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公務員が住宅ローンのボーナス払いをする前に考えるべきことは?

住宅ローンの返済時にボーナス兼用にすべきなのか、公務員の方は必見です!
民間企業に勤めている方と比べ、住宅ローンが組みやすいとされる公務員。住宅を購入するにあたり、ボーナス時にまとまった額を支払う「ボーナス併用払い」を考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、公務員が住宅ローンを組みやすい理由やボーナス兼用払いのメリット・デメリットなどを解説します。公務員以外の方でも、安定した収入がある場合には、住宅ローンの契約を有利に進められます。住宅ローンは長期間に渡って返済が続くため、事前に計画を立てることが大切です。

今回の記事を参考に、ボーナス払いを利用すべきか、よく考えましょう。

公務員が住宅ローンを組みやすい理由

本章では、公務員が住宅ローンを組みやすい理由を解説していきます。住宅ローンは長期に渡って返済するため、銀行や信用金庫などの金融機関は、契約者に安定した返済能力があるかを審査します。安定した返済能力をはかるポイントとして、次に挙げる3点が、公務員がローンを組みやすい理由となります。

失業リスクが低い

一つ目は、公務員の失業リスクが低い点です。公務員は国家公務員法や地方公務員法によって身分が保証されており、雇用が安定しています。民間企業と違い経済状況に左右されないため、経営不振によるリストラもありません。不祥事や問題を起こさなければ、定年まで勤めることが可能です。
雇用が安定しているため、継続して安定した収入を得られます。そのため、銀行などの金融機関から見ても、安心して融資を実行できます。失業リスクが低い公務員は、長期間の返済を前提にしている住宅ローンにおいて有利となります。

収入が安定している

二つ目は、公務員の収入が安定している点です。公務員の収入は、給与規定に基づいて決定されており、経済状況の変化によって変動することはありません。また、公的機関の予算によって左右されることもないため、安定しています。

例えば、東洋経済オンライン「国家公務員の「夏賞与最大減」に見る民間との差異」によると、2022年夏に支給された国家公務員のボーナスは、2021年の夏と比べて約7万6,300円減少し、0.15カ月分の引き下げに留まっています。2009年のリーマンショック後も、マイナス幅は約5万5,000円となっており、経済状況にも大きく影響を受けないことがわかります。

住宅ローンを組む際には、収入を証明する必要があります。安定した収入がある公務員は、銀行や信用金庫などの金融機関からの信用が高まり、ローンを組みやすくなります。

退職金制度が整っている

三つ目は、公務員の退職金制度が整っている点です。辞令や自己都合で退職した場合には支給されませんが、定年退職する際には支給されます。金額は、勤続年数や役職によって異なりますが、法律で規定されています。国家公務員の場合、内閣官房「退職手当の支給状況(令和3年度)」によると、勤続40年以上の平均支給額は、2,235万円となっています。

公務員は法律によって給与制度や雇用が保証されており、金融機関から見ても信用が高いため住宅ローンが組みやすくなっています。

データで見るボーナス払い

長い期間返済をし続ける住宅ローン。みなさん月々どのくらい返済しているのでしょうか。月々の平均返済額とアンケート結果をみていきましょう。

年間返済額と返済負担率

物件種別 平均借入金額 平均返済額 返済負担率
注文住宅 3,909万円 139.4万円
(11.6万円)
18.1%
分譲戸建住宅 3,364万円 126.0万円
(10.5万円)
19.8%
分譲マンション 3,001万円 150.4万円
(12.5万円)
18.1%
中古戸建住宅 1,658万円 99.7万円
(8.3万円)
16.8%
中古マンション 1,756万円 101.3万円
(8.4万円)
14.2%

出典:国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査報告書

国土交通省の「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」によると、住宅ローンの年間返済額は、分譲マンションの取得世帯が高く150.4万円、月平均にすると約12.5万円となっています。

年収に対する住宅ローンの返済負担率は、注文住宅の場合、全国平均で18.1%、分譲戸建住宅では19.8%、分譲マンションでは18.1%となっており、だいたい20%以下に収めている世帯が多いようです。

上記の結果からも、無理のない範囲で返済計画を立て、実行しているのがわかります。

ボーナス払いを利用している人の割合

株式会社MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」に関するアンケート調査によると、ボーナス払いを利用している方は34.7%でした。30代では33.3%、40代では32.5%、50代では38.3%となっており、50代でボーナス払いを選択した方が多いことがわかります。

ボーナス払いを選んだ理由でもっとも多かったのが「毎月の返済額を減らしたかったから」で54.5%と、月々の返済額を少なくしたいと考えた方が多いようです。次に多かった理由には「定年までに住宅ローンを返済したかったから」で31.3%の方が挙げています。 「ボーナス払いを選択したことを後悔しているか」の問いには、「後悔している」と回答した方が13.2%と、約7〜8人のうち一人の割合となっています。

住宅ローンの返済は長い期間かかるため、少しでも月々の負担を減らしたい思いからボーナス払いを選択されている方が多いようです。

ボーナス払いの割合別で見る総返済額の差

ボーナス払いを多くするほど、総返済額は増えていきます

ボーナス払いをした場合に、総返済額がどう変化するのかシミュレーションしてみましょう。ボーナス払いがない毎月払いのみ、ボーナス払い20%、ボーナス払い40%の3パターンで比較してみました。下記が比較表です。

<条件>
借入れ金額:3,500万円
金利タイプ:全期間固定金利(元利均等返済)1.2%
返済期間:35年

  ボーナス払い
なし
ボーナス払い
20%
ボーナス払い
40%
月々の返済額 10万2,095円 8万1,676円 6万1,257円
ボーナス月の
返済額
0円 12万2,761円 24万5,522円
利息
(月合計)
788万56円 630万3,996円 472万7,939円
利息
(ボーナス月合計)
0円 159万3,233円 318万6,499円
利息合計 788万56円 789万7,229円 791万4,438円
総返済額 4,288万56円 4,289万7,229円 4,291万4,438円

※あくまでシミュレーションによる試算であり、実際とは異なる場合があります

上記の場合、ボーナス払い20%にすると3,500万円のうち、700万円をボーナス払いで返済していきます。40%の場合は、1,400万円をボーナスで返済していくローンを組みます。

ボーナス払いなし、毎月払いの場合は約10万円ですが、ボーナス払い40%の場合のボーナス月の支払いは約24万円と、返済額に2倍以上の差があります。

また、ボーナス払いの割合を大きくしていくと利息が増える分、総返済額が増えていくのがわかります。

ボーナス払いを利用するか、家計の負担を考えて決めましょう。

ボーナス払いのメリット

住宅ローンを支払っている約3割の方が選んでいるボーナス払いですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。次の二つがメリットとして挙げられます。

毎月の返済額を抑えられる

まずは、先ほどご紹介したアンケートで54.5%の人がボーナス払いを選んだ理由に挙げていた毎月の返済額が抑えられる点です。支出に対する住宅ローンの割合が減るため、毎月の経済面・精神面においても負担が軽減されます。

また、返済額が少なくなる分、生活費に余裕が生まれます。貯金に回したり、他のローンの返済に充てたりすることも可能です。

返済期間を短縮できる

返済期間が短くなる点も、ボーナス払いのメリットです。長期間の返済を前提とした住宅ローンですが、ボーナス払いでまとまった金額を払うことで、返済期間を短くできます。また、早く返済できれば、金銭的な面だけでなく、払い続けなければならない精神的なプレッシャーからも解放されます。

国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」によると住宅ローンの返済期間は、注文住宅、分譲戸建住宅取得世帯、分譲マンション取得世帯で「35 年以上」がもっとも多くなっています。世帯主の年齢をみると、新築注文住宅、分譲戸建住宅、分譲マンションでは 30代がもっとも多くなっています。仮に30歳でローンを契約した場合、65歳まで返済を続けることになります。 ボーナス払いを併用すると、定年退職するより前に返済できるため、安心感があります。

住宅ローンをボーナス払いすることで、毎月の返済額を抑えつつ、返済期間を短縮できます。月々の家計の安定につながるでしょう。

ボーナス払いを利用するデメリット

月々の返済額が抑えられ、返済期間を短縮できるボーナス払いですが、メリットばかりではありません。次の二つがデメリットとして挙げられます。

利息の負担が大きい

ボーナス払いのデメリットとして、利息の負担が大きい点が挙げられます。ボーナス払いは、本来毎月払うべきものをボーナス月に先延ばしにしている状態です。元金の減り幅が少ないため、元金に対してかかる利息の負担が大きくなります。 まとまった額を返済するため、一見すると毎月払いよりも返済しているように感じますが、実際は利息の負担が大きいため、総返済額が増えます。

シミュレーションでは固定金利を利用した場合を想定しましたが、変動金利で変化がある場合は利息の負担はさらに大きくなるでしょう。ボーナス払いを利用する際には、利息の負担が増えることを踏まえてシミュレーションをし、無理なく返済できる金額にしましょう。

ボーナスが支給されなかった時のリスクが大きい

ボーナスが支給されなかった時のリスクが大きい点も、ボーナス払いを利用するデメリットの一つです。公務員は民間企業よりも雇用が安定しているため収入も安定していますが、カットされるリスクはゼロではありません。また、転職して収入が減少する可能性もあります。

ボーナスに頼った返済計画を立てていると、もしカットされてしまった場合、返済できなくなってしまいます。ボーナスが支給されない、もしくはカットされたなどのリスクを考慮し、資金を確保する必要があります。 ボーナス払いを利用する際には、利息の負担が大きくなることや、ボーナスが支給されなかった場合のリスクを考慮したうえで、返済計画を立てましょう。

まとめ

公務員は法律によって雇用が守られているため、収入が安定しており住宅ローンが組みやすくなります。ボーナス払いを利用すると月々の返済額が抑えられ返済期間も短くなりますが、利息が増えるため結果として総返済額は多くなります。

また、ボーナスがカットされたり支給されなかった時のリスクもあり、ボーナスに頼らない返済計画を立てる必要があります。利用する時には、家計の負担をよく考えたうえで判断しましょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ
ライフマネー研究所

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