テーマ:二次創作 / 雪女

化ける

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ミーン・ミンミン・ミンミン・ミー。
ミーン・ミンミン・ミンミン・ミー。
夏ゼミが、鳴いている。

猛吹雪の、音が、する。
どれが、ほんと、なんだい。
雪女が、冷たく、言った。
「ふふふふふふ」
と、笑い声が、聞こえる。
男は、凍り付いた。
いや違う、凍り付いていた。

「・・ある大層寒い晩、帰り途で大吹雪に
遇った・・」
と、女の声。
「それ、小泉八雲版の、雪女の、一節だよなあ」
と、男の声。
不気味な音曲が、聞こえだす。
「この雪女だけど、八雲が、お花と、宗八という、親子から、聞いた話が、元話だったわねー」
と、女の声。
猛吹雪の音が、さらに、激しさを増す。
「いくつも、あるんだよ、な、伝えられてきた、元話が、さ」
と、男の声。
「どれ、が、ほんと?」
と、女の声。
「何言って、いるんだ、よ。
ほんと、で、なんか、あるもんか、よー。
雪女は、さー。
お話し、だろ、ただの、さ」
と、男の声。
「ふふふふふふ」
と、女の、笑い声。

人の集まる会場。
「いまどきですが、雪女は、小泉八雲、こと、ラフカディオ・ハーンが、なんいっても、一番でして・・」
と、講演者の声。
「そうだった、物語研究会に出て、こんな発言を耳にして、バカかお前はと、思ったんだっけ。
そして、夢見のような世界、に入り込んでいったんだった」
と、男の声。
 
猛吹雪の、音。
雪を、踏む足音。
「ホワイトアウトの中を、歩き続けていたことは覚えている。
睡魔に、引き込まれたんだ。
朦朧とした、意識の中で、雪の中に女が・・」と、男の声。
猛吹雪の音が、続く。
雪を踏む、足音。
苦しそうな、息遣い。
「ヒユーヒユーと、激しい雪風だった。
雪の中の、女が、《(女の声)さあ、お眠むりなさい。
そう、お眠りなさい》と・・・」
と、男の声。
 
快い旋律の曲。
コーヒーカップの、触れ合う音。
「雪女。
読んだかい?」
と、男の声。
「ええ、読んだわ」
と、女の声。
「そうかい」
と、男の声。
「どうしたの?」
と、女の声。
「小泉八雲のだよね」
と、男の声。
「ええそうよ」
と、女の声。
「雪女。
違った話、たくさんあってね。
いくつかの共通点。
みたいなのは、あるけどね。
でも、外国にはあまりないんだ」
と、男の声。
「あら、そうなんだ。
私、外国にも雪女の話。
たくさん、あると、思っていた」
と、女の声。
「いや」
と、男の声。
「でも、西洋なんか。
ありそうな、気がするけどね。
魔女とか、妖精とか。
そういうお話、得意でしょ」
と、女の声。
「異種婚が、タブーだから、ね」
と、男の声。

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