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住宅ローンの分割融資とは?つなぎ融資との違いや利用するメリット・デメリットを徹底解説

分割して融資を受けられる住宅ローンの分割融資を詳しく解説します
注文住宅を購入する際は、土地代金の支払いや建物の着手金など、複数回にわたって高額な支払いが発生します。この時、住宅ローンを組むのが一般的ですが、一度に高額なローンを組むのが不安な方もいるでしょう。そのような場合には、貸付金が分割して交付される「分割融資」がおすすめです。

また、似たようなものに「つなぎ融資」もあります。本記事では、分割融資をピックアップしながら、つなぎ融資との違いなども詳しく解説します。

住宅ローンの分割融資とは

借入金を一括ではなく複数回に分けて受け取れるものが分割融資です
借入金を一括ではなく複数回に分けて受け取れるものが分割融資です

通常の住宅ローンでは、建物が完成し、実際に引き渡しとなった時に一括で融資がおこなわれます。しかし、注文住宅の場合は、土地や建物がすでにある建売住宅やマンションを購入する際とは異なり、土地の購入費用や着工時の支払いなどがあります。上記は決して安いものではなく、多額の費用を支払う必要があります。そのため、費用の支払いが困難になるケースも珍しくありません。これらのような課題を抱えている方におすすめなのが、住宅ローンの分割融資です。

分割融資とは、複数回に分けて融資を受けられること。分割融資を活用することで、自己資金が不十分でも返済負担を抑えながら、注文住宅の購入ができます。

ただし、一般的な住宅ローンの融資実行は住宅の完成後なのに対して分割融資は土地の引き渡し時点から融資が始まります。最初の融資実行の翌月から返済が始まるため、忘れないようにしましょう。分割融資を検討する際は、返済開始時期を十分に把握しておく必要があります。

さらに、分割融資はすべての金融機関で利用できるものではありません。また、金融機関によって条件や分割可能回数などが異なるため、よく下調べをしましょう。

住宅ローンの分割融資とつなぎ融資の違い

住宅の購入時における資金調達方法として、「つなぎ融資」もあります。両者とも支払いのタイミングに応じて資金を借り入れできますが、その特徴は大きく異なります。

分割融資の場合、一つの住宅ローンを複数回に分けて借り入れる形式で、物件への抵当権の設定が必要。一方、つなぎ融資は本来の住宅ローンとは別の無担保ローンとして組まれる点が特徴です。

つまり、分割融資は一つの住宅ローンの借入を時期によって分ける手法であるのに対し、つなぎ融資は住宅ローンとは独立した別個の借入をおこなうものなので、根本的な仕組みが異なります。

住宅ローンの分割融資を受けるメリット

住宅ローンの分割融資を受けるメリットを解説します
住宅ローンの分割融資を受けるメリットを解説します

住宅ローンの分割融資の概要を説明しましたが、ここからは具体的なメリットを見ていきましょう。

住宅ローン控除を適用できる可能性が高い

住宅ローン控除を利用するためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。

主な条件は以下のとおりです。

  • 借り入れ期間が10年以上であること
  • 土地取得から2年以内に住宅を建設して居住を始めること

分割融資を利用して、上記の条件を満たした場合、住宅ローン控除の対象となる可能性が高いです。

一方、つなぎ融資は住宅を取得するための融資ではありません。住宅ローンの一部の返済をつなぎ融資で賄うことができますが、借り入れ期間が短く、上記の条件はクリアできないため、住宅ローンの控除が受けられません。

住宅ローン控除が利用できれば、税負担が軽減されるため、税金に関する恩恵を受けられる点が大きなメリットです。注文住宅を購入したあとも控除をうまく活用することで、家計の負担も減らせるでしょう。

低金利での資金調達ができる

分割融資では、低金利で資金調達ができる点が大きな魅力です。分割融資は、住宅ローンの金利と同等のケースが多く、金利が低く設定されています。

一方、つなぎ融資は住宅ローンとは異なる融資商品であるため、一般的に金利が高めに設定されていることがほとんど。そのため、分割融資を利用することで、支払利息の総額を抑制できる可能性があります。

住宅ローンの分割融資を受けるデメリット

住宅ローンの分割融資を受けるデメリットを解説します
住宅ローンの分割融資を受けるデメリットを解説します

分割融資は便利な制度ですが、活用する際には留意すべきポイントがあります。主な注意点について解説します。

抵当権の設定が複数回発生する

分割融資では、融資の段階ごとに抵当権の設定手続きをしなければなりません。土地の購入時に土地への抵当権を設定し、建物の費用支払いの際には建物への抵当権設定が必要です。

これらの手続きには、その都度、司法書士報酬や登録免許税などの諸経費が必要。通常の一括融資では一度の費用で完了するところが、分割融資では手続きが複数回に及ぶため、経済的な負担が増加する可能性があります。

諸費用が発生する

分割融資の場合、融資実行のたびに融資手数料が課される可能性があり、想定以上に諸経費がかかることがあります。また、融資手数料以外にも印紙代なども必要です。上記の諸費用は住宅取得時の初期費用として、事前に資金計画に織り込んでおきましょう。

つなぎ融資を受けるメリット

つなぎ融資を受けるメリットを解説します
つなぎ融資を受けるメリットを解説します

分割融資との違いを明確にするためにも、つなぎ融資を受けるメリットを見ていきましょう。

一時的に資金が必要になった時でも対応できる

一般的な住宅ローンでは、住宅を引き渡す際に一括で融資されますが、それまでにかかる土地の購入代金や中間金などは自己負担する必要があります。項目によっては高額になりやすいものもあるため、一時的なものであっても、この支払いが負担になる場合もあるでしょう。

つなぎ融資を利用することで、住宅ローンが融資されるまでの期間、上記の支払いに対応できる点が大きな魅力です。

無担保で利用できる可能性がある

つなぎ融資は、1年以内の短期融資という性質上、抵当権の設定は必要ありません。抵当権とは、金融機関が貸し倒れを防ぐために設定する権利のことで、これを設定すると不動産が担保に入った状態になります。抵当権設定の必要がなければ、無担保で利用できるということ。しかし、住宅ローンとつなぎ融資をそれぞれ別の金融機関で借り入れる際は、住宅ローンを組んだ金融機関が発行する融資証明書などを提出しなければならない場合もあります。

登録免許税の軽減措置がある

登録免許税の軽減措置を受けるためには、建物の完成が条件となります。分割融資の場合、融資実行時点で建物が未完成のため、登録免許税の軽減措置を利用できない可能性があります。

一方、つなぎ融資では抵当権の設定が不要なため、登記や登録免許税は発生しません。引き渡し時に住宅ローンの融資が一括でおこなわれ、つなぎ融資分が精算された後に抵当権が設定されます。

上記の時点で建物が完成しているため、抵当権設定登記にともなう登録免許税の軽減措置が適用可能。具体的には、借入額に対する税率が0.4%から0.1%に軽減されます。なお、抵当権設定における軽減措置の適用は2027年3月31日までです。

つなぎ融資を受けるデメリット

つなぎ融資を受けるデメリットを解説します
つなぎ融資を受けるデメリットを解説します

つなぎ融資にもデメリットがあります。以下で詳しく見ていきましょう。

住宅ローン控除の対象外となる

先述したように、つなぎ融資は基本的に1年の短期借入です。そのため、住宅ローン控除の要件である「借入期間10年以上」を満たせません。

また、物件の引き渡しが終わって登記も完了し、住宅ローン実行までの間に年をまたぐ場合、住宅ローン控除は翌年からの適用となります。そのため、手続きの時期に関しては慎重に計画を立てなければなりません。

住宅ローンの控除を受けたい方は、分割融資を選択したほうがよいでしょう。

金利が高めの傾向にある

つなぎ融資は無担保ローンという性質上、通常の住宅ローンと比較して金利が高く設定されています。分割融資や住宅ローンの金利が35年固定金利で1.4%前後なのに対し、つなぎ融資の一般的な金利水準は2〜4%程度となっています。

住宅ローンの分割融資を受けるタイミング

住宅ローンの分割融資を受けるタイミングを解説します
住宅ローンの分割融資を受けるタイミングを解説します

分割融資は資金が必要な段階に合わせて融資が受けられる制度とご紹介してきました。ここでは、住宅ローンの分割融資を受けるタイミングを見ていきましょう。

土地の購入時

1回目は土地を購入するタイミングです。注文住宅を購入する際は、まず土地の購入から始めることが基本的です。土地を購入する際にもまとまった資金が必要になりますが分割融資を利用すれば、土地の購入費用を賄えるでしょう。

着手金の支払い時

2回目は、着手金を支払うタイミングです。実際に工事が始まる際は、着手金として建築費の概算の3分の1程度を建築会社に支払う必要があります。

分割融資を利用すれば、着手金を賄えるため、こちらも初期費用を抑えられる点が特徴です。また、建築請負契約を締結する際は、契約金(建築費の5〜10%程度)も発生しまが、この費用は自己資金で支払わなければならないため、注意しましょう。

中間金の支払い時

3回目は中間金を支払うタイミングです。建物が上棟した段階で、中間金として建築費の3分の1程度を建築会社に支払わなければなりません。この中間金の支払いにも分割融資を活用できます。

引き渡し時

最後に、建物引き渡し時に残りの3分の1に相当する建築費残金を支払い、登記手続きを経て、総費用に対する返済がスタートします。一般的な住宅ローンであれば、引き渡し時に一括で融資されます。分割融資の場合は引き渡し以前の支払いにも活用できることが特徴です。

分割融資の金利は実行されるごとに変動したり、最初に実行した際の金利で固定される場合もあります。金融機関によって異なるため、確認するようにしましょう。また、最終的な返済には最後に実行した際の金利が適用されるケースが多いです。

まとめ

分割融資は、住宅ローン控除を適用できたり、低金利での資金調達ができたりなどの大きなメリットがあります。しかし一方で、手数料などの費用負担が増えるなどのデメリットもあります。

マイホームの購入を検討する際は、分割融資のメリット・デメリットを総合的に判断することが大切です。自身の経済状況や将来の返済計画に照らし合わせて、慎重に判断しましょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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