造作家具とは?メリット・デメリットや費用、後悔しないための注意点、実例を解説

この記事では、造作家具の特徴や種類、メリットとデメリットを解説します。また、造作家具の費用目安や依頼する流れ、注意点も紹介。実例も紹介するので注文住宅で、家の雰囲気に合わせた空間づくりをしたい方は、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
造作家具とは?

造作家具とは、空間や用途に合わせて製作する家具を意味します。住宅の壁や床と一体となるように、オーダーメイドの家具や収納スペースを加工し、取り付けるのが一般的です。新築やリフォームで、部材の取り付けや仕上げ工事を、造作と呼ぶのが由来となっています。
ミリ単位のサイズオーダーはもちろん、デザインや素材を自由に選ぶことも。そのため、ライフスタイルに合わせて計画でき、空間をトータルコーディネートしやすいのが魅力です。
造作家具と他の家具の違い
造作家具と、一般的な置き家具やオーダーメイド家具との違いを解説します。
置き家具
置き家具とは、おもに家具店やインテリアショップなどで販売されている既成品の家具を指します。独立しているためレイアウトに合わせて自由に移動が可能。購入から設置までにそれほど時間がかからず、予算に合わせて購入できるのが魅力です。しかし、自由に設計できる造作家具とは異なり、基本的にはすでに販売されているラインアップから選ばなければなりません。好みや空間に合わせたサイズ選びに、苦労することもあるでしょう。
オーダー家具
オーダー家具とは、依頼主が希望するデザインやサイズで作る家具の総称で、いわばオンリーワンの家具です。大きく分けると、壁や床に固定して製作する家具を造作家具と、移動可能な据え置き型の家具の2種類に分類できます。オーダー家具は家具を専門に製作する会社や、大工さんに依頼するのが一般的で、既製品の家具に比べて高価になりやすいです。
造作できる家具の種類

実際にどのような造作家具を設置できるのか、部屋ごとに例を挙げながら紹介していきます。
リビング・ダイニング
リビングやダイニングは、家族がくつろげる空間にしたいと考える方も多いのではないでしょうか。例えば、壁面を活用したテレビボードや収納家具を造作すると、スペースを最大限に活用できます。また、既製品ではなく、家族構成やライフスタイルに合ったダイニングテーブルやベンチを、造作家具で用意するのもおすすめです。
<造作家具の一例>
- テレビボード
- 壁面収納
- ダイニングテーブル&ベンチ
- ローテーブル&ソファ
- 書斎コーナー(デスク)
- キャットウォーク
キッチン
既成のシステムキッチンを購入するのではなく、造作家具を採用する方法もあります。使う人の身長や部屋の広さ、形状に合わせて作れるのが魅力です。一緒にカップボードや収納庫も造作すれば、トータルコーディネートもできます。手持ちの家具や既製品を併用し、予算を抑える工夫も検討してみるとよいでしょう。
<造作家具の一例>
- キッチン本体
- カウンター
- 食器棚・カップボード
- 調理台
洗面室
洗面台を造作家具で設置するのも、ひとつの手です。部屋の形状に合わせて作れるため、デッドスペースを有効利用でき、すき間収納等を購入する必要がなくなります。空間の余裕があれば、物干しや作業台を造作してもらい、ランドリールームとしても活用しましょう。家事動線を短くすることもでき、家事ストレス軽減にもつながります。
<造作家具の一例>
- 洗面台本体
- 洗面収納
- 作業台(洗濯物を畳む・アイロンがけをする台)
- 物干し
仕事部屋・書斎
仕事部屋や書斎が欲しい方は、デスクや本棚を造作する方法も検討してみてください。例えば、天井まで届くような本棚を設置できれば、限られたスペースでも収納量を確保できるでしょう。
<造作家具の一例>
- デスク
- 本棚
- パソコンやプリンター用のラック
寝室
寝室にドレッサーやデスクを置くのに十分なスペースがなくても、造作家具であれば、工夫次第でメイクや作業のスペースを生み出せるでしょう。ドアや窓の位置を考えて、造作家具を設置できるスペースがないか検討してみましょう。
<造作家具の一例>
- ドレッサー
- デスク
- 壁面収納
子ども部屋
子ども部屋をなるべく広く使えるように、造作家具を活用してみませんか。例えば、勉強机や収納家具の上をベッドにできれば、空いた空間を遊ぶスペースとして利用できます。
<造作家具の一例>
- 勉強机
- ベッド
- 収納家具
造作家具のメリット

造作家具には、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的なメリットを6つ紹介します。
オリジナルの素材やデザインにこだわれる
造作家具は、素材を自由に選べる、デザインにもこだわれるのがメリットです。フローリングや建具との相性を考えて計画すれば、空間をトータルコーディネートできます。また、同じ無垢材でも、樹種によってカラーはもちろんですが、テクスチャーも異なります。世界に1つしかない、オーダー家具で理想の住まいを実現できるでしょう。
デッドスペースを解消できる
造作家具は、設置する空間に合わせてミリ単位のサイズをオーダーできるため、デッドスペースを解消できるのもメリットのひとつです。既製品を置くと無駄な空間ができてしまいがちですが、空間に合わせた寸法で作られた造作家具であればデッドスペースを生みません。造作家具によって空間を最大限活用できるでしょう。
使い勝手よく調整できる
造作家具は、使う人のために作るオーダーメイドの家具です。家族構成やライフスタイルに合わせて高さや幅をカスタマイズできる、使い勝手のよさも魅力のひとつです。細かなオーダーも可能で、実際に使う場面をイメージして、機能面に無理がないかよく検討しておきましょう。
空間全体に一体感が生まれる
理想とする空間やインテリアスタイルのイメージに合わせて、設計できるのも造作家具のメリットです。フローリングや建具のカラーと合せれば、ちぐはぐな印象にならず、統一感を演出できます。「ナチュラルな雰囲気が好き」「モダンな印象にしたい」など、サイズや素材だけでなく、デザインの相談も可能です。
耐震性能を高められる
造作家具は壁や床に固定するように設置するため、耐震性が向上するメリットもあります。地震によって家具が転倒すれば、避難路をふさぐだけでなく、怪我の原因つながることも。大きな家具を設置する際は、建物と一体化でき地震の対策ができる、造作家具の採用を検討してみてください。
掃除がしやすくなる
造作家具にすると、掃除がしやすくなるでしょう。ジャストサイズに作られた造作家具は既製家具と違ってすき間ができにくいため掃除の負担を軽減できます。また造作家具は固定されているため、掃除のたびに移動する必要もありません。
造作家具のデメリット

造作家具には、デメリットもあります。注文住宅で造作家具の採用を検討する際は、メリットだけでなくデメリットがあることも理解しておきましょう。
見本がない
造作家具は、オーダーして1から作る家具です。設計図があっても見本はなく、完成するまで実物を確認できません。完成後に「イメージと違った」と後悔することがないように、打ち合わせには時間をかけましょう。
費用が高額になりやすい
量産している既製品と比べて、造作家具は職人が手作業で作るため費用が高額になりやすい傾向があります。また、定価が存在しないため、依頼先によって費用が大きく異なる可能性も。予算内で希望する家具を実現できるのか、事前に確認しましょう。
製作・施工まで時間がかかる
気に入ったらすぐに購入できる既成の家具と違い、造作家具をオーダーする際は、希望やサイズを伝えることから始めます。また、打ち合わせの時間だけでなく、製作期間も考慮しなければならなりません。施工完了までの工程を確認し、スケジュールには余裕をもっておきましょう。
移動や撤去が難しい
造作家具は、建物と一体化するように設置するため、簡単に移動や撤去ができません。不要になったら工事が必要になり、壁や床など内装をやり直す必要があるケースも。ライフステージの変化も考慮して計画するようにし、撤去する方法やかかるコストも相談しておくと安心です。
家具の配置を柔軟に変えられない
造作家具は基本的には移動できないため、模様替えなどによってその他の家具の配置を変える場合も考えたとおりの空間にならないかもしれません。将来家具を異動する可能性があれば、固定しないで設置できないか相談しておきましょう。
対応している会社が限られている
造作家具のようなオーダー家具に対応できる会社は限られています。また、オーダーを受け付けている会社でも、家具の仕様やデザインによっては、対応できない可能性も。造作家具を依頼する際は施工実績を確認するようにし、技量や知識に不足がないか、チェックするようにしてください。
造作家具の費用

造作家具の費用は、依頼する家具の種類やサイズ、使用する素材によって変動するため一概にはいえませんが、例えば、クローゼットやカップボードのような大型の造作家具は、15万~30万円がひとつの目安となるでしょう。また、新築工事と一緒に依頼する場合で、小規模な造作家具であれば、材料費程度の5万~10万円で依頼できるケースもあります。
造作家具の製作の流れ

造作家具を製作する場合、おおまかな流れは以下のとおりです。
- STEP 1依頼先の選定
- STEP 2打ち合わせ
- STEP 3設計・見積もり
- STEP 4オーダー(契約)
- STEP 5造作家具の製作
- STEP 6納品・設置
まず、造作家具を依頼する会社を選定します。インターネットで造作家具のメーカーを検索するか、ハウスメーカーや工務店に相談してみましょう。打ち合わせでは、製作を依頼したい家具の希望を伝えて、使用する素材や仕様を決めます。リフォームであれば現地調査をおこないますが、新築時であれば図面上で計画します。
打ち合わせた内容で、設計・見積もりをしてもらうのが次のステップです。予算がオーバーしている、もしくは疑問な点があれば、この段階で解消しておきましょう。造作家具の仕様が決まったら契約し、造作家具の製作に取りかかります。完成したら納品・設置してもらい完成です。
造作家具で後悔しないための注意点

造作家具はこだわりを取り入れたオーダーメイドの家具。時間も費用も既製の家具よりかかるため、後悔したくないものです。また、住宅に合わせて製作されるので、設置したら簡単には撤去できません。そこで、後悔しないための注意点を詳しく紹介します。
将来の生活プランも考えて計画をする
造作家具は、設置したら容易に移動や撤去ができません。将来の生活スタイルや家族構成が変化しても長く使えるのか考慮して、計画しましょう。
予算の上限を決める
造作家具は定価がないため、予算を決めずに打ち合わせを進めてしまうと、予算オーバーになりかねません。そのため予算の上限は明確に決めておきましょう。予想以上に高額になりそうな時は、コストを抑える方法がないか、担当者に相談するのもおすすめです。
家具の使用目的や使い方を明確にする
オーダーをする際は、実際に利用する場面をイメージして、使用目的を明確にしておきましょう。造作家具は、使う人の利便性を重視して製作する家具です。使い方によっては、本来のメリットを発揮できない可能性があります。使用する目的や使い方が決まっていれば、このような問題も解消してくれます。
生活動線を考慮する
造作家具を設置する予定の場所は生活するうえで支障がないか、生活動線を考慮したうえで計画しましょう。また、他の家具とのバランスによっては使いづらく、ストレスになってしまうことも。空間にどの程度ゆとりがあるのか、図面上で確認してください。
使用する材料のサンプルを見せてもらう
造作家具には見本がなく、完成するまで実物を確認することができません。しかし、使用する素材のサンプルの取り寄せは可能です。完成してから「イメージと違った」といった後悔をしないためにも、素材のカラーやテクスチャーは、実際のサンプルを見て選択しましょう。
造作家具が得意な会社を調べておく
造作家具の種類や仕様によっては、対応が難しい会社もあります。特にデザイン性を重視する場合は、家具製作を専門とする会社など、造作家具が得意な会社を探しておくとよいでしょう。
造作家具の実例7選
ここでは、造作家具を採用した注文住宅の建築実例について紹介します。造作家具を検討している方はぜひ参考にしてください。
実例1. 造作カウンター・収納棚を手の届きやすい価格で実現

デッドスペースになりがちなダイニングテーブル脇のスペースに、カウンターと収納棚を設置しました。子どもの宿題スペースとして活躍しています。造作家具を新築工事と一緒に依頼することで、施主の希望を叶えつつ、費用は予算内に収められています。
実例2. 身長や使い方に合わせ製作したキッチン

身長や使い方に合わせた造作家具を製作。異なる種類の木材を使うことでアクセントになっています。木のぬくもりを感じながら調理できるキッチンは、家族との会話も弾むお気に入りの空間になりました。
実例3. 天然木を造り付け照明にもこだわったリビング

天然木を利用して、テレビ台を造作した実例です。アクセントクロスを施し、壁面を照らす間接照明も採用。カウンターは住宅の設計段階から計画されていたので、レイアウトを考慮しながら間取りを決めることができたそう。実際にリビングは、すっきりとした空間になっています。
実例4. 木と漆喰のテイストにあわせた収納スペース

収納の上をロフトとして活用できるように、システム収納を採用しました。注文住宅に合わせた造作家具は空間を無駄なく利用できるだけでなく、家全体のテイストに合わせられるのが魅力です。
実例5. 間接照明もある玄関のシューズボックス

玄関の壁一面を覆うような大きなシューズボックスを設置し、スッキリとした印象に仕上げました。既製品でも大きな収納家具はありますが、間接照明が付いていたり、玄関の壁面にピッタリなサイズを探すのは難しいでしょう。
実例6. 勾配天井と造作家具で整えるLDK

ウッディーな雰囲気で木目が美しい造作キッチン。ダイニングテーブルやソファも造作したため統一感のあるおしゃれなリビングに仕上がりました。勾配天井の仕上げにラワン合板を使って、温かみのある空間を演出しています。
実例7. 落ち着いた質感のホテルライクな洗面台

ゆとりある洗面台とミラーが、ホテルライクな雰囲気を演出しています。すき間なく設置することで清掃しやすく、いつもきれいな状態を保つことが可能に。家全体のデザインテイストが統一され、細部までこだわりが詰まった理想の住まいになっています。
まとめ
最後に造作家具の特徴や種類、メリット・デメリットをおさらいします。
造作家具とは?
造作家具とは、空間や用途に合わせて製作するオーダー家具の一種です。壁や床と一体となるように、家具や収納スペースを設置するのが一般的です。
造作家具の種類は?
依頼主の要望や用途に応じて製作するため、さまざまな種類があります。例えば、リビング・ダイニングのテレビボードやダイニングテーブル、書斎のデスクや本棚などが挙げられます。
造作家具のメリット・デメリットは?
空間に合わせてミリ単位のサイズをオーダーでき、素材も自由に選べるのがメリットです。空間をトータルコーディネートしやすく、耐震性が高いのも魅力です。
一方で、壁や床と一体となるように設置することが多く、自由に移動や撤去ができないのがデメリットです。また、既製品に比べ高額になる傾向があるため、造作家具を採用する際はよく検討するようにしましょう。
注文住宅で造作家具の設置に迷ったら、まずはハウスメーカーや工務店に相談してみましょう。新築工事と一緒に依頼することで費用を抑えられ、建物の引き渡し時に造作家具も完成するため、スムーズに引越しできます。
注文住宅を建てる