テーマ:二次創作 / 赤ずきんちゃん

赤ずきんちゃん一家の引っ越し

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 教会都市は厳しい戒律のせいで、赤ずきんちゃんのトレードマークである赤ずきんを取られそうになった。
 花の国には花が溢れる美しい景観を守る為に、人々の生活は制限され、建物の高さ、公園の広さすら指定されていた。
 砂の国にも、山の国にもどこもかしこも、小さいものから大きなものまで問題を抱えていた。
 部屋なんてすぐ見つかる。しかし、そこで住み続ける環境はすぐに見つかるものではない。
 政治的な問題からご近所づきあいまで、目をつぶれる程度の問題は飲みこんで妥協し、現実と折り合いをつけなければいけないのだが、それがとても難しい。
「あれ、赤ずきんは」
 家に赤ずきんの姿が無い事に気付いたお父さんは、お母さんに聞いた。
「あぁ。おばあちゃんのお見舞いに、病院に行くって」
「おいおい。ちゃんと、言い含めたよな」
「大丈夫よ。『オオカミ』にも『知らない人』にも、話しかけられたら無視して逃げなさいって」
「なら、いいんだけど」
 オオカミに食べられかけた事件から、引っ越し先を探す小旅行で痛感した。
 人間程恐ろしい者はない。
「「………」」
 現実の壁にどんづまり、言葉にすら詰まる夫婦。
 このままでは、引っ越しすることもできない。
 そんな時、玄関から娘の声が響く。
「ただいまーっ。お友達を連れてきたんだけどいい?」
 元気な娘の声に、暗い想像から現実に引き戻された二人。こんな時、娘の無邪気さに救われる。
「まぁ。娘がお世話に」
 玄関へ対応に行くお母さんは、その瞬間石化した。
 異変を察したお父さんも、その場で硬直して、陸にあがった魚の如く口をぱくぱくさせる。
 赤ずきんの隣にいる『リトルグレイ』――これが、友達なのか?
「今日、友達になったのっ!」
 元気いっぱいに答えないでください。
 確かに『オオカミ』でも『知らない人』でもない。
 だけど『宇宙人』は予想外だ。
「あのね。この子が、とてもいいおうちを紹介してくれるっていうのっ! お父さんもお母さんも、おばあちゃんもきっと気に入るよ」
 興奮気味に語る赤ずきんに答えるように、細い手をゆらゆら揺らす宇宙人。
 彼(?)は、まっすぐな瞳で両親に訴えかけているようだった。
「「………」」
 あまりにも現実離れしすぎて、真っ白に固まる両親。
 そして村の上空に現れる、アメリカの映画に出てきそうな巨大なUFO。
 こうして仲良くなったリトルグレイによって、赤ずきんちゃん一家は幸せに暮らしたとさ。

赤ずきんちゃん一家の引っ越し

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