全国民が熱狂する生放送の推理クイズ番組を巡る……深水黎一郎のベストセラー小説を映画化した『ミステリー・アリーナ』。劇中、解答者たちに出題される問題は「嵐の中、孤立した洋館で起きた殺人事件」。本作の美術を手がけたのは、『ファーストラヴ』『夏目アラタの結婚』『Page30』などの堤幸彦監督作品でも腕を振るってきた長谷川功さん。クイズの舞台となる洋館はどのようにつくられたのだろう。
年季の入った雰囲気がありつつも、「生きている」空間
洋館は推理クイズ番組「ミステリー・アリーナ」で出題されるミステリー問題の舞台で、司会者・樺山桃太郎(唐沢寿明)が脳内でイメージしたものをビジュアル化したもの、という設定。イメージにぴったり合う物件に辿りつくまでには、かなりのリサーチを要したそうだ。
「監督から、冒頭の建物の構造を見せる一連の場面を、ドローンを使ってワンカットで見せたいというリクエストがありました。もしフロアごとに別々の場所を使って撮影をおこなえば、スタッフが混乱する可能性もある。なので、シナリオの動線と合致するような構造の物件を見つける必要がありました。制作部さんもその方向性で関東近郊の洋館を探し回ってくれたのですが、なかなか見つからず、撮影地選定は難航しました」
リサーチは長野県にまで延び、さらに京都方面にも手を伸ばすことに。その段階で長谷川さんは覚悟を決め、複数の洋館を使って撮り、美術の力でひとつの建物に見せることを念頭に置き始めた。そんなとき、監督から提案があったという。
「『東海地方にある、こんな洋館はどう?』と。そこは監督のなじみの建物で、僕も別の作品で撮影したことがあったんです。『ああ、あそこなら行ける』と思いました」
堤幸彦監督が求めたのは「洋館らしい洋館」。それらしさを演出するため、テーブル、椅子などアンティークの調度品も数多く配置した。

「中はがらんどうだったので、調度品はほぼ持ち込んだものです」
その一方で「若者が集う」という設定もある。
「年季が入っている雰囲気は残しつつ、床にワックスをかけたり、調度品もアンティークでありながらボロく見えない、きれいめなものを入れました。この洋館で過ごす人たちの息遣いが感じられるような、生きている空間にしたいと考えたんです」
洋館はつくりが古く、全体的に暗い印象もある。しかも昼間は雨が降っているという設定で、夜の場面も多い。

「そこで、電飾をいたるところに入れました。モダンなデザインのものをフロアライトとして点在させています。ただ現代のものが多くなってしまうと、ミステリアスな雰囲気が出ない。そのバランスを装飾部と相談しながら飾りました」
なお今作には、洋館に集まったのがミステリー研究会のメンバーであることや、所在地が群馬県であるという裏設定がある。
「バックグラウンドを想定しないと、ディテールまで意識して飾れないし、美術の加工ができない。設定は監督から提案いただくときもあれば、美術、装飾部で裏設定を考えることもあります。さりげなく飾った群馬県のキャラクター、ぐんまちゃんも、群馬県を匂わすアイテムです(笑)」
堤監督の作品には何度も参加している長谷川さんだが、現場の度に面白さは更新されていくという。
「毎回いろんな試みをされていることが意外な画づくりになっていきます。今回は準備中から『広い画で撮りたい』とおっしゃっていましたし、しかも同時に3台のカメラで撮ったので、360度どこが映ってもいいように飾っておく必要がありました」
撮影中、完成形は予想できない。

「編集の仕上げ段階でも監督ならではのやり方があって、それが独特の雰囲気をつくるんだと思います。だからこちらも仕上がりに期待をしてしまう。『想像の斜め上を行く』じゃないですけど、いつも『エンターテインメントとして面白いものが、いいものができるんだろうな』と予感させますし、実際に完成した映画は、必ず自分の想像を超えてきます」




映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#160(6月号2026年4月16日発売)『ミステリー・アリーナ』の美術について、美術・長谷川さんのインタビューを掲載。
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