建て替えできない土地がある理由は?再建築不可物件を所有している場合の対処法

簡単にご説明すると、家を建てるためのルールが今と昔で異なるため、現在の基準では家を建てられない土地が存在するということです。
本記事では、建て替えできない土地がある理由を詳しく説明したうえで、例外的に家を建てられるケースを紹介します。再建築不可物件を所有している場合の対処法もあわせて解説するため、記事を読むことで、建て替えできない土地を所有している方はどうすればいいかわかるようになるでしょう。
記事の目次
建て替えできない土地がある理由

建て替えできない土地がある理由は、建築基準法・都市計画法が制定・施行されたことで、昔と現在で家を建てるルールが変化したからです。そのなかでも重要になる法律が接道義務であり、条件を満たさない場合は建て替えできません。
建て替えできない土地がある理由を、過去の歴史から順序立てて解説します。
建築基準法・都市計画法によるルールの整備
建築基準法が制定された1950年は日本にとって戦後復興期の時代であり、それ以前には建築のルールが存在しませんでした。家を建てる規則がなかったため、狭い場所に家が密集して建てられることもありました。
1968年には都市計画法が施行され、日本で建物を建てるためのルールが整備されます。都市の健全な発展と安全性を目的として法律が制定されており、今日に至るまで適切な形に改正されてきました。よって、過去に家を建てられた土地であっても、現在の建築基準法・都市計画法のルールでは家を建てられない場合があります。
物件が危険・有害と判断される例外的なケースを除いて、すでに建てられている家に関して、取り壊しを求められるわけではありません。しかし、新しく家を建てる際には、条件を満たしていなければ新しく家を建てられないことが原則です。
建築基準法の接道義務を満たさない
新しく家を建てられない土地がある理由は、建築基準法の第43条、一般的には接道義務という法律に反しているからです。接道義務では「建築物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない」と明記されています。
接道義務を満たさない物件は、建築物の新築・大規模改築が認められません。戦前・戦後に建てられた住宅は道路幅が4m未満である場合や、公道に接していない細い道路の奥にある土地、旗竿地にある家もありました。
接道義務の条件を満たさない物件は、現在の基準において新しく家を建てることができない再建築不可物件と呼ばれます。古くから存在する住宅密集地などでは、接道義務を満たさない物件が存在します。
緊急時の安全性が問題視されている
建築基準法の接道義務が制定され、再建築不可物件として建て替えが規制されている理由は、緊急時の安全性が根拠となっています。狭い道路幅や袋地では、火災・地震などの非常時に消防車・救急車の運転が困難となり、住民の避難や救助活動に支障が出るかもしれません。
実際に、幅員4m未満の道路では、火災発生時に消防車のホース展開スペースが確保できず、十分な消火活動がおこなえないといわれています。また、災害発生時に避難経路を確保できない可能性もあるため、建て替えできない土地にある家は、既存の住宅を含めて安全性が問題視されているといえるでしょう。
以上のことから、再建築不可物件は法律によって明確な根拠をもって定められています。安全性を重視した健全な都市開発のために、接道義務の条件を満たさない土地では、建て替えであっても家を建てられなくなりました。
建て替えできない土地に家が建てられるケース

接道義務を満たしていないことから建て替えできない土地であっても、例外的に家を建てられる場合があります。建て替えできない土地に家を建てられる例外のケースを2つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
敷地のセットバック
敷地のセットバックとは、幅員4m未満の道路に接する敷地について、道路の中心線から水平距離2mずつ、敷地を後退させることで、道路幅員を4m以上に確保して接道義務を満たします。
多くの再建築不可物件は、1950年の施行時点で既存の狭小道路に囲まれた宅地であるため、現行法上の接道義務を満たしていません。しかし、セットバックにより後退部分を道路用として自治体に移管することで再建築が可能となります。
具体的には、境界確定測量により、後退位置を確定したうえで分筆登記をして、自治体へ土地を道路として寄付または供用する申請をおこないます。敷地の一部を道路として広げることで、接道義務の条件を満たす手法です。ただし、自治体の判断によるため、必ずしも認められるわけではありません。
但し書き道路の基準を満たす
建築基準法第43条第2項第2号は、接道義務を満たさない敷地であっても、国土交通省令で定める基準に適合する場合は、接道義務を免除できる可能性がある制度です。但し書き道路または、みなし道路と呼ばれる例外的なケースになります。
具体的には、周囲に公園・緑地・広場などの空地があり、公共用道路に2m以上接しているなどの条件を満たす土地です。詳細な条件は各自治体によって異なる場合がありますが、共通して安全性に支障がないことを認められる必要があります。
特定行政庁、建築審査会の承認も得る必要があるため、自治体の基準を満たしていても必ずしも建築が許可されるとは限りません。
再建築不可物件を所有している場合の対処法

再建築不可物件を所有している場合、それぞれの目的に合わせて以下の対処法が考えられます。
再建築不可物件を所有している場合でも、建て替えできる方法もあれば、別の方法を取る選択肢もあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
隣地を購入する
再建築不可物件を所有している場合、隣接する土地の所有者から道路接道部の一部を購入することで、接道義務の条件を満たすことが可能です。隣地の一部を取得後、その部分が道路用地として自治体に認定されれば、建築基準法上の道路とみなされます。
隣地の所有者の合意が前提となるため、相場よりも高い金額を提示したとしても、必ずしも購入できるとは限りません。しかし、交渉次第では新しく土地を買うよりも安く、再建築できる物件を入手できる可能性もあります。
土地の等価交換をおこなう
土地の等価交換とは、双方が同等の価値を有する土地の一部分を相互に譲渡する契約のことです。接道義務の基準を満たすための隣地の一部を譲り受けて、自分の土地の一部と交換すれば、基準を満たせる可能性があります。
主に旗竿地で間口の幅が不足している場合に使用されます。等価交換する土地が同等の評価額であれば、金銭のやり取りを必要としません。隣地の購入と同様に交渉次第ではありますが、接道義務の基準を満たすように土地を取得して再建築を可能にする方法です。
リフォームなどで対応する
再建築不可物件では、建て替えや大規模な増築ができません。しかし、リフォームやリノベーションは可能である場合があります。住宅の小規模工事では建築確認申請が不要となるケースがあるため、もし不要であれば、自由に家の改修を実施できます。
建築確認申請が不要である工事は、キッチンやトイレのリフォーム、手すりの設置など対応できる範囲は広いです。しかし、主要構造部の50%を超える大規模工事では建築確認申請が必要になるため、再建築不可物件では申請が通りません。
建築確認申請を必要としない工事で住環境を改善できるなら、建て替えではなくリフォームによる対応も検討しましょう。
物件の活用方法を変更する
再建築不可物件を建て替えて居住することが難しい場合は、物件の活用方法を変更することも、選択肢の一つです。再建築不可物件であっても賃貸物件として需要を見込めるのであれば、既存の建物を解体することなく賃料収入を得られます。
既存の建物を解体する場合も、農地・資材置き場など、別の用途に使用する土地に転用することも考えられるでしょう。しかし、居住以外の方法で物件を活用するケースは、再建築不可物件に住み続けられないため、別の場所に住むことが前提となる方法です。
物件を売却する
再建築不可物件を活かす方法が存在しない場合は、物件の売却を検討しましょう。再建築不可物件であっても、隣地と組み合わせた活用ができるケースでは、需要が生まれる場合もあります。
ただし、市場ニーズが限られるため、低価格での売却になりやすい点に注意が必要です。住環境の改善を目的に建て替えを検討していた場合は、物件の売却金額を元手に新しい物件を購入しましょう。
建て替えできない土地を所有している場合の注意点

建て替えできない土地を所有している場合の注意点を以下にまとめました。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
建物の安全性を確認する
再建築不可物件は築年数が古く、現行の耐震基準に適合していない可能性があります。建て替えができないからといって住み続けていると、災害時に思わぬ事故に発展するかもしれません。築年数が古い再建築不可物件に住んでいる方は、専門家による住宅診断を受けるとよいでしょう。
住宅診断の結果、建築確認申請を必要としない小規模工事で現在の問題を解決できるなら、リフォームを選択します。建て替えでなければ対応できないほど、建物の構造部分に大きな問題がある場合は、現在の物件を売却して、住み替えを検討する必要があるかもしれません。
隣地所有者とのトラブルを避ける
再建築不可物件で建て替えを可能にするには、隣地の一部分を取得して接道義務の基準を満たす方法がありました。隣地を取得するには、隣地の所有者と良好な関係を築くことが重要です。日頃から近隣の方とのコミュニケーションをおこない、親しい間柄になれば、隣地の取得に対する相談もしやすいでしょう。
しかし、隣地の取得は双方が理解して納得する形でおこなわなければ、トラブルに発展するかもしれません。交渉は専門家を通して、契約内容に関する説明を詳しくおこなうことでトラブルを回避できます。距離の近さから契約について不明確な説明をして、口約束のみで同意を得ることがないようにしましょう。
ローンを利用する場合は審査で不利になることがある
多くの金融機関は、融資対象を建築基準法適合物件に限定しており、再建築不可物件は審査段階で融資対象外とされるか、融資条件が不利になる可能性があります。接道義務の例外的なケースや隣地の購入による建て替え、リフォームをおこなう場合は、ローンの審査が厳しくなるかもしれません。
再建築不可物件は金融機関から担保価値が低い物件と認識されるため、金融機関にとっては融資の回収が難しい物件です。そのため、再建築不可物件でローンを利用する場合は、通常の物件で住宅ローンを組む場合と比較して、自己資金を多く用意する必要があるでしょう。
物件の活用・売却の選択肢は狭くなりやすい
再建築不可物件は建て替えができないため、市場での需要が限られることから、活用や売却の選択肢も一般物件に比べて狭くなります。売却するにあたっては、買い手が見つかりにくいため、ほかの周辺の一般物件と比較して、売却価格が安くなりやすいでしょう。
建て替えを諦めて、マイホームを手放すことを決めても、取れる選択肢はけっして多くないかもしれません。再建築不可物件の取り扱い経験がある専門家に相談して、最善の選択を考えてみましょう。
手続きや交渉が難しい場合は専門家に相談する
再建築不可物件は法令が複雑であり、自治体によっても解釈に差があります。行政手続きにより建て替えを認めてもらうケース、隣地の取得にあたって交渉を進めるケースなどでわからないことがある場合は、専門家に相談しましょう。
手続きを間違えると建て替えを認めてもらえない場合や、交渉の方法を誤ると、のちにトラブルにつながるケースもあります。よって、再建築不可物件の建て替えで不都合を起こさないためにも、不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
建て替えができない土地は、現行の建築基準法や都市計画法によるルールが原因であることがほとんどです。特に接道義務の基準を満たしていない土地は再建築が認められず、再建築不可物件として制限を受けます。
敷地のセットバックや但し書き道路など、例外的に建築が認められるケースも存在します。しかし、基本的には再建築不可物件で、隣地の取得以外で建て替えをおこなうことは難しいでしょう。建て替えができない場合は、リフォームなどの選択肢を含めて検討する必要があります。
大切なことは、正しい知識と専門家の助言をもとに、最適な方法を見つけることです。再建築不可物件を所有している方は、現在の状況を踏まえて、抱えている問題を解決していきましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ