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不動産投資信託のデメリットとは?うまく運用するためのポイントや注意点を紹介

不動産投資信託のうまく運用するためのポイントや注意点を紹介します
不動産投資にはさまざまな種類がありますが、不動産投資の種類によってうまく運用させるコツや注意点が異なるため、それぞれの違いを把握しておく必要があります。
今回の記事で解説するのは、「不動産投資信託(REIT)」。不動産投資信託とは何か、デメリット・メリットの他うまく運用するためのポイントや注意点もあわせてご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

不動産投資信託(REIT)とは

不動産投資信託とは何かを解説します
不動産投資信託とは何かを解説します

不動産投資信託は、不動産を証券化し、証券市場で売買をおこなう投資手法です。この仕組みはアメリカで生まれ、「Real Estate Investment Trust」の略称としてREIT(リート)と呼ばれています。一方、日本では「Japan」の頭文字を加えて「J-REIT」と称され、日本市場に適した形で発展しています。

日本でのJ-REITの歴史は比較的浅く、初めて市場に上場されたのは2001年9月のこと。それ以来、約20年の間にさまざまな商品が開発され、投資手法として広がりを見せています。

不動産投資信託の仕組み

不動産投資信託は投資家や金融機関から集めた資金をもとに、多様な不動産を取得し、その不動産から得られる賃貸収入や売買益を投資家へ分配する仕組みです。

具体的には、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産を運用対象としており、管理や運営は専門の資産運用会社に委託されることが一般的です。

複数人で利益を分配する不動産投資信託に対して、個人で直接投資物件を購入する不動産投資は「実物不動産投資」と呼ばれます。同じように扱われがちですが、法的な定義や運用の手法に違いがあるため、双方の特徴やメリット・デメリットを理解することが重要です。

不動産投資信託の投資対象となる不動産の種類

不動産投資信託の投資対象となる不動産の種類を解説します
不動産投資信託の投資対象となる不動産の種類を解説します

不動産投資信託が投資対象とする不動産には、住宅や商業施設、オフィスビル、ホテルなど、多岐にわたります。不動産タイプごとに特徴や利回りの特性が異なるため、目的やリスク許容度に合わせて慎重に判断しましょう。

マンション

マンションは、安定した需要が期待される投資対象の一つです。特に都市部では、住宅需要が安定しており、入居率も比較的高いため、長期的な収益性が見込めます。

また、マンション全体を購入する場合は多額の資金が必要ですが、不動産投資信託で投資することで、比較的少額の資金でリスクを抑えた不動産投資が可能となります。

ホテル

ホテルも不動産投資信託の対象として注目されています。観光地や大都市に位置するホテルは、観光客やビジネス利用者の需要が安定しているため、収益性が期待できます。

さらに、大手ホテルチェーンに投資することで、ブランド力や運営ノウハウを活かした収益アップが期待できるでしょう。

ただし、ホテル投資は観光収入や経済情勢に影響を受けやすい特徴があり、観光政策や景気変動によるリスクがあることを頭に入れておきましょう。

オフィスビル

オフィスビルは、都市部や一等地に立地する物件が多く、企業のテナント需要が高いため、安定した賃料収入が期待できる物件です。特に都心部にあるオフィスビルは、テナントの競争率が高く、空室率が低い傾向があります。

個人でオフィスビルを所有するには莫大な資金が必要ですが、不動産投資信託を活用することで少額から投資を始められ、長期的な収益を見込むことが可能です。

商業施設

商業施設は、地域住民や観光客を対象とした需要の高い不動産です。ショッピングモールやスーパーマーケット、専門店ビルなど、多様な形態があります。
安定した収益が期待できる一方で、消費動向や競合の影響を受けやすいため、投資する際には慎重な判断が大切。また商業施設は、運営者の経営能力や立地条件によって収益性が大きく異なる点も考慮しましょう。

その他の施設

不動産投資信託の投資対象には、物流施設や医療施設、介護施設なども含まれます。

物流施設

EC(電子商取引)の拡大にともない、物流需要が高まっており、近年注目されている分野です。配送センターや倉庫などが含まれ、特にオンラインショッピングの普及により需要が増加しています。

医療・介護施設

医療施設や介護施設は、日本が超高齢社会に突入していることもあり、安定的な需要が期待される分野です。特に、地域に根差した医療機関や老人ホームは、収益が安定している傾向があります。

不動産投資信託のデメリット

不動産投資信託のデメリットを解説します
不動産投資信託のデメリットを解説します

不動産投資信託には、通常の不動産投資には見られないリスクやデメリットが存在します。不動産投資信託を利用して収益を安定的に得るためにも、ここでは注意すべきデメリットを解説します。

元本保証がない

不動産投資信託では、元本が保証されていないため、購入時の価格を下回るリスクがあります。不動産市場の動向や賃料収入の減少にともない、価格が低下し、元本割れとなるケースが発生する可能性も。期待どおりの収益が得られれば大きな利益につながりますが、元本保証のないリスクを考慮したうえで、慎重に投資判断をおこなうことが重要です。また、このリスクは不動産投資信託に限らず、不動産投資全般に当てはまることを理解しておきましょう。

分配金減少のリスクがある

不動産投資信託では、投資した不動産の運用益が分配金として支払われますが、収益が安定しているとは限りません。収益の減少や運用状況の悪化により、分配金が減額される可能性があります。さらに、金利が上昇すると分配金にも影響がでる場合もあるため、金利変動リスクにも注意が必要。分配金に関するデメリットは、通常の不動産投資とは異なる不動産投資信託の特性でもあります。

実物不動産の所有はできない

一般的な不動産投資では、物件を所有できるため、賃貸運用や自宅として利用できます。一方で、不動産投資信託は金融商品であるため、実際の不動産を直接所有はできません。不動産投資信託は、投資以外の活用方法がない点で、現物不動産投資とは大きく異なります。実物不動産の所有を望む場合には、別の投資方法を検討したほうがよいでしょう。

金融機関からの融資が受けられない

実物不動産投資では、不動産投資ローンなどの融資を利用することができます。一方で不動産投資信託は、銀行などの金融機関から融資を受けられないため、全額を自己資金で賄わなければならないデメリットがあります。資金調達に不安がある場合は、融資が利用できる投資方法も検討したほうがよいでしょう。

災害リスクと価格変動リスクがある

実物不動産投資にも同じことがいえますが地震や台風などの自然災害や予測不能な事故は、投資物件にも影響を与える可能性があります。自然災害により、物件の価値が下がったり、分配金が減少したりするリスクが生じます。損害に関しては保険でカバーできる場合がありますが、分配金の減少までは補償されません。

また、不動産投資信託の価格は市場や社会情勢の変化によって変動することも。不動産価格の下落や物件の老朽化にともなう価値低下が、収益にも影響を与える可能性があることを理解しておきましょう。

配当控除が適用されない

配当控除とは、株式投資などで得られる配当金を総合課税方式で申告する際に適用される控除制度です。不動産投資信託で得られる分配金も配当所得として扱われますが、配当控除は適用されません。したがって、不動産投資信託の分配金はすべて課税対象となります。この点は株式投資などとは異なる特徴であり、税金がかかることを事前に理解しておくことが重要です。

銘柄選びの分析が難しい

不動産投資信託を選ぶ際、分配金は重要な基準の一つとされています。しかし、利回りやリスクを踏まえて適切な銘柄を選定するには、一定の投資経験が必要です。利回りの高さだけで銘柄を選ぶと結果的にリスクを高めてしまう可能性も。そのため、専門的な知識や分析力をある程度求められる点が、不動産投資信託のハードルの一つでもあります。

運用コストが比較的高い

不動産投資信託では、取引の際に証券会社を介するため、売買手数料が発生します。また、口座の開設費用や維持管理費用などのコストもかかります。

通常の不動産投資では運用コストが家賃収入の5%程度であるのに対し、不動産投資信託では7〜8%ほどになる場合も。費用は証券会社ごとに異なるものの、通常の不動産投資と比較すると、コストが高くなる傾向があります。

投資法人の倒産リスクがある

不動産投資信託の運営をおこなうのは投資法人であり、一般企業同様、収益が悪化すると倒産の可能性があります。倒産時には上場廃止となり、市場での売買ができなくなるため、流動性が失われます。

また、倒産すると投資法人が保有する不動産が売却され、その売却益が投資家に返還される仕組みですが、全額が保証されるわけではありません。財務状況の良好な投資法人を選んだり、投資先を分散させたりなどの工夫が必要です。

複利効果を得るのが難しい

複利効果とは、投資で得た収益を再投資し、さらに大きな収益を得る仕組みです。しかし、不動産投資信託では、収益が分配金として投資家に還元されるため、複利効果を直接得ることは困難です。複利効果を狙う場合は、分配金を使って再び商品を購入する必要がありますが、1回の分配金では新たな商品を購入できないケースもあるため注意が必要。複利効果を最大限に活用したい場合は、別の投資方法も検討しておくとよいでしょう。

節税効果が限定的である

不動産投資信託では、税制上のメリットが限られている点もデメリットの一つです。分配金や売却益には約20%の税金が課され、通常の不動産投資で利用できる節税対策、例えば青色申告や修繕費の経費化などの方法は適用されません。

ただし、NISA口座を利用すれば非課税での運用が可能です。とはいえ、節税効果を重視するのであれば、通常の不動産投資のほうが有利でしょう。

不動産投資信託のメリット

不動産投資信託のメリットを解説します
不動産投資信託のメリットを解説します

ここまで不動産投資信託のリスクやデメリットを解説しましたが、もちろんメリットもあります。メリットとデメリットを比較したうえで、慎重に判断しましょう。

実物不動産投資よりも手軽に始められる

不動産投資信託のデメリットとして金融機関の融資が受けられず自己資金が必要とお伝えしました。しかし、一般的に不動産を直接購入して投資する実物不動産投資よりは費用を抑えやすい傾向にあります。

例えば、実物不動産投資では物件価格の15%~30%が必要とされますが、不動産投資信託では10万円程度の資金でも始められるため、資金の壁が低いのが特徴。ある程度の自己資金は必要ですが、直接不動産を購入する方法よりも、圧倒的に少ない資金で始められる点が魅力です。

物件管理の手間を省ける

不動産投資信託では、プロフェッショナルが物件の選定から管理、運用までを一括しておこないます。そのため、投資家が物件の維持管理や運営をする必要はありません。

一方で、現物不動産の場合、物件の選定や管理業務を投資家自身でおこなう必要があり、不動産に関する知識や労力が求められます。管理会社に業務を委託している方も多いですが、委託する場合には費用がかかります。不動産投資信託では管理会社に依頼する必要もないため、初めて不動産投資を検討している方にもおすすめです。

安定した長期収入が期待できる

不動産投資信託では、集めた資金をもとに物件を運用し、その賃料収入や売却益を投資家に分配します。分配金の主な財源は賃料収入であるため、長期契約の入居者が多い物件では安定した収益を見込めます。投資法人ごとに収益性は異なるものの、長期間にわたり継続的な収入が期待できる点は大きな魅力でしょう。

流動性と換金性が高い

現物の不動産を売却する際には、購入者を探したり、税金や登記費用などのコストが発生したりするため、売却までに時間と手間がかかります。そのため、現物不動産は比較的流動性が低い資産とされています。一方で、不動産投資信託は証券市場に上場しており、取引時間内であればいつでも売買が可能。不動産投資信託は流動性が高く、換金のスピードも速いため、急な資金需要にも柔軟に対応できる点が大きなメリットです。

証券市場で自由に取引ができる

不動産投資信託は証券取引所に上場しているため、取引時間内であれば好きなタイミングで売買することが可能です。現物の不動産の場合、不動産会社による査定や売買契約など、多くの手続きが必要であり、必ずしも希望のタイミングで売却できるわけではありません。一方で、不動産投資信託は流動性が高く、急な資金需要にも対応しやすい点が特徴です。

高めの分配金利回りが期待できる

分配金利回りは投資元本に対する収益の割合を示し、不動産投資信託では他の投資商品と比較して利回りが高めです。特に日本の不動産投資信託(J-REIT)は、利益の90%以上を投資家に分配することで法人税が免除される仕組みとなっており、この制度のおかげで高い利回りを実現しています。投資法人が得た収益の大部分を分配することで、投資家は高いリターンを期待できるのです。

複数の不動産に分散投資ができる

不動産投資信託では少額投資が可能なため、自己資金を複数の物件に分散することもできます。複数の不動産に投資することでリスク分散にもつながるでしょう。

不動産投資信託を選ぶ際のポイント

不動産投資信託を選ぶ際のポイントを解説します
不動産投資信託を選ぶ際のポイントを解説します

不動産投資信託は種類が豊富なため、どれを選べばよいのか迷うことも少なくありません。選択の際には、指標やエリア、物件の種類を確認することが重要です。ここからは、不動産投資信託を選ぶ際のポイントを見ていきましょう。

エリアや物件の種類を確認する

物件の所在地によって、期待できるリターンやリスクの度合いが異なります。また、物件の種類も投資結果に影響がでることも。例えば、都市部に集中するオフィスビルは、運用が順調であれば大きな利益を見込めますが、景気変動の影響を受けやすいデメリットがあります。物件のエリアや種類を慎重に分析し、各商品のメリットとデメリットを把握しておくことが成功へのカギとなるでしょう。

指標に注目して商品を選ぶ

不動産投資信託の指標には、分配金利回りやNAV倍率などがあります。NAV倍率(Net Asset Value)とは、不動産投資信託の市場価格が純資産の何倍に当たるかを示す指標のこと。この数値は、1口あたりの投資金額を純資産額で割ることで算出が可能。NAV倍率が1倍を超えると割高、1倍未満であれば割安とされます。

また、分配金利回りとは投資した資金に対し、過去1年間にどのくらいの分配金があったのかを示したもので、数値が高いほどリターンが期待できるでしょう。上記の指標を比較しながら、収益性やリスクを検討することが大切です。

東証REIT指数を活用する

東証REIT指数とは、東京証券取引所に上場している不動産投資信託全体の時価総額をもとにした指標です。この指数をチェックすることで、不動産投資信託の市場全体の傾向や動向を把握しやすくなります。

さらに、東証REIT指数は「オフィス」「住宅」「商業・物流」の3つに分類されており、それぞれ異なる特性を持っています。東証REIT指数を参考にしながら、自分に合った投資対象を絞り込むのがおすすめです。

不動産投資信託の購入方法

不動産投資信託の購入方法を解説します
不動産投資信託の購入方法を解説します

不動産投資信託の購入方法や購入手順を解説します。

不動産投資信託の購入方法

不動産投資信託の購入方法は基本的に3種類あります。自分の投資スタイルや目標に合わせて適した方法を選びましょう。

投資信託を利用して購入する

投資信託を利用する場合、専門家が選んだ銘柄を購入することになるため、個別銘柄を選ぶ必要がありません。分散投資の効果も期待できるため、投資初心者に向いている手法です。

ETF(上場投資信託)を活用する

ETF(上場投資信託)は複数の不動産投資信託をまとめた商品に投資する手段です。1つのETFを購入することで、複数の不動産投資信託へ分散投資できるメリットがあります。

個別銘柄を購入する

証券会社を通して自分で銘柄を選択して購入することもできます。対象物件に関する情報を自分で十分に調べて判断する必要があるため、ある程度の知識と経験が求められるでしょう。

購入の基本的な手順

ここからは、不動産投資信託を購入する基本的な手順を見ていきましょう。

  • STEP 1
    証券会社に口座を開設する
    取引をおこなうためには証券会社で口座を開設する必要があります。この際、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書、口座開設申込書、金融機関の口座情報、印鑑(シャチハタ・ゴム印・スタンプ印・縁なし・縁が欠けている印鑑以外)が必要です。
  • STEP 2
    購入資金を口座に入金する
    口座開設後、投資資金を入金します。自分の銀行口座から送金し、取引準備を整えましょう。
  • STEP 3
    商品を選び購入する
    資金の準備が完了したら、投資対象となる商品を選びます。購入後、必要に応じて商品を売却することで現金化も可能です。

まとめ

今回は、不動産投資信託について解説しました。不動産投資信託は、初心者の方にもおすすめの方法ですが、リスクやデメリットをしっかり把握しておく必要があります。メリットだけではなく、デメリットも理解しておくことで、より安定した資金運用が可能になるでしょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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