このページの一番上へ

円安が不動産市場に与える影響は?バブルはどうなる?不動産投資をするメリット・デメリットを解説

円安が不動産市場に与える影響を詳しく解説します
テレビやニュースで「歴史的な円安」と耳にした方も多いでしょう。2024年7月上旬には1ドル161円台を記録しました。円安になると円の価値が相対的に下がるため、海外からの輸入品に多くの円が必要になります。日本は食料品や原油、ガソリンなど、生活品の多くを輸入に頼っているため、家計にも大きな影響を与えます。それでは、不動産投資においてはどのような影響があるのでしょうか。

そこで本記事では、円安が不動産市場に与える影響や、円安時に不動産投資をするメリット・デメリットを解説します。不動産投資を検討されている方、現在されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

円安が続いている原因

アメリカの金利上昇により円安が続いています
アメリカの金利上昇により円安が続いています

そもそも、なぜ円安が続いているのでしょうか。本章では、その原因を解説します。

アメリカの金利上昇

円安が続いている原因は、アメリカの金利上昇です。金利が高いアメリカにお金を預けることで、多くの利息を得られるため、投資家たちはお金を預けようとします。一方、日本の金利は低いため、円が売られてしまいます。アメリカは世界最大の経済大国であり、その金融政策が世界経済に与える影響は大きなもの。アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が金利を上げると、世界中の投資家がアメリカに資金を移し、ドルを買おうとします。結果、ドルが強くなり、円が安くなる傾向に。このアメリカと日本の金利差が、円安が続く原因となっています。

2024年11月には、アメリカの大統領選でトランプ氏が当選しました。トランプ氏は減税や積極財政を訴えており、これらの政策はインフレが予想されることから、利下げはできず、今後も金利差は拡大したままと考えられます。

円安が不動産市場に与える影響

円安になると不動産市場に大きな影響を与えます
円安になると不動産市場に大きな影響を与えます

円安になると、海外からの輸入品に多くの円が必要になります。不動産市場には、具体的にどのような影響があるのでしょうか。本章では4つの影響を解説します。

建築費の高騰

円安が不動産市場に与える影響の一つとして、建築費の高騰が挙げられます。木材や鉄鋼など、建築資材の多くは海外からの輸入に頼っています。そのため、円安になると建築資材の価格は高騰。また、建築資材の価格が高くなると、人件費や建築資材の運搬にかかる費用の高騰にもつながります。下表は国土交通省の「建築工事費調査」の工事実施額と予定単価をまとめたものです。

項目 建築
構造
 2021年
完成分
 2022年
完成分
2023年
完成分




木造 9兆4,401億
6,800万円
10兆2,517億
8,500万円
9兆7,574億
3,400万円
非木造 15兆6,968億
2,600万円
17兆7,269億
9,600万円
19兆7,351億
5,100万円



木造 18.1万円/
平方メートル
19.1万円/
平方メートル
19.1万円/
平方メートル
非木造 25万円/
平方メートル
25.3万円/
平方メートル
25.9万円/
平方メートル

ここ2、3年で、特に非木造において、工事実施額と予定単価がともに増加していることがわかります。なお予定単価とは、調査が実施された年に完成予定の建築物の予定単価です。今後も円安が継続すれば、建築費の高騰はまだまだ続くと考えられるでしょう。

不動産価格の上昇

不動産価格の上昇も、円安が不動産市場に与える影響の一つです。先述したように、建築費が高騰するため、不動産価格にも反映されます。また海外からすると、日本の不動産は割安になるため、投資対象としての魅力が高まります。海外投資家からの需要が高まることから、さらに不動産価格が上昇する可能性も。それでは、国土交通省が発表している「不動産価格指数」を見てみましょう。不動産価格指数とは、年間約30万件おこなわれる不動産取引の価格情報をもとに、全国やブロック別などに不動産価格の動向を指数化したものです。なお、2010年の平均を100としています。

年月 住宅地 一戸建て
住宅
マンション
(区分所有)
2024年7月 115 115.6 202.2
2023年7月 113.2 115.9 191
2022年7月 110.4 117.4 183.9
2021年7月 103.9 108.6 166.5
2020年7月 97 100.2 150.7

これを見ると土地をはじめ、一戸建て、マンションすべてにおいて、不動産価格が上昇。特にマンションでは上昇傾向が顕著で、2024年7月時点では2010年の2倍以上になっています。

海外資本の流入

先述したように、円安になると日本の不動産が割安になるため、海外投資家からの注目が高くなり、魅力的な投資対象になります。実際に、ニッセイ基礎研究所の「不動産投資レポートー不動産投資市場動向(2024年上半期)」によると、「現在、最も良い投資機会がある先進国」で、日本は32%と3番目に高い結果に。また、アメリカの不動産サービス大手のジョーンズラングラサールによると、2024年1〜6月の都市別不動産投資額は、日本の首都圏が約1兆6,000億円で世界首位となっています。

ローン金利の上昇

円安は、ローン金利にも影響を与えます。住宅ローンを組んでいる方は、住宅ローンの金利が上昇する可能性があると、耳にしたことがある方も多いでしょう。日本とアメリカの金利差が拡大していることから、国内でも金利上昇の圧力が高まります。日本銀行が金融政策の一環として、政策金利を引き上げる可能性も。そうすると、政策金利をもとに設定される住宅ローン金利や投資用ローンの金利も、引き上げられる可能性があります。

円安時に不動産投資をするメリット

円安時に不動産投資をするメリットを解説します
円安時に不動産投資をするメリットを解説します

円安が不動産市場に大きな影響を与えることを見てきました。建築費の高騰やローン金利の上昇など、一見デメリットが多いように感じた方もいるでしょう。本章では円安時に不動産投資をするメリットを解説します。

海外投資家によって不動産市場が活性化する

円安時に不動産投資をするメリットは、海外投資家による日本国内への投資が活発になり、不動産市場が活性化することです。前章でも解説したように、円安になると海外資本が多く流入するようになります。現に、2024年1月〜6月までの都市別不動産投資額は、日本の首都圏が約1兆6,000億円で世界首位でした。不動産市場が活性化すると、需要が高まることから、資産価値や家賃の上昇などが期待できます。投資対象を選定することで、高い収益を期待できるでしょう。

ホテルや民泊などの宿泊施設への需要が高まる

円安は、ホテルや民泊などの宿泊施設への需要が高まるため、これらに投資をすると、高い収益を見込める可能性があります。円安になると外国人にとって、日本旅行が安価になるため、訪日外国人客が増加します。事実、観光庁の「宿泊旅行統計調査報告(令和5年1〜12月)」によると、外国人延べ宿泊者数は1億1,775万人。2022年と比較して、613.5%も増加しています。東京や大阪、北海道の人気が高く、特に北海道ではニセコバブルと呼ばれるほど、高級リゾート地となっています。円安で訪日外国人が増えることで、宿泊施設に投資をすると、高い収益を見込める可能性があるでしょう。

大型工場が進出する

円安時には大型工場が進出しやすくなるため、工場周辺の土地や不動産需要が高まることもメリットです。円安により、海外よりも国内のほうが、生産コストを削減できることから、国内回帰の動きが強まります。

実際に、2024年は半導体の新工場が次々と稼働しています。工場が進出すると、従業員やその家族からのニーズが高まります。半導体の工場が建設されている北海道の千歳市では、ファミリー向けの平均賃料が、工場の建設が始まった時と比較して2.2倍にも上昇。(2024年11月現在)このように、円安になると大型工場の国内進出が加速し、それにともない周辺地域の賃貸需要が高まるため、オーナーにとって投資機会が増えます。

不動産の資産価値が上昇する

円安時に不動産投資をするメリットとして、不動産の資産価値が上昇することが挙げられます。先述したように、円安になると建築費が高騰したり、海外からの資本流入が増えたりします。これらは、その分不動産の価格に反映されるため、資産価値も上昇。もし人気の高いエリアに不動産を所有しているのであれば、高値で売却できる可能性があるでしょう。

家賃の上昇が期待できる

円安になると、家賃の上昇が期待できる点もメリットです。繰り返しになりますが、円安になると輸入製品の価格が上昇することから、国内の物価も上がります。この物価の上昇を受け、家賃の値上げも可能となります。また、建築費の高騰や不動産価格の上昇も、家賃を押し上げる要因に。円安になると家賃の上昇が期待できるため、不動産投資の収益性を高められるでしょう。

不動産情報サービスのアットホーム株式会社が10月に発表した「全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2024 年 9月)」によると、ファミリー向きのマンションで、神戸を除く12エリアで前年同月を上回っています。また、アパートのシングル向きではすべてのエリアで前年同月を上回っていることがわかりました。このことからも、円安の影響により、家賃の上昇が期待できることがわかります。

※13エリア:首都圏(東京 23 区、東京都下、神奈川県、埼玉県、千葉県)、北海道札幌市、宮城県仙台市、愛知県名古屋市、京都府京都市、大阪府大阪市、兵庫県神戸市、広島県広島市、福岡県福岡市

円安時に不動産投資をするデメリット

円安時に不動産投資をするデメリットを解説します
円安時に不動産投資をするデメリットを解説します

投資機会が増えたり、家賃の上昇が期待できるなど、円安時に不動産投資をするメリットを見てきました。それではデメリットはあるのでしょうか。本章では、円安時に不動産投資をするデメリットを解説します。

為替リスクがある

円安時に不動産投資をするデメリットの一つは、為替リスクがあることです。円安時には不動産価格が上昇しますが、円高になった際に、売却額が低くなる可能性があります。また、円安時には海外投資家からの資本流入が増えますが、円高になると日本から資金を引き上げ、不動産価格が下落する恐れも。為替の相場はさまざまな要因で変動するため、正確に予測することは困難です。

しかし、日頃から経済動向を把握しておくことで、早めに対処することができます。常に世界情勢や経済動向にアンテナを張っておくようにしましょう。

メンテナンス費用が増加する

メンテナンス費用が増加することも、円安時に不動産投資をするデメリットです。円安になると建築費が高騰するのと同様に、修繕費やリフォーム費なども高くなります。メンテナンス費用が増えると、不動産投資の収益性が低くなることも。しかし、入居者の満足度を高めたり、入居希望者からの印象をよくするために、適切なメンテナンスは欠かせません。円安時に不動産投資をおこなう際は、余裕を持って、メンテナンス費用を見積もるようにしましょう。

エリア選定が難しくなる

円安は、不動産投資においてエリア選定を複雑化させるというデメリットがあります。これまで見てきたように、円安が不動産市場に与える影響は広範囲におよびます。また、海外投資家の動向や地域の経済状況など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。さらに、将来的に円高に転じる可能性もあり、現在は不動産需要が高まっていても、この先下落することも考えられます。今の状況だけでなく、長期的な視点でエリアを決めるようにしましょう。

金利上昇リスクがある

金利上昇リスクがある点も、円安時に不動産投資をするデメリットです。先述したように、円安による物価の高騰を受け、日本銀行が政策金利を引き上げる可能性があります。これにより、投資用ローンの金利が上昇するおそれも。投資用ローンの金利が上がると、返済額が増え、月々の返済負担が重くなるかもしれません。場合によっては、キャッシュフローが悪化することも考えられます。投資用ローンを組む際には、金利上昇リスクを踏まえたうえで、無理のない返済計画を立てましょう。

不動産バブルはどうなる?今後の予測

今後の不動産市場はどうなるのでしょうか
今後の不動産市場はどうなるのでしょうか

2020年以降、コロナ禍でフルリモートが可能になるなど働き方が変わったこともあり、住宅への関心が高まりました。また、ウクライナ情勢により原油や原材料の価格が上がり、建築資材も高騰したことから、不動産価格が上昇しています。これらのことから2024年現在、「不動産バブル」が起きていると言われています。不動産バブルはいつか弾けてしまうのでしょうか。本章では今後どうなるのか、予測をおこないます。

地域格差が拡大する

今後、日本の不動産市場は地域格差が拡大すると考えられます。日本では少子高齢化が進み、インフラが整っている都市部に人が集中する傾向にあります。総務省の「令和4年度版過疎対策の現況(概要版)」によると、市町村数で見ると過疎地域は51.5%と半数以上となっており、二極化が進んでいます。また、国土交通省が公表した「令和5年都道府県地価調査」によると、東京の住宅地は40万4,400円/平方メートル。それに対して、秋田や青森では約1万円/平方メートルと、不動産価格に大きな差が出ていることがわかります。不動産バブルと言われていますが、一部の地域に限られていることがわかるでしょう。人口動態なども見越して、投資対象のエリアを選定する必要があるでしょう。

急な大暴落は考えにくい

円安が続いているなか、日本の不動産市場において、急激な大暴落は考えにくい状況です。トランプ氏が再選し、日本とアメリカの金利差の拡大が続くと予想されることから、今後も円安が継続すると見込まれます。日本の人口は減少していますが、そのペースは緩やか。不動産需要が一気に減少し、供給過多になる状況は想定しにくいでしょう。また、円安を背景に海外投資家の日本不動産への投資が活発化しており、不動産市場を支えています。リーマンショックのような金融危機が起こらない限り、大暴落は起きにくいと考えられます。

まとめ

本記事では、円安が不動産市場に与える影響を解説しました。円安になると、海外からの輸入品が高くなることから、建築資材なども高騰。結果として、不動産価格も上昇します。また、日本国内での生産コストが抑えられるため、大型工場の進出も増え、周辺地域の家賃が上がります。現在の状況が続くとは限りません。さまざまなリスクに耐えられるよう、対策をおこないましょう。また、日頃から経済動向に注目しておくことも大切です。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る