テーマ:ご当地物語 / 山梨県

なつにとける

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山梨の夏は暑い、馬鹿みたいに暑い。どれくらい暑いかというと、42度超えることなんてざら。42度って、お風呂並みよ、信じられない。でも珍しい話じゃなくて、山梨の夏だとありふれた話で。そして盆地だからだろうか、暑い空気が充満して、流れていかなくて、朝も昼も夜も暑い空気の中にいるから、とても大変。四方八方山なんだものね。蒸し焼きにされそうな夏の日々を山梨は毎年過ごしている。
 でも、だからだろうか。外でラムネとかサイダーとかを飲むととても美味しい、キンキンに冷えたやつが望ましい。今日も私はラムネを舞鶴城公園で飲んでいた。最近瓶のラムネをなかなか見かけないせいか、見かけると条件反射的に買うようになった。夏の風物詩だと思うんだけどな、古いのかな。甘い夏の味がするその炭酸飲料は、未だに開けるのに手古摺る。
ラムネを飲みながら日陰にあるベンチに座っていると、頬を生ぬるい風が撫でていく。その風が全く涼しくなくて、ああ夏だな、なんて思った。
 舞鶴城っていうのは地元の人だけに通じる愛称で、本当は甲府城って言う、らしい。らしいというのは逆に地元の人には舞鶴城の方でないと通じないからだ。甲府城と呼んでいる人を逆に見たことが無い。
舞鶴城公園は何もない、本当になんにもない。城自体も現存はしていなくて、確か昔に火事に合っているはずだから、そこで燃えたのだろうと思う。最近復元作業が進んでいる、らしい。らしいというのは正直どこがどう復元されたかはわからないからだ。そのうちきちんと復元されると良いなと思う、城は好きだ。
公園の方も遊具とかそういう子供が好きそうなのは何にもなくて、あるのはベンチと桜だけだと思って良い。けれどその桜だけは本当に綺麗で、私はよく友人たちと城から歩いてすぐの距離にある甲府駅のコンビニとかでおやつを買って舞鶴城公園でお花見を良くする、学生のお財布でできるお花見何てこんなもんだ。公園を見渡しながら、やっぱり城を復元して欲しいなあ、と思った。桜が踊っている舞鶴城を見たいものだ、月見で一杯花見で一杯ならぬ城で一杯、なんてね。舞鶴城は比較的新しい城らしく、柳沢吉保が城主としては一番有名らしい。高校の日本史の時間を思い出した。多分あの頃が一番真面目だった。

 それにしても今日も暑い。葉桜も通り越してもう葉しかない桜の木だけど、それはそれで綺麗だからと思い、足を延ばしたのが間違いだった。こうも暑いと溶けてしまいそうだ。照り付けるお天道さんは遠慮と言うものを知らない。ただでさえ夏は出番が多いのにねえ、と思いながら持ってきていた扇子を仰いだ。生ぬるい風だけどないよりはましだ。

なつにとける

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