森のおうちでお姫さまごっこしよう
ムササビはリンドウの肩をぽんぽんとたたいてやりました。
「おれとカキも、悪い魔法使いに有り金全部むしりとられたあげく、城で千枚のパンツを洗わされたものな」
「うん。手がヒリヒリ痛いよ」
クリは自身の赤く腫れた両手をぢっと見つめ自嘲の笑みをもらしました。
「今回思い知ったのは、小人は森のおうちで七人仲良く末長く幸せに暮らすのがいちばんだってことだ。しかし、ブドウが起きてくれないとそんなおれのささやかな夢もかなわないな」
六人の小人たちはベッドですこやかに眠っているブドウを取り囲みました。カキがぽんと手を打ちました。
「キスしてみたらどうかな?」
「もうやった」
「誰が?ハトが?ふっ」
「おい、クリ、今なんで笑った」
「なんでもない。じゃ、おれも試してみよう」
クリは、ブドウにキスしました。起きません。
「ハッ、ざまあ」
ここぞとばかり、ハトはクリを嘲笑しました。
カキ、リンドウ、ムササビもキスしてみましたが、ブドウは起きません。
「あと、やってないのは?」
「トンビ」
「どうせむだだから」
「いいよ。だめもとでいいから、しろよ」
ムササビがけしかけました。
「笑わないからさ」
クリが笑って言いました。トンビは無言でクリを蹴りました。
「トンビ、早く。毒が体に回っちゃうかも」
リンドウが急かしました。
「わかった、わかった。じゃあ、お前ら後ろ向いてろ」
「逆に恥ずかしいわ!」
と言いつつもみんな後ろを向いてやりました。
「どうよ?」
律儀に後ろ向きのままムササビが聞きました。
「だめだ。起きない」
「ほんとにキスしたんか?」
カキが疑いました。
「馬鹿。うそついてどうすんだよ」
「ねえハト、これからどうしよう。せっかくまた七人で一緒に暮らせると思ってたのに」
リンドウが聞きました。
「クリ、どうしよう」
ハトはついに本当に困ってしまい、クリに投げました。クリはうーんと十秒ほど熟考の後、宣言しました。
「仕方ない。眠り姫ごっこに変更しよう」
こうして森のおうちでは、今でも七人の小人が眠り姫ごっこをしながら仲良く暮らしているそうです。めでたし、めでたし。
森のおうちでお姫さまごっこしよう