テーマ:二次創作 / 白雪姫

森のおうちでお姫さまごっこしよう

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「さてと。じゃあ、次の白雪姫は」
「おい、まだやるのかよ」
トンビのツッコミを無視し、ハトはブドウを指さしました。
「え、ぼく?やだよ。ここは公平に三人でじゃんけんにしよう」
ブドウが負けて、小人専用白雪姫風ドレスに着替えました。
「かわいいよ」
「かわいい、かわいい」
ハトとトンビにほめられて、ブドウはおそるおそる鏡の前に立ちました。
「黒檀のように真っ黒な瞳が似てると言えば白雪姫に似てるかもしれないかもしれない」
ブドウは自身に向けて思い込みという名の呪いをかけました。
ある日、ハトとトンビは山へ金堀りに、ブドウは川へ洗濯に行きました。三人分のパンツをじゃぶじゃぶ洗っていると、川上から桃売りのおばあさんがやってきました。
「桃はいらんかねえ。流れたてだよう」
「桃は大好物です」
ブドウが桃を買って食べると、桃は毒入りでした。ハトとトンビが森のおうちに帰って来ると、ブドウは床に仰向けになって死んだように眠っていました。
「うーん、どうしよう」
「困ったな」
とりあえずベッドに運んでみました。ブドウはよく眠っています。とりあえずハトはブドウにキスをしてみました。
「白雪姫は起きません」
「そーですね。ていうかお前躊躇しねーな」
「次、トンビやってみ」
「嫌だ」
「恥ずかしがってる場合か」
そのときです。森の家を飛び出していったリンドウ、ムササビ、カキ、クリが偶然同時に帰ってきました。
「ただいまー。あー疲れた」
ムササビはぐったりと丸椅子に座りこみました。
「なんやかんやあったけど、戻ってきたよ」
クリがやれやれと空のリュックをおろしました。ハトは寝室を指さしました。
「お帰り。今ちょっととりこみ中でさ」
「どうしたの?あ、ブドウ。死んでる?眠ってる?あ、よかった寝息が聞こえる」
耳をそばだてていたカキが、ほっとしたようにブドウの両方のほっぺたをひっぱりました。
「むにょーん。おーい、ブドウ起きてよ。いつもみたいに遊んでくれなきゃつまんないよ」
「で、どうすんの?白雪姫のときみたいにまた王子様が来るの待ってみる?」
ムササビが聞くと、ハトは首をふりました。
「いいや。だってさ、こいつは白雪姫じゃないんだよ。小人だよ。王子様なんて待ったって来りゃしないよ」
「確かに。ぼくの運命のお姫様だと思った人も結局、お花の国の王子様と結ばれたよ。小人はしょせん小人なんだ。ううっ」
「リンドウ、失恋して珍しく饒舌だな。なんのなぐさめにもならんし今更だが、お前の敗因はその白雪姫ドレスのままでお姫様と駆け落ちしたところだと思うよ」

森のおうちでお姫さまごっこしよう

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