民泊投資とは?基本的な仕組みとメリット・デメリットを理解してから始めよう

通常の賃貸不動産投資とは異なり、民泊投資は短期間で宿泊する利用者をターゲットにしたビジネスモデル。そのため、特定の地域や市場で高い収益性が期待されますが、同時にリスクをともなうことを理解しておかなければなりません。
本記事では、民泊投資の基本的な仕組み、利回りやメリット・デメリットなどを詳しく解説します。民泊投資を始めたい、または興味を持っている方はぜひ参考にしてください。
記事の目次
民泊投資とは

民泊投資とは、アパートや一軒家などの物件を短期間貸し出すことで収益を得る不動産投資の一種です。通常の賃貸物件と異なり、宿泊を主な収益源とし、観光地やビジネスエリアなど需要の高い地域では、より高い収益性が見込まれます。
しかし、民泊投資を成功させるためには市場の需要を見極め、かつ戦略的な運営が欠かせません。
民泊投資の種類
民泊投資にはいくつかの方法があり、資金力や管理能力、時間に合わせて選択できます。以下で、民泊投資の方法を詳しく解説します。
自己所有物件を活用した民泊運営
すでに所有している不動産を民泊として運用することで、初期投資を最小限に抑えられます。空き家や空室を収益に変えられるメリットがあります。
しかし、宿泊者の対応や日々の運営管理の負担が大きくなるデメリットも。また、物件購入から始める場合は大きな初期投資が必要です。
専門会社への運営委託
専門会社に民泊の運営を委託することも一つの方法です。
運営を専門会社に任せることで、日々の管理やゲスト対応の負担を軽減でき、オーナーが直接運営に関与する必要がなくなります。
民泊運営の経験がなくても運営が可能ですが、専門会社への手数料が発生し、利益が減少するリスクもあるため注意しましょう。
賃貸物件を活用した民泊運営(転貸)
賃貸物件を活用して、民泊運営を始める方法もあります。
自分で所有していない物件を借りて民泊運営をおこなう場合、初期投資を抑えられますが、毎月の家賃や転貸料が発生します。
また、契約上転貸が禁止されている場合もあるため、運営前に賃貸契約を十分に確認し、必要に応じて貸主の許可を得なければなりません。
民泊投資のメリット

民泊投資には多くのメリットがあります。以下で見ていきましょう。
収益性が高い
民泊は短期宿泊を対象としており、1泊あたりの料金が賃貸物件の家賃を日割りした時よりも高く設定できる点が大きな魅力です。特に繁忙期やイベント時には、宿泊料金を上げることで大幅な収益増が期待できるでしょう。
反対に、オフシーズンには料金を下げて稼働率を確保することも可能です。こうした柔軟な価格設定をすることで、年間を通して安定した収入を実現できるでしょう。
高い利回りが期待できる
民泊投資の大きな魅力の一つは、比較的高い利回りが期待できる点です。一般的な不動産投資の実質利回りが4~6%とされるのに対し、民泊投資では8~18%の利回りが期待できるとされています。
ここまで高い利回りを期待できるのは、短期間で高額な宿泊料が得られるためです。しかし、市場の需要に合わせた適切な運営が欠かせません。
原状回復コストを削減できる
通常の賃貸物件では、退去時に原状回復費用が発生しますが、民泊ではそのような負担が軽減される場合が多いです。宿泊者は短期間しか滞在しないため、物件の消耗も少なく、頻繁な修繕や大がかりなリフォームは必要ありません。
日々の清掃やメンテナンスで十分に物件の状態を維持できます。管理会社に任せず、自分で管理する際も、コストや手間などの負担は軽減できるでしょう。
築年数が与える影響が少ない
賃貸物件では築年数が新しいほど価値が高まる傾向にありますが、民泊ではあまり重要ではありません。宿泊者は主に立地や利便性を重視するため、古い物件であっても駅近や観光地に近い場所であれば高い需要が見込めます。
古い物件でも、魅力的な内装や設備を整えれば、高い競争率でも勝ち抜いていけるでしょう。
民泊投資のデメリット

民泊投資には多くの魅力がありますが、一方で、注意が必要な点もあります。次に民泊投資のデメリットを以下で見ていきましょう。
設備投資にコストがかかる
民泊では、宿泊者が快適に過ごすための設備を整えることが必要です。冷蔵庫や電子レンジなどの家電製品はもちろんのこと、家具やその他の備品も揃えておかなければなりません。
また、一度揃えた設備も、使用するうちに古くなったり壊れてしまったりすることがあり、その都度新しいものを購入しなければなりません。
設備投資にかかるコストは、民泊運営をおこなううえで大きな負担となるでしょう。
地域によって運営方法に制限がある
「特区民泊」という言葉をご存じでしょうか。特区民泊とは、「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」の略称であり、経済の発展を促進するために設けられた地域のことです。
特区民泊の特徴は、年間の営業日数に制限がなく、フロントに常駐スタッフを配置する必要がないところ。ただし、宿泊者は2泊3日以上の滞在が必要という条件があるため、注意が必要です。
しかし、特区民泊が可能なエリアは限られており、特定の地域でしか運営できません。一方、特区外で民泊を運営する場合、年間の営業日数が180日以内に制限されるため、収益の上限が固定化される可能性があります。
つまり、場所によって運営の選択肢が大きく異なるのが、民泊投資のデメリットです。
手続きが複雑
民泊を合法的に運営するためには、さまざまな申請や手続きが必要です。消防法や建築基準法の適合確認、地域の条例に基づく申請など、スムーズに運営を始めるには数カ月の準備が必要となることもあります。
また、手続きの遅延や不備があれば、開業がさらに遅れるリスクもあるでしょう。
外部要因が与える影響が大きい
民泊市場は観光業に大きく依存しており、シーズンや経済状況の変動に敏感です。例えば、世界的なイベントや突発的な災害、パンデミックなどの要因が発生すると、宿泊需要が急減し、収益に大きな影響を与えることがあります。
上記のような外部要因が起きても対応できるように、常日頃からのリスク管理が求められます。
近隣住民とのトラブルが発生する可能性がある
民泊運営では、時として宿泊者と近隣住民との間でトラブルが発生することがあります。特に騒音やゴミの管理などで不満が生じやすく、適切に対応しないと、周辺との関係が悪化し運営に支障をきたすことも。
問題が発生する前に、トラブルに合わせた対応策を考えておくことが重要です。
民泊投資におけるリスクへの対処法

民泊投資には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのリスクも存在します。リスクを完全になくすことは難しいですが、事前に適切な対策を取ることで最小限に抑えられます。ここでは、民泊投資のリスク軽減のための具体的な方法を見ていきましょう。
最新の設備を揃える
民泊運営ではオーナーが家具や家電を用意しなければならないため、初期投資が大きくなりがちです。しかし、コストを抑えるために、安価な設備で済ませることは得策ではありません。
初期費用を抑えることは一時的に得に思えるかもしれませんが、長期的な視点で見ると、最新の高品質な設備を導入するほうがメリットが大きくなります。
最新の設備を揃えることには、以下のようなメリットが挙げられます。
- 家具や家電の故障リスクが低くなるため、宿泊者とのトラブルが少なくなる
- 耐久性が高いため、長期間にわたって使用でき、設備の買い替え頻度が減る
- 最新の設備を設置することで、開業時から競争力のある宿泊施設として評価されやすくなる
特に、宿泊者の満足度向上は、リピーターの確保やよい口コミを得るためにも重要です。初期費用が高くても、投資効果を考慮すると、最初から高品質な設備を導入することが望ましいでしょう。
マンスリーマンションとの併用で営業日数を補う
現在の法律では民泊を年間180日までしか営業できませんが、この制限を補う方法があります。例えば、残りの日数をマンスリーマンションとして運営する手段があります。
マンスリーマンションは、1カ月以上の長期契約となるため、通常の賃貸契約と同様に扱われ、民泊の制約を受けません。しかも、民泊で使用する家具や家電はそのまま利用できるため、追加の初期費用をかけずに運営を続けられます。
上記のように、民泊とマンスリーマンションを組み合わせた運営形態は相性がよく、年間を通して安定した収益を確保する場合に役立つでしょう。
専門家の力を借りる
民泊を始めるためには、保健所への届け出など、さまざまな手続きが必要です。不動産投資に不慣れな場合、どのような書類をどこに提出すればよいのかがわからず、開業までに時間がかかることがあります。
手続きを正確におこなわなければ、民泊の運営が開始できないため、初めての方にとっては大きなプレッシャーになるでしょう。そのような場合には、民泊運営を専門にサポートする代行会社に依頼するのも一つの手です。代行会社は多数の民泊運営に関わっており、手続きのノウハウを持っています。
そのため、書類の不備や手続き遅延のリスクを大幅に軽減でき、オーナーにかかる負担も減らせるでしょう。もちろん、代行サービスには費用がかかりますが、安心して運営を開始できる点は大きなメリットといえます。
民泊投資物件を選ぶ際のポイント

民泊投資を始める際は、物件選びも重要なポイントです。民泊投資物件を選ぶ際のポイントを詳しく見ていきましょう。
立地
民泊投資物件を探す際は、まず立地を確認しましょう。
アクセスがよく、観光地やビジネスエリアに近い物件は需要が高いため、より高い収益が期待できます。特に、外国人観光客をターゲットにする場合、広めの物件が好まれる傾向があるので参考にしてみてください。
柔軟な運営ができるか
物件の用途や状況に応じて、民泊に適した物件か慎重に判断することが大切です。例えば、賃貸物件を活用して民泊運営を始める場合、転貸が禁止されていないか、確認する必要があります。また、外国人観光客をターゲットにするのであれば、需要が落ち込んだ際、ワークスペースとして開放するなど、他の活用方法も考えなければなりません。契約条件や法律上問題ないか、よく確認するようにしましょう。
民泊投資を成功させるためのポイント

民泊投資を成功させるためには、まず法的なルールを十分に理解し、それに基づいた適切な運営方法を選ぶことが重要です。
民泊を運営するためには、以下のいずれかの許可や届け出をおこなう必要があります。
- 旅館業法に基づく簡易宿所営業許可
- 住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業届け出
- 国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業の認定
それぞれの制度には異なるルールがあり、例えば住宅宿泊事業法に基づく営業では、年間180日の営業日数制限が課され、場合によっては管理を外部に委託する必要があります。
一方、旅館業法では、立地に関する規制が存在するため、施設がどの法律に該当するかを事前にしっかり確認し、適切な届け出をおこなうことが重要です。
それぞれの制度を以下で詳しく見ていきましょう。
旅館業法に基づく民泊運営
民泊を運営する際、旅館業法に基づく簡易宿所営業許可を取得する必要があります。
旅館業法は、施設の営業許可を得るための基準を定めており、許可を得るためには都道府県知事の承認が必要。旅館業法では、施設の換気や清掃、照明、湿気対策など、衛生に関する基準を厳格に守らなければなりません。
許可を得るためには、まず必要な設備を整え、その後保健所の検査をクリアする必要があります。この検査が終了し、許可が下りた段階で初めて民泊の営業が可能となります。
住宅宿泊事業法による民泊運営
住宅宿泊事業法に基づいて民泊を運営する場合、年間営業日数が180日以内と制限されています。長期間の営業ができないため、収益性を高めるためには他の収益手段と併用することが必要になる場合も。
また、マンションの管理規約で民泊が禁止されている場合は、営業できません。
さらに、6室以上の宿泊施設を運営する場合や、物件に居住していない場合は、国土交通大臣に登録された住宅宿泊管理業者に管理を委託する必要があります。自治体に届け出をおこない、保健所の検査をクリアすれば、民泊営業が開始できます。
国家戦略特区での民泊運営
国家戦略特区内で民泊を運営する場合、特区民泊の認定を受ける必要があります。国家戦略特区では、滞在期間が最低2泊3日などの条件が課されます。また、宿泊者名簿を整備し、利用者の詳細な情報を管理することが義務付けられているのです。
さらに、施設周辺の住民に対し、適切な説明をおこなうことが求められ、地域住民からの苦情や問い合わせにも迅速に対応しなければなりません。
床面積にも一定の基準が設けられており、基本的には25平方メートル以上のスペースが必要です。国家戦略特区内で民泊を開業する際は、自治体への届け出のみで可能ですが、特区が限られた地域にしかない点がデメリットです。
新型コロナウイルスが落ち着いた現在の民泊投資の可能性

新型コロナウイルスの脅威が収束しつつあるなか、民泊への不動産投資には大きな期待が寄せられています。2025年には大阪万博開催が見込まれており、さらなる外国人観光客の増加が期待されています。ここからは、アフターコロナの民泊投資の可能性を見ていきましょう。
訪日需要
現在、訪日外国人観光客が増加しています。パンデミック前にも、ホテルや宿泊施設の不足が課題となっていましたが、今後再びそのような状況が訪れる可能性があります。
特に、訪日外国人観光客の増加にともない、民泊が宿泊施設の不足を補う存在として期待されます。
ワーケーション需要の拡大
コロナ禍のテレワークの普及は、働き方の多様化をもたらしました。特に「ワーケーション」という、新しい形態の仕事と休暇の両立が注目を集めています。
この変化により、長期間滞在型の民泊施設への需要も増加しています。ワーケーションを目的とした宿泊者が増えることは、民泊事業者にとって大きなチャンスとなるでしょう。
2025年の大阪万博での需要増加
2025年に大阪で開催される万博では、多くの訪日外国人観光客を見込んでいます。ホテルや旅館などの宿泊施設の不足が懸念されますが、民泊はその宿泊需要を補完する役割を担うでしょう。
大阪だけでなく、関西圏全体の観光需要も高まることが予想されているため、民泊を活用した不動産投資のチャンスが巡ってきているといえます。
まとめ
民泊投資は、不動産投資のなかでも特に高い収益性が期待できる一方で、運営や手続きにともなうリスクや課題も多く存在します。成功のためには市場の需要を見極め、戦略的な運営をおこなうことが求められます。
オーナーは物件選びや運営方法を慎重に検討し、リスクとリターンをバランスよく管理することが重要です。

執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ