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断熱材9種類を徹底比較!メリット・デメリットや費用相場、選び方を解説

断熱材9種類を比較して、注文住宅を建てる時の断熱材の選び方を解説します
家づくりでどういった断熱材を選択するかは、快適性や省エネ性を左右する重要なポイントです。しかし、断熱材にはさまざまな種類があります。それぞれの特徴や費用が異なるため迷う方も多いでしょう。

この記事では、代表的な断熱材9種類を徹底比較し、メリット・デメリットや費用相場をわかりやすく解説します。失敗しない断熱材の選び方のポイントも紹介するので、快適な住まいづくりの参考にしてください。

断熱材とは

断熱材は住宅でどのような役割を持っているのでしょうか
断熱材は住宅でどのような役割を持っているのでしょうか

断熱材とは、建物の内部と外部の間で熱が移動することを防ぐ素材のことです。壁や床、天井など見えない部分に施工され、室内の温度を一定に保つ役割を持ちます。

断熱材は外気の熱を室内に伝わりにくくし、冬は暖かく夏は涼しい環境を実現します。断熱材の種類によって性能や特徴が異なるため、建物の条件や目的に合わせて選ぶことが重要です。

断熱材はなぜ住宅に必要なのか

なぜ断熱材は住宅に必要なのか重要性を見ていきましょう
なぜ断熱材は住宅に必要なのか重要性を見ていきましょう

見えない部分に施工されるため、断熱材の効果を実感しにくいかもしれません。そこで、断熱材が住宅に必要な理由を詳しく解説します。

快適な室内環境を維持するため

断熱材は、建物の室内環境を維持するために不可欠です。外気が室内へ伝わるのを抑制し、温度変化をゆるやかにします。

高性能な断熱材を使うことで家のなかの温度差が小さくなり、より快適性を高められるでしょう。また、急激な温度差によるヒートショックを緩和でき、健康面への効果にも期待できます。

建物の耐久性を向上させるため

建物の耐久性を向上させ、長く安心して暮らせる住まいにするためにも、断熱材は必要です。断熱材や気密・防湿処理を組み合わせることで、木材や鉄骨、コンクリートなどの構造体への熱や湿気による劣化を軽減できるでしょう。一方、断熱性能が低いと構造体の表面温度が変動しやすくなり、部材のひずみや割れが生じ、住宅の耐久性や強度の低下につながります。

カビや腐食のリスク軽減のため

断熱材が必要な理由に、カビや腐食のリスク軽減が挙げられます。断熱材を使うことで壁内や天井裏、床下などに結露が発生しにくくなり、カビや腐食が進みにくくなるでしょう。その結果、健康リスクやシロアリ被害を減らしやすくなり、清潔な住環境を保てます。

省エネにつながるため

断熱材を使用することで使用エネルギーを抑えることができるため、省エネにつながり、光熱費を削減できるでしょう。断熱材によって住宅の断熱性能が上がると外気の影響を受けにくくなり、冷暖房効率がよくなるためです。

さらに、省エネ性能が高い住宅は、将来の資産価値も高まる可能性も。省エネにつながる断熱材は、環境にも家計にもやさしい素材です。

断熱材の種類

断熱材の種類について解説します
断熱材の種類について解説します

断熱材には4つのタイプがあり、そのなかでも種類が分かれています。それぞれの特徴や費用相場を見ていきましょう。

無機繊維系断熱材

無機繊維系断熱材は、ガラスや岩石などの鉱物を原料にした断熱材です。耐火性や吸音性に優れる一方で、湿気への弱さや施工性に注意する必要があります。代表的な断熱材には、グラスウールロックウールがあります。

グラスウール

ボード状やマット状などのタイプがあります
ボード状やマット状などのタイプがあります

グラスウールはガラスを高温で溶かして繊維状に加工した断熱材で、日本でもっとも普及しています。安価で取り入れやすい一方で、湿気に弱い点がデメリットです。

【メリット】

  • 不燃性が高く、火災に強い
  • 国内の流通量が多く、価格が安い
  • 吸音性が高く、生活音や外部の騒音を軽減しやすい
  • 経年変化がなく、高い耐久性を持つ

【デメリット】

  • 湿気を吸いやすく、結露により断熱性能が低下しやすい
  • 施工精度が断熱性能に影響しやすい
費用相場

1坪あたり、6,000円~7,500円程度。延床面積40坪の住宅の場合、グラスウールの費用相場は25万~30万円が目安です。

ロックウール

天然物であるロックウールは、再利用可能な素材でもあります
天然物であるロックウールは、再利用可能な素材でもあります

ロックウールは、玄武岩や製鉄スラグ(製鉄時の副産物)を繊維状に加工した断熱材です。防火性や防音性が求められる建物で使われます。

【メリット】

  • 不燃性が高く火災に強い
  • 吸音性が高く、防音性能に優れる
  • 形状が安定し施工しやすい

【デメリット】

  • 柔軟性が低く複雑な施工に向いていない
  • 国内普及率が低く、選択肢が少ない
費用相場

ロックウールの費用相場は、1坪あたり6,000円~7,500円程度です。延床面積40坪の住宅の場合、ロックウールの費用相場の目安は25万~30万円。グラスウールと同程度と覚えておきましょう。

発泡プラスチック系断熱材

発泡プラスチック系断熱材は、石油を原料とする樹脂(プラスチック)を発泡させた断熱材です。断熱性能が高く、軽量で施工性に優れています。

発泡プラスチック系断熱材はおもに3つの種類があります。それぞれの特徴や費用相場を見ていきましょう。

押出発泡ポリスチレン(XPS)

押出発泡ポリスチレン(XPS)は、ポリスチレン樹脂を連続して押し出して発泡させた断熱材で、強度と断熱性能に優れています。

【メリット】

  • 熱伝導率が低く、断熱性能が高い
  • 吸水性が小さく、床下や基礎など湿気の多い場所にも使用可能
  • 軽量で施工がしやすい
  • 水を吸わないため結露を防げる

【デメリット】

  • 耐火性が低く、火災時に有毒ガスを発生する可能性がある
  • 紫外線に弱く、屋外での長期使用には向いていない
費用相場

延床面積40坪の住宅の場合、押出発泡ポリスチレン(XPS)の費用相場は50万~60万円程度です。1坪あたり1万2,000円~1万5,000円前後でしょう。

ビーズ法ポリスチレン(EPS)

ビーズ法ポリスチレン(EPS)は、ポリスチレン樹脂をビーズ状に発泡させて成型した断熱材です。住宅から工業用まで幅広く使われています。

【メリット】

  • 軽くて柔らかいため加工性に優れる
  • 比較的安価で入手しやすい
  • 断熱性能が安定している

【デメリット】

  • 吸水性が高いため、湿気の多い場所には向いていない
  • 耐火性が低く、火災時にリスクがある
費用相場

ビーズ法ポリスチレン(EPS)の費用相場は40坪の住宅で、50万~60万円が目安です。押出発泡ポリスチレン(XPS)と同額程度で採用できるでしょう。

フェノールフォーム

フェノールフォームは、フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を加えた板状の断熱材で、断熱性能・耐火性ともに優れています。

【メリット】

  • 熱伝導率が低く、断熱性能が高い
  • 自己消火性があり、耐火性能に優れる
  • 経年劣化が少なく、性能が安定している

【デメリット】

  • ほかの発泡プラスチック系断熱材に比べて価格が高い
  • 衝撃に弱く、割れやすい性質がある
  • シロアリなどに対する防虫性が低い
費用相場

フェノールフォームの費用相場は延床面積40坪の住宅なら75万~90万円程度。1坪あたり1万8,000~2万3,000円ほどで、他の発泡プラスチック系断熱材より価格がやや高めであることがわかります。

木質繊維系断熱材

木質繊維系断熱材は、新聞紙や木材チップなどの天然由来の木質繊維を利用した断熱材です。環境負荷が少なく、調湿性に優れています。一方で、施工性やコストの高さには注意が必要です。

セルロースファイバー

木質繊維は天然素材でもあるため環境への負担も比較的抑えられます
木質繊維は天然素材でもあるため環境への負担も比較的抑えられます

セルロースファイバーは、段ボールや新聞古紙などをリサイクルして作られる断熱材で、高い調湿性能や防音性能を持ちます。天然素材を用いているため、人や環境にも優しいのも特徴です。

【メリット】

  • 調湿性が高く、結露やカビを抑制しやすい
  • 防音性能が高く、生活音や外部音を軽減できる
  • リサイクル素材を利用しており環境にやさしい

【デメリット】

  • 専門的な施工技術が必要で、施工会社による品質差が大きくなる
  • グラスウールと比較すると材料費や施工費が高くなる
費用相場

延床面積40坪の住宅の場合、セルロースファイバーの費用相場は40万~60万円程度です。

インシュレーションボード

インシュレーションボードは木材チップを繊維化して圧縮したボード状の断熱材で、建築資材として古くから使われています。

【メリット】

  • 自然素材のため健康リスクが低い
  • 施工性がよく、リフォームにも使いやすい

【デメリット】

  • 他の断熱材に比べて断熱性能がやや劣る
  • 価格が高い
  • シロアリ被害に遭いやすい
費用相場
インシュレーションボードの費用相場は、1平方メートルあたり7,000~10,000円(※)が目安です。

※メインの断熱材として一般的ではないため、1平方メートルあたりの費用相場を記載しています。

天然素材系断熱材

天然素材系断熱材は、羊毛やコルクなど自然由来の素材を利用した断熱材です。木質繊維系断熱材同様、環境にやさしく、調湿性や健康面での安心感がある一方、価格はやや高めでしょう。

羊毛(ウールブレス)

羊毛断熱材は天然の羊毛を利用した断熱材で、調湿性や防音性に優れています。

【メリット】

  • 湿度を吸収・放出し、結露やカビを防ぎやすい
  • 防音性が高い
  • 自然素材でシックハウス対策にも効果が期待できる

【デメリット】

  • 価格が高い
  • 防虫処理を施さないと害虫被害を受けやすい
費用相場

延床面積40坪の住宅の場合、羊毛(ウールブレス)の費用相場は50万~60万円程度です。1坪あたり1万2,000円~1万5,000円前後が目安。羊毛は海外から輸入されることがほとんどのため、価格が比較的高くなりやすいでしょう。

炭化コルク

炭化コルクはコルク樫の樹皮を炭化させた断熱材で、自然素材でありながら耐久性や断熱性能に優れています。

【メリット】

  • 耐久性が高く、長期間性能を維持できる
  • 調湿性能に優れ、快適な室内環境を保ちやすい
  • 自然素材でリサイクル可能、環境にやさしい

【デメリット】

  • 流通量が少なく、施工できる会社が少ない
  • 価格が高い
費用相場
炭化コルクの費用相場は、1平方メートルあたり約8,000円(※)が目安です。

※メインの断熱材として一般的ではないため、1平方メートルあたりの費用相場を記載しています。

断熱材の選び方

断熱材を選ぶ際は価格や断熱性能だけでなく、耐火性能や調湿性などの項目を比較検討することが大切です。今回紹介した断熱材の性能を、以下の表にまとめました。

断熱材 断熱性能
熱伝導率
(ワット/メートル・ケルビン)
耐火性能 調湿性・防湿性
鉱物系 グラスウール ★★
0.050
★★★★ ★★
ロックウール ★★★
0.038
★★★★★ ★★
発泡プラスチック系 押出発泡ポリスチレン(XPS) ★★★
0.040
★★ ★★★
ビーズ法ポリスチレン(EPS) ★★★
0.043
★★ ★★
フェノールフォーム ★★★★★
0.026
★★★★ ★★★
木質繊維系 セルロースファイバー ★★★
0.040
★★★ ★★★★★
インシュレーションボード ※ ★★
0.050
★★ ★★★
天然素材系 羊毛(ウールブレス) ※ ★★★
0.039
★★★ ★★★★★
炭化コルク ※ ★★★★
0.034
★★★ ★★★★

参考:国土交通省「表示・評価方法基準(省エネ)における検討方針」
※インシュレーションボード、羊毛(ウールブレス)、炭化コルクの熱伝導率は目安です

ここからは、断熱材を選ぶ際に比較検討すべき4つの項目を確認していきましょう。

断熱性能

断熱材を選ぶ際は、まずは熱伝導率を見て断熱性能を確認しましょう。熱伝導率は熱の伝わりやすさを示す数値で、低いほど断熱性能が高くなります。一般的に使われているグラスウールは熱伝導率が0.050ワット/メートル・ケルビンですが、フェノールフォームは0.026ワット/メートル・ケルビンと低く、比較すると断熱性能が高いことがわかります。

ただし、施工技術によっても家の断熱性能は変わってくるため、熱伝導率の数値がすべてではありません。目安として比較検討しましょう。

耐火性能

耐火性能も、断熱材を選ぶうえで重要な要素です。耐火性能が高ければ、万が一火災が起こった時に燃え広がりにくくなるためです。例えば、グラスウールやロックウールは耐火性能が高い特徴があります。

一方で発泡プラスチック系の断熱材は燃えやすく、火災時に有毒ガスが発生するリスクがあります。ただし、フェノールフォームは自己消火性があり、プラスチック系では比較的安心です。耐火性能も考慮し、断熱材を選びましょう。

調湿性・防湿性

断熱材を選ぶ際は、調湿性・防湿性も確認しておきましょう。適切に防湿されなければ、湿気により壁内や床下が結露し、カビが発生する可能性があります。

鉱物系断熱材は湿気を吸いやすく、防湿施工を適切におこなわなければ結露が発生するおそれがあります。そのため、湿気が溜まりやすい床下や基礎部分は、発泡プラスチック系の断熱材の使用が一般的です。

材料費・施工費

断熱材の性能だけでなく、材料費・施工費も比較しましょう。基本的に性能が高くなるほど、高額になります。例えば、フェノールフォームは断熱性能が高いものの、コスト面で導入ハードルが上がるでしょう。また、高い施工技術が必要なセルロースファイバーも高額になりがちです。

住宅の断熱材で一般的なグラスウールは普及率が高く、コストパフォーマンスに優れています。適切に施工することで、家の断熱性能も十分に高められます。断熱材を選ぶ際は性能だけでなく、予算とのバランスも考慮しましょう。

断熱材選びで失敗しないためのポイント

断熱材を選ぶ際のポイントを解説します。注文住宅で後悔しないためにも確認しておきましょう
断熱材を選ぶ際のポイントを解説します。注文住宅で後悔しないためにも確認しておきましょう

断熱材を価格や性能だけで選んでしまうと、大幅な予算オーバーや施工不良の発覚で後悔することもあります。失敗しないためにも、断熱材選びのポイントを押さえておきましょう。

住まい・ライフスタイルに合った断熱材を選ぶ

断熱材を選ぶ際は、地域やライフスタイルに合っているかを考慮しましょう。気候や住宅の構造によって必要な性能が異なるためです。

例えば、東北地方や北海道などの寒い地域では、断熱性能の高いフェノールフォームを使うことで快適性が高まります。比較的温暖な地域では、グラスウールでも十分な断熱性能を得られる可能性があります。

防音性を高めたいなら、セルロースファイバーが効果的です。環境に配慮するなら、羊毛が選択肢になるでしょう。住まいやライフスタイルから、どのような性能が必要かを判断することが、断熱材選びのポイントです。

優良な施工会社に相談する

断熱材を選ぶ際は、優良な施工会社に相談しましょう。断熱材は素材そのものだけでなく、施工品質によっても大きく性能が変わります。例えば、繊維系の断熱材は施工精度が低いとすき間から湿気が入り込み、断熱性能が落ちるでしょう。

また、セルロースファイバーは専門技術が必要な断熱材です。そのため、経験豊富な施工会社でなければ本来の断熱性能を得られない可能性があります。断熱材を選ぶ際は、施工事例や保証内容を確認したうえで優良な施工会社に相談しましょう。

まとめ

最後に、断熱材の種類の内容をまとめていきます。

断熱材とは?

断熱材とは、床や壁、天井に施し熱の出入りを抑えて住宅の快適性や省エネ性を高める素材です。快適な室内環境や、建物の耐久性を向上させるためにも欠かせません。

断熱材の種類は?

断熱材には鉱物系・発泡プラスチック系・木質繊維系・天然素材系の4タイプがあり、それぞれに特徴と適性があります。

断熱材の選び方は?

住まいの環境やライフスタイルに合った断熱材を選び、信頼できる施工会社に依頼することがポイントです。性能だけでなく施工精度やコストも含めて比較検討しましょう。

断熱材は見えない部分のため、おろそかにしてしまいがちです。ただし、住まいの快適性と省エネ性に直結する大切な要素のひとつです。この記事を参考にして住まいやライフスタイルに合った断熱材を選び、快適な住宅を建てられるようにしましょう。

新木 リョータ

執筆者

新木 リョータ

住宅専門ライター

住宅資材の専門商社および不動産会社にて営業職として9年間従事。現在は住宅ジャンルを専門とするWebライターとして活動し、実務経験を活かした専門性・独自性の高いコンテンツを提供している。

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