不動産投資をやめたいと思うのはどのような時?やめる手順やメリットを解説

記事の目次
不動産投資をやめたい理由

まずは、不動産投資をやめたいと感じる理由を見ていきましょう。
空室が続く
空室が続くと、賃貸物件の収益性が大きく下がります。また、次の入居者を確保するために家賃を下げざるを得ない場合も。不動産投資を成功させるために欠かせないのが、空室をなるべく作らないことです。
空室が長期化してしまった場合、その賃貸物件を売却して、新たな投資に切り替える選択肢を検討する方も多いです。
利回りが低い
多くの投資家が直面するトラブルが利回りの低さです。例えば、空室が続き、毎月のキャッシュフローが赤字である場合、資金繰りが厳しくなるのは明白です。
自己資金が少なく、投資用ローンの借入金が多い場合は、特にこの傾向が強くなります。この場合ローンの返済が優先されるため、実質的な利益が手元に残らないことも。キャッシュフローが改善されない場合、早期に投資手法を見直すことも一つの選択肢となります。
借り入れリスクがある
不動産投資をやめたいと考える人の多くが抱える課題の一つに「借り入れリスク」が挙げられます。特にワンルームの区分所有の物件では、空室リスクが高くなります。一部屋しか所有しないため、空室が発生すると収益がゼロになってしまいます。しかし、その間も投資用ローンの返済を続けなければなりません。
もし、自宅を所有し、住宅ローンを抱えながら投資用ローンも返済しなければならない場合、返済負担が増すことで不動産投資を続けることが困難になることもあります。
予想以上にランニングコストがかかった
賃貸物件は、維持するために購入後も多額の費用がかかることがあります。例えば、固定資産税や管理を委託する場合の手数料などです。しかし、これ以外にも予想外の支出がかかることも。例えば、入居者の退去後の修繕費や、新たな入居者を募集する際の広告費用などが挙げられます。こうしたランニングコストが予想以上にかかると、投資のリターンが大幅に減少し、結果的に「割に合わない」と感じるケースも少なくありません。
入居者トラブルの対応が大変だった
物件の管理を管理会社に委託していない場合、入居者トラブルを自分で処理する必要があり、その手間が大きな負担となることがあります。また、家賃の滞納や原状回復の問題など、入居者との関係がこじれるケースも少なくありません。
上記のような問題が発生するたびに、不動産投資を続けることへのストレスが溜まってしまうことが多いです。管理会社に任せることで入居者トラブルも対応してくれることが多いですが、前述のとおりその分委託手数料がかかるため結果的にランニングコストが高くなります。
立地の悪い物件を購入してしまった
立地の悪い物件は、購入時にすでに入居者がいる場合でも、その後の空室リスクが高まります。また、新たな入居者を確保することが難しく、結果的に収益性が低下してしまいます。投資リスクを抑えるためにも、立地の悪い物件は早めに手放したほうがいいケースもあります。
確定申告の手間がかかる
不動産投資をすると、毎年確定申告をおこなう必要があります。確定申告は1年に1回ですが、手間に感じる方も多いです。また、確定申告の書類に不備があった場合、修正しなければなりません。もし、遅れた場合にはペナルティとして、延滞税が課せられることも。
税理士に任せている方も多いですが、報酬料がかかるため、家賃収入が少ない場合は自分でおこなったほうが利益を残せるでしょう。
特に少額の家賃収入しか得られない物件の場合、労力と得られるリターンが見合わないと感じて投資をやめたくなることもあるようです。
不動産投資をやめるタイミング

次に、不動産投資をやめるタイミングをみていきましょう。
空室が続く時
不動産投資をやめたい理由でも取り上げたように、空室が続く場合は、やめるタイミングの一つです。賃貸物件の空室が長期間続く場合、家賃を下げるか、空室対策としてリフォームを検討する必要があります。しかし、家賃を下げることで将来の収益が減るリスクや、リフォームしても空室が埋まらない可能性が高い場合は売却を考えてみてもいいでしょう。
収益目標を達成した時
不動産投資を始める際に設定した収益目標を達成した場合、それ以上リスクを取らずにやめる選択肢もあります。特に築年数が古い賃貸物件は、今後修繕費がかかったり、物件価値が下がり、収益性が低下する可能性があるため、収益目標に到達したら早めに手放すほうがよいこともあります。
持ち続けていても利益が出る賃貸物件もあれば、反対に利益が少なくなる賃貸物件もあるので、見極めなければなりません。
投資用ローンを完済した時
投資用ローンを完済したタイミングを一つの節目として、投資をやめることもできます。投資用ローンが完済されれば、賃貸物件を売却する際の制約が少なくなり、利益が得られやすくなるからです。
売却しても利益が出る時
賃貸物件を売却しても利益が見込める場合、特に現在のような不動産価格が上昇している時期には、売却を検討するとよいタイミングです。空室が続いている賃貸物件でも、高値で売却できる可能性があるため、早めの判断が重要です。
ただし、今後も利益を狙いたいならそのまま所有するのも一つの手となります。築年数が経っている場合は、利益が出るうちに売却するのがよいかもしれません。
不動産投資をやめる際の注意点

不動産投資をやめる際には、いくつかの注意点を考慮する必要があります。
不動産市場の状況を確認する
賃貸物件を売却する際には、不動産市場状況を確認することも重要です。金利が低い場合は、ローンの総返済額が抑えられることから、買い手の購買意欲が高まり、物件価格が高くなっても売却できる傾向があります。そのため、低金利の時期に売却することで、より高い利益が得られる可能性があります。少しでも利益を残すためにも、常に不動産市場の状況をチェックしておきましょう。
売却益で投資用ローンを完済できるかを考える
賃貸物件を売却する際には、投資用ローンの残債を一括で返済する必要があります。そのため、賃貸物件の売却価格が、投資用ローンの残高を上回っていることが前提となります。複数の不動産会社に査定を依頼し、適切な売却価格を把握しましょう。一つの不動産会社のみではなく、複数の不動産会社に査定を依頼することで、比較検討できるため、より高い金額で売却できる可能性が高まります。
所有期間5年以上の売却で節税する
賃貸物件を売却する際、所有期間が5年を超えていると、売却益に対する税率が低くなります。そのため、節税を考える場合は、所有期間5年以上を目安に売却を検討するとよいでしょう。なお、それぞれの所得税の割合は次のとおり。
・短期譲渡所得税:所得税30%+住民税9%=39%
・長期譲渡所得税:所得税15%+住民税5%=20%
不動産所有期間が5年以下か5年を超えるかで、税率は2倍近く異なります。また、上記の譲渡所得税に加えて、2037(令和19)年までは復興特別所得税として2.1%がさらに上乗せされます。復興特別所得税は短期も長期も同じ税率です。
衝動的な決断を避ける
不動産投資をやめる際には、焦って衝動的な行動を取らないことが重要です。家賃収入が思うように得られず、投資用ローンの返済が苦しい状況でも、任意売却や自己破産などの救済措置があります。最適な対処法を見つけることが大切です。
不動産投資をやめる以外の選択肢

次に不動産投資をやめる以外の選択肢もご紹介します。
金利の負担軽減策を考える
金利が高く、経済的に負担となっている場合は、ローンの借り換えを検討することも一つの選択肢です。ただし、賃貸物件の価値が低下していたり、投資家の経済状況が悪化していたりする場合には、審査が厳しくなります。簡単に借り換えできるわけではないことも考慮しましょう。
サブリース契約の解約も検討する
サブリース契約とは、サブリース会社が賃貸物件の所有者から不動産を借り上げる方法のことです。サブリース会社が賃貸物件の管理や運営業務を担ってくれるため、所有者の負担を大きく軽減できる点がメリット。
月々の家賃収入も安定し、面倒な管理業務もないため、注目が集まっています。サブリース契約をしている場合、契約を解約することで収益性を改善できることがあります。
ただし、サブリース契約は簡単に解約できない場合もあるため、慎重に対応する必要があります。所有者から契約を解除する場合は、高額な違約金が発生するケースもあるため、契約を結ぶ前に契約書の内容を細かく確認することが大切です。
繰上げ返済は計画的におこなう
余裕がある場合は、繰上げ返済を考えることもできますが、空室リスクが高い物件では繰上げ返済が意味をなさないこともあります。そのため、無理に返済を進めるよりも、売却を考えるほうが賢明かもしれません。
売却するか繰り上げ返済するかを迷った場合には、信頼できる不動産会社やファイナンシャルプランナーに相談してみるとよいでしょう。一つの会社だけではなく、複数の相談先に相談することで、より自分に合った選択肢を選べるはずです。
生命保険と考えて割り切る
投資用ローンに団体信用生命保険(以降、団信)がついている場合、不動産投資を生命保険と考えることもできます。団信とは、契約者が死亡したり、高度障害になったりした場合、保険金でローンの残債が精算される保険のこと。契約者に万が一のことがあった場合、保険金で投資用ローンが完済されれば、家族に経済的な負担がない状態で、家賃収入が得られる賃貸物件を残せるという考え方をすることも可能です。
不動産投資をやめる際の具体的な手順

ここからは不動産投資をやめる際の具体的な手順を見ていきましょう。下記は簡単な流れをまとめたものです。
- STEP 1不動産会社に査定を依頼する
- STEP 2媒介契約を結ぶ
- STEP 3販売活動を開始する
- STEP 4売買契約を締結する
- STEP 4引渡し・決済する
- STEP 4確定申告・納税をする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ1.不動産会社に査定を依頼する
まず、不動産情報サイト等の一括査定を利用して、複数の不動産会社に査定を依頼します。複数の会社からの査定結果を比較し、信頼できる会社を選びましょう。
ステップ2.媒介契約を結ぶ
査定結果をもとに、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があり、状況に応じて選択することが必要です。
専属専任媒介契約では、1社にのみ仲介を依頼し、自分で見つけた買主にも売却できません。一方で不動産会社からの業務処理の報告義務や、指定流通機構(レインズ)への登録義務もあり、積極的に販売活動をおこなってもらえるでしょう。
専任媒介契約の場合は、自分で見つけた買主に売却できますが、依頼は1社のみです。一般媒介契約は、複数の不動産会社に依頼できるため、広範囲にわたり、買主を探すことが可能です。
ステップ3.販売活動を開始する
媒介契約後、不動産会社が販売活動をおこないます。広告や内覧の対応などは、基本的に不動産会社が担当するため、売主が積極的に行動する必要はありません。
ステップ4.売買契約を締結する
購入希望者が見つかり次第、売買契約を締結します。契約手続きは、不動産会社の店舗やオフィスでおこなうことが一般的です。
ステップ5.引渡し・決済する
売買契約が完了すると、物件の引渡しと決済がおこなわれます。買主から売却代金を受け取り、投資用ローンが残っている場合は、同時に返済をおこないます。
ステップ6.確定申告・納税をする
売却益が発生した場合は、確定申告をおこない、必要な税金を納めます。利益が出なかった場合でも、確定申告を忘れないようにしましょう。赤字の場合、確定申告は基本的に必要ありませんが、申告することで損益通算というメリットが得られます。損益通算とは所得税や住民税を控除してもらえる制度のことです。最長で4年間の減税メリットが得られるので、確定申告をしておいて損はないでしょう。
不動産投資をやめる際には、上記の手続きをスムーズにおこなうために、不動産会社や税理士などの専門家のサポートを受けることがおすすめです。
不動産投資をやめるメリット

不動産投資をやめることで得られるメリットも確認しておきましょう。
資産を売却して現金化できる
賃貸物件を売却することで、資産を現金化することが可能です。昨今のインフレによって不動産価格が上昇しているため、購入時よりも高く売れる可能性もあります。
不動産投資をやめるタイミングでも解説したように、空室リスクが高くなったり、維持コストがかさんでしまい、今後もその負担が続くと感じる場合は、売却することも一つの方法です。売却して手元に現金を残すことで、他の投資や生活費に活用できるメリットがあります。
ランニングコストを削減できる
賃貸物件は、所有しているだけでも修繕費や管理費などのランニングコストが発生します。もし空室になっている場合でも、これらのコストを負担し続けなければなりません。しかし、賃貸物件を手放せば、こうした経済的負担を解消できます。
特に、空室が続いている賃貸物件では売却することで、維持コストの心配から解放される点が魅力です。
税負担が軽減される
不動産投資をやめることで、税金の負担も軽減される場合があります。特に所得税は累進課税制度を採用しているため、所得が多いほど高い税率が適用されます。不動産所得が減少すれば、結果的に課税所得も減り、税率が下がる可能性があるでしょう。
特に収益性の低い物件を抱えている場合、売却して所得が減ることで、税負担を抑える効果が期待できます。
他の投資や資産運用へ移行できる
不動産投資をやめることで、手元に残った資金を他の投資に振り分けられます。株式や債券、投資信託など、リスクを分散したり、流動性の高い資産に移行したりすることで、より自由度の高い運用が可能です。
不動産のように固定された資産を持つことに不安を感じている人にとっては、資金を柔軟に運用できるようになる点が大きなメリットです。
長期保有のリスクを回避できる
賃貸物件は長期的に保有することで、価値が下がるリスクもあります。特に築年数が古くなると、物件のメンテナンス費用がかさんだり、家賃収入が減少したりするリスクが高まります。
賃貸物件の資産価値がピークを迎える前に手放すことで、将来的な損失リスクを避けられるでしょう。
精神的負担を軽減できる
不動産投資には、さまざまなストレス要因がついて回ります。例えば、入居者とのトラブルや空室リスク、さらには確定申告や税務手続きの煩雑さなどが挙げられます。
上記の煩わしい業務から解放されることで、精神的な負担の軽減にもつながるでしょう。不動産投資を続けることに疲れを感じている場合、やめることで生活がシンプルになり、心の余裕を取り戻せるかもしれません。
まとめ
不動産投資をやめることには多くのメリットがあり、資産を現金化したり、維持コストや税金の負担を減らすことができます。
また、精神的な余裕を取り戻し、他の資産運用に移行することが可能になる点も見逃せないポイントです。特に今は不動産価格が上昇している時期であるため、売却を検討している人にとっては最適なタイミングかもしれません。
ただし、不動産投資をやめる際は、適切な時期を見極めなければなりません。今回ご紹介した記事を参考に、正しい手順で賃貸物件を手放しましょう。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ