テーマ:ご当地物語 / 山梨県

なつにとける

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読者賞について

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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 ラムネを飲み干して瓶を下ろした時に、からん、と瓶の中にあるビー玉が音を立てた。先程聞こえた鈴の音のことを思い出し、でもこんな音じゃなかったと思いながら自分の目線の高さにビー玉があるように瓶を持ち上げた。
 すると世界が輝いた。
 太陽の光にビー玉が当たったのだろう。その様子は凄く神秘的で、ああ神社だからかな、なんてことをふと思った。
きらきらと周りの景色が輝きだして、神社の境内は輝いて。ラムネの瓶の中のビー玉は、からんころんと音を立てて。どこかから鈴の音が聞こえてくる、りんりんと。風が吹いて木々が揺れた、ざわざわと音を立てて。ビー玉が、鈴が、木々が、鳴って。世界は輝いて煌めいて金光り、世界はこのようにも美しく。全部が一緒くたになって、混ざり合って、溶け合って。そして、
「あ、」
 私も溶けた。
 夏に、溶けた。
 溶けて、世界と一つになった。
 馬鹿みたいに暑い、世界が輝いていた、夏の日の午後のことだった。

なつにとける

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