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事実婚と同棲の違いは?
定義とメリット・デメリット、法律婚との差を解説

近年増えてきている事実婚。同棲とはどう違うのでしょうか

近年はあらゆる価値観の多様化が進み、幸せの定義や人生設計も、幅広く柔軟に選択しやすい世の中になってきています。家族やパートナーの形もさまざまで、例えば事実婚や週末婚など、カップルの生活の在り方も自由に選びやすくなりましたよね。もちろん理想のライフプランは個人の自由ですし、なかには「今後も連れ添うパートナーではあるけれど、結婚にはこだわらない」というカップルもいるでしょう。そうした場合に、恋人同士で生活を支え合う、新たなスタイルとして考えられるのが事実婚です。今回は近年急増している事実婚について、同棲や法律婚との違いも含めて解説していきます。

事実婚とは?

事実婚とは、戸籍は同一にしないまま、生計をともにする結婚の形式を指し「内縁関係」ともいわれています。事実婚では入籍はしないものの、住民票上では婚姻届を出していない、未届の夫婦として記載するのが一般的です。後述で詳しく解説しますが、事実婚として夫婦になることで、法律婚と同様の扱いを受けられる部分もあるのが特徴。なお事実婚では戸籍は別々なので、お互いに今までの苗字を名乗ることができ、夫婦別姓を希望するカップルの選択肢にもなっています。ちなみに内閣府が発表した「男女共同参画白書 令和4年版」では、現時点で国内成人の2~3%が事実婚をしているとのデータも。特に近年は、新たな夫婦の形として事実婚が浸透してきている現状があります。

事実婚と同棲の違い

事実婚と同棲では、公的な手続きをしているかどうかの違いが大きいでしょう。単純に恋人同士で同居しているだけなら、事実婚ではなく、同棲と呼ぶのが一般的です。 しかし事実婚においては、お互いに夫婦と認識し、なおかつ住民票などで生計をともにする関係性としての証明を出します。一方で同棲は、あくまで恋人として同じ住まいで生活するケースを指し、夫婦の公的な証明もないため、例えば保険などで家族の扱いを受けることはできません。事実婚は入籍していない夫婦(家族)として認められますが、同棲のままだと、公的にはルームシェアとほぼ変わりません。

事実婚と法律婚の違い

事実婚と法律婚では、夫婦一緒の戸籍になるかどうかに、大きな違いがあります。法律婚では婚姻届を提出し、夫婦揃って、夫または妻どちらかの姓を名乗る法律になっています。なお事実婚では夫婦の関係性があること自体は提示できますが、厳密には法的な配偶者には当たりません。そのため事実婚と法律婚で同じ扱いになる部分と、法律婚でしか認められない権利もあります。具体的には、事実婚と法律婚で次のように相違しています。

事実婚と法律婚の違い

項目 法律婚 事実婚
手続き 婚姻届 提出する 提出しない
戸籍 同一戸籍 別の戸籍
どちらかの姓 別姓
住民票の続柄
夫(未届)
妻(未届)
同居人
保険 健康保険の被扶養者
生命保険受取人
国民年金の第3号被保険者
遺族年金の受け取り
配偶者控除 ×
自動車保険の家族割
故人賠償責任保険の家族対象
育児 親権 どちらか一方
不妊治療の助成金
住まい 住宅ローンの連帯保証人・
連帯債務者
公営住宅の入居
生活 クレジットカードの家族カード
携帯会社の家族割
航空会社のマイル特典
離婚 離婚届 提出する 提出しない
財産分与
慰謝料請求
養育費の請求
厚生年金の年金分割
死別 遺産の相続 ×

ここまでに出てきたような婚姻届や戸籍だけでなく、事実婚と法律婚では、相続権や所得税の配偶者控除などの違いもあります。ちなみに相続に関しては、法律婚なら配偶者が法定相続人となりますが、事実婚ではその立場にならないという意味合いです。事実婚でも手続き次第では、夫婦で相続もできます。また事実婚では配偶者の所得控除はないものの、健康保険上の扶養は認められます。こうした細かな違いもいくつかあるので、事実婚か法律婚か、各項目を確認しながら検討するとよいでしょう。

事実婚のメリット

結婚生活を始める際「大変だと感じること」のひとつに、銀行口座やパスポートなどの名義変更が挙げられます

では実際に事実婚を選ぶことで、夫婦生活にどう影響するのか、具体的な利点もいくつか挙げていきます。

夫婦別姓が可能

前述にもあるように、事実婚では入籍しないので、夫婦別姓のままでどちらの苗字も変わりません。夫婦別姓なら、例えばクレジットカードや銀行口座などの名義を変える必要もなく、さまざまなサービスも今までどおり利用できます。健康保険・年金・運転免許証なども、氏名変更の申請をしなくていいので、各窓口に出向く手間もありません。こうしたわずらわしい手続きを省ける点は、事実婚の大きなメリットです。

関係を解消しても戸籍に影響しない

事実婚ならお互いの戸籍も変わらないため、もし別れることになったとしても、法律的な履歴は残りません。仮に異なるパートナーと法律婚をする時にも、初婚として入籍できるのがメリットです。また事実婚では婚姻届を出さないので、当然ながら離婚届を提出する必要もなく、関係を解消するためのややこしい手続きが発生しにくい部分もあります。

相手の親戚と深く付き合わなくてよい

事実婚では、お互いに元々の戸籍のままなので、実質的には親族関係も変わりません。もちろん夫婦間での考え方や子どもの有無にもよりますが、事実婚ならそれぞれの親戚との付き合いはしなくても、さほど大きな問題にはならないでしょう。法律婚で入籍すると、法的な家族関係ができるので相手の親戚に気を遣う部分も出てきやすいですが、事実婚であれば深く関わりすぎずに親族トラブルにもなりにくい一面もあります。

法律婚とほぼ同等の権利・義務が認められる

先ほどからも出てきているように、事実婚なら入籍はしなくても、法律婚と同じ権利や義務となる部分も多々あります。例えば財産分与や年金・保険の受け取りなどもでき、法的に生計を支え合う関係として認められるのがメリットです。貞操や扶助などの義務も、法律婚と同じ扱いとなるため、お互いの関係性が強くなりやすい利点もあります。

事実婚のデメリット

事実婚では法律的な婚姻関係にはならない分、気を付けておきたいデメリットもいくつかあります。具体的な注意点としては、以下のとおりです。

税金が控除されない

事実婚では、パートナーに社会保険の扶養に入ってもらうことはできますが、配偶者控除の対象にはなりません。法的な配偶者でないと、税制上の優遇は受けられないので、税金の負担が大きくなりやすいデメリットがあります。

遺産の相続ができない

前述でも出てきたように、事実婚では仮に相手方が亡くなった場合、遺産の法定相続人にはなりません。もし遺産を相続させるのであれば、遺言書を残したり贈与したりなど、特別な対応が必要です。相手方の相続権を確保するのに、複雑な手続きをしなければならない点には注意しましょう。

子どもが婚外子となる

法律婚では、子どもが生まれたら両親で共同親権を持つことができますが、事実婚では母親の単独親権となるのが原則です。子どもの苗字も、通常は母親の姓となるため、父親とは名前が異なるデメリットもあります。なお父親との法的な親子関係を示すには、夫による認知が必要。また子どもの苗字を父親の姓にしたい場合には、家庭裁判所での許可申請をしなければなりません。

夫婦と証明するのが難しい

事実上は結婚関係にあっても、お互いに苗字が異なることもあり、第三者に夫婦として認識されづらい一面もあります。対外的には夫婦の事情はわかりづらいので、例えば入院や手術の際に家族と認められなかったり、相手方の代理人としての手続きができなかったりするケースも。ちなみに事実婚を書面で証明する方法もありますが、緊急時などの大切な場面で、夫婦関係を示すのが難しい部分もあるのがデメリットでしょう。

事実婚を証明する方法は?

事実婚を証明する方法はあるのでしょうか

前章でも少し触れたように、以下のような手続きにより、事実婚の夫婦として公的に証明することも可能です。

住民票に記載する

住民票には、同一世帯者の続柄を記載する項目があります。この住民票の続柄欄にて、どちらかを世帯主とし、相手方を夫(未届)または妻(未届)とすれば、事実上の夫婦としての証明にできます。なお住民票で事実婚を示すには、お互いが同一世帯になっていて、夫か妻のいずれかのみが世帯主となっている必要があります。それぞれが世帯主となっている時には世帯合併、続柄が同居人と記されている時には世帯変更の届出をして、住民票の手続きは完了です。

事実婚契約公正証書を作成する

公正証書とは、書面に示した内容を法的な事実として証明する公文書です。公正証書は、法務局が管轄する公証役場に所属する、公証人が作成します。こうした公正証書によって、事実婚の契約内容を示すことで、お互いの夫婦関係を明確にするのもひとつの方法です。事実婚の公正証書を作っておけば、夫婦関係を示す強力な証明できます。例えば生命保険の受取人の設定時など、事実婚契約公正証書があることで、スムーズにさまざまな手続きができるのも利点。なお事実婚契約公正証書の手続きは、行政書士などの専門家に依頼するのが一般的です。

パートナーシップ制度を利用する

自治体ごとに異なりますが、地域によってはパートナーシップ宣誓をしたカップルに対し、婚姻と同じ関係性であると証明する制度を利用できる場合があります。一般的には同性カップルを対象にしているケースが多いですが、横浜市や千葉市など異性の事実婚でも活用できる自治体も。パートナーシップは、自治体によって法的婚姻と同等の関係が認められる制度なので、夫婦関係の確かな証明にできます。

事実婚でも賃貸物件は借りられる?

事実婚は入籍していない分、法律婚に比べると関係性が強くないと判断されることもあり、賃貸の入居審査では信頼されづらい場合も。例えば「すぐに別れて退去してしまうのでは」「離婚して別居しても家賃は払ってもらえるのか」など、賃貸物件を所有するオーナー側で、さまざまな懸念が浮かびやすい傾向にあります。もちろん事実婚で賃貸物件が借りられないルールはありませんが、入居前の審査で通りにくい一面があることは覚えておきましょう。

事実婚でも入居審査を通りやすくするには?

事実婚での入居審査時には、以下のようなポイントを押さえておくことで、信頼性が高まって通過しやすくなる効果が見込めます。

二人の収入証明書を提出する

賃貸物件の入居時に重視されやすいのが、家賃の支払い能力です。十分な収入があって、滞りなく家賃が納められることを示すための証明書があると、入居審査も通りやすくなります。例えば源泉徴収票など、収入証明書を提出して信頼してもらいやすくするのもひとつの方法です。

お互いの親を連帯保証人にする

双方の親御さんに、入居にあたっての連帯保証人になってもらうことで、審査を通りやすくする方法もあります。それぞれの連帯保証人がいることで、万が一の時にも、本人に代わって家賃を支払える証明となります。入居審査がなかなか通らない時には、お互いの親御さんに相談して、連帯保証人をお願いしてみましょう。

賃貸保証会社(家賃保証会社)を利用する

親御さんに連帯保証人の相談をするのが難しい時には、賃貸保証会社(家賃保証会社)に依頼する方法もあります。賃貸保証会社では、もしもの場合に、入居者の家賃を立て替えるサービスを提供しています。賃貸保証会社に一定の保証料を支払う必要がありますが、家賃支払いの代理人がいる証明となるため、入居審査が通りやすくなるのがメリットです。

県営住宅や市営住宅にも入居は可能?

事実婚も法律婚と同じく、県営住宅や市営住宅に入居できます。自治体ごとに異なりますが、一般的には事実婚の関係性が証明でき、なおかつお互いに配偶者がいないことが確認できれば入居可能とされています。また基本的には、事実婚が分かる住民票などの提出が求められます。県営住宅や市営住宅への入居を考えている場合には、あらかじめ事実婚の証明ができる準備をしておきましょう。

事実婚でも共有名義で家を購入できる?

籍を入れなくても共有名義でマイホームを購入することは可能なのでしょうか

事実婚でも、マイホームの費用をお互いに支払って所有することで、共有名義にできます。仮に夫婦で半々にして現金一括で購入すれば、登記をそれぞれで分けて共同で所有も可能です。ちなみに住宅ローンは、基本的に配偶者でないと共有では組めませんが、一部の金融機関などでは事実婚でも審査が通るようになっています。なお夫婦の共有ローンについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

事実婚で決めておくべきルールとは?

事実婚も法律婚も、これからの人生をともに歩むパートナーとして、お互いの将来を約束した関係に変わりはありません。末永い夫婦生活を叶えるためには、どちらもよりよい生涯を過ごせるルールを決めておき、それぞれを尊重した暮らしをしていくことが大切。特に以下のような部分は、しっかりとお互いの認識をすり合わせておきましょう。

お金の管理について

生活費の負担の仕方や貯金方法など、お金に関わるルールは、お互いにきちんと納得できるように決めておくのが無難。お金がなければ生活はできませんし、金銭感覚の違いなどから、揉めることも多い部分です。お金が原因で別れてしまうカップルも少なくないので、あらかじめ十分に相談しておきましょう。

子どもについて

お互いにとってのライフプランに深く関わるからこそ、そもそも子どもが欲しいのか、結婚する前にしっかりと確認しておくのがベストです。また事実婚では、夫婦で戸籍が異なるので、子どもの親権や苗字などの部分も相談しておく必要があります。まずは子どもを想定するのか検討し、実際に産まれた時にはどうすべきなのか、じっくりと協議しておきましょう。

看病や介護について

万が一、病気や事故などで看病が必要になったり要介護となったりした場合、どう対応するのか相談しておくのも重要です。将来を見据えた関係だからこそ、どちらかが働けなくなる・特別な支援が求められるなど、想定外の事態が起きる可能性も少なくありません。もしもの時には、例えば施設に入所する・ケアサービスを利用するなど、お互いにどうしたいのか確認しておきましょう。

遺産相続について

事実婚では、どちらかが亡くなってしまった場合に、遺産の法定相続人にはなれません。もしパートナーに遺産を残したいのなら、遺言書を用意しておく必要があります。いつ何が起きるかは分からないので、先延ばしにせず、どのように相続するのか検討してきましょう。

お墓について

事実婚では入籍していないので、通常であればそれぞれのご先祖様のお墓に入ることになります。とはいえ一生を過ごすパートナーなら、同じお墓に入りたいと考えることもありますよね。もし同じお墓に入りたいのであれば、どちらかの親族に相談して許可をもらう必要があります。霊園の規約によっては、異なる親族がお墓に入るのが難しいケースもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。もしくは二人で一緒に入るためのお墓を、新たに購入する方法もあります。事実婚ではお墓が別々になるのが基本なので、事前に相談しておくことをおすすめします。

まとめ

事実婚は、夫婦関係を結ぶためのスタイルのひとつで、法律婚と似た部分もあるのが特徴。部分的に正式な婚姻とは認められないこともありますが、その分法律婚よりも、わずらわしい手続きなどが少ない利点もあります。また事実婚では、二人の夫婦関係を証明する方法もいくつか存在します。生涯をともにして暮らしを支え合うパートナーになるための選択肢として、十分に検討できる形といえるでしょう。ぜひ本記事を参考に、二人の次なるステップとして、事実婚も視野に入れながら将来設計をしてみてください。

執筆者

たけなつ

2019年よりフリーで活動しているWebライター。広告会社でのコピーライターを経て、現在は幅広いジャンルのコラム記事などを執筆。 愛知・東京・北海道と各地を渡り歩き、19歳からの10年で7回引越しを繰り返す好奇心旺盛人。

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