テーマ:二次創作 / シンデレラ

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読者賞について

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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「デ・・・レラ・・・シンデ・・・・ラ・・・シンデレラ・・・・・・新田 麗蘭!!!」
ゴッと良い音をたて、私のこめかみに何か固い物がクリーンヒットした。
「ひ、ふぁい」
打ち付けられた衝撃で、小牧駐屯地の自衛官が憑依でもしたかの如く、敬礼をしながら立ち上がる。
「新田!!お前は俺の講義を聞く気が無いのか!!」
優しい心理学入門と書かれた分厚い本を片手に仁王立ちする白豚・・・じゃなかった、このずんぐりむっくりしたおっさんは、有難くも私の大学で心理学を教えて下さっている教授様だ。
「とんでもありません!教授の講義は、教授の屍を踏み台に垂直跳びをしてでも聞きたいです!」
「屍ってなんだ!そんな事より新田、お前、そんなに寝てばかりいるならシンデレラなんて名前じゃなくてねむり姫って改名したらどうだ?」
クスクスと周囲から笑い声が上がる。
「『しんで』じゃありません、『しんでん』です。しんでん れらです」
「そうか、てっきり死んでいる様に寝ていたから『しんで』かと思ったぞ」
ここで堪えきれず皆の笑い声が爆風の如く沸き上がる。私はただただ恥ずかしくて、俯くしか無かった。


「ああ!あのクソ豚野郎!!!ちくしょう!いつか豚骨にしてやる!それに先駆け、豚骨ラーメン屋で修行してやる!!」
手裏剣さながら鞄をソファーに投げつけ、思いっきり足で床を踏みつける。
「麗蘭ちゃん、学校で何かあったの?」
「だいじょうぶ?麗蘭ちゃん?」
振り返ると、そこには少し怯えた様子で寄り添いながら私を見守る二人の姉が居た。
姉と言っても彼女達は本当の姉ではない。父親が3年前に再婚し、継母と共に我が家に上がり込んできた、言ってしまえば居候みたいなものだ。
「大丈夫な訳ないでしょ!ただのバイトがラーメン屋の店長まで伸し上がるまでの精神と肉体の摩耗!姉さん達には分からないでしょ!」
「ご・・・ごめん、分かってあげられなくて」
長女が次女の肩にしがみ付きながら、おずおずと答える。
「と、所で麗蘭ちゃんって、ラーメン屋さんでバイトを始めたの?」
長女を細い手で弱々しく庇う様に次女は言う。
「いやいや、これ、妄想の話でしょ!私がラーメン屋でバイトをしたらおかしい・・・あれ?いや、おかしくなどない・・・だって私、豚骨ラーメン溺愛家じゃない・・・こんなに豚骨愛が深い私なら・・・・・・・むしろ適材適所!!」
将来の道が今突然開けた事にガッツポーズを決めていると、玄関から小鳥がさえずる様な声でただいまと聞こえてきた。

物件と王子様、どちらもお願いします

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