家の建て替え時期の目安は?建て替えずに住み続けるリスクも紹介

本記事では、家を建て替える時期の目安となるデータと、建て替えずに住み続けるリスクをあわせて紹介します。建て替えにかかる費用・注意点、リフォームと建て替えのどちらを選ぶべきかも解説するため、建て替えをご検討中の方はぜひお役立てください。
記事の目次
家の建て替え時期の目安

家の建て替え時期の目安は、さまざまなデータを用いることで具体的な年数を割り出すことができます。しかしデータで導き出される年数はあくまで参考値です。必ずしも適切な年数になるとは限らないため、総合的に判断する必要があるでしょう。
以下からは、家の建て替え時期の目安を知るための基準を3つ解説します。
法定耐用年数の基準
法定耐用年数とは、国が建物の構造や用途ごとに定めた、減価償却の計算に用いる資産価値が残存する期間のことです。減価償却とは、建物や設備などの固定資産の取得費用を、その資産の使用可能期間(耐用年数)にわたって分割して費用計上することです。
築年数が法定耐用年数を超えた場合は、減価償却は完了したことになり、以降は減価償却できません。建物の法定耐用年数は、構造・建材などによって、それぞれ定められており、住宅の法定耐用年数は以下のとおりです。
構造・建材 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
鉄筋鉄骨コンクリート造 | 47年 |
れんが造・石造・ブロック造 | 38年 |
出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(PDF)
上記の年数は、減価償却の計算に使用する税務上の目的で定められたものです。法定耐用年数を過ぎると、建物の会計上の資産価値はなくなります。ただし、法定耐用年数は必ずしも建物の寿命と一致するわけではありません。法定耐用年数を過ぎても建築した建物の使用を続けられます。
統計データの平均
次に、住宅を建てて、どれくらいの年数を経てから、建て替え・住み替えの選択肢を取っているのか、データを見てみましょう。国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書(PDF)」によると住み替え・建て替え前の住宅の平均居住年数は以下のとおりです。
年度 | 全国 | 三大都市圏 |
---|---|---|
2019年 | 32.3年 | 31.7年 |
2020年 | 30.7年 | 28.8年 |
2021年 | 36.4年 | 34.6年 |
2022年 | 33.0年 | 28.2年 |
2023年 | 31.5年 | 31.5年 |
出典:国土交通省「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」」(PDF)
2019年~2023年にかけて、住み替え・建て替え前の住宅の平均居住年数は30年~35年程度となりました。統計データの平均から、建て替えを検討する築年数の目安は30年前後と考えられます。
新耐震基準を適用しているか
耐震基準とは、建物における地震に耐えられる構造の基準のことです。耐震基準は、建築基準法に基づいて定められています。現在の多くの住宅には1981年6月1日から施行された新耐震基準が適用されています。一方で、新耐震基準の施行以前に建築された住宅には、現在の耐震基準とは異なる旧耐震基準が適用されています。
もし、現在の住まいが1981年6月1日以前に建築されたものの場合は地震対策に不安が残る状況といえるでしょう。さらに、1981年以前に建築された家は築年数が40年を超えているため、前述の統計データの平均も大きく上回っています。1981年以前に住宅を建築した場合は、現在の耐震基準を満たした家への建て替えをおすすめします。
家を建て替えずに住み続けるリスク

家の建て替え時期の目安を過ぎている状態で、建て替えを含めた住環境の改善をおこなわない場合は、思わぬ問題が発生するかもしれません。家を建て替えずに住み続けることで考えられるリスクを3つまとめました。
暮らすうえで不便があるだけであれば、我慢できると考えるかもしれません。しかし、問題を放置しておくと重大な事故につながる可能性もあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
老朽化によって安全性が低下する
家が老朽化すると、安全性が大きく低下します。例えば、外壁材や屋根の防水層が劣化すると、雨漏りが発生しやすくなります。雨漏りを放置すると内部が腐食し、構造障害・部分的な崩落につながる危険性があるでしょう。
また、古い電気配線が劣化すると、漏電やショートの原因となり、火災の発生リスクも高まります。このように、建物の築年数が経過するほど安全性が低下してしまい、重大な事故につながる恐れがあります。
断熱性・気密性が低下する
断熱性が低下すると、夏は高温多湿、冬は寒い室内環境になります。これは、築年数の経過によって断熱材の劣化や施工の緩みが進み、住宅が外気温の影響を受けやすくなることが原因です。温度・湿度の管理が難しくなるため、空調の使用による光熱費の増加、場合によっては熱中症・ヒートショックを引き起こすリスクが上昇するかもしれません。
気密性が低下すると、湿気が内部に侵入して結露を招きます。内部が腐食するだけでなく、カビやダニが繁殖しやすい環境になり、アレルギーや呼吸器疾患になる可能性も。老朽化した家に住み続ければ、光熱費などのコストが増加するだけでなく、健康上の問題につながるリスクもあります。
高齢期の生活に支障が出る
高齢化すると、階段や段差の上り下りが困難になり、生活が不便になっていきます。高齢になってもバリアフリー設計がされていない家で暮らし続けることは、不便なだけでなく転倒事故などのリスクもあり、危険でしょう。老後に備えるならバリアフリー設計は必要不可欠です。建て替えをおこなう際に手すりの設置・段差の解消をすれば、将来の不安を減らせるでしょう。
家の建て替えにかかる主な費用

家を建て替える際には、さまざまな費用がかかります。
これらの費用だけでなく、家の登記に必要な登記費用や、建て替え時の地盤調査費用なども必要です。なお、国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」では、家の建て替え費用の平均は5,745万円でした。それぞれ詳しく解説します。
解体費用
家の解体費用は、主に以下の要素で決定します。
- 建物の構造
- 延床面積
- 立地条件
- 付帯工事の有無
- 廃棄物処理
解体する物件の内容に加えて、付帯工事の発生や、廃棄物の処理などが必要になれば、解体費用も増加しやすくなります。一般的な木造住宅の解体にかかる坪単価は、3万1,000円~4万4,000円程度が相場であり、40坪の場合は124万円~176万円程度が目安です。
建築費用
家の建築費用は、以下の要素によって決まります。
- 住宅の規模
- 間取り
- 施工法
- 設備仕様
- 立地条件
住宅の規模が大きく、間取り・設備仕様が複雑であるほど、建築費用は増加しやすくなります。国土交通省の「注文住宅の建築費(首都圏)」によると、2023年の首都圏における注文住宅の建築費用の平均は5,466万円、面積は約40.3坪でした。ただし、低価格で建てやすいローコストメーカーを利用すれば、平均値と比較して建築費用を減少させられる可能性があります。
仮住まい費用
家の建て替えをおこなう場合は、建て替えの工事期間中に生活する仮住まいが必要です。建て替え工事の打ち合わせ時に工期の目安を確認し、家賃などその期間中の生活費も想定しておきましょう。さまざまな要因で工期が伸びる可能性もあるため、多めに予算を組んでおくと安心です。もし実家に帰省するなどして家賃などの費用を抑えられる場合は、引越し費用のみで済む可能性があります。
家の建て替えに関する注意点

家を建て替えるにあたって、気を付けるべき注意点を5つまとめました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
再建築が可能であるかを確認する
住宅を建て替える前に最優先で確認するべきことは、土地が現行の建築基準法上で再建築可能であるかです。建築当時は問題がなかったとしても、法律の改正などにより、現在では新たに物件を建てることができない土地が存在します。
現在の法律で再建築できるか不安がある場合は、自治体に必ず確認しておきましょう。
地盤調査の結果次第では改良工事が発生する
住宅の建て替えでは、前の家の解体後に地盤調査が必要になります。建て替え後の住宅の耐震性を確保するために必要な調査です。スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)であれば、調査費用は5万円程度が目安になりますが、調査の結果次第では地盤改良工事が発生するかもしれません。
軟弱な地盤に住宅を建てることは危険であるため、基礎を安全に支えるために工事が必要になります。支持する地盤の深さによって工事にかかる費用が大きく変化するため、建て替えにかかる費用の総額に大きな影響をおよぼします。
複数の会社で見積もりを取る
高い品質と充実したサービスの建て替えを、適正なコストでおこなうためには、ハウスメーカーや工務店など、複数の会社から見積もりを取ることが重要です。一つの会社に見積もりを取るだけでは、建て替えの相場がわからず、極端に高いコストになってしまうかもしれません。複数の会社で見積もりを取れば、適切な価格のハウスメーカーや工務店に建て替えを依頼できる可能性が高くなります。
予備費を含めて余裕をもった予算を設定する
建て替えにはさまざまな費用がかかりますが、なかには地盤改良工事費用のように想定しないコストが発生する可能性があります。そのため、建て替えにかかる費用を概算したうえで、予備費を含めて余裕をもった予算設定をおこなうことが重要です。
仮に予期せぬコストが発生したとしても、予備費があれば対応できる幅が広がります。工事費総額に対して5%~10%程度の予備費を用意しておきたいところ。住宅ローンなどの借入金も活用して、余裕をもった資金計画を立てるようにしましょう。
建て替えでは2回の引越しが必要になる
建て替えでは、既存の住宅から仮住まい先へ、仮住まい先から建て替え先の新居への引越しで、2回分の引越し費用が発生します。そのため、少しでも引越し費用を削減するために、引越しの時期を考える必要があります。
引越しは3月~4月の繁忙期におこなうと費用が割高になりますが、6月~8月、11月などの閑散期を選択すると費用を抑えられるでしょう。建て替えでは2回引越しする必要があることから、引越し費用の節約も心がけたいところです。
家の建て替えとリフォームではどちらを選ぶべき?

家の住環境を改善する方法は、建て替えだけではありません。リフォームで住環境を改善できるのであれば、必ずしも建て替えを選ぶ必要はない可能性があります。建て替え・リフォーム、どちらを選ぶべきかを考えるにあたって、必要なポイントを以下にまとめました。それぞれ詳しく解説します。
築年数・老朽化の進行状態はどうか
リフォームでも対応できるか、建て替えで対処したほうがいいかを判断するには、築年数・老朽化の進行状態を判断する必要があります。すでに建物の基礎部分の劣化が大きく進んでおり、リフォームしても次々に補修コストが発生する状況にあるなら、建て替えを選択したほうがいいかもしれません。
一方で、一部分の修繕で対応できる場合は、リフォームをおこなって改善するといいでしょう。建築士などの専門家に住宅診断を依頼し、どちらのほうが効率がいいかを検討しましょう。
予算を十分に確保できるか
建て替えとリフォームでは、必要資金が大きく異なります。リフォームのほうが安く済むことから、建て替えの予算を十分に用意できない場合でも、リフォームであれば予算を確保できる場合もあるでしょう。建て替え・リフォームのどちらでも住環境の問題を解決できる場合は、予算に合わせて改善方法を選びます。
現在の設計を大幅に変更するかどうか
今の家を改修するにあたって、間取りやデザインを根本から変えたい場合、建て替えのほうが自由に設計できます。一方で、現在の間取りやデザインをそのままに住環境を改善するなら、リフォームで解決できる場合もあります。
工期の長さがどれくらい生活に影響を与えるか
建て替えでは既存建物の解体から、建物の新築までおこないます。そのため、工期が長くなりやすく、一般的には半年程度、場合によっては1年前後かかるかもしれません。よって、仮住まい先での暮らしは長期化しやすく、生活に影響が出ることが予測されます。
一方で、リフォームの工期は半年以内になることが多く、在宅しながら工事を進められるプランを選択できれば、仮住まいへ引越す必要はなく生活に対する影響も少なくなるでしょう。工事中の生活への影響を含めて、できる限り負担の少ない方法を選ぶことも選択肢の一つです。
建て替え後も長期にわたって人が住み続けるか
今後何年にわたり同じ住宅で暮らすかは、建て替え・リフォームの選択に大きく影響するでしょう。子どもに住宅を継承する予定があるなら、長期にわたって人が住み続けることが予測されます。建て替えをおこなえば、快適に暮らせる状態で子どもに家を相続することが可能です。
一方で、老後の生活を想定して住環境を改善するなら、リフォームで対応しても問題ないかもしれません。現在の住居を相続する予定がなく、建て替え後も数十年以上の長期にわたって人が住み続ける保証がない場合、建て替え以外の選択肢を検討してもいいでしょう。
建て替えかリフォームかを選択する際は、どのような理由で建て替えもしくはリフォームを検討しているのか、予算はどれほどかなどさまざまな角度から検討してみましょう。具体的な希望を書き出すなどして、見積もり時に担当者に相談することをおすすめします。
まとめ
家の建て替え時期は、築年数の目安から総合的に判断しましょう。暮らしていて老朽化の実感がある場合は、住宅診断を受けるなどして建て替えが必要であるか、専門家に相談するようにしてください。
求める住環境によっては、より費用の少ないリフォームで対応できる場合もあります。
自身や家族の暮らしにとってなにが重要であるかを整理したうえで、優先すべきことを解決できる方法を考えることが重要です。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ