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アパート経営に特別な資格は必要?必要な知識や勉強方法とは

アパート経営に特別な資格が必要なのかを解説します
「アパート経営には特別な資格が必要なのではないか」「資格を取らなければアパート経営はできないのではないか」と考えている方もいるでしょう。結論をいうと、アパート経営に特別な資格は必要ありません。しかし、身に付けておいたほうがよい知識はあるため、アパート経営を始める前に勉強することも大切です。本記事では、アパート経営に役立つ資格や知識を詳しく解説します。

アパート経営に特別な資格は不要

アパート経営に特別な資格は不要です
アパート経営に特別な資格は不要です

不動産投資の一つであるアパート経営を始めるには、特別な資格が必要なのではないかと考えている方もいるのではないでしょうか。しかし、アパート経営において特別な資格は必要ありません。また、年齢制限も特にありません。
しかし、経営とは事業を継続して運営していくことです。事業を立ち上げること自体は難しくありませんが、長期にわたって業績を維持し続けることは、決して簡単ではありません。

アパート経営が難しいといわれる理由の一つに、特別な資格がないことが挙げられます。資格が必要ない分、経営者個人の知見や能力、経験によって、業績に大きな開きが生じます。特別な資格がないからこそ、誰でも気軽に始められますが、それゆえに失敗する可能性も高いのです。

アパート経営に必要な知識

アパート経営に必要な知識を解説します
アパート経営に必要な知識を解説します

アパート経営とは、アパートを賃貸し、家賃収入を得る「不動産投資」の一種です。会社員のように雇われる立場ではなく、アパートのオーナーであり、賃貸運営の経営者でもあります。そのため、経営に必要なすべての仕事を自分でおこなう必要があります。

アパート経営をおこなうために必要な知識は、以下の4つです。

  • 不動産に関する知識
  • アパート経営に関する知識
  • 個人事業主に関する知識
  • その他のビジネスに関する知識

不動産に関する知識

アパート経営で最初に必要なのは、収益性の高い物件を見極め、確保することです。そのためには、アパートの質や間取り、築年数による家賃相場、空室リスクを考慮した経営予測など、最終的に「手元にどれくらいの金額が残るか」を計算する経理の知識が重要です。

アパートを手に入れる際は、自己資金を投じるか、もしくは不足した分を金融機関からの借入が必要となります。借入の手続きや不動産登記など不動産に関する知識があれば、スムーズに物件を取得できるでしょう。

また、不動産取得時に交わす契約書の内容をしっかり把握するためには、法律の知識も必要です。

さらに、アパートは経年により劣化していきます。定期的な設備の点検や、専門会社によるメンテナンスの実施、万が一の災害に備えた保険加入など、メンテナンス面での対策も経営者の重要な仕事です。

アパート経営に関する知識

アパート経営で特に注意しなければならないのが「空室」です。入居者を確保するためには、家賃相場やニーズを把握し、環境の変化に注目しながら適切な家賃を設定する必要があります。また、チラシ作成やWebサイト掲載など、効果的な営業活動をおこなうための知識と能力も求められるでしょう。

家賃を低く抑えれば空室は減りますが、家賃収入も低下します。一方、高すぎれば入居者が集まらず、家賃収入を得られなくなる恐れもあります。

適切な家賃設定は、経営者の重要な役割の一つです。

個人事業に関する知識

アパートを個人で営む場合、アパート経営をおこなう旨を届け出る必要があります。また、個人事業主は所得税の確定申告を自身でおこなわなければなりません。確定申告は、1年間の収支明細を作成し、税務署に提出するものです。

多くの経営者がおこなう「青色申告」では、詳細な帳簿作成が義務付けられています。税理士などに依頼する場合もありますが、最終的なチェックは経営者自身がおこなう必要があります。そのため、会計・税務に関する知識は必須でしょう。

その他のビジネスに関する知識

上記で挙げたものは、アパート経営者にとって基本の知識ばかりです。重要なのは、変化の大きい社会でアパート経営をより安定的に運営し、高い収益を得るための知識です。

例えば、入居者の満足度を上げる方法や入居者と円滑な関係を築いていく方法なども学ぶ必要があります。経営者には、何が事業にどのような影響を与えるのかを見極める力が求められるでしょう。

アパート経営に役立つ資格

アパート経営で役立つ主な資格を解説します
アパート経営で役立つ主な資格を解説します

アパート経営に特別な資格は必要ありませんが、持っていると役に立つ資格はあります。主な資格は以下のとおりです。

  • 宅地建物取引士(宅建士)
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • ファイナンシャル・プランナー(FP)
  • 土地家屋調査士
  • 司法書士
  • 不動産鑑定士
  • JSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士)
  • マンション管理士

それぞれの資格を詳しく見ていきましょう。

宅地建物取引士(宅建士)

「宅地建物取引士(宅建士)」とは、不動産取引の専門家であることを証明する、国家資格の一つ。主な役割は、不動産売買の支援や契約内容の説明などです。

また、重要事項の説明、重要事項説明書(35条書面)と契約内容記載書面(37条書面)への記名という3つの業務を独占する「業務独占資格」でもあります。

宅建試験の合格率は例年15〜17%前後と比較的低めですが、不動産鑑定士や土地家屋調査士などの難関資格に比べれば、取得しやすい資格でしょう。合格するには、一般的に300〜400時間程度の学習時間が必要とされています。

宅建の知識は、アパートを取得する際に役立ちます。また、不動産の売買をおこなう場合も、取引がスムーズに進められる点が取得するメリットです。

管理業務主任者

「管理業務主任者」とは、分譲マンションの管理に関するプロフェッショナルのことです。管理業務主任者の資格は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」で定められた国家資格です。

また、管理受託契約の際の重要事項説明、同契約書への記名・押印、管理組合への報告など4つの業務を独占する「業務独占資格」でもあります。

資格を取得すれば、管理業務主任者としてさまざまな法令に関する知識や、建物の価値を維持するための適切な管理方法を身に付けられます。自身が所有するアパートの管理に知識を活かせるでしょう。

賃貸不動産経営管理士

「賃貸不動産経営管理士」とは、賃貸住宅の管理に関する専門家であり、国家資格。賃貸住宅管理業務をおこなううえで設置が義務付けられている「業務管理者」になるための要件の一つとされています。

賃貸不動産経営管理士の主な業務は、賃貸住宅の管理業務の受託と、物件取得時の市場調査、入居者募集・審査・退去時対応など。

賃貸不動産経営管理士の資格を取得すれば、アパート経営の実務に携わるうえで役立つ知識が身につくでしょう。

ファイナンシャル・プランナー(FP)

「ファイナンシャル・プランナー(FP)」とは、個人の資産運用に関するアドバイスをおこなう専門家の総称です。FPに必要な知識を証明するための国家資格が「ファイナンシャル・プランニング技能検定」です。

FPは金融や保険、税制など幅広い知識を有しており、不動産や相続に関する知見も活かして、資産形成のサポートをおこないます。上記の知識があれば、アパート経営での収支状況を細かく理解できるようになるでしょう。

土地家屋調査士

「土地家屋調査士」とは、不動産の登記、特に「表示に関する登記」の代理を独占業務とする専門家です。国家資格であり、合格率は約8〜10%と難易度が高い資格。必要な学習時間は1,000時間程度といわれています。

業務内容は、登記に必要な現地調査や測量、書類作成などです。また、土地の境界をめぐるトラブルが生じた際の解決手続きの代理もおこないます。アパート経営で登記手続きが必要な場合や、境界問題が発生した際に役立つ資格です。

司法書士

「司法書士」は、登記手続きの代理や、法務局提出書類の作成などを独占業務とする国家資格。不動産登記や商業登記の代行、相続手続きのアドバイス、簡易裁判所での訴訟代理など幅広い業務をおこないます。

不動産の登記は本人申請が可能ですが、手続きが複雑なため、司法書士に依頼するケースも多いです。自身で司法書士の資格を取得すれば、アパート経営で登記が必要になった場合に、知識を生かして手続きができるでしょう。また他の司法書士に依頼する際も、スムーズなやり取りが可能です。

不動産鑑定士

「不動産鑑定士」とは、不動産の適正価値を調査する専門家であり、「不動産の鑑定評価」を独占業務とする国家資格。主な業務は不動産の経済的価値の評価で、不動産に関するコンサルティングもおこないます。

不動産鑑定士の資格を持てば、不動産の価値評価の方法や、不動産の権利に関する知識を身に付けられます。そのため、アパートの物件購入時に、的確な判断ができるようになるでしょう。

JSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士)

「ホームインスペクター(住宅診断士)」とは、住宅の劣化状況や不具合の有無を調査し、改修に関するアドバイスをおこなう専門家。「特定非営利活動法人日本ホームインスペクターズ協会(JSHI)」が認定をおこなう民間資格です。

JSHI公認ホームインスペクターの資格があれば、アパートの劣化具合を適切に判断できます。修繕計画の立案や、将来の修繕費用も予測がしやすくなるでしょう。また、新たな投資物件を取得する際の判断材料としても役立ちます。

マンション管理士

「マンション管理士」とは、分譲マンションの管理運営の専門家を指す国家資格です。管理規約の策定、長期修繕計画の作成、区分所有者間のトラブル解決など、マンション管理に関わる幅広い業務をおこないます。

マンションに関する資格ですが、取得することで、住民同士のトラブル対処法や建物の修繕に関する知識が身に付けられるでしょう。

資格取得以外のスキルアップ方法

資格の取得以外でもスキルアップができる方法を解説します
資格の取得以外でもスキルアップができる方法を解説します

前の章でご紹介した資格の取得以外にもスキルアップする方法はあります。スキルアップ方法を詳しく解説します。

他の大家さんの経験談を調べる

不動産投資に関するブログや書籍は数多く出版されています。ブログや書籍には、経営者の成功談や失敗事例、基本的な心構えから具体的な対処法まで、さまざまな内容が記されています。書籍のなかには、「満室経営の秘訣」「入居者トラブル対策」など、特定のテーマに特化したものも多いです。

実際に経験した方からの話を聞いたり、読んだりすることで、自身が想定していなかった事態や対処法を学べるでしょう。事前に学んでおくことで、いざ想定外のトラブルが起きた時でもスムーズに行動できるようになります。

セミナーやコミュニティに参加する

アパート経営に関する書籍やブログを読むことも大切でしょう。しかし、それらで得られる情報は一部分にすぎません。実際のアパート経営では、想定外の出来事が起こるのが当たり前で、マニュアルどおりには対処できないことが多々あります。想定外のトラブルが起きた際には、「経験者に直接相談できる機会があればよかったのに」と後悔することもあるでしょう。

そのような後悔をしないためにもおすすめなのが、セミナーやコミュニティに参加することです。

セミナーやコミュニティでは長年の経営経験を持つ方や、多数の物件を運営する経営者から、多角的な視点や幅広い考え方を学べます。

疑問に思ったことを直接質問し、アドバイスを受けることもできます。場合によっては、優良な不動産会社や物件を紹介してもらえるかもしれません。

同じ不動産投資家同士として、信頼できる相談相手を得られることは大きな強みとなるでしょう。

自分から積極的に多くの物件を見る

優良な投資物件は人気が高くすぐに売却されます。また、住宅診断士の資格を持っていても、自身のアパートしか見ていなければ専門性は身に付きにくいでしょう。

将来的に経営するアパートを増やしたいと考えるなら、積極的に自分で物件を見て回る行動力が求められます。実際に自分の目で見て調べることで、徐々に優良な物件を見極める力が身に付いていくでしょう。知識を学んで終わりではなく、活かせるように行動することが大切です。

アパート経営のプロに頼る

アパート経営に特別な資格は必要ありませんが、誰もが成功できるわけではありません。立地条件や賃料設定、間取り設計など、センスを問われる部分が多数あります。初めてアパート経営に取り組む方にとっては、難しい課題も多いでしょう。

アパート経営を検討しているけれど、実際に着手する自信がない場合は、専門家である不動産会社などに相談するといいでしょう。始める際の必要な手続きや、入居者を集めるためのテクニックなど、さまざまなノウハウを教えてもらえるかもしれません。

まとめ

本記事では、アパート経営に役立つ資格をご紹介しました。アパートを経営するうえで特別な資格は必要ありませんが、知識を得ておけば、アパート経営をする際の大きな強みとなるのではないでしょうか。

予想外のトラブルが起きた時も、知識があればスムーズに自分で対応できるようになるでしょう。必ずしも資格を取得する必要はありませんが、取得しておけば役立つ機会はあります。

また、実際にアパート経営をしている方の話を聞いたり、セミナーに参加したりするのもよいでしょう。すでに経営している方の声を聞くことで、これまでどのようなトラブルがあったのか、予想外の失敗はどのようなものだったのかなどを学べるでしょう。知識は多ければ多いほど損することはありません。アパート経営が成功するように積極的に学ぶことをおすすめします。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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