テーマ:二次創作 / 赤ずきんちゃん

赤ずきんちゃん一家の引っ越し

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 現在の家の間取りは、キッチンに居間。夫婦の部屋と娘の部屋だ。そこに、一人分のスペースを確保するには、改築か引っ越しの二択。村に居づらくなった今、引っ越ししか道が無い。
「え、引っ越すの?」
 きょとんとした顔の赤ずきんに、赤ずきんの父親が言う。
「あぁ。オオカミの居ない安全なところで、おばあちゃんと一緒にくらそうな」
 わざと明るく言うと、母親も父にならって笑顔を作る。
 赤ずきんのおばあちゃんは既に故人となってしまった、祖父でもある「きこりのおじいさん」と一緒に暮らしていた家で、余生を過ごしたかったのかもしれないが、そうも言っていられなくなった。
 村の病院で入院しているおばあちゃんは、現在、面会謝絶。入院当初は、オオカミに食べられる衝撃体験をしたにも関わらず、そこそこ元気だったのに一気に体調を崩してしまった。原因は、村の連中が見舞いと称した下世話な詮索をしてくるからだ。対応しきれなくなって、精神的に潰れてしまったのだ。
 ふと、赤ずきんの父親は思った。
 自分達は今、オオカミの腹の中にいるのではないかと。
 このまま、此処に居たら自分達家族は目に見えない大きな悪意に飲みこまれる。
 自分達を救ってくれる猟師はいない。自分達の力で、オオカミの腹を突き破らなければ。
 覚悟を決めた父親と母親は力強く頷きあい、赤ずきんは両親の顔を不思議そうに眺めていた。


「さて、引っ越すとしたら必要最低限の条件は、おばちゃんも安心して暮らせる間取りだな」
 と、赤ずきんのお父さん。
「できれば、病院が近所にあって、学校が近いのも良いわね」
 と、赤ずきんのお母さん。
「えっと、お花畑があって、みんなと遊べる場所があって」
 と、赤ずきん。
 引っ越し先についての希望を書きだして、いざ、出発。

……しかし。

 数ヶ月後。
「なかなか、見つからないわねぇ」
 テーブルで頭を抱えている夫婦の姿があった。
 海の国で空き家があると聞けばすぐさま赴き。城下町で条件に会う借家があると知れば、部屋を取られる前に見学を申し込んだ。治安が良いと評判の教会都市にも行き、福利厚生がしっかりしている花の国も訪ね、砂の国、山の国、氷の国、炎の国…。
 とにかく、色々な所に足を運んで引っ越し場所を探しまわった。
 しかし、海の国では工場から海に流される産業廃棄物問題で、町中がピリピリしていた。
 城下町では、ご近所トラブルが勃発しており、巻き込まれまいと辞退した。

赤ずきんちゃん一家の引っ越し

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