テーマ:一人暮らし

自意識チョココロネ

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読者賞について

あなたが選ぶ「読者賞」

読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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 そんなある日に事件は起きた。いつものようにベッドに寝転がりながらスマートフォンでSNSをつらつら見ていると、こんな記事が流れてきたのだ。「【これはイタい!】プライド高すぎな”無難男”の特徴10選」。その記事を読んだ衝撃たるや今思い出しても冷や汗が出てきそうだ。その時は、これは自分のことを知っている誰かが書いたのだと本気で思った。それくらい自分の何もかもが当てはまっていると感じたのだ。動悸がして顔は熱いのに手からは血の気が引いた。夢かと思って何度も読んだ。それから本当に知り合いが自分のことを書いた可能性を真剣に検討し始め、熟慮の結果それは流石になさそうだという判断に至って落ち着いた。熟慮というかよく見ればその記事は大手のネットメディアのものだというのに気づいただけだったが。一旦落ち着いたが、SNSに流れてきたということは自分に見せるために友達の誰かが流したのでは、友達の中で実はこの記事のように思われ馬鹿にされているのではという不安は残り、次の日の大学に行くのが怖くなって眠れなくなった。

 結果としては世間の皆様が大方ご想像したように、翌日の大学ではいつもつるんでいる友達数人普段と全く変わりなく、勇気を出して自分からあの記事の話題を振ってみれば「あれ俺に当てはまっていて辛い」とそれぞれがふざけて云い出す始末。その後は一人が少し真面目に「占いみたいに誰にでも少しは当てはまるように書いているだけだろ。最近そんなのばっかりだよな」と自分でも内心気づいていることを言われた所で授業が始まり、あっさりとその話題は終わってしまった。

 あんなくだらないネタ記事がきっかけになったのは癪だが、そのあとなんとなく人の目を気にしすぎるのが馬鹿馬鹿しくなった。なにせ無難にしていてもネタにされるなら、好きなようにして馬鹿にされたほうがマシというものだ。
その気持のまま貯金をはたいて憧れのインテリアショップで散財した。するとなんということでしょう、謎の柄のカーテンはウッドブラインドに、蛍光灯の白い光の代わりに電球が何個もぶら下がったレトロなランプがオレンジ色の光を投げかけ、いかにもなこたつは憧れのガラス天板のローテーブルに。また「部屋にインパクトを持たせるためには何か一つデカいものを置くといい」という隣の占い師の助言に従って、馬鹿デカい本棚を買った。中身はまだスカスカだが、これから埋めていけばいい。何年か後に何が入っているかが楽しみだ。

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