テーマ:お隣さん

厄年の男、隣人宅にてシャワーを浴びれば

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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「あ、お疲れさまです」
 そうして背中合わせで、歩き始めた二人。何の気なしに後輩が後ろを見、先輩の帰る姿を捉えてみると、皆が皆、派手な柄のシャツの上に黒いスーツを羽織っている、いかにも物騒な男たちに囲まれる先輩がいた。何か口論をしているようだ。そしてそのまま両腕を屈強な体つきの男二人に掴まれた先輩は、足をバタバタさせて抵抗はするものの、あっという間に車のトランクに詰められる。車が大袈裟なエンジン音とともに走り出すと、すぐに見えなくなった。一人ぽつんと風景の中に佇む後輩は、ひとまず何も見なかったことにして、家路についた。なんてことない、痛い程の寒さではあるが、穏やかな早朝だ。すれ違う老婆は微笑みながら犬を連れて歩いており、どこからか雀の鳴く声が、木々に溶け込むようにゆるやかに響いている。朝靄から漏れる薄くて仄白い光が、後輩を照らしている。すべて年が明けてからの出来事である。

厄年の男、隣人宅にてシャワーを浴びれば

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