ピロティ構造とは?耐震性は低い?メリット・デメリットや設計する際の注意点

2階部分が屋根の役割をするため、駐車場として活用しているケースがあり、その開放的なデザインが魅力です。しかし、1階に柱しかないピロティ構造の耐震性を、不安視する人が一定数存在するのも事実です。
今回は、ピロティ構造が何かを解説します。また、ピロティ構造の耐震性が低いと言われる理由と、メリット・デメリットも説明します。ピロティ構造を採用する際の注意点も紹介するので、注文住宅を検討している方はぜひ参考にしてください。
記事の目次
ピロティ構造とは

ピロティとは、フランス語で杭を表すPilotisから来た言葉です。建築用語として使われる場合は、建物を柱だけで支える構造のことをいいます。
ピロティ構造には壁がないため、その開放的でスタイリッシュなデザインから、ホテルやオフィスビル、商業施設などで多く採用されています。ピロティ構造が住宅に採用されるケースでは、柱だけの空間を駐車スペースとして活用することが多く、2階部分が屋根の役割をします。
ピロティ構造の種類

ピロティ構造は、おもに2種類に分けられます。1階部分すべてがピロティになっている「全ピロティ」、部分的に採用された「部分ピロティ」です。それぞれの特徴と注意点を、もう少し詳しく解説します。
全ピロティ
1階部分のすべてをピロティにすることで、建物が宙に浮いたようなデザインになります。住宅に採用することで、オリジナリティあふれるデザインを表現できます。
また1階に居室部分がなく、通行人の視線を気にせず過ごせるため、プライバシーを確保しやすいのがメリットです。しかし帰宅時は、毎回階段を上らなければなりません。赤ちゃんを抱っこしていたり、重い荷物を抱えたりしていると、より負担に感じるかもしれません。
また1階部分をすべてピロティにすることで、耐震性が低くなる傾向があります。鉄筋コンクリート造や鉄骨造を採用するなどして、耐震性を高めましょう。
部分ピロティ
住宅に部分的にピロティを採用することで、例えば、駐車場やテラスなど多目的に利用できます。2階部分が屋根になるため、多少の雨は防げるのがメリットです。
部分的なピロティにすることで壁がある空間ができ、耐震性の不安が軽減できます。また、部分的に採用することで、間取りやデザインに自由度が生まれますが、土地の広さによっては1階の床面積が制限されます。土地の条件や法的制限に合わせて計画しましょう。
ピロティ構造の耐震性が低いと言われる理由

ピロティ構造は耐震性が低いと言われるのは、一般的な構造に比べて地震のエネルギーが1階の柱に集中しやすく、耐震性のバランスが崩れることで倒壊するリスクがあるからです。過去に起きた大地震で実際に倒壊したケースもあり、構造的に耐震性を高める必要があります。
建物は耐震性を維持するために、地震などの揺れに対抗するための壁(耐震壁)を規定以上設置することが義務付けられています。ピロティ構造は1階部分に耐震壁を設けることができない、もしくは少なくなりますが、鉄筋コンクリート造や鉄骨造にするなどして耐震性を高めることは可能です。
ピロティ構造のメリット

ピロティ構造を住宅に採用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的なメリットを5つ紹介します。
プライバシーを確保できる
1階に居住空間がないピロティ構造は、外部からの視線を気にせずに済むため、プライバシーを確保しやすいのが魅力です。ピロティを採用した場合、昼間は2階のリビングで過ごすことになります。隣家の窓と位置をずらすことで、カーテンを開け放って、気兼ねなく太陽光を取り込めるでしょう。
水害対策になる
ピロティ構造は1階に壁がないため、大雨による浸水や津波の被害を直接受けずに済みます。東日本大震災では、津波により多くの家屋が流出しましたが、ピロティ構造は被害が少なかったことがわかっています。
また、水害によって床上浸水するリスクが比較的少ないため、沿岸や河川に近い住宅におすすめです。
土地を有効活用できる
ピロティは、多目的に活用できるのがメリットです。都市部では広い土地を取得するのが難しい傾向がありますが、ピロティを採用することで駐車スペースの上を住居の一部として使えるため、土地の有効活用にもつながります。
駐車スペース以外にも、例えば子どもが遊ぶスペースやセカンドリビングとして利用することも可能です。2階部分が屋根の役割をするため、雨天や夏の暑い日も過ごしやすいでしょう。
自由度の高い設計ができる
ピロティを居住空間として使用せず、外に対して解放された空間にすることで、延べ床面積に算入せずに済みます。つまり延べ床面積を減らすことなく、屋根付きの駐車スペースをつくれます。
工夫次第で変化にとんだ間取りにできるので、ぜひハウスメーカーや工務店の担当者に相談し、素敵な住空間を実現させてください。
開放的な空間設計に仕上げられる
ピロティとは、1階部分が柱で構成された構造で、開放的な空間が魅力です。ピロティを住宅に採用することでスタイリッシュな印象になり、オリジナリティも表現できます。ハウスメーカーや工務店の施工事例なども参考にし、おしゃれな空間設計を目指しましょう。
ピロティ構造のデメリット

ピロティはメリットがある一方で、デメリットもあります。ここでは、おもなデメリットを4つ紹介します。注文住宅にピロティを採用する際はぜひ参考にしてください。
耐震性に懸念がある
ピロティ構造は、一般的な構造に比べて耐震性低くなる傾向があります。ピロティ構造は、地震のエネルギーが1階の柱に集中しやすく、2階の耐震壁で支えている部分とのバランスが悪くなるからです。
ピロティ構造にする場合は、鉄筋コンクリートや鉄骨造を採用し、耐震性を高めるようにしましょう。
建築コストがかかる
ピロティ構造にする場合、建築コストがかかります。耐震性を高めるために鉄筋コンクリート造や鉄骨造を採用するのが一般的です。これは、木造と比べて建材費や施工費が高くなるからです。
また鉄筋コンクリート造や鉄骨造は重量があり、地盤の強度によっては地盤改良が必要になることがあります。
住居スペースを削る必要がある
1階をピロティ構造にすると、1階を居住空間として使えません。つまり、住居スペースを削る必要があり、土地の広さによっては、住居スペースを十分に確保できない可能性があります。3階建てにして床面積を確保する方法もありますが、土地の法的制限や形状、道路の幅員によっては3階建てが建てられないケースもあります。
雨や風の影響を受けやすくなる
ピロティ構造の2階建ては高さがあるため、平屋に比べて雨や風の影響を受けやすく、台風による被害が大きくなる可能があります。近年地球温暖化により、自然災害が頻発しています。例えば台風が頻発するような地域では、災害リスクの軽減を優先させましょう。
ピロティ構造を設計する際に注意すべき点

ピロティ構造を設計する場合、どのような点に配慮したらよいのでしょうか。注意すべきポイントを3つ紹介します。
耐震性を高める設計・補強をする
構造的に耐震性を高める必要があります。なぜなら、一般的な構造に比べて地震のエネルギーが1階の柱に集中しやすく、耐震性のバランスが崩れることで倒壊するリスクが高まるからです。
過去の大地震で実際に倒壊したケースもあります。例えば鉄筋コンクリート造にして、耐震性を高める設計・補強をしましょう。
床面積の算定をする
床面積の算定方法には注意しましょう。ピロティを居住空間として使用せず、意匠性のために設けられものであれば、延べ床面積に算入せずに済みます。
しかし、建物の構造が木造で、高さが1.5m以下の場合はピロティと見なさず、床面積に算入されます。いわゆる地下車庫のような構造の場合は、延べ床面積に算入されるため注意が必要です。
新耐震基準を満たしているかの確認をする
ピロティ構造の中古物件の購入を検討する際は、新耐震基準を満たしているのか確認しましょう。新耐震基準を満たしているのは、1981年6月1日以降に建築確認申請をしている建物です。
それ以前の建物でも、耐震診断をすることで耐震性をチェックできます。ただし購入前に建物診断する場合は、売主の了承をえる必要があり、かかる費用は自己負担になります。耐震診断は建物の構造や依頼先やプランによってかかる費用も異なります。
なお鉄筋コンクリート造は、1,000円~2,500円/平方メートルが相場です。
ピロティ構造に関するまとめ

最後に、ピロティ構造のおさらいをします。
ピロティ構造とは?
ピロティ構造とは、建物を柱だけで支える構造のことです。デザイン性が高く、ホテルやオフィスビル、商業施設などで多く採用されています。
ピロティが住宅に採用されるケースでは、駐車スペースとして活用することが多く、2階部分が屋根の役割をします。
ピロティ構造の耐震性が低いと言われる理由は?
ピロティ構造は耐震性が低いといわれるのは、一般的な構造に比べて地震のエネルギーが1階の柱に集中しやすいからです。耐震性のバランスが崩れることで倒壊するリスクが高まります。
ピロティ構造は1階部分に耐震壁を設けられません。そのため、鉄筋コンクリート造や鉄骨造にするなどして耐震性を高める必要があります。
ピロティ構造のメリット・デメリットは?
ピロティ構造は外部からの視線が届きにくいためプライバシーを確保しやすく、水害対策にもなり、土地を有効活用できます。また設計の自由度が高く、開放的な空間設計ができるのがメリットです。
一方で、ピロティは構造的に耐震性が低くなる傾向があり、鉄筋コンクリート造や鉄骨造にするのが一般的ですが、その分建築コストは高くなります。また平屋に比べてピロティ構造は雨や風の影響を受けやすく、1階部分の住居スペースを削らなくてはならない点がデメリットです。
ピロティ構造を採用する場合は、耐震性を確保するために鉄筋コンクリート造や鉄骨造にする必要があります。木造を得意とするハウスメーカーや工務店では、そもそも設計や施工が難しいでしょう。鉄筋コンクリートや鉄骨造を手がける建築会社へ相談するようにし、耐震性を重視して設計してもらいましょう。事前にピロティ構造の実績があるか確認しておくと安心です。
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