よりも少なくなります。

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住宅ローンの前倒し返済で損をするのはどのような時?

住宅ローンの前倒し返済をおこなうと、ローンの総支払額が減り、返済期間を短縮できる利点があります。しかし、前倒し返済はいつでも好きな時におこなえばよいわけではありません。この章では、住宅ローンの前倒し返済をすると損するのはどのような時か解説します。
手元の現金が減りすぎてしまった時
ある程度お金が貯まったからといって前倒し返済にあててしまい、手元の現金を減らしすぎてしまうのは賢明ではありません。もし、急な支出や予期せぬ出費が発生した場合、生活に支障をきたす恐れがあります。また、子どもの進学や車の買い替えなど、近いうちに出費があることが予想される時に前倒し返済をするのは、慎重になるべきです。
住宅ローンの前倒し返済を検討するなら、十分な余裕資金でおこないましょう。支払いが終わったあとで思いもよらない出費があれば、資金が足りず困ってしまいます。
手数料が予想以上にかかった時
前倒し返済は、どの銀行でも無料でできるわけではありません。返済手数料がかかったり、事務手数料がかかる場合があります。利息を浮かせようと前倒し返済をしたのに、手数料まで気が回らなくて、合計したら思った以上に利息軽減額が少ないことも考えられます。
住宅ローン控除が使えなくなった時
住宅ローンを返済している間、10年ないし13年間は住宅ローン控除を受けることができます。諸条件がありますが、クリアする場合、年間で住民税の金額を上限に所得税と住民税が軽減されます。
ただし年末の借入残高によって、住宅ローン控除を受けられるかは異なります。もし前倒しで返済をしたために、既定の金額を割ってしまったら、住宅ローン控除を受けることはできません。
前倒し返済をした利息の軽減効果よりも、住宅ローン控除の金額の方が多ければ、前倒し返済をした成果が感じられなくなります。
返済に回すよりも運用したほうがプラスになった時
前倒し返済に使う予定の資金を運用した時に、運用益のほうが利息の軽減額よりも多いようであれば、投資に使うほうがよいでしょう。前述のように、35年ローンを組んで11年目で500万円の前倒し返済をすると、約170万円の利息を払わずに済むことになります。
もし500万円を前倒し返済に使わず投資したとして、170万円以上の利益が出れば、前倒し返済するよりも得になります。
170万円以上の利益を出したいとすると、年利1.23%以上で運用すれば達成できる計算です。これくらいの年利であれば、実現できそうですね。前倒し返済に気を取られて、資産を増やせるチャンスを失ってしまうのはもったいないかもしれません。
金利がさほど高くなかった時
低金利の時期には、前倒し返済の効果が発揮されにくいので注意が必要です。金利が低ければ、支払う利息のトータルが比較的低くなります。特に変動金利で借り入れている場合は、金利が低い間は急いで前倒し返済をする必要はありません。前倒し返済に資金を使わない代わりに、お金を手元に残しておく方が賢明です。
住宅ローンの前倒し返済で効果を発揮するには?

住宅ローンの前倒し返済は、資金があればいつでも実行できます。しかし、どのような時でも良いとは限りません。では住宅ローン前倒し返済の効果を十分に発揮するには、どうすればよいのでしょうか。
十分な資金を用意する
そもそも資金が十分にあることが重要です。住宅ローンの前倒し返済には、大きな一括支払いが必要になります。無理をして資金を捻出している状態だと、日常生活の支出に支障をきたす可能性があります。優先事項を見極め、十分な備えを持ってから取り組むことが重要です。
生活費はなんとか足りる状態でも、いつ突然の医療費や修理費などの出費が発生するかはわかりません。予備資金がない状態で、大切な貯蓄を前倒し返済に充ててしまうと、予期せぬ出費に対処できなくなってしまいます。
前倒し返済をするなら、返済にあてる金額があるのはもちろんのこと、支払いをしたあとの日常生活に支障がないか、緊急予備費も十分にあるかをよく確認して実行しましょう。
すべてのコストを把握してシミュレーションする
住宅ローンの前倒し返済をするなら、かかる費用や住宅ローン控除などすべてを含めてシミュレーションをおこないましょう。
前倒し返済をするには手数料や諸経費がかかります。手数料や諸経費は、銀行によって異なるため、自分が利用する銀行はどのような設定になっているかよく確認しておきましょう。
また前倒し返済をすると、住宅ローン残高が変わるので、住宅ローン控除が適用されなくなる可能性があります。そのため、住宅ローン控除を受けた場合の減税効果も計算しておきましょう。このようにまずは、前倒し返済にかかるコストの全体を正確に把握します。
コストの全体がわかったら、前倒し返済をした時の利息の軽減効果と、住宅ローン控除の金額や前倒し返済の手数料を調べてシミュレーションをしましょう。計算した時に、前倒し返済をしたほうが得になるかも調べておきます。
ただし、住宅ローンの前倒し返済の効果を計算するのは、専門的な内容なので難しいと感じる方が多いでしょう。自分だけで計算し、良し悪しを判断するのは難しいと感じる方は、専門家に相談しましょう。
前倒し返済手数料が安い金融機関を利用する
住宅ローンの前倒し返済にかかる費用をできるだけ抑えられる銀行を利用するのもよい方法です。住宅ローンの借り入れをする段階から、前倒しで返済する可能性を考えて金融機関を選んでおくと、あとでメリットがあります。
最近では、インターネット経由で前倒し返済ができる金融機関が増えてきています。ネットを利用すると手数料が無料だったり、窓口で手続きをするよりも大幅に割引になる場合もあります。手数料がお得なうえに、1万円単位で返済ができるものもあります。返済手数料が安い金融機関を利用して、返済にかかるコストをカットし、前倒し返済の効果をあげましょう。
この記事のまとめ
住宅ローンの前倒し返済をする利点は何?
住宅ローンを組んだ当初に支払う予定になっていた利息が節約できることです。さらに、住宅ローンの返済期間を短縮したり、月々のローン返済負担金額を減らすこともできます。
住宅ローンの前倒し返済で損をするのはどういった時?
住宅ローンの前倒し返済をしたために、手元の現金が無くなってしまった場合や、予想以上に手数料がかかり、利息の軽減効果があまりなかった場合です。
また、住宅ローン控除期間で前倒し返済をしたために、ローン残高が規定額以下になってしまい住宅ローン控除対象外になってしまう場合もあります。さらに、返済して得る利息の軽減額よりも、投資などで運用して得た利益のほうが高くなる場合も、あえて前倒し返済をしないほうがよい場合があります。
なお、借り入れ金利があまり高くない場合、そもそもの支払う利息も少ないので軽減効果があまり出ないこともあります。
住宅ローンの前倒し返済で効果を発揮するには?
前倒し返済をしても家計に影響がないほど、資金が十分ある時に実行するようにしましょう。また、かかる費用すべてを含めてシミュレーションをし、利益がある場合に実行するようにしましょう。借り入れ当初から、前倒し返済の手数料が安い金融機関を選ぶのも良策です。自分で判断がしかねる場合は、積極的に専門家へ相談をしましょう。
本記事では、住宅ローンの前倒し返済をする効果とデメリットをふまえたうえで、どのようにすれば前倒し返済の効果を発揮できるかに焦点をあてて解説してきました。前倒し返済をする場合、メリットもあればデメリットもあります。ただ、前倒し返済できる金額によりますが、数十万円から数百万円の利息の軽減効果があるのは確かです。
軽減できた金額に対し、多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれです。前倒し返済をして、返済期間を短縮できた時、住宅ローン返済のプレッシャーから解放されるので、実質の金額以上に、やって良かったと感じるかもしれません。あるいは、シミュレーションが足りず、こんなはずではなかったと後悔してしまう可能性もあります。
住宅ローンの前倒しを検討する場合は、想定されるすべての要素を盛り込んでシミュレーションしましょう。専門家に相談のうえ、確実なメリットがあると判断できれば実行するのがおすすめです。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
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