レジリエンス住宅とは?災害に強く、安心して暮らせる住まいの新基準を徹底解説
しかし、レジリエンス住宅とはどのようなものなのか、強みや弱点は何か、建築費用や補助金制度が使えるかなどの疑問を持っているかもしれません。
本記事では、レジリエンス住宅の基本から強み・弱点、費用や補助金制度、向いている人について解説。地震や台風が頻発する日本で、災害時にも在宅避難が可能で、平常時は快適かつ地球にも優しい住宅の全体像を整理しました。これからマイホームを購入するうえで防災性能が高い住宅を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
レジリエンス住宅とは

地震や台風など、自然災害は年々増加・激甚化してきています。そのようななかで注目を集めている住宅が、レジリエンス住宅です。レジリエンス住宅とは、災害時の被害を最小限に抑え、被災後もできる限り普段どおりの生活を続けられるよう設計された住宅です。日常の快適性と災害への強さを両立し、安心して暮らせると近年需要が高まっています。本章では、レジリエンスの意味、耐震住宅やZEH(ゼッチ)住宅との違いなど、基本的な知識を見ていきましょう。
レジリエンスの意味
レジリエンス(resilience)とは、心理学や物理学の分野で使われている言葉で、「回復力」「しなやかな強さ」「復元力」などを意味します。例えば、ストレスや困難に直面してもすぐに立ち直る力や、打たれ強さなどをイメージするとわかりやすいでしょう。この考えを住宅や建築に応用したのが、レジリエンス住宅です。
住宅に置き換えたレジリエンスの定義
住宅でいうレジリエンスとは、災害に対して「備える・耐える・復旧する」力を備えた住まいです。住宅性能で表現すると、以下の3つの視点があります。
- 平常時の備え(予防):日頃から快適で健康的な生活を送れるよう、断熱性や気密性を高め、エネルギー効率のよい設備を整えています。これは、体力や健康状態の維持にもつながります。
- 災害発生時の耐性(対応):地震や台風などの災害が起きた時、建物が倒壊・損壊しにくい構造にします。さらに、停電や断水に備えて、太陽光発電・蓄電池・雨水貯留システムなどを備えると、在宅避難が可能です。
- 災害後の復旧力(回復):災害のあと、生活を早期に立て直せる設計や体制を整えるようにします。建物が無事ならそのまま家に住み続けられ、被災後のストレスやコストを抑えられます。
単に頑丈な家ではなく、電気や水道が使えなくなった時の代替手段や、避難所に行かずに「在宅避難」が可能な仕組みなどを取り入れており、暮らしを継続できます。日本は、地震・台風・豪雨などの自然災害が多くなっているため、住宅にこのレジリエンス性能を求める動きが広がっています。
耐震住宅やZEH住宅との違い
レジリエンス住宅と混同されやすいのが、耐震住宅やZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)です。これらはそれぞれ目的や重視する性能が異なり、次のように比較できます。
耐震住宅との違い
耐震住宅は、地震の揺れに対して、建物が倒壊・損壊しないことを目的に設計されています。制震ダンパーなどを用いて、建物の構造そのものを強くします。しかし、地震でライフラインが断たれた際の、生活の継続まではカバーしていません。
レジリエンス住宅は、耐震性を備えたうえで、停電・断水・物流の停止などの二次的な影響にも対応し、生活を続けられるようにしています。
ZEH住宅との違い
ZEH住宅は、エネルギー消費を抑えつつ、太陽光発電などでエネルギーを自家生産し、消費エネルギーの収支をゼロ以下にする住宅。こちらは主に、省エネ・創エネによる環境配慮や光熱費削減を目的としています。
レジリエンス住宅は、ZEHの技術も取り入れつつ、災害時にもエネルギーが使えるようにして、日常の快適さと非常時の備えを両立している点が特徴です。
レジリエンス住宅の3つの強み

レジリエンス住宅が注目されている背景には、単なる防災住宅にとどまらない、暮らしの質を高める多面的な強みがあります。特に重要なのは、災害が起きたその瞬間だけでなく、その後の生活をいかに継続できるかです。建物の耐震性はもちろん、在宅避難ができる設計や、ライフラインが止まっても機能する設備、さらに普段から快適で省エネな暮らしができる住環境が求められます。そこで本章では、レジリエンス住宅が持つ代表的な3つの強みを見ていきましょう。
災害時でも在宅避難が可能な安心設計
レジリエンス住宅の強みの一つは、在宅避難が可能な点です。大規模な地震や台風などで公共の避難所が開設された場合でも、自宅での生活を続けられるように設計されている点が特徴です。
それではなぜ在宅避難ができるのでしょうか。その理由は、建物そのものの耐震性能や耐風性能が高い点にあります。災害発生時でも建物が安全を保てれば、家族は自宅に留まって安心して過ごせるでしょう。また、断熱性・気密性が高いため、冷暖房機器が使えない状況でも一定の室温を維持しやすく、体調を崩すリスクも抑えられます。
さらに、寝室やトイレ、水回りを含めた生活の基本動線が、1階と2階どちらにも設けられているなど、災害によって一部が使えなくなっても柔軟に生活を続けられるよう間取りが工夫されています。
避難所での生活はプライバシーの確保が難しく、感染症のリスクや精神的なストレスもともなうでしょう。在宅避難が可能な住宅は、こうした二次的な被害を防ぐ点でも有効です。つまり、レジリエンス住宅は、災害に耐えるだけでなく、災害後の暮らしを守る点でも優れています。
停電・断水時でも自立できるインフラ機能
災害時に多くの家庭が直面する問題が、停電や断水です。一般的な住宅では、電気や水道が使えなくなると生活が一気に困難になりますが、レジリエンス住宅はそれらのリスクに備え、自立したインフラ機能を備えている点が大きな強みになります。
例えば、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステムの導入。昼間に発電した電気を蓄え、夜間や停電時にも最低限の電力を確保できます。その結果、冷蔵庫やスマートフォン、照明、簡易な暖房・冷房など、災害時でも必要な機器を使用できるでしょう。
さらに、雨水を貯めるタンクや簡易ろ過システムを備え、生活用水を確保できるような設計も取り入れられます。トイレの水や洗濯用水に活用できれば、断水時の不便さは大きく軽減されるでしょう。
また、通信手段の確保も重要です。災害時にテレビやインターネットが使えなくなると、正確な情報を得られず不安も増すでしょう。太陽光発電と蓄電池で、ルーターやラジオが使える環境を維持できるようにすれば、情報収集と発信が可能になるため大変便利です。このように、ライフラインが途絶えても自立して生活を続けられるインフラ機能は、レジリエンス住宅ならではの利点でしょう。
日常の快適性と省エネ性能を両立
レジリエンス住宅の魅力は、災害時の強さだけではありません。日常の快適性と省エネ性能を兼ね備えた、住みやすさの高さも見逃せないポイントです。つまり、非常時だけに役立つ住宅ではなく、普段から暮らしやすい住環境になっています。
まず、断熱性と気密性が高いため、夏は涼しく、冬は暖かい快適な室内環境になるでしょう。冷暖房効率が高いため、少ないエネルギーで快適な温度を維持でき、光熱費を削減できます。結果、住宅のランニングコストを抑えつつ、健康にもよい住まいになるでしょう。
また、太陽光発電や高効率な換気・空調システムを導入すれば、住宅全体のエネルギー消費を抑えるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たせます。レジリエンス住宅はこのような省エネ・創エネ技術と相性がよく、環境負荷の少ない住まいです。
さらに、高齢者や子どもが安全に過ごせるバリアフリー設計が取り入れられ、家族全員が安心して暮らせる住まいになるでしょう。これは災害時だけでなく、毎日の生活でもストレスを減らす効果があるため、長期的に見ても価値のある投資になります。
レジリエンス住宅は、災害に備えるだけでなく、普段から快適に暮らせて、いざという時にも頼れる家です。だからこそ、将来を見据えた住まいになると、多くの人に選ばれるでしょう。
レジリエンス住宅の弱点と注意点

災害に強く、日常生活でも快適に暮らせるレジリエンス住宅は、近年注目度が高まっています。しかし、どれほど優れた住宅でも、完璧なものは存在しません。レジリエンス住宅にも、いくつかの弱点や注意点があります。特に、初期費用の高さや、土地の選定、メンテナンスの手間などは、導入前によく把握しておくべきポイントです。
本章では、レジリエンス住宅の3つの代表的なデメリットと、それらをどのように乗り越えるかを解説します。
デメリット1:初期コストが高くなる
レジリエンス住宅を検討する際、最初に多くの人が直面するのが、費用の高さです。一般的な住宅に比べ、レジリエンス住宅は高性能な断熱材、耐震構造、太陽光発電設備、蓄電池、非常時用の給水・換気設備などが必要になるため、どうしても初期費用が高くなってしまいます。
例えば、太陽光発電と蓄電池をセットで導入すれば、数十万円〜数百万円の追加費用が発生するでしょう。また、災害時でも安全な構造にするための設計や構造計算、特別な資材の採用なども、費用に上乗せされます。加えて、省エネ性能を確保するための高断熱・高気密工事も、従来の住宅と比べてコストがかかる要因です。
ただし、これは長期的な視点で見れば、将来を見据えた投資といえるでしょう。それは、レジリエンス住宅は光熱費の削減効果が大きいため、月々の支出を抑えられ、ランニングコストの面で回収が見込めるためです。また、近年は各自治体で補助金制度や税制優遇が用意されているため、上手に活用すればコスト負担を軽減できるかもしれません。
導入前には、住宅性能と費用のバランスを見極めながら、複数社に見積もりを取りましょう。そして、目先の価格だけで判断せず、将来にわたって安心・快適に暮らせる価値を考えると、納得のいく選択につながります。
デメリット2:土地・立地条件に左右されるケースがある
レジリエンス住宅を建てるうえで、土地の条件は大きな影響を及ぼします。いくら性能の高い家を建てても、土地自体に災害リスクがある場合、その効果を十分に発揮できないかもしれません。
例えば、水害リスクのある低地や、液状化の可能性がある地盤、土砂災害警戒区域にある土地では、住宅そのものの耐災害性を高めても、周囲の環境が脆弱であれば在宅避難は困難でしょう。また、日照条件や風の通り、地形によって、太陽光発電や自然換気などの性能が設計通りに活かされない可能性も考えられます。
さらに、防災拠点や避難所、主要道路、医療機関との距離など、周辺インフラのレジリエンスも重要な判断基準です。住宅だけが強くても、災害後に支援が届きにくいエリアであれば孤立するかもしれません。
このような理由から、レジリエンス住宅を建てる際は、建物そのものの性能だけでなく、土地選びの段階から慎重に検討する必要があります。ハザードマップ、地盤調査、周辺環境のチェックは必須です。設計の段階で、地盤改良や盛り土、排水計画などを通じてある程度リスクを軽減できますが、土地が限られると設計や間取りの制限にもつながるため、思い描いた理想の住まいを実現できない可能性も念頭に置いておきましょう。
デメリット3:メンテナンスや設備管理が必須になる
レジリエンス住宅は多機能がゆえに、日々の点検やメンテナンスの重要性が増す点も見逃せません。高性能な住宅設備は、正しく維持管理をしなければ、いざという時にその能力を発揮できない恐れがあります。
例えば、太陽光発電システムや蓄電池は定期的な点検が必要で、寿命を迎えた際には数十万円単位の交換費用が発生するでしょう。また、高気密・高断熱住宅では、換気システムのフィルター清掃や定期交換を怠ると、室内の空気環境が悪化するかもしれません。災害時に頼りにしたい非常用電源や給水装置なども、日頃のメンテナンスがなければ正しく動作しないでしょう。
特に注意したいのは、見えない部分の劣化です。断熱材の劣化や気密の低下は目視で確認しにくく、建物の性能が少しずつ落ちていても気付きにくい場合があります。そのため、定期的に住宅性能のチェックや専門家による診断を受けるようにしましょう。
また、複数の高性能設備が組み合わさっているため、修理や交換が必要になった時に特定のメーカーや工務店に依存しやすく、費用や対応に差が出る点も注意が必要です。
つまり、レジリエンス住宅は、建てたら終わりではなく、育てていく家と心得ましょう。安心・安全・快適な暮らしを長く続けるためには、日頃からのメンテナンス意識と、将来を見据えた維持管理計画が欠かせません。
災害時に備えた7つのレジリエンス強化ポイント

自然災害のリスクが高まる今日、災害そのものだけでなく、停電・断水・通信断など二次災害にも対処できる体制が求められます。本章では、災害時に備えるための7つの強化ポイントを取り上げ、それぞれ具体的な対策と注意点を見ていきましょう。将来後悔しないために、設計段階から確認しておきたいポイントです。
太陽光・蓄電池などを設置する
災害時の停電は、多くの家庭で課題になります。レジリエンス住宅では、昼間の太陽光発電と蓄電池を組み合わせて、非常時でも最低限の電力を確保できるシステムを導入しましょう。太陽光発電システムだけでは、夜間や悪天候時に発電が止まるため、発電した電力を蓄電池に貯め、必要な時に使えるようにする「創蓄連携システム」が効果的です。
また、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を利用して、車両のバッテリーを家へ電力供給する「V2H(Vehicle to Home)」などの方式も有効です。これらを備えておけば、太陽光発電+蓄電池だけではカバーしにくい時間帯や容量不足を補えるでしょう。
さらに、非常用コンセントや切替えスイッチ、停電検知型ブレーカー(感震ブレーカー)を設置しておくと、災害を検知した際に自動で不要な回路を落とし、重要回路に優先的に電力を配分できます。冷蔵庫や通信機器、照明などのライフラインを維持しやすくするために効果的です。
ただし、すべてを過剰に備えるとコストが膨らむため、最低限維持したい電力量を見極めて設計するようにしましょう。例えば、冷蔵庫・スマートフォン・照明などを継続運用できるようにシステム容量を選ぶと現実的です。
断水に備える
災害時には、水道管破損や給水停止が発生する恐れがあります。そのため、住宅には断水時にも一定量の水を確保できる設備を持たせるようにしましょう。具体策は、貯水槽、非常用給水栓、雨水タンクの設置、エコキュートの貯湯タンクの水利用などがあります。
例えば、住宅用の家庭用貯水タンクを設けると、飲用・トイレ用水などに備えられるでしょう。貯水量は家族人数×1日あたりの使用量×日数(3日~7日想定)を目安に設計しましょう。さらに、タンクを断熱・耐震構造にしておくと、寒冷地や揺れの強い地帯でも安心です。
また、エコキュートなどの給湯設備は、満水時にタンク内の水を利用できる機能を持つ機種も。災害時に給湯機器を使えない状況下でも、タンクの水をトイレ洗浄や手洗い用に使えるように設計されている例もあります。
ただし、水質維持と衛生面も考慮しなければなりません。長時間水を貯めておくと雑菌が繁殖する可能性があるため、定期的な清掃・交換を前提とした設計・運用が重要です。また、タンク設置にともなうスペースの確保や配管計画、耐震設計も忘れずおこないましょう。
備蓄可能な収納スペースを確保する
災害時に備える物資(飲料水、非常食、トイレ用品、医薬品、毛布、ライトなど)は、ある程度の量を自宅に備えておくのが安全対策の基本です。そのため、普段から備蓄を収納できるスペースを住宅の計画段階から確保しておくようにしましょう。
備蓄スペースを設計に組み込む際のポイントは、アクセス性と気候条件です。非常時でもすぐ取り出せる位置(廊下脇、パントリー、土間収納など)が望ましいでしょう。また、温湿度変化が激しい場所は食品の保存性に悪影響を及ぼすため、断熱・防湿性の高い構造を確保しておくようにしましょう。
他にも、「ローリングストック方式(普段使い+備蓄)」を取り入れると、古くなった物を順次消費しながら新しい物で補充していくことができ、スペースと管理の効率化につながります。普段から使うスペースと併用できる収納設計が理想です。また、備蓄品の重みも考慮しておきましょう。
重い物を上部に置くと落下事故につながる可能性があるため、重量物は床近くの棚や底部に配置するなど、安全性にも配慮が必要です。また、備蓄スペースを確保するために、可動棚や引き出し式収納を活用すると、空間効率を高めつつ柔軟な収納ができます。
地震・風水害に強い構造設計にする
レジリエンス住宅の根幹は、災害に強い構造設計です。どれだけ機能を備えても、建物自体が損壊すれば意味がありません。地震・台風・豪雨・洪水などの災害リスクに対して、構造的にも備えをしておきましょう。
まず、耐震設計を十分におこなうには、建物が倒壊しない強さを確保するため、耐震等級3や制震構造、免震構造の導入が考えられます。特に、繰り返しの揺れ(余震)にも耐えられる設計を取り入れると、被災時のリスクが軽減されるでしょう。
次に、風水害・水害対策では、床高を上げる、浸水防止の壁にする、逆流防止弁付き公共マスを設置するなどの工夫があります。屋根・外壁や窓ガラスには、飛来物対策や強風への耐性、耐候性の高い素材選定をおこないましょう。
太陽光パネルを設置する際も、固定方法やアンカーボルトの方式を適切に選ぶと、暴風雨時の飛散リスクを抑えられます。こうした構造強化策を、建物全体・細部まで設計に組み込み、レジリエンス性能を高めましょう。
在宅避難を前提にした間取りにする
災害時に自宅で暮らしを継続する在宅避難を前提にするなら、間取り設計にも配慮しなければなりません。災害後でも安心して過ごせるような住まいの工夫を取り入れましょう。
まず、生活に必要な機能を1階で完結できる形にしておきます。寝室・トイレ・洗面所などを1階に配置しておくと、階段が使えなくなった状況でも生活可能です。一方で、リビングは2階に配置する設計を選ぶケースもあり、水害時には低層階を犠牲にしても2階で暮らせるようにする考え方もあります。土地の特性や家庭の状況を踏まえて判断しましょう。
また、安全な避難経路確保のため、複数の出口や通路を設計しておく点も重要です。災害時に玄関が使えなくなっても、別の経路から外に出られるような動線を組み込みましょう。
さらに、可変性のある間取りを取り入れると、将来的な変化(親との同居、子どもの成長など)にも対応しやすくなります。ただし、可変性を重視するあまり耐震性や密閉性が犠牲にならないよう、性能とのバランスを保ちましょう。
通信・情報収集手段を準備する
災害時には、正確な情報の入手と発信が生命線です。停電や通信インフラの断絶に備え、通信手段・情報収集手段を複数確保しておきましょう。
まず、携帯電話・スマートフォンの充電手段を確保するため、非常用電源(太陽光+蓄電池、モバイルバッテリー)を用意します。ラジオの受信が可能な通信端末や手回し充電器付きラジオも有効です。また、災害時にはWi-Fiや固定回線が使えない可能性もあるため、モバイル通信網(4G/5G)対応のルーターや無線LAN機器、SIMカードの予備を用意しておきましょう。さらに、衛星通信や非常用通信機器を導入する家庭もあります。
また、情報拡散手段も大切です。災害情報を近隣と共有したり、助けを呼んだりできるよう、防災無線、スマホアプリ、SNSなど複数の手段を確保しておくといいでしょう。最後に、情報を記録できる紙の備忘録(家族連絡先、災害マップ、避難経路など)を用意しておくことも忘れてはなりません。電源がなくても参照できるよう、印刷した資料を常備しておきましょう。
家族の安全を守る防災マニュアルを共有する
物理的な設備だけでなく、人・行動の備えもレジリエンス住宅には欠かせません。家族全員が知っている防災マニュアルを作成し、共有しておくと、いざという時に混乱を防ぎ、安全性を高められます。
まず、自宅内の安全ルート・避難経路をシミュレーションし、地震・火災・洪水など想定される災害ごとにルートを複数準備しておきましょう。家具の転倒防止策や避難リュックの設置場所も明確に決めておきます。家族では、定期的な防災訓練をおこないましょう。避難経路を体で覚えたり、非常時に使う道具(ラジオ、懐中電灯、水のボトルなど)を手際よく取り出す練習をしておくと、実際の災害時の対応力が向上します。
さらに、家族間で役割分担を決めておくとよいでしょう。例えば、「ラジオ担当」「水補給担当」「子ども誘導担当」など、誰が何を担当するかをあらかじめ決めておけば、混乱が少なくなります。
最後に、マニュアルは紙媒体とデジタル媒体の両方で保管し、定期的に見直しましょう。年齢や構成が変われば必要な準備も変わるため、ライフステージに応じて更新するのが肝心です。
レジリエンス住宅の費用と補助制度

レジリエンス住宅を検討する際、性能やデザインの話だけでなく、導入にはいくらかかるのか、補助金制度は使えるのかなどをよく確認しておきましょう。性能面を強化すれば、それだけコストがかかりますが、国や自治体が提供する補助金や優遇制度を上手に活用すれば、その負担を軽減できます。本章では、レジリエンス住宅を導入する際に想定される費用の目安や、利用可能な補助金制度を解説します。
導入にかかる費用の目安
レジリエンス住宅に必要な性能強化や設備追加には、建物本体とは別に「性能アップ分の追加コスト」が発生します。一般に、すべてを理想的な形で導入すると、追加費用の目安は200万円〜400万円ほどになるでしょう。
ただし、実際の費用は規模、仕様、地域、設備のレベル、施工会社の技術力などによって大きく変わります。例えば、太陽光発電+蓄電池だけを導入する場合であれば、システム容量や蓄電池容量次第で数十万〜100万円台からスタートするかもしれません。また、耐震補強や制振装置、断熱性能を通常より強化する場合は、それらの仕様差で数十万円〜100万円単位の差が出る可能性があります。
さらに、断水対策として家庭用貯水タンクを設けたり、非常用給水経路を整えたりする工事を加えると、合計で300万円台、あるいはそれ以上になってしまうかもしれません。
そのためレジリエンス性能を導入する際は、優先順位をつけて段階的に導入するのが現実的な戦略になるでしょう。必要な機能をまず導入し、予算に余裕があれば追加性能を順次積み上げる流れが一般的です。見積もりを複数社から取り、仕様を比較しながらバランスを探る方法をおすすめします。
使える補助金・優遇制度
レジリエンス住宅の性能を強化する際、直接的な「レジリエンス住宅向け補助金」は限られているものの、関連する性能向上分野に対しては複数の補助金や優遇制度が利用可能です。具体的に、どのような制度があるのかを見ていきましょう。
ZEH+(レジリエンス強化住宅補助金)
「ZEH+」補助金制度は、通常のZEH補助金に加えて、停電時のレジリエンス性能を強化する設備(蓄電池や太陽熱利用温水システムなど)を導入した住宅を支援する制度です。
例えば、太陽光発電+蓄電池を設置し、夜間や停電時にも電力を確保できるように設計された住宅に対して、90万円の補助金が交付されます。 この制度のポイントは、蓄電池容量や制御系統、構成機器の仕様などが厳しく定められている点です。そのため、補助申請前に要件を満たす設計が必要になるでしょう。
長期優良住宅化リフォーム推進事業(防災・レジリエンス性向上改修)
既存住宅を改修して、レジリエンス性と防災性を高める工事を対象に補助金が出る制度があります。国の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」では、制震装置の設置、内外壁補強、断熱性能向上工事といった防災性・レジリエンス性向上の改修工事が補助対象になるでしょう。
この制度では、改修内容や性能基準に応じて補助金額が異なります。具体的には、評価基準型で80万円、認定長期優良住宅型で160万円が交付されます。さらに、子育て世代や若者世帯などの要件を満たすと、50万円を追加で交付を受けられるでしょう。
子育てグリーン住宅支援事業 /省エネ住宅補助
近年、国が推進する住宅政策の一つに、子育てグリーン住宅支援事業があります。これは、省エネ性能が高く、長期優良住宅として認定された一戸建て住宅を対象に80万円程度の補助金を受け取れる制度です。
この制度は、住宅の省エネ性能強化を重視しており、断熱性能や高効率設備を導入する住宅を対象としていますが、レジリエンス住宅の性能強化と重なる部分も多いため、併用できるケースがあります。
レジリエンス住宅が向いている人

レジリエンス住宅は、災害時に暮らしを守る住まいとして注目を集めていますが、その価値をより実感できるのは、単に安心を求める人だけではありません。実際には、日々の生活スタイルや家族構成、居住する地域の特性などで、レジリエンス住宅の恩恵を大きく受けられる人々が存在します。本章では、特にレジリエンス住宅が向いている世帯やライフスタイルに焦点を当てて紹介します。
子育て世代・共働き家庭
子育て世代や共働き家庭には、日常生活の安定性が重要な事項です。地震や台風などの災害が発生した際、停電や断水が長期化すれば、子どもの安全確保や仕事との両立に大きな支障をきたします。レジリエンス住宅なら、耐震性の高い構造や停電時にも利用できる蓄電池、断水に備えた貯水設備などを備えているため、災害時でも最低限の生活を維持できるでしょう。
例えば、冷蔵庫を稼働させて食材を保存できれば、子どもの食事に困る可能性が減ります。また、在宅勤務やオンライン授業が必要になった場合にも、安定した電源供給は大きな安心材料です。さらに、防災性能の高い家は日常的な快適性も兼ね備えており、子育て世代が安心して子どもを育てられる環境となるでしょう。
高齢の親と同居する家庭
高齢の親と同居する家庭にも、住まいの安全性と安心感は欠かせません。災害時には避難所生活が体力的に難しい場合も多く、自宅で安全に過ごせる環境が重要です。レジリエンス住宅は、高い耐震性や断熱性に加え、非常時の自立性を高める設備を備えているため、高齢者に負担の少ない暮らしを支えます。
例えば、停電時にも電源が確保できれば、医療機器の使用や室内の温度管理が可能で、健康リスクを軽減できるでしょう。また、断水時の備えやバリアフリー設計を組み合わせると、移動や生活動作がスムーズになり、家族の介助負担軽減も期待できます。
災害リスクの高い地域に住む人
日本は地震、台風、豪雨、洪水など、多様な自然災害のリスクを抱える国です。特に沿岸部や山間部、地盤の弱いエリアに住む人々にとって、住まいの防災性能は生活の基盤を守る大きな要素になります。
レジリエンス住宅なら、災害による大規模停電時でも、蓄電池や太陽光発電で、照明・冷暖房機器・通信などの最低限のインフラを維持できるでしょう。災害リスクが高い地域では、被害を完全に防ぐのは困難ですが、被害に遭っても生活を継続し、その仕組みを住まいに備えておくことが重要です。レジリエンス住宅はまさにその備えを実現し、安心と安全を両立させる住まいで、災害リスクの高い地域に暮らす人々に強く推奨されます。
レジリエンス住宅に関するよくある質問
レジリエンス住宅に関するよくある質問をまとめました。
レジリエンス住宅とは何?
レジリエンス住宅とは、災害時の被害を最小限に抑え、被災後も生活を継続できる住まいです。耐震・耐風性能に加え、太陽光発電や蓄電池、雨水利用などで停電・断水時も在宅避難ができます。非常時のみでなく、平常時の快適性や省エネ性能も備え、復旧力を持つ点が特徴になるでしょう。
レジリエンス住宅に弱点はある?
レジリエンス住宅は災害に強く快適ですが、初期費用の高さ、土地条件への依存、日常的なメンテナンス負担などの弱点があります。太陽光発電や蓄電池などの導入コストや設備管理の手間、地盤や周辺環境による制約を理解したうえで、定期点検を取り入れれば、長期的に安心できる住まいを維持できます。また、補助金を活用すれば、初期費用の負担も軽減されるでしょう。
レジリエンスを強化するにはどのような対策をすればいい?
レジリエンス住宅を実現するには、災害時の停電・断水・通信断などに備えた多面的な対策が欠かせません。非常用電源や貯水設備、備蓄収納、強固な構造設計に加え、在宅避難を前提にした間取りや通信手段の確保も重要です。さらに家族で防災マニュアルを共有し、訓練や役割分担をおこなうと、設備と行動の両面から安全性を高められます。
レジリエンス住宅にするにはいくらかかる?また補助制度はある?
レジリエンス住宅の導入には、太陽光発電+蓄電池や断水対策などで200〜400万円の追加費用が想定されます。しかし、これらの導入には、国や自治体の補助金制度が活用できる可能性があります。例えば、長期優良住宅化リフォーム推進事業、子育てグリーン住宅支援事業などが利用できるかもしれません。条件をよく確認し、効率的に活用しましょう。
レジリエンス住宅はどのような人に向いている?
レジリエンス住宅は、子育て世代や共働き家庭、高齢の親と同居する家庭、災害リスクの高い地域に住む人に向いています。停電や断水時でも最低限の生活を維持でき、医療機器や在宅勤務を支え、避難所に頼らず自宅で安全に暮らせる点が大きな魅力です。
まとめ
レジリエンス住宅は、災害時の被害を最小限に抑えつつ、停電・断水時でも在宅避難が可能で、普段の快適性や省エネ性能も備えた次世代の住まいです。ただし、高い初期費用や制限される土地条件、メンテナンス負担などの課題もあるため、補助金制度の活用や事前の準備が欠かせません。導入を検討する際は、信頼できる依頼先を選び、ライフスタイルとの適合性も意識しましょう。災害への備えと日常の快適性を両立する住まいが、長期的な安心につながります。
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執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ





