住宅ローン10年固定金利終了後の手続きと注意すべきポイントとは?

記事の目次
住宅ローンの金利とは

住宅ローン金利タイプは大きく2つあります。
- 変動金利
- 固定金利(全期間固定金利と固定期間選択型)
それぞれのメリットやデメリットは以下のとおりです。
変動金利
変動金利は、住宅ローンを契約している金融機関が設定する基準金利から、与信などにより決まる優遇金利を差し引いた金利です。返済は元利均等返済方式でおこなわれ、金利の変動により返済額の利息比率が変化します。
変動金利の大きなメリットは、他の金利型に比べて低金利になることです。金利が下落したり横ばいであった場合、返済総額が少なくなる可能性があります。また、支払額の急激な変化を緩和する措置があり、金利が上がっても毎月の返済額はすぐに増加しません。返済額は5年ごとに精査され、増加しても上げ幅は最大125%に制限されています。
変動金利の特徴的なデメリットは、金利変動により返済総額が変わり、返済額や期間が予定と異なることがある点です。支払額の激変緩和措置により毎月の返済額は変わりませんが、利息の占める割合が増加し、元金の返済が進みません。返済額の上昇幅も25%に抑えられているため、金利の上昇によって返済額の元金部分が完全になくなる可能性もあります。さらに金利が上昇し続けると、利息分も賄えず、未払利息が生じることで住宅ローンの残高が増加するリスクがあります。返済期間終了時にはローン残高を一括で支払わなければならなくなるので、変動金利を利用する際は慎重になる必要があります。
固定金利
固定金利のうち全期間固定金利は、返済が終了するまでの全期間で金利の変更がないタイプを指します。また、固定金利選択型は金利が一定期間変わらないタイプです。選択できる期間は、2年・3年・5年・10年・20年などがあり、期間が短いほど金利が低くなる傾向があります。期間中は原則として金利タイプを変更できず、手続きを取らないと通常では自動で変動金利に切り替わります。
固定金利のメリットは、返済計画の見通しが立てやすく金利上昇リスクを回避できる点です。借入期間のうち、当初の一定の期間を固定金利とすることができる特約期間中は、毎月の返済額が一定になるため返済計画を簡単に立てられ、市場金利の大幅な変動による影響を軽減できます。もし、住宅ローンの金利が上昇しても、当初に決めた金利が変更されることはないため、不安を抱く必要はありません。さらに、将来未払い利息が発生する可能性もないため、安心して返済できます。
固定金利を選択することにより、子どもの教育費や介護費用などのライフイベントに備えるための資金を計画的に貯めることができます。固定金利は、将来の金利上昇リスクから守るためにも有効な選択肢です。
固定金利には利点がありますが、考慮すべきデメリットもあります。第一に、固定金利は変動金利よりも高くなる傾向があります。そのため、将来的に金利が下がるようなことがあれば、変動金利に比べて総返済額や支払利息が多くなる可能性があります。
第二に、固定期間中は住宅ローンの金利が下がっても、金利を見直すことができません。住宅ローンを他の金融機関に乗り換えることは可能ですが、借入残高、借入期間、金利の差によっては、諸費用(手数料、保証料など)がかかり、借り換えのメリットが減少する場合があります。
固定金利選択型の場合、固定金利を再選択する場合には手数料が発生することがあります。さらに、特約期間が終了した後も固定金利を継続する場合には、必要な手続きをおこなう必要があります。もし、何も手続きをおこなわない場合、ローンは自動的に変動金利に切り替えられます。
変動金利と固定金利のメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
---|---|---|
変動金利 | ・他の金利型に比べて低金利 ・支払額の急激な変化を緩和する措置がある |
・金利変動により返済総額が変わり、返済額や期間が予定と異なることがある ・金利の上昇によって返済額の元金部分が完全になくなる可能性がある ・金利が上昇し続けると、利息分も賄えず、未払利息が生じることで住宅ローンの残高が増加するリスクがある |
固定金利 | ・返済計画の見通しが立てやすく金利上昇リスクを回避できる。 ・将来未払い利息が発生する可能性がない。 |
・固定金利は変動金利よりも高くなる傾向がある。 ・固定期間中は住宅ローンの金利が下がっても、金利を見直すことができない。 ・固定金利選択型の場合、固定金利を再選択する場合には手数料が発生することがある。 |
どの金利パターンで住宅ローンを借りるかはメリット・デメリットをよく理解して選びましょう。
10年固定期間終了後どうなる?その手続きとは?

10年の固定金利を選択し期間が終了したあとの選択肢は以下の3つです。
- 期間選択型の金利タイプを再考する
- 変動金利になる
- 他の金融機関に借り換える
この項では、それぞれを選んだあとの流れや手続きを解説します。
期間選択型の金利タイプを再考する
現在住宅ローンを借り入れている金融機関で借り入れを継続する場合、固定期間終了後に固定金利にするのか、変動金利にするのか、金利タイプを選び直すことが可能です。10年固定金利終了後、再度期間選択型の金利タイプにしたい場合には、必要な手続きをとり固定金利期間を再設定する必要があります。
手続きは、金融機関が指定する期間内におこないます。方法としては、Webサイトや電話、書面などから手続きができます。どのような方法をとっても完全無料で手続きができる場合もあれば、Webでおこなえば無料になる場合もあります。いずれの方法をとっても手数料が発生する金融機関もあります。具体的な手続きの方法は金融機関によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
変動金利になる
通常、当初設定していた固定金利の期間が終了したあと、金利を変動タイプにしたいと思った場合、特に手続きをおこなう必要はありません。手続きをおこなわなければ自動的に変動金利に移行されます。変動金利以外を利用したい場合は、自動移行される前に手続きが必要です。
固定金利を選択していたあと変動金利を利用する時に注意する点は、金利の優遇幅が小さくなり結果として金利が大きく上がってしまう可能性があることです。固定金利は期間内で金利が優遇される反面、期間を過ぎると金利が大きく上がることがあります。そのため、これまでのローンよりも返済額が大きくなる場合があります。同じ銀行でローンを継続する場合には、固定期間終了後の金利も確認しておくことをおすすめします。
他の金融機関に借り換える
固定金利を選んでも変動金利を選んでも、同じ金融機関で住宅ローン融資を継続する場合の利点は、手続きが比較的簡単なことです。もしわからないことがあっても金融機関に問い合わせればよいので不安感も少ないでしょう。しかし、固定金利期間終了後、同じ金融機関で再度ローンを組もうとすると、これまでよりも金利が上昇する場合があります。そのため、固定期間終了後は他の金融機関が提供する住宅ローンに借り換えるという選択肢を取る場合もあります。借り換え手続きには諸費用がかかることがありますが、借り換え先の金利が低ければ、諸費用があっても総返済額を減らすことができます。総額が低くて済むならぜひ取り入れたいものですが、借り換えを検討する手続きはどのようにすればよいのでしょうか。
まずは、借り換え先の金融機関が提供する住宅ローンの金利を、現在の金利と比較しましょう。インターネット上にあるツールを使えば複数社を簡単に比較検討できるので活用しましょう。今自分が借りているローン金利と比較して差が大きい場合には、借り換えによって総返済額を減らすことができる可能性があります。次に、借り換えにかかる諸費用を確認しましょう。金融機関によって異なりますが、手数料や登記費用、保証料などがかかる場合があるので確認が必要です。
確認ができたら、審査を申し込みます。審査には、収入や資産、勤続年数などが審査基準になります。申し込み前に自己の信用情報を確認しておくことをおすすめします。借り換えは、新規の借り換えよりも審査が厳しい傾向があります。借り換えを検討していても、必ずしも切り替えられるわけではないことも理解しておきましょう。審査に通過すれば、抵当権の抹消手続きをおこない融資が実行されます。
借り換えを実行して、総返済額が少なくなれば大変ありがたいことです。しかし借り換えを検討する場合には、将来的な収入や年齢、健康状態、物件の担保価値などを含めて総合的に判断しましょう。借り換え先の金利が低いからといって安易に判断せず、さまざまな場合を想定して将来的な支払い能力を考慮するようにしましょう。
10年固定金利を選択するのに向いている人

住宅ローンを選ぶ際に、10年固定金利が向いているかを判断するポイントはどのようなところでしょうか。それは、固定期間が終わるタイミングで金利が上昇しても、返済に支障が出ないような自己資金や将来の収入見込みがあるかです。そのため、以下のような人が10年固定金利を選択するのに向いています。
- 自己資金に余裕がある人
- 収入が増える見込みがある人
- 教育費や車のローンが終わる人
- 金利状況に合わせて柔軟な動きができる人
自己資金に余裕がある人
まず、自己資金に余裕がある人が向いています。10年固定金利の住宅ローンを利用するときにネックになるのは、固定期間中の金利変動に対策を取ることができないことです。しかし、自己資金に余裕があれば、金利が上昇しても柔軟に対応できます。
収入が増える見込みがある人
次に、固定期間終了までに収入が増える見込みがある場合も、固定金利を選択するのに向いています。収入が増える見込みがある場合は、金利が上昇しても対応しやすいというメリットがあります。このようなケースとして、個人事業主で収入が増加する見込みがある場合や、公務員で将来的に収入増加が確定している場合が挙げられます。ただし、あくまでも当初10年間の返済に対し余裕をもって完済できることが前提です。
教育費や車のローンが終わる人
さらに、教育費や車のローンが終わる人やピークを過ぎる予定の人も固定金利が向いています。教育費や車のローンが終われば、家計の負担が軽減されます。そのため、住宅ローンの返済に余裕ができ、金利上昇に対応しやすくなるからです。
金利状況に合わせて柔軟な動きができる人
最後に、金利状況にあわせて、適切な行動ができる人も10年固定金利が向いています。金利状況が変化した場合、金利が下がるタイミングで変動金利の住宅ローンに切り替える方法があります。
固定期間が終わるタイミングで金利が上昇しても返済に支障が出ない上記のような人は、10年固定金利を利用するメリットを活かせる人です。ただし、将来的な収入増加の見通しや資金繰りなどを十分に考慮したうえで、慎重に判断するようにしましょう。
当初10年固定金利を選ぶ時の注意点

住宅ローンを選択する際には、返済能力に応じた適切なプランを選ぶことが重要です。特に10年固定金利を選択する場合には以下の点に注意すべきです。
- 10年固定金利を選択すると、11年目以降に金利が上昇する可能性がある
- 固定金利終了後の金利が予測できず、金利上昇リスクを負うことになる
10年固定金利の場合、初めの10年間の金利が低く設定されることがあります。10年間は金利が優遇される状態ですが、期間終了後の金利は予測できないことから、金利上昇リスクを負うことになります。したがって、10年固定金利住宅ローンを選ぶ際には、このリスクを念頭に置いておく必要があります。
もし、返済を開始してすぐに金利が大幅に上昇し、11年目以降に再び低金利時代が訪れたとします。完済するまでに低金利が維持されたとすれば、固定金利にしたことが大きなメリットになります。ただし、予測が当たる確証はありません。
金利上昇リスク軽減のために10年固定金利を採用したいと思っている場合は、返済能力を考慮して借入額を決めることが重要です。また、十分な余裕を持って返済計画を立てることで、予想外の金利上昇に備えることも大切です。
10年固定金利ローンを選ぶ場合は、11年目以降の金利上昇リスクに備えて準備するのが重要です。金利の選択はどれをとってもメリットとデメリットがあります。大切なのは、予測どおりにいかなかった場合に備え、余裕を持って対処できるようにしておくことです。
10年固定金利ローンを選ぶ際には、返済能力に応じた適切なプランを選択し、金利上昇リスクに備えた十分な準備をおこなうことに注意しましょう。
まとめ
この記事では、住宅ローン10年固定金利終了後に必要となる手続きと注意すべきポイントを解説しました。この記事の要約は以下のとおりです。
- 住宅ローン金利タイプには、変動金利、全期間固定金利、固定期間選択型がある
- 10年固定金利を選ぶと、期間終了後に取る手続きの選択肢は3つある。それぞれ、変動金利になるか、再度期間選択型の金利タイプを選び直すか、他の金融機関に借り換える
- 10年固定金利を選ぶときは、期間終了後の金利変動に注意すること。変動してもよい資金準備をしておくか、変化に柔軟に対応できる状況であれば選択するメリットがある
住宅ローンを選ぶ際には、金利や返済期間などを考慮し、無理のないように選択しましょう。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ
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