テーマ:二次創作 / 白雪姫

森のおうちでお姫さまごっこしよう

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むかしむかし、白雪姫が王子様とお城で結婚式をあげたり、継母をいたぶり殺してあげたりしていた頃のことです。森のおうちに取り残された七人の小人たちの間では、白雪姫ごっこという遊びがはやっていました。事の発端はこんなです。
「白雪姫は元気でやっているかなあ」
「きっと元気でやっているよ」
「明るくて優しい娘だからな、お城で王子様と幸せに暮らしているさ」
「幸せに、か。そうだよね、よかったんだよね」
「めでたし、めでたし、だよ」
「ほんとにねえ……うん」
七人の小人たちの間に沈黙が走りました。やがてひとりの小人が小さなため息をつきました。
「あーあ、白雪姫との暮らしは本当に楽しかったねえ」
「うん、またあんな暮らしがしたいねえ」
「いいこと思いついたぞ!ぼくたちの誰かが白雪姫になってさ、またあの暮らしを再現してみようよ」
「おおー、そいつは名案だ!!!!!!」
というわけで、白雪姫ごっこが始まりました。白雪姫ごっこでは、七人の小人のうちの一人が白雪姫の役をやらなければなりません。小人たちは七つの木の丸椅子にちょこんと座って、足をぷらぷらさせながら配役を真剣に思案しました。小人たちの名前は右から、ハト、ムササビ、トンビ、クリ、カキ、ブドウ、リンドウといいます。
「誰が白雪姫をやる?」
クリが口火を切ると、待ってましたとばかりに、ムササビがすぐに手をあげました。
「リンドウがいいよ。かわいいし、おとなしいし」
「そうだね、色が雪のように白いところが白雪姫に似ているよ。リンドウやってくれる?」
ブドウが笑顔できくと、リンドウはちょっと悲しげな目でブドウを見つめましたが、すぐに目を伏せ、白い顔を赤らめてうなずきました。
白雪姫役になったリンドウは、次の日からみんなが仕事に出かけている間、森のおうちで留守番をすることになりました。
「白雪姫、ただいま」
ハトが元気よく帰って来ると、リンドウは白雪姫になりきってほほえみかえしました。
「おかえりなさい、ハト」
「今日のご飯もおいしいよ、白雪姫」
カキにほめられると、リンドウは白雪姫がやっていたように手を口元にあてて目を細めました。
「よかったわ、お口にあって」
朝です。お日様さんおはよう!鳥さんおはよう!
「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい、あ、大変。忘れ物よ」
「ああ、ありがとう」
トンビは礼を言ってお弁当を受け取ると、こそっとリンドウの耳元でささやきました。
「リンドウ、一人で家事するの大変じゃないか」

森のおうちでお姫さまごっこしよう

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