テーマ:二次創作 / 雪女

化ける

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「え、異種婚?」
と、女の声。
「この国では。
羽衣伝説とか。
鶴の恩返し、とかの、童話。
広く知られているけど。
人間と天女とか。
との、結婚のこととか、さ」
と、男の声。
 
テレビ番組の、日本昔話の主題歌。
の、ような、音曲が。
聞こえた、ような。
聞こえなかった、ような。

「確かに、雪女は。
人間ではないわね。
妖怪なの、雪女って」
と、女の声。
「うーん、妖怪なのかなー」
と、男の声。
「あら、違うの?」
と、女の声。
「説明、難しいなあ」
と、男の声。
「妖精かしら?」
と、女の声。
「むしろ、妖精に、近いのかなあ」
と、男の声。
「妖精ったら、西洋に多いわね。
そのお話しなら。
たくさんあるでしょ。
なら、雪女の話も、と、思うけど。
やはり、そのタブー。
異種婚の、話だからなのかしら?」
と、女の声。
「そうだと思う。
西洋でも、キリスト教以前。
土着の話には、異種婚の、話も。
結構あるようだけど」
と、男の声。
突然。
「あれ? この会話の、女?」
と、男の声。
 
大吹雪の音。
雪を、踏む、足音。
苦しそうな、息遣い。
「そうだ! 
ホワイトアウト。
その、中で聞いた。
あの女の声だ!」
と、男の叫び声。
 
どれが、ほんと、なんだい。
雪女が、冷たく、言った。
「ふふふふふふ」
と、笑い声が、聞こえる。
男は、凍り付いた。
いや違う、凍り付いていた。

快い旋律の曲。
コーヒーカップの、触れ合う音。
「雪女は、妖怪でない。
そう、言ったけど。
それ、取り、消すよ」
と、男の声。
「じゃー、雪女って、妖怪なの?」
と、女の声。
「まぁ、妖怪の意味。
それにも、よるんだけど」
と、男の声。
「妖怪の、意味って?」
と、女の声。
「人知の及ばない、怪奇現象。
それや、それをやってのける、存在。
それを、妖怪ってことに。
してきたんだけど」
と、男の声。
「けど?」
と、女の声。
「恐怖、と、いうより、畏敬に近い」
と、男の声。
「へー、畏敬ねえ」
と、女の声。
 
猛吹雪の音が、続いている。
雪を、踏む、足音。
苦しそうな、息遣い。
 
「いや、まてよ。
畏敬とも、違うか、なー」
と、男の声。
「雪女は、死神でしょ」
と、女の声。
「死神、とは、違うよ」
と、男の声。
「あら、違うの?」
と、女の声。
「違う。
死神は、西洋の、ものだよ。
明治になってからだ、よ。
あの、グリム童話。
それを、ヒントにした、落語。
それが、巷に、広めたものさ。
死神、を、さ」
と、男の声。
「えー、死神って、そうなの」
と、女の声。
「ああ、日本の神さまや。
妖怪とは、無縁のもので・・」

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