住宅ローンで購入した家を賃貸に出すには?問題ないケースや賃貸に出す時の注意点を解説

しかし、住宅ローンの支払いが完了していない家を賃貸に出すことは可能なのでしょうか。本記事では、住宅ローンを完済する前に家を賃貸に出すとどうなるのか、賃貸に出す際の注意点を解説します。本記事を参考にしてきちんと手順を踏まえたうえで、賃貸に出しましょう。
記事の目次
住宅ローンのまま賃貸に出すとどうなる?

住宅ローンを完済する前に賃貸に出すとどうなるのでしょうか。まずは、住宅ローンの利用目的を確認しておきましょう。
住宅ローンの利用目的
住宅ローンは、自己居住用の家を購入することを前提として組むものです。そのため住宅ローン返済中に賃貸に出すことは原則できません。例えば、三菱UFJ銀行の「住宅ローン商品説明書」には、次のように資金使途が明記されています。
“ご自身がお住まいになる住宅の建築・購入・増改築資金、住宅ローンの借換資金・借り換えに伴う諸費用”
これを見ると、住宅ローンは自分が住む家を購入するために借り入れるものであることがわかります。
住宅ローンのまま賃貸に出した場合
もし住宅ローンのまま賃貸に出した場合、どうなるのでしょうか。イオン銀行の「住宅ローン規定」に詳しく書かれているため、見てみましょう。
“第17条(期限前の全額返済義務)
2.次の各号の事由が一つでも生じた場合には、借主は銀行からの請求によって、本ローン契約による債務全額について期限の利益を失い、借入要項記載の返済方法によらず、直ちに本ローン契約による債務全額を返済するものとします。
中略
(4)借主が本ローン契約により担保として差し入れた不動産について、借入契約期間中に自己居住以外の用途に使用したこと、または銀行の承諾なく長期に渡り自己居住しないことが判明したとき。”
期限の利益とは、期限が到来するまで返済をしなくてもよい権利のこと。つまり、住宅ローンを毎月分割して返済できる権利とも言い換えられます。また、(4)号では、自己居住用以外に使用した時と明記されており、住宅ローンのまま賃貸に出した場合、一括返済を求められることになります。
住宅ローンのまま賃貸に出すとばれる理由
住宅ローンのまま賃貸に出すと、ローンの一括返済を求められる可能性があります。なぜ賃貸に出していることがばれてしまうのでしょうか。それは、住宅ローンに関する郵送物が、契約者の元に届かないためです。
金融機関は契約書の控えや年末残高証明書などの郵便物を、住宅ローンで購入した家の住所に郵送します。しかし、賃貸に出している場合、入居者は住宅ローンの契約者ではないため、誤配達として郵便局に差し戻します。その後、郵便局から金融機関に差し戻され、契約者に郵便物が届かないことから、「賃貸に出している」とばれてしまいます。金融機関に無断で賃貸に出すことは、発覚した時のリスクが大きいため、絶対にやめましょう。
住宅ローンのままでも賃貸に出せるケース

住宅ローンのまま賃貸に出すと契約違反にあたり、一括返済を求められる可能性があります。しかし、実際には住宅ローンのままでも賃貸に出せるケースがあります。具体的にどのような場合に出せるのか、詳しく見ていきましょう。
賃貸併用住宅に利用する場合
賃貸併用住宅に住宅ローンを利用する場合には、賃貸に出しても問題ありません。賃貸併用住宅とは、自分の居住用部分と賃貸用部分が一つとなった住宅のこと。一般的に、自宅部分の床面積が、建物全体の床面積の50%以上を占めている場合、住宅ローンを利用できます。
住宅ローンは低金利であるため、賃貸用ローンと比較して負担が少なくなります。また、住宅ローン控除を受けられることも魅力です。ただし、住宅ローン控除を受けられる部分は、あくまで自己居住用部分に限られる点に注意しましょう。
転勤などの一時的な賃貸の場合
転勤や海外赴任、親の介護などで、一時的に自宅を離れざるをえない場合、賃貸に出せることがあります。しかし、金融機関から承諾を得られた場合に限ります。また、あくまで一時的な措置であり、恒常的に賃貸に出し続けられるわけではありません。さらに、金融機関によっては認められない場合もあります。自宅を離れることが一時的な場合、まずは金融機関に相談してみましょう。
住宅ローンから賃貸用ローンに切り替える際の注意点

住宅ローンを組んで購入した家を賃貸に出したい場合、次の2つの方法があります。
- 住宅ローンを完済する
- 賃貸用ローンに借り換える
住宅ローンを完済すれば家は資産となり、どのように扱うかは所有者の自由です。そのため、賃貸に出すことも可能となります。もう一つの方法は、賃貸用ローンに借り換える方法です。しかし、借り換える際にはいくつかの注意点があるため、理解したうえで検討しましょう。本章では、住宅ローンから賃貸用ローンに借り換える際の注意点を解説します。
賃貸用ローンの金利が高い
住宅ローンと比較して、賃貸用のローンは金利が高い点に注意が必要です。金利が高ければ毎月の返済額が増加し、収支計画に影響を与えます。なお、住宅ローンの金利水準は0.5〜2.0%程度に対し、賃貸用ローンは1.5〜4.5%程度。わかりやすくするために、次の条件で住宅ローンから賃貸用ローンに借り換えた場合の返済額をシミュレーションしてみましょう。
<条件>
借入金額:3,000万円
返済期間:25年
金利:0.5%から1.5%(全期間固定)
返済方式:元利均等返済
住宅ローン | 賃貸用ローン | 差額 | |
金利 | 0.5% | 1.5% | |
毎月の返済額 | 10万6,400円 | 11万9,980円 | 1万3,580円 |
総返済額 | 3,192万142円 | 3,620万9,148円 | 428万9,006円 |
金利が1%上がるだけで、月々の返済額は1万円以上、総返済額は約420万円増えました。金利が高ければ家賃収入に対する賃貸用ローンの割合が大きくなり、想定よりも手元に残る収入が少なくなる可能性があります。事前に収支シミュレーションをしたうえで、借り換えましょう。
住宅ローン控除を受けられなくなる
住宅ローンから賃貸用ローンに借り換えた時、住宅ローン控除の適用ができません。住宅ローン控除を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。具体的には次のようなものです。

- 住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで居住していること
- 2つ以上の住宅を所有している場合は、主の居住用住宅であること
つまり、住宅ローン控除を受けるためには、ローンを組んでいる家に住んでいなければなりません。そのため、賃貸に出している場合は、住宅ローン控除が受けられなくなります。

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借り換える際に費用がかかる
住宅ローンから賃貸用ローンに借り換える際、費用がかかる点にも気を付けましょう。具体的には、次のような費用がかかります。
項目 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
全額繰り上げ 返済手数料 |
住宅ローンを一括で繰り上げ返済をする際にかかる手数料 | 5,000〜3万円程度 |
保証会社への 事務手数料 |
保証料の返金がある場合にかかる事務手数料 | 1万円程度 |
抵当権 抹消費用 |
住宅ローンの抵当権を外すためにかかる税金 | 不動産1件につき 1,000円 |
司法書士への 報酬料 |
抵当権抹消する際の手続きを依頼する場合にかかる費用 | 5〜10万円程度 |
融資事務 手数料 |
賃貸用ローンを借り入れる際にかかる事務手数料 | 借入金額に対して 1〜3%程度 |
保証料 | 賃貸用ローンの保証を依頼する際にかかる料金 | 借入金額の2%程度 |
印紙税 | 賃貸用ローンの契約書に貼付する税金 | 契約金額によって 異なる |
例えば、賃貸用ローンの借入金額が2,000万円の場合、融資事務手数料に20万円〜60万円程度、保証料に40万円程度かかります。これらの費用負担を考慮したうえで、借り換えるメリットがあるのかどうかを検討しましょう。
収支計画を立てておく
住宅ローンから賃貸用ローンに借り換える際、必ず収支計画を立てておきましょう。先述したように、借り換える際にはさまざまな費用が発生します。また、金利の上昇によって返済額が増え、場合によっては家賃収入から支払えず、自己資金で負担しなければならない可能性もあります。さらに、賃貸に出す際には、次のような費用もかかります。
項目 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
管理委託費 | 管理業務を委託する不動産会社に支払う | 家賃収入の5%程度 |
損害保険料 | 火災保険や地震保険の保険料 | 火災保険は立地や建物の構造によって異なる |
固定資産税 | 不動産の所有者にかかる税金 | 固定資産税評価額 ×1.4% |
都市計画税 | 不動産が市街化区域内にある場合にかかる税金 | 固定資産税評価額 ×0.3% |
仲介手数料 | 入居者が決まった際に不動産会社に支払う | 家賃1カ月分 × 0.5 +消費税が上限 |
これらの費用は賃貸に出している間、継続して負担しなければなりません。賃貸に出すことで得られる家賃収入と、ローンを借り換える際の費用や賃貸に出している間の費用のバランスがどうなるのか、シミュレーションしておきましょう。家賃収入だけに目を向けてしまうと、負担しなければならない費用の多さに不満を抱き、賃貸に出したことを後悔するおそれもあります。賃貸用ローンへ借り換える際には、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、収支計画を立てましょう。
住宅ローンが残っている家を賃貸に出す際の注意点

住宅ローンが残っている家を賃貸に出す場合にも注意点があります。本章では3つの注意点を解説します。
自分に合った賃貸借契約の方法を選ぶ
住宅ローンが残っている家を賃貸に出す際には、自分に合った賃貸借契約の方法を選びましょう。賃貸借契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。普通借家契約は一般的な賃貸借契約の方法で、契約期間は1年以上、上限なしの契約形態。通常2年契約で、オーナーに正当な解約理由がない限り、入居者の意思で何度も契約の更新ができます。一方、定期借家契約は、契約期間をあらかじめ設定し、満了となると契約も終了する契約形態。オーナーと入居者の合意があれば、再契約が可能です。いずれ家に戻ることが決まっている場合、定期借家契約が適しているでしょう。
空室対策をする
空室対策をすることも、賃貸に出す際の注意点の一つです。安定した家賃収入を得るためには、空室期間をできる限り短くしなければなりません。また、入居者に長期的に入居してもらうことも大切です。空室対策としては、次のような方法があります。
- 適切な家賃を設定する
- 物件の魅力を向上する
- 入居審査を徹底する
物件が魅力的でも、家賃が高ければ入居希望者から敬遠されてしまいます。反対に家賃が安すぎると、収益性が低くなります。そのため、周辺地域の相場に合わせ、適切な家賃を設定しなければなりません。また、物件の魅力を向上することも、空室対策として有効です。具体的には、内装のリフォームや設備の更新などが挙げられます。特にキッチンやお風呂などの水回りは、細かくチェックする方が多いため、きれいにしておきましょう。長く入居してもらうために、入居審査を徹底することも大切です。安定した収入があり、モラルのある入居者に住んでもらうことで、家賃の滞納や近隣トラブルといったリスクを減らせるでしょう。
原状の記録を残しておく
賃貸に出す際には、必ず原状の記録を残しておきましょう。入居者が退去する時には、入居時の状態に戻して返還する原状回復義務があります。例えば、禁煙にも関わらずタバコを吸って壁にヤニが着いた場合や、誤った使い方をして給湯器を壊した場合などは、入居者に元通りにするよう請求が可能です。しかし、家具の設置による床のへこみや、冷蔵庫の背面にできた黒ずみなど、普通の使い方をしてできたものに関しては、入居者に請求できません。そのため部屋の状態を写真で記録しておき、賃貸に出す前後で変化がないかを確認しましょう。
まとめ
本記事では、住宅ローンで購入した家を賃貸に出しても問題ないケースや賃貸に出す時の注意点を解説しました。転勤や親の介護など、やむを得ない事情による一時的な賃貸であれば、金融機関によっては住宅ローンを完済せずとも賃貸に出すことも可能です。しかし、金融機関からの承諾を得られない場合は、賃貸用ローンへ借り換えなければなりません。借り換える際にはさまざまな手数料や維持費用がかかります。これらの費用を考慮したうえで、賃貸に出すメリットがあるか、適切な判断をしましょう。
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執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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