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地方に移住するならどこがおすすめ?地方暮らしがうまくいくコツとは?

地方に移住するならどこがおすすめ?地方暮らしがうまくいくコツとは?

コロナ禍でテレワークが急速に普及したことにより、地方への移住が注目されています。昨年までは「地域の重要な中小企業等への就業や社会的起業をする移住者が対象」とされていた「移住支援金」ですが、2021年から、テレワークも対象となり、今の仕事を続けたまま移住した場合にも「移住支援金」が支給されることとなりました。これを機に東京圏から地方移住を検討する人は今後も増えていくことが予想されます。

コロナ禍で増えた地方への移住検討者

現在、東京圏に住んでいる方の中には、地方への移住に興味を持っている方も少なくないと思います。しかし、実際に移住を検討してみると、移住先をどうやって決めればいいのか、引越ししてもうまくやっていけるのだろうか…と、不安になりますよね。そこで、全国45道府県の地域情報を揃え、地方移住や田舎暮らしをしたい人をサポートする「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」の理事長・高橋公氏に地方移住についてお話を伺いました。

―― この1年コロナ禍で地方移住を検討している人が増えたと聞きますが、コロナ禍前に比べてどのように変わりましたか?

高橋公氏(以下、高橋):2020年の相談・問い合わせ件数は、38,320件でした。前年比で約22%減っているのですが、2020年は緊急事態宣言が発令されていた間、当センターは休館していました。その間は面談やセミナーは中止していましたから、数字で見ると減りはしましたが相談者の移住に対する本気度は以前に比べ、増しているように感じています。 3密を避ける観点から都心から少し離れた近郊への移住を検討している人たちが増え、茨城・栃木・群馬・山梨・静岡・神奈川などは以前に比べ相談も多くなった印象です。

相談・問い合わせ数推移(東京2008~2020:暦年)

相談・問い合わせ数推移(東京2008~2020:暦年)
(出典:ふるさと回帰支援センター)

―― 地方移住の相談に来る方たちはどのような方が多いですか?

高橋:10年前までは、60~70代のシニア層の相談が多かったのですが、2014年に政府による「地方創生」への取り組みがスタートしてからは30~40代の相談が増えました。
単身者よりもファミリーが多く、地方都市での就業を目的とした引越しがほとんどです。地方の企業に就業することが多いですが、農業や林業、漁業などの第一次産業に転職する方は2割くらいです。

―― テレワークが普及し、地方へ移住しても仕事を継続することも可能となりましたが、テレワークでの相談者は増えていますか?

高橋:テレワークが可能な仕事は限られていますので、まだ増えたという認識はありませんが、相談員に聞くところ、山梨や静岡、群馬などはちょこちょこと相談が寄せられてきているようです。
高崎や水戸などは、東京まで新幹線で1時間~1時間半程で通える距離ですし、都内に比べて2~3割安い家賃で広い間取りに住めるのですから、テレワークで書斎が欲しいと考えている人にとっては魅力を感じるでしょうね。
自治体によっては東京までの交通費を何割か援助してくれたり、テレワークとして使えるカフェや会議室を提供してくれるところもあるので、今後はテレワークによる地方移住も増えていくのではないでしょうか。

―― 地方移住と聞くと以前は、家業を継ぐなどの理由でUターンが多いイメージでしたが、昨今は、ゆかりのない土地でIターンする方が多いのでしょうか?

高橋:2008年のリーマンショック以来、若者たちの雇用環境の問題点などもあり地方での仕事の相談が増えましたね。 10年以上前に地方へ移住して農業を始め真面目に取り組んできた人たちは、今農業ビジネスで成功しています。当センターのホームページをはじめ、移住関係の雑誌などでも取り上げられているので、それを見た若い世代の人たちが「私もこういう生活を送ってみたい」ということで相談に来ています。
 今は多様化の時代ですし、バブル期の恩恵を受けた団塊世代とは違って若者世代は今までたくさん苦労をしてきたので、うまく対応していけるんだと思います。農業も漁業も機械化やIT化が進んでいますから、昔に比べて初心者でも始めやすくなっています。
 昨今は新型コロナウイルスの影響で、家族と過ごす時間も増えました。家族との暮らしに何が一番必要なのかを考え直している人も増えたようです。自然豊かな環境でのんびり暮らしたいという方々も相談に来るようになりました。

―― 地方に引越しをする際、どのような物件を探せばよいでしょうか?

高橋:移住してもその土地でうまくやっていけるのかわかりません。まずは賃貸物件を借りて2~3年そこで暮らしてみてから物件を購入するようにとアドバイスをしています。僕はいつも言っているのですが、憧れだけでは移住はできません。現地に何度も足を運んで情報を得てからその土地での暮らしをシミュレーションしてみないと移住はうまくいきません。

「2020年移住希望地域ランキング」

ふるさと回帰⽀援センターが行った「2020年移住希望地域ランキング」によると、窓口相談者では静岡県が1位という結果に。一方、セミナー参加者では、和歌山県が1位となりました。

窓口相談者 セミナー参加者
1位静岡県1位和歌山県
2位山梨県2位広島県
3位長野県3位佐賀県
4位福岡県4位静岡県
5位宮城県5位長野県

(出典:ふるさと回帰支援センター)

―― 窓口相談者と、セミナー参加者の移住希望地が大きく異なるのですが、理由を教えてください。

高橋:まず、セミナーについては、いつかは地方に移り住みたいと考えている人たちも気軽に参加できるので、いつか住んでみたい人気の地域ということです。
東京圏からみると1位の和歌山県は意外な結果と思うかもしれませんが、大阪都市圏の移住先としてもともと人気があります。和歌山県のほかに、滋賀県や三重県なども人気ですね。
3位の佐賀県に関しては、IT系の仕事をしている人たちが多く移り住んでいます。同業者間で佐賀県の魅力について情報交換が行なわれ、友達が友達を呼び移住者が増加したようです。口コミによって広まったというユニークなパターンですが、今の時代ならではですね。

一方、窓口相談者については、本気で移住を考えている人たちなので、今回の結果は新型コロナウイルスの影響が色濃く反映されていると思います。
以前は「住むならどこの地域がいいですか?」という相談が多かったですが、最近では移住希望地をいくつか絞って相談をしに来ているので、東京圏からの転入が実際に多い地域ではないでしょうか。
5位の宮城県に関しては、数年前に比べ相談件数は12倍に増えたのですが、東日本大震災から10年以上経ち東北地方の景色が変わってきたように思います。宮城県以外にも、福島県や山形県への移住相談も以前に比べ2~3倍に増えました。

―― ランキングに入っている地域は実際に移住がしやすいのでしょうか?

高橋:移住希望者が増加していく一方で、自治体によっては受け皿がきちんとしておらず対応できていないところもあります。自治体によってはまだやらなければならないことがあります。一つ目は、空き家バンクを作る。二つ目は、若者の仕事先を増やす。三つ目は、移住者を受け入れるための支援組織を作ることです。移住が地域で孤立しなじめないと、移住を断念する例もあり、こうしたことにならないように支援や取り組みが必要なのです。残念ながらきちんと揃っている自治体はまだ数は少ないのが現状です。それらがきちんとできるようになればアフターコロナでも地方への移住希望者は増えていくのではないかと考えています。

地方での暮らしがうまくいくコツとは?

―― 地方移住がうまくいくためのコツを教えてください。

高橋:ふるさと暮らしには向いている人と向かない人がいます。活動的な人ほど向いているようです。ふるさと回帰を成功させるためにせめて下記のことは心がけると失敗はしないと思いますのでぜひ参考にしてください。

「ふるさと暮らしを成功させるための10箇条」

  • 1.「だれと」「どこで」「何をして」暮らすのかなど、しっかり検討することが重要である。

     単なる憧れだけでは失敗しかねない。行動するのはその後で十分である。



  • 2.移住にあたっては日本には四季があり、季節によって違った風景がある。

     「交流から一時滞在」「一時滞在から二城住居」「二地域住居から定住へ」と四季を運び、段階を踏んだ準備が大切。移住する前に田舎暮らしを体験することは不可欠である。



  • 3.地方には濃厚な人間関係が残っている。

     そして、地域には地域のしきたりがあり、「郷に入れば郷に従う」ことが重要である。
    勝手気ままに暮らしたいのであれば、別荘地やリゾート地で暮らすべきである。



  • 4.地域は共同体であり、自分から溶け込む努力も必要である。

     受け入れてもらうぐらいの気持ちで行くと丁度いい。馴染んでいくことが重要。
    そのためには出会えば「あいさつ」を忘れないことが肝心。



  • 5.地域では新参者である。東京風を吹かすことは厳に慎むこと。

     逆によく物を知っているなど重宝がられる人、頼られる人になれれば一番いい。



  • 6.早く地域に馴染むためには信頼できる地元の師匠を持つのもひとつです。


  • 7.地方は万事、時間がゆっくり流れている。

     人まねではなく自分の価値観、自分のこだわりを大切に暮らすこともポイント。



  • 8.自分の新しいライフスタイルを探し、創る。

     さらに楽しむくらいのつもりでやれば失敗はしない。



  • 9.時間はたっぷりある。アバウトでいい。

     不便さを楽しむ気持ちでラクにやっていこう。



  • 10.移住したら、新しい暮らしが始まるのであらためて夫婦の役割を決めるのもいい。

     また新しい関係が構築できることになる。



まとめ

転職を伴う引越しがメインであった地方移住もテレワークの普及により、今の仕事を続けながらも自然豊かな環境に移り住むことも可能となりました。旅行で訪れてとても住みやすそうな土地であったとしても、「ふるさと暮らしを成功させるための10箇条」にもあるように夏には虫と遭遇したり、冬は除雪作業を行なったり、その土地での四季の移り変わりを知らなければ移住はうまくいかないようです。
アットホームの空き家バンクでは、おためし移住を実施している自治体をご紹介しています。数日の短期から長期まで移住体験ができます。本格的に地方へ移住するまえに是非おためし体験をしてみてはいかがでしょうか。

空き家バンク お試し移住体験

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高橋 公

高橋 公認定NPO法人ふるさと回帰支援センター 理事長

1947年生まれ、福島県出身。早稲田大学中退、77年自治労本部入職、97年から連合へ出向、社会政策局長。麻生内閣「暮らしの複線化」研究会委員、菅内閣「新しい公共」推進会議委員、環境省中央環境審議会臨時委員、食を考える国民会議委員、農水省「食と地域の『絆』づくり」選定委員会委員、東日本大震災義援金配分割合決定委員会有識者代表委員、いわき応援大使などを歴任。 現在、認定NPO法人ふるさと回帰支援センター理事長。
「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」

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