接道義務とは?家づくりや不動産売買で知っておくべき知識をわかりやすく解説

今回は接道義務について、接道義務の条件や適用される道路の確認方法なども含めてわかりやすく解説します。古屋付きの土地の購入や、家の建て替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
接道義務とは

接道義務とは、建築物を建てる際に、その敷地が一定の基準を満たした道路に接している必要がある規定。建築基準法第43条に定められており、安全な街づくりのための重要なルールです。
接道義務を満たしていないとどうなる?
接道義務を満たしていない土地や物件では、建築基準法の規定を満たしていないため、新築や建て替えができず「再建築不可」となる場合があります。そのため、不動産の価値が大きく下がる可能性があるでしょう。接道義務を満たしていない土地に建物を建築すると、建築途中でも工事の中止が求められたり、取り壊さなければならなかったりするので、注意しましょう。
なぜ接道義務が必要なのか?
接道義務は、避難経路の確保、緊急車両の通行確保、建築物へのアクセス確保などの目的で必要とされています。地震などの災害によって、火災が起きても消火活動がしやすいなど、安心して生活できるように建築基準法で定められています。
接道義務はいつからあるのか?
建築基準法が施行された1950年(昭和25年)11月から適用されています。ただし、具体的な適用や詳細な条件は、地域の条例や土地の用途地域によって異なる場合があります。
接道義務の条件とは?

接道義務を満たすには、敷地が建築基準法上の「道路」に一定の基準で接していなければなりません。
建築基準法上の道路の種類
建築基準法で定義されている道路は6種類あり、家を建てる際には、以下の道路に敷地が2m以上接している必要があります。
道路法による道路 (1項1号道路) |
国道・都道府県道・市町村道など、道路法に基づいて整備された公道 |
---|---|
開発道路 (1項2号道路) |
都市計画法に基づいて開発許可を受けて作られた道路 |
既存道路 (1項3号道路) |
建築基準法施行時にすでに存在していた道路 |
計画道路 (1項4号道路) |
将来的に整備予定の道路 |
位置指定道路 (1項5号道路) |
私道でありながら、建築基準法の基準を満たし自治体から位置の指定を受けた道路 |
みなし道路 (2項道路) |
幅員4m未満でも特定の条件を満たし、建築基準法上の道路として扱われる道路 |
敷地と道路の接道長さ(原則2m以上)
建築基準法では、敷地が少なくとも2m以上道路に接していなければなりません。2m未満しか接していない土地では、新築・建て替えが制限されるため注意が必要です。
「幅員4m以上」のルール
原則として道路の幅(幅員)は4m以上必要です。幅員が4m未満の場合は「セットバック」によって対応します。火災時などに消防車両などの進入・通行を確保する目的があります。
ただし、古くからある幅員4m未満の道路は、「みなし道路(2項道路)」として認められている場合があります。みなし道路(2項道路)とは、建築基準法第42条第2項に基づく特定の道路を指します。具体的には、幅員が1.8m以上4m未満の道路です。古くから存在する狭い道路でも、一定の条件を満たせば建築基準法上の道路として認められます。
この場合、建て替えの際などに敷地の一部を後退(セットバック)させて、道路としての幅を確保する必要があります。
接道義務の例外
文化財の保護や農業施設など、一定の条件を満たす建物に限り、建築基準法を満たしていなくても例外として接道義務が適用されないケースがあります。これは、地域の実情や社会的意義を考慮して認められる特例であり、自治体の判断が必要です。
接道義務が緩和されるケース
市町村の条例によっては、敷地の位置や用途に応じて接道義務が緩和されることがあります。例えば、山間部や既成市街地で道路整備が難しい場所では、特例として接道要件が柔軟に運用されるケースも。これも自治体の判断によります。
義務違反にならない道路の条件
自治体が認めた特例道路は義務違反とならない場合があります。建築基準法上で「道路」として認定されていない私道や農道などは、基本的に接道義務を満たす道路とはみなされません。
ただし、長年使用されてきた通路や、過去に行政が黙認してきた経緯のある道は、例外的に認定される場合もあるため自治体への確認が必要です。
接道義務により再建築不可の土地とは?

再建築不可の土地とは、接道義務を満たしていないことにより、新たに建物を建てられない土地を指します。
例えば、敷地が建築基準法上の道路に2m以上接していない場合や、接している道路が法定道路として認められていない場合、再建築が制限されます。こうした土地は建て替えができないだけでなく、不動産価値が著しく低下するなど、多くのデメリットがあります。
見た目には通路に面していても、接道義務を満たしていなければ再建築はできません。単に接道しているように見えるだけでなく、法的に認められているかを確認することが重要です。
接道義務が適用される道路の確認方法

道路に面しているように見えても、建築基準法上の道路と認定されていない場合、その土地は再建築不可になる可能性があります。そのため、購入前には接道状況の法的なチェックが重要です。
ここでは道路の確認方法について見ていきましょう。
自治体に確認をとる
自治体にはいくつかの窓口があります。問い合わせの内容に応じて問い合わせ先となる部署が異なるため、事前に窓口を確認しましょう。
建築指導課
窓口建築基準法に関する確認をおこなう部署で、接道義務の有無やセットバックの必要性などを相談できます。
都市計画課
土地がどのような用途地域に指定されているか、将来的な道路計画や周辺の開発状況などの確認ができます。
道路管理課
対象となる道路が公道か私道か、道路幅員の実測値や道路の法的位置づけなどの情報が確認できます。
接道幅は現地で調査をする
自治体での確認とあわせて、実際の現地で接道状況を目視・測定することも大切です。道路と敷地の接している部分が2m以上あるか、接する道路の幅が4m以上あるかを確認する必要があります。
古い地域では図面と現地に差があることもあるため、巻尺やメジャーを持参して自ら測る、あるいは専門家に依頼するのも有効です。
接道義務を満たしていない場合の対処法

接道義務を満たしていない土地で建物を建てたり、建て替えたりするためには、いくつかの対処法があります。ここでは代表的な3つの対処法を紹介します。
セットバックをする

もっとも一般的な方法がセットバックです。これは、接している道路の幅が4m未満の場合に、敷地の一部を後退させて道路として提供し、道路幅を4mに拡張する方法です。
例えば、道路の反対側と合わせて4m以上になるよう、敷地の境界線を後退させることで、接道義務を満たせます。ただしセットバック部分は建築面積に含まれず、建築物を建てられません。また、セットバックした部分は私道となりますが、モノを置いたり車を駐車させたりすることはできないので、気を付けましょう。
したがって、敷地の有効活用面積が減ると、建物のプランニングの制約や外構や駐車スペースの影響が生じるため、事前の把握が必要です。
隣の敷地を購入する
接道の長さが2m未満、もしくは道路に接していない場合には、隣接する土地を購入して接道部分を広げる方法も有効です。
この方法は、再建築不可の土地を建築可能にする唯一の手段となることもあります。ただし、隣地所有者との交渉や、購入費用、登記などの手続きが必要になるため、時間とコストがかかります。
自治体の特例を活用する
自治体によっては、敷地の状況や社会的事情を考慮し、建築審査会の同意をえることで接道義務の緩和や特例が認められるケースもあります。
接道義務以外に知っておきたい家づくりのルール

家を建てる際には、接道義務の他にも、建物の大きさや用途、構造などに関するさまざまな規制があります。これらのルールは、地域の環境や安全性を守るために定められており、事前にしっかりと理解しておくことで、トラブルのない家づくりが可能になります。以下では代表的なルールを紹介します。
建ぺい率
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積(建物の真上から見た面積)の割合です。例えば、敷地面積が100平方メートルで建ぺい率が60%であれば、最大60平方メートルの建物を建てられます。
建ぺい率は、火災時の延焼防止や採光・通風を確保する目的で制限されており、用途地域によって上限が異なります。
容積率
容積率は、敷地面積に対する延床面積(全フロアの合計面積)の割合を示します。例えば、敷地面積100平方メートルで容積率が200%の場合、延床面積200平方メートルまでの建物を建てることが可能です。高さのある建物を建てる際に重要な指標であり、周辺環境や道路の幅に応じて制限が決められています。
高さの規定
建物の高さには一定の制限が設けられており、これは周囲の建物とのバランスや日照の確保、景観保護のためです。具体的には「絶対高さ制限」「斜線制限」「日影規制」などがあり、建てられる建物の形状に大きく影響します。
用途地域別の規制
日本の都市には用途地域の区分があり、住宅地・商業地・工業地などに分けられています。それぞれの地域で建てられる建物の種類や規模に違いがあり、例えば住宅地では工場のような騒音や煙を出す建物は建てられません。用途地域は都市計画によって決められています。
防火地域・準防火地域
都市部のように火災リスクが高い地域では、防火地域や準防火地域に指定されていることがあります。これらの地域では、耐火構造や防火設備の設置が義務付けられており、木造住宅であっても一定の耐火性能を持たせる必要があります。
接道条件による不動産売買への影響

接道義務を満たしていない土地は、建物の再建築ができない可能性があるため、不動産売買で大きなマイナス要素になります。
再建築ができない土地は、新たに建物を建てることはもちろん、老朽化した建物を解体しても再建できないため、不動産としての資産価値が下がります。買主が将来的に家を建てることを考えている場合、購入後に再建築できないと判明すればトラブルにつながるおそれもあります。売主・買主ともに、事前に接道条件をしっかりと確認することが重要です。
接道義務に関するまとめ
接道義務は建築基準法で重要な要件であり、不動産取引や建築計画に影響を与えます。本文の有用な点をまとめます。
接道義務とは?
接道義務とは、建物を建てる敷地が建築基準法上の道路に2m以上接していなければならないルールです。これは安全な避難経路の確保や、緊急車両の通行、建物へのアクセスを確保するために設けられています。
接道義務により再建築不可の土地とは?
接道義務を満たしていない土地は、建て替えや新築ができない再建築不可の土地とされることがあります。こうした土地は資産価値が下がりやすく、購入前に建築計画や将来的な資産価値を見極めることが重要です。
接道義務を満たしていない場合の対処法は?
もし接道義務を満たしていない場合でも、敷地を後退させて道路幅を確保するセットバックや、隣地を購入して接道条件を満たす方法で接道義務を満たせるでしょう。
接道義務を事前に知っておくことで、のちのトラブルを避けることができ、土地選びや建築計画をスムーズに進められます。接道義務を正しく理解し、土地選びや建築計画に役立てましょう。
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執筆者
渋田貴正
司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。また宅地建物取引士の試験合格者。2012年独立し、司法書士事務所開設。相続に特化した司法書士事務所として幅広くサービスを提供している。
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