テーマ:二次創作 / 白雪姫

森のおうちでお姫さまごっこしよう

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リンドウはちょっとさびしそうに目を伏せて少し考えるようにしましたが、無言で首を横に振りました。
来る日も来る日も、リンドウは、掃除、洗濯、料理をたった一人で黙々とこなしました。来る日も来る日も、小人たちはあきることなく白雪姫ごっこをやり続けました。
他意はありませんでした。小人たちは白雪姫と暮らした日々がただただ楽しく懐かしかったのです。
ある日、リンドウがいつものように七人分のパンツをせっせとたたんでいると、リンドウと同じくらいの背丈のお姫様が森のおうちに飛び込んできました。リンドウはお姫様を一目見た瞬間、胸がドキドキしました。
「ハアッ、ハアッ、悪いガマ蛙に追われてるの。すまないけど、水を一杯くださらない?」
リンドウはコップにお水を入れて渡しました。
「ごくごくごくっ。ふーっ生き返ったわ、ありがとう。裏口はこちらかしら?やっかいをかけたわね、ごめんあそばせ」
仁王立ちで腰に手を当て、水を一気飲みしたお姫様は、ひらりと深紅のドレスの裾をひるがえして裏口から出ようとしました。そのときです。ドンドンドン!
「ゲコゲコ、お姫様はおらんかねーゲコゲコ」
「しまった追いつかれたわ。じゃあね、かわいい小人さん」
あんたも小人だろ、と思いましたが、リンドウはだまって手早くリュックに水とパンと少しの金を入れると、お姫様の手を引っ張って裏口から走り出ました。
「お供いたします」
「まあ、ありがとう!正直、助かる」
お姫様は目を輝かせました。二人は手に手をとっていずこへと消えて行きました。
「次は誰が白雪姫する?」
ハトがみんなに聞きました。
「ねえ、リンドウは?どこ行っちゃったのさ?」
ムササビが不安げにみんなに問いました。
「ブドウは?」
カキが提案すると、ブドウは満面の笑みを浮かべ、カキのあごを右手でがしっとつかみ、相当の力をこめました。
「やだよ。カキやりなよ」
「ひたい、ひたい。ひゃだ、ひゃめて、ひたい」
「ブドウ、面白いけどやめたげて」
クリが制しました。
「はいはいはい」
ハトが手をあげました。
「じゃあ、公平にみんなでじゃんけんにしよ。んじゃ、いっくよー、最初はグー」
カキが負けました。
「次の白雪姫はカキに決定。パチパチパチ」
ハトが手を叩くと、カキはわめきました。
「うわーん、ぼく、家事めっちゃ苦手なんですけど。大体、ぼく、白雪姫みたいに美しくないし。鏡よ鏡、鏡さーん。世界でいちばん美しいのはだーれ?」
「それはカキです。唇が血みたいに赤いところが白雪姫に似ているよ」

森のおうちでお姫さまごっこしよう

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